待ち人来たりて【完結】   作:焦げうさぎ

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短いですが菊花賞後の話


待ち人来たりて福来たる

 菊花賞での勝利から少し経ったある日、トレーナーはフクキタルの帰省に付き合っていた。

 向かう先はフクキタルの実家だ。

 

「お帰り、フクキタル」

 

 彼女の実家は神社であり、その近くに住み神社を管理していることもあって、家はかなり大きい。そこにフクキタルのG1勝利を祝おうと親戚一同が集まっているのだ。

 フクキタルの家族とその親族たちはかなり仲が良いようで、20人以上もの親戚たちが祝勝会に駆け付けていた。その中にはトレーナーにとって見覚えのある顔もある。

 

「おめでとう、フク姉ちゃん!」

 

「あの末脚はすごかったね~」

 

 そして、フクキタルは親戚のウマ娘たちから賞賛を。

 

「あの時のフクちゃんの走りは見事でしたねえ。普段はどんなトレーニングをしているんです?」

 

「まさかあのフクが菊花賞で勝つとは! まだまだ小さいと思ってたけど立派になったもんですね」

 

 トレーナーは親戚の大人たちからフクキタルとのあれやこれやについて聞かれていた。

 ここまで親戚が集まるほどフクキタルの勝利はすごいものだった。

 

 そこからはフクキタルの勝利を祝う宴会だった。大人たちは酒を飲みながらレースのことや世間話などをし、子どもたちはトレセン学園での生活について入学前の幼い子に教えたり、噂話をしたりと宴会は大変な盛り上がりを見せた。

 

 

 

 

 

 

「こっちです、トレーナーさん」

 

 そうして宴会の時間が過ぎ、日が傾いてきた頃、トレーナーはフクキタルに誘われてどんちゃん騒ぎとなった彼女の家を抜け出していた。

 

「ここは...」

 

 向かった先は少し離れた場所にある墓地。フクキタルの一族が眠る場所だった。

 

「トレーナーさんには話してましたよね、私には死んじゃったお姉ちゃんがいることを」

 

 トレーナーの手を引き、フクキタルは墓地の方へ進んでいく。

 

「うん、前に話してくれたよね。憧れのお姉さんだったって」

 

 トレーナーは遺影でしか彼女のことを知らないが、フクキタルの話を聞いていくうちに彼女がどんな人だったのか、フクキタルにとって姉の存在がどれだけ大きいものだったかについて、なんとなくではあるが分かってきていた。

 

「はい、いつも私に優しくて、そんなお姉ちゃんに私は憧れてたんです」

 

 そうして二人はフクキタルの姉の名前の書かれた墓石の前に立つ。

 

「夏に帰省した時にお姉ちゃんに会ったんです。その時にお姉ちゃんが私のことを応援してくれて。私が夏から菊花賞まで頑張れたのはお姉ちゃんに応援してもらえたからなんです」

 

「だから夏合宿に帰ってきたときに元気になってたんだね」

 

 帰省前比べて見違えるほど元気になっていたフクキタル。何かあったのだろうとトレーナーは思っていた。その理由が姉に会えたからというのは予想していなかったが。

 

「はい、だからお姉ちゃんに菊花賞で勝てたって伝えたくて。トレーナーさんと一緒に」

 

 フクキタルが姉に応援してもらえたというのは夢の中で会えた、もしくは姉のお墓参りをしたことで元気をもらったということなのだろう。そして、そのことで神戸新聞杯、京都新聞杯、そして菊花賞を勝つことが出来たということの報告をしたいのだろうとトレーナーは考えた。

 実際にはそうではないのだが。

 

 

 

(お姉ちゃん、私頑張ったよ。お姉ちゃんに私の走ってる姿、私が勝つ姿を見てもらえるように。お姉ちゃんの言ってたように、うれしい時には笑って、悲しい時には泣いて、これからも頑張る。...だからちゃんと私のことを見守っててね)

 

(初めまして、フクキタルのお姉さん。フクキタルのトレーナーです。あなたのおかげでフクキタルは元気になって菊花賞を勝つことが出来ました。これからもフクキタルのことはしっかりサポートしていきます。だから、安心してください)

 

 フクキタルとトレーナー、それぞれが墓石に向かって手を合わせる。

 二人の考えていることは違うが、フクキタルの姉にこれからも二人の歩んでいく姿を見守っていてほしいということは共通していた。

 

「お姉ちゃんに報告もできましたし、帰りましょうか。...あ、そうです。トレーナーさん、帰る前に神社に行きませんか?一緒におみくじを引いて、これからの私たちの運勢を占いましょう!」

 

 ほんの少し目を潤ませながらフクキタルはトレーナーに提案した。

 

「うん、そうだね。これからも私たちは変わらずに進んでいけばいい。だけど、おみくじでどうなるかを知るのも悪くないかもしれないね」

 

 その提案をトレーナーは受け入れる。

 

「神社はこっちです!」

 

「ちょっと、フクキタル速いよ!?」

 

 フクキタルに引っ張られるようにしてトレーナーは墓地を出る。

 

「...?」

 

 その時、ふと後ろから視線を感じたような気がして振り向くが、そこには誰もいない。

 

(気のせいかな?)

 

 そうしてトレーナーはフクキタルに引っ張られるまま神社へと向かった。

 

 

 

「...大丈夫、ちゃんと見てたよフク。私が元気だったころから強くなったね。これからも私はどんな時でもあなたの傍であなたのことを見守ってるから。だから、これからも頑張ってね!」

 

 

 

 

 誰もいないミーティングルーム、そこにあったおみくじが風が吹いたのか机の上のおみくじがひとりでに捲れた。

 そのおみくじは夏合宿前にフクキタルが引いたもので、大吉だったからと持って帰ったままになっていた。そのおみくじは大吉なだけあって、どの項目にも良いことしか書いていない。その中の待ち人の項目にこうあった。

 

『待ち人来る。共に福も来る』

 

 

 

 

 

 





これでこの短編は終わりです。拙い文章でしたが、ここまでお読みいただきありがとうございました。

今後はゆっくり連載の方を書いていこうと思っています。
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