マイマイダンジョン〜転生して魔力極振りチート魔導士になった俺は現代知識で世界を救う〜   作:我島甲太郎

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第94話 紫滅晶洞を抜けて

 シェルター付近にあるブルーアントの巣を殲滅(せんめつ)した俺達は、スタック銅で作られた赤銅色のシェルターの中にあるゲートを潜り四層へと移動した。

 

 アザミが短杖の形をしたトーチの魔杖(まじょう)を振るうと、杖先から飛び出した白い光弾が天井に付着し辺りを照らし出した。

 

 周囲を見渡すとそこは深い紫色をした岩盤で構成された洞窟の只中(ただなか)で、その壁から生えた紫色の水晶が光を反射しキラキラと輝いている。

 ここはAランク迷宮イーラ四層、紫滅晶洞(しめつしょうどう)だ。

 

 俺達がいるシェルターは洞窟の突き当たりに作られているようで、正面には道を塞ぐ赤銅色の壁が(ふた)をしておりその中央にある重そうな鉄扉(てっぴ)が存在感を主張していた。

 

「キャンプの跡がある。どうやら先客がいたようだ」

 

 アザミがシェルターの一角を指差すと、その先の床の上にはゴミが散乱していた。

 ミュールが落ちていた食べかけのチキンの骨を拾い上げて匂いを嗅ぐ。

 

「朝に食べたばっかりみたいにゃ。こんなに食べ残して勿体(もったい)ないことをするにゃ」

「ギザード、調べてみよ」

「探してみるね」

 

 ギザードは目を閉じると、片翼を額の小刻印に添えてむんと念じた。

 

「……見つけた。虎獣人(ワータイガー)の男性二人組、今は紫滅晶洞(しめつしょうどう)の南西でジュエルスネーク狩りをしているみたいだ」

 

 目を開いたギザードは懐からファイルを取り出してぺらぺらとめくる。

 隣から覗き込んでみると、どうやらこれは迷宮塔イーラに滞在中の上級探索者のリストのようだった。

 

「Aランク探索者パーティー『獣の双牙』、虎獣人(ワータイガー)の双子で職業は剣豪(ソードマン)斧勇士(ウォーリア)。素行はまあまあだけど、ちょっと前にユーストで発令された緊急クエストを失敗してペナルティを受けているね」

 

 ギザードのその言葉を聞いた俺とアンバーは顔を見合わせた。

 なんだか変なところで縁があるなぁ。

 

「のう、お主……」

「あのシーサーペントに返り()ちにされた連中か」

 

 アンバーのポーチの中には討伐したシーサーペントの左目から抜き取った総パルマ銀製の大剣が入っている。

 アクアマリンに帰る前に返そうと思っていたが、後回しにしておいて正解だった。

 

「恐らく帰りに彼らと相対することになる。注意をしておかないといけないね」

「うむ。わしらの目的はまだバレてはおらんようじゃが、いつダンジョンマスターの妨害が入るか分からぬからのう」

 

 今日の昼から夕方に掛けて、テティスの手配したマーメイド達が出入口のダンジョンゲートを封鎖する予定になっている。

 

 そうしておかなければ(おきて)を破りリザーブマスターとなったギザードを捕縛する為に、イーラの治安を守るバードマン精鋭部隊が突入してくるからな。

 

 そして昼にダンジョンゲートの封鎖を知ったダンジョンマスターが次に打つ手として考えられるのは、上級探索者に対するダンジョン内犯罪者の捕縛要請の発令だ。

 

 これは救援要請と並ぶ、上級探索者が履行(りこう)しなければならない義務の一つ。

 彼らはまず間違いなく、ギザードを連れた俺達の前に立ちはだかるだろう。

 

「母上はこの時間帯はいつも妹達の訓練をしているからね。僕達の動きに気付くことは絶対にない……と思いたい」

「ギザード、変なことを言ってボクらを不安にさせないでくれる?」

「ごめん、アザミ」

 

 俺達はポーチから取り出した魔道ランタンを腰に付けると、アンバーが引き上げた鉄扉(てっぴ)を通って洞窟内を歩き出した。

 

 先頭を歩くのはギザードとアンバーで、その間に俺とアザミが挟まり背後をミュールが警戒する。

 

 大小様々な紫色の水晶があちこちに生えている広い洞窟の中をコツコツと足音を立てながら進んでいると不意にギザードが立ち止まって片翼で暗闇の一点を羽指した。

 

「あっちにジュエルセンチピードが1匹。その周囲にジュエルバットの群れだ」

「ハルト、さっきのよろしく」

「了解」

 

 アザミがトーチの魔杖(まじょう)から発射した複数の白い光弾が前方上空の暗闇を照らし出すと、壁から生えた大きな水晶に巻き付いている宝石状の外殻をした大ムカデがこちらを見下ろしていた。

 

「ブレイズノヴァ!」

 

 俺がチャージしていたブレイズノヴァを発射すると、蒼炎球が直撃したジュエルセンチピードはドロドロに溶けて大きな水晶と一体化していった。

 

 それと同時に宝石状の身体を持つ大きな蝙蝠(こうもり)が壁から飛び立ち、群れを成してこちらに向かって飛んできた。

 

 洞窟内にシャラシャラとした石の()り合わされる大きな音が何重にも響き渡る。

 これは、ずっと聞いていたら耳がおかしくなりそうだ。

 

「プロテクション。アンバー、後はお願い!」

「いかずち丸よ! 故郷で生まれ変わったお主の雄姿を見せてやるがよい!」

 

 アザミが青い半透明の障壁を張ってその群れの襲撃をいなすと、アンバーがバリアの中からメツニウム銅合金製の金砕棒(かなさいぼう)、いかずち丸を振るいバリアに(たか)るジュエルバットを砕いていく。

 

 いかずち丸に使われているメツニウムはここ紫滅晶洞(しめつしょうどう)で採掘されたレアメタルだ。

 この金属はまれに大きな水晶の中に琥珀の虫のように閉じ込められていて、これが結構な高値で取引されているらしい。

 

「右の空洞からジュエルスパイダーが4体!」

 

 アザミがトーチの魔杖(まじょう)で闇を晴らすと、壁にいくつも空いた空洞から宝石状の外殻を持ったジャイアントサイズの大蜘蛛が4匹、顔を覗かせていた。

 穴から出てきたジュエルスパイダーがこちらに向かってカサカサと(せま)ってくる。

 

「左は僕がやる! ペネトレイト!」

 

 低空でホバリングしたギザードが、鳥足で構えた弓から射撃スキルで青く光る矢を放ち左側のジュエルスパイダーの頭部を一直線に貫いた。

 

「あちしは右にゃ! 鎧通し!」

 

 ミュールが投擲スキルで青く光る棒手裏剣を投げると、カツンと音を立ててジュエルスパイダーの頭部に突き刺さった。

 

 二人が4匹のジュエルスパイダーを確殺し、アンバーがバリアに(たか)るすべてのジュエルバットの処理を終えると、洞窟内にシーンとした静寂(せいじゃく)が訪れた。

 

「……生体反応なし。よし、魔石を回収したら先に進もう」

 

 俺達は手早く魔石を回収すると、再び水晶洞窟の中を歩き出したのだった。

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