Fate/Grand Order ‐Epic of Ensemble‐ Aチームと征く人理修復紀行   作:形のない者

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仮説記録・人理修復紀行

【プロローグ】

 

 人理保障機関フィニス・カルデア。その地に三人のマスター候補生が訪れる。

 

《ようこそ、カルデアへ。認証登録を行います》

 

 ニックネーム:藤丸。中立・善。藤丸家の長男。15歳。魔術回路:質E/量E/編成:欠損

 ニックネーム:立香。秩序・中庸。藤丸家の養女。15歳。魔術回路:質B/量B/編成:優秀

 ニックネーム:ぐだお。中立・善。藤丸家の次男。5歳。魔術回路:質E/量E/編成:欠損

 

《一般公募枠として、Gチームに配属します。支給された端末のルート案内に従って進んでください》

 

          §

 

 藤丸三兄弟は、ダ・ヴィンチが講師を務めるマスター講座に参加。

 

「おやおや~? 君たち、いい目をしているね! 特別にお姉さんが教鞭を執ってあげよう! なになに? 一般人だから魔術とかサーヴァントとか、わけがわからない? 安心したまえ~! この万能天才ダ・ヴィンチちゃんが、手とり足とり教えてあげるともさ~!」

 

「まずマスターとは、サーヴァントという超強い霊体を召喚し、それを従わせる者のことさ。もちろんサーヴァントの方が強いから、マスターの命令なんて聞いてくれない奴の方が多いだろう。そこで令呪というものがある。令呪とは、サーヴァントに無理やり言うことを聞かせることができる凄い代物さ。でもカルデアの令呪は、その強制力が弱い。つまりサーヴァントと何か問題があったら“人道的な話し合いで解決しよう!”というのが、カルデアの方針……というより────私からのお願いかな☆」

 

「サーヴァントとは何かって? はい、いい質問です! 教科書の七ページを開いてください! 剣騎(セイバー)弓兵(アーチャー)槍兵(ランサー)騎兵(ライダー)魔術師(キャスター)暗殺者(アサシン)狂戦士(バーサーカー)────などと書いてあるだろう? ところで君たち、こんなキーワードが出てきたゲーム、やったことある? あ、あるんだ! じゃあそんな感じで認識してもらっていいよ! 詳しい解説は、またの機会に! だってほら、ゲームっていくら説明書を読んでも、まずはやってみなくちゃ分からないじゃん?」

 

「さて、そもそもカルデアとはなんぞや? という疑問が募り始める頃だろう。一口に言えば、人理(じんり)を守る組織さ! はーい、人理とは何かって話だよね? 平たく言えば────人類の歴史だ。神の時代は終わり、西暦を経て、人類は地上で最も栄えた種となった。しかし、いつかそれを脅かす“なにか”が現れるかもしれない。その時のためにカルデアは、人理を保障するため、こうして活動している。……我らは星の行く末を定め、星に碑文を刻むもの。人類をより長く、より確かに、より強く繁栄させるための(ことわり)────いわば、人類の航海図。これを魔術世界では《人理》と呼ぶのさ。わかったかな~?」

 

「さて、小難しい話をしちゃったから、ぐだおくんは眠たくなっちゃったかな~? そんな君たち男の子が一瞬でテンションマックスになるアイテムを授けちゃおう! はい、ちゅうもーく! こちら、マスター候補に送られるEランク概念礼装一式と、それを使いこなすための秘密ガジェットだよ~! ほらほら、みんなもっと近寄って! どんと見に来なさい! これ、私が作ったんだぜ~? へへーん!」

 

 英霊編成(ウェアラブルデバイス)、霊基スカウター、概念礼装、概念礼銃、フォーマルグローブの概念圧縮魔術(コンセプト・コンプレッション)・|概念複製魔術《コンセプト・レプリケーション・サーヴァント》・霊着魔術(ミスティック・シンク)簡易英霊の座(ソウルライナー)について、などなど。

 

 これらは特例事項につき使用可能となる。日の目を見ないアイテムもあるかもしれない。

 ともあれ詳細はさておき、新米マスター講師ダ・ヴィンチちゃんは締めに入る。

 

「今カルデアには、48名のマスター候補が揃っている。七人で一組だから、AからGチームまである。君たちは48番目だからGチームに配属される予定なんだけど……どういうわけか三人いるね? これはどういうことかな。……え? 茜沢アンダーソンっていうスカウトマンが拉致ったら弟妹も連れてきちゃった? おいおい、訴えられたら終わるぜ? カルデア(ここ)!」

 

 次の瞬間、警報(エマージェンシー)が発令される。藤丸三兄弟とダ・ヴィンチちゃんは急いで管制室に向かう。爆発でもあったのか破壊されて炎上する管制室。ロマニという男が指揮を執り、藤丸三兄弟に避難するよう指示を出す。しかし藤丸三兄弟は、炎の中で倒れている女の子を見つけた。兄藤丸は、妹立香に弟ぐだおを任せ、自ら駆けつける。やがて隔壁が締まりそうになると、立香の抱っこから逃れたぐだおが走り出して、管制室の中に入ってしまった。次の瞬間、何かを詠唱した立香がグーパンで隔壁を破壊。ぐだおを回収する。すぐに避難しなければ。しかし間に合わない。システムアナウンスが秒読み数え、一同はレイシフトしてしまった。

 

          §

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【特異点F 炎上汚染都市冬木 ‐序章・運命の夜‐】

 

    Fate/Grand Order ‐Epic of Ensemble‐

   藤丸三兄弟とAチームが征く人理修復紀行

 

 特異点F             人理定礎値C

 

     A.D.2004 炎上汚染都市 冬木

 

         序章・運命の夜

 

            §

 

 曇天の夜間。炎上する都市で目覚めた藤丸三兄弟は、骸骨(スケルトン)の魔物に襲われて逃げ続ける。やがてオルガマリー所長なる女性と遭遇し、助けてもらう。マスター候補ということで今すぐサーヴァントを召喚するように指示を受けるが、どうすればいいのか分からない。「あなたたち番号は!?」聞かれたので答えると「48番……っ!? 緊急用の補欠一般枠じゃない! この役立たず!」などと罵られたため、ちょっとムッとして言い返す。なんだかヒステリーを起こしているようなので、なだめる意図もあった。が、言い合いをしている暇はない。竜牙兵という魔物まで現れて囲まれてしまった。絶体絶命のピンチ。

 その時、マシュ・キリエライトが現れた。シールダーのデミ・サーヴァントとして十字の大盾を奮う少女は、どこまでも普通の藤丸三兄弟を面倒事に巻き込むまいと、オルガマリーをマスターとして契約を交わそうとする。が、失敗。オルガマリーはマスター適性とやらを持たない。魔力パスすら繋げない中、マシュは孤軍奮闘する。窮地の状態に変化なし。

 その時、通信が入った。カルデアとの通信は依然として途切れているが、Aチームのリーダーたるキリシュタリア・ヴォーダイムの音声がノイズ混じりに入る。

 

《オルガマリー。至急、山の教会に集合してください。英霊召喚システム・フェイトを起動します》

 

 それどころではない。多勢の無勢のマシュが魔力切れで倒れそうになる。その時、マシュの大盾が光り輝き、藤丸三兄弟の手の甲が疼いた。すかさずマシュは大盾を使い、簡易召喚サークルを敷設、英霊召喚システム・フェイトを簡易的に起動する。展開する魔法陣。螺旋する蒼金(荘厳)の風。閃光の直後、大規模な魔力の塊を持つ存在が三騎、召喚された。

「サーヴァント・アサシン。ステンノ」

「サーヴァント・アーチャー。エウリュアレ」

『召喚に応じて参上したわ』

「……サーヴァント・ライダー。メドゥーサ……感無量の因果ですが、今は姉様達とマスター達を守るため奮闘するとしましょう」

 

 兄藤丸はエウリュアレと契約を、養女立香はステンノと契約を、次男ぐだおはメドゥーサと契約を。マシュとメドゥーサの共闘。なんとか竜牙兵やスケルトンの群れを撃退し、一同は教会に急ぐ。

 

 教会。そこにはAチームが勢揃いしていた。先ほどカドック・ゼムルプスが合流したばかり。状況は依然として不明のままだが、身を守るため各自サーヴァントを召喚する。そこでマシュが簡易サークルの設置を立候補。Aチームは驚く。まさかマシュに宿る英霊が力を貸してくれたのかと。ならばちょうどいい。召喚の成功確率は間違いなく上がる。マシュが簡易召喚サークルを敷設。一方のベリル・ガットは「さすがに過剰戦力だろ」と言い、デイビット・ゼム・ヴォイドも「召喚は後でも構わない」と言って、ふたりとも召喚は行わないと宣言した。

 その時、オルガマリー所長がとんでもないことを言う。「この三兄弟にも召喚させるわ」キリシュタリアは危険だと言う。既にサーヴァントと契約して魔力を多大に消費しているはず。そんなことはオルガマリーも承知している。それでも戦力は多いに越したことはない。もし三兄弟が倒れるようなら契約先をAチームの誰かに変更すればいい。それこそキリシュタリアの魔力なら容易なことだろう。

 オルガマリー所長の方針とあらば逆らうわけにもいかない。ともあれ英霊召喚だ。

 

 ────人理の轍より応えよ。汝、星見の言霊を纏う七天。糺し、降し、裁き給え。天秤の守り手よ!

 

「サーヴァント・キャスター。アナスタシア・ニコラエヴナ・ロマノヴァ〔ヤガ〕。故に私のことは“ヤガスタシア”と呼びなさい」

「サーヴァント・セイバー。シグルド〔エンシェント〕……また会えたな。オフェリア……」

「サーヴァント・ライダー。項羽〔単騎特攻仙略兵器〕……オオ……虞よ……!」

「サーヴァント・アーチャー。アシュヴァッターマン!」

「サーヴァント・ランサー。カイニス。召喚に応じ参上した」

「サーヴァント・アサシン。カーミラ」

「ウォオオオオオオオオ────!」サーヴァント・バーサーカー。アステリオスが召喚される。

 

 英霊召喚は立香を除いて成功。僥倖にも基本ラインナップのクラスを網羅した。

 

 それからAチームは戦略戦術を練る。ちなみに藤丸三兄弟は教会内を探索しており、魔力物質を概念礼装に転換するフォーマルグローブを用いて、“マグダラの聖骸布”や“緑の破音”といった概念礼装を入手していた。

 それも終わる頃、外から教会に足を踏み入れる者が現れた。

 

「大規模な魔力が発生したと思ったら……あんたら、何者だ?」

 

 それはこちらのセリフだ。この特異点に生き残りがいるとは思わなかった。よもや敵か。Aチームが身構える。だがぐだおは「何者だ」と聞かれたので素直に答える。すると向こうも素直に答えてきた。オルガマリー所長は拍子抜けする。

 彼らは衛宮士郎、セイバー・リリィ、遠坂凛、ドルイドのキャスター。元々は聖杯戦争をしていたマスターだったが、突として世界が変貌したかのように急変。衛宮士郎のサーヴァント・セイバーたるアルトリア・ペンドラゴンがオルタ化し、遠坂凛のサーヴァント・アーチャーも中庸属性なのにオルタ化。敵に回ってしまった。さらに追加で七騎のサーヴァントも召喚されて、もうなにがなんだか。そして魔物に囲まれて絶体絶命の中、衛宮士郎は奇跡的にセイバー・リリィを召喚し、遠坂凛はキャスターにクラスチェンジしていたクー・フーリンに助けられたという話。以降、地獄と化した冬木市で数日の間サバイバルをしていたのだが、そこにカルデアなる組織が現れた。

 

 情報共有は済んだ。さっそく一同は特異点修正のために行動開始。目的地に向かう中で、十騎の影霊(シャドウサーヴァント)と遭遇し、戦闘する。

 影霊槍兵 武蔵坊弁慶〔常陸坊海尊〕

 影霊騎兵 アラクネ

 影霊暗殺者 呪腕のハサン・サッバーハ

 

 影霊剣騎 アーサー・ペンドラゴン〔オルタ〕

 影霊弓兵 アーラシュ

 影霊槍兵 ブリュンヒルデ

 影霊騎兵 ディルムッド・オディナ〔オルタ〕

 影霊魔術師 フィン・マックール

 影霊暗殺者 百貌のハサン・サッバーハ

 影霊狂戦士 ランスロット

 

 それら強敵を倒し、いよいよ本丸の大空洞に突入。そこで影霊弓兵(シャドウサーヴァント・アーチャー)エミヤの策略にハマった。どうやったのか影霊狂戦士(シャドウサーヴァント・バーサーカー)ヘラクレスを城跡から移動させており、大空洞で待機させていた。神話の大戦が勃発する。エミヤの援護射撃とヘラクレスの怒濤猛攻は組み合わさると悪魔的。一同はチームを二つに分けて、最後に待ち構えるアルトリア・ペンドラゴン〔セイバー・オルタ〕に勝負を挑む。

 

 一方、ヘラクレスは、なぜか藤丸を執拗に狙う。概念礼装を駆使して戦う藤丸は、どうやら緑の破音に反応しているようだと察した。ならば藤丸が囮になる。藤丸はマグダラの聖骸布で身を守り、その間隙にオフェリアが遷延の魔眼を行使。ヘラクレスを縫い付けた瞬間、宝具を叩き込んだ。

 

 二面作戦の結果、一同は満身創痍となりながらも敵陣を撃破。

 

 いよいよ大聖杯間近となった途端、突としてレフ・ライノールが現れる。彼は人理の敵に回ったことを高々と述べ、警戒心なく近づいてきたオルガマリーを殺そうとする。その時、藤丸が動いた。エウリュアレの射撃でレフを脅かし、カーミラの気配遮断でオルガマリーを密かに救出する。が、詰めが甘い。サーヴァントを動かすということはマスターの魔力が回るということ。その痕跡を隠さないということは反撃を許されるということ。レフの魔術攻撃(触手)が藤丸とカーミラを襲う。藤丸はマシュが庇うが、カーミラは被弾してしまい、再びオルガマリーが窮地に陥る。

 

「まったく無茶しちゃって……百点満点のハナマルをあげちゃうわ~! 藤丸!」

 

 それだけの騒ぎになれば、スカンジナビア・ペペロンチーノが暗躍するにはうってつけ。レフの背後を取って心臓を一突き。殺害した直後、落下するオルガマリーをキャッチする。そんな芸当ができたのは、ぺぺの体術もさることながら、デイビットの助言があってこそだった。

 

 かくして聖杯を回収。特異点の修正は済んだ。特異点が崩壊を始める。カルデアはレイシフトで帰還準備。だが、そうなると特異点の人達はどうなるのか。消えてしまうのか。カルデアに連れ帰ることはできないのか。藤丸が問いただすと、ロマニは歯噛みする。

 すると衛宮士郎が「別に構わない。よくわからないけど、俺たちには俺たちの世界がある。そんで、俺たちは俺たちなりに生き抜いていくから。そう心配するな」となだめた。そしてセイバー・リリィとキャスターのクー・フーリンが消滅する。

 

 カルデアは現地人とのお別れを済ませる。本当に大丈夫なのか。そんなわけがない。それでも彼らならなんとかなるかもしれない。カルデアはレイシフトして無事、帰還した。

 

          §

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【第一特異点 邪竜百年戦争 オルレアン ‐吸血竜の鎮魂歌‐】

 

 特異点Fを攻略した藤丸三兄弟とAチームとオルガマリーは、一旦カルデアで数日ほど休憩していると、第一特異点を発見、ブリーフィングを挟んで、さっそく特異点に旅立つ。

 

 今回はオルガマリー所長の戦略により、貴重なAチームは二名までの選抜となった。一人目は先遣隊として、二人目は最終決戦に投入する戦力として。

 そこでキリシュタリアが提案する。藤丸三兄弟のうち一名は同行させたい、と。無用な犠牲は避けたいオルガマリーは理由を問う。

 

「理由というほど立派なものはないんだが。彼らは、ほら、特異点Fで目覚しい活躍をしただろう?」

 

 オルガマリーは呆れる。たしかに三兄弟に救われた事例が多い。最初の敵性エネミー遭遇時と、レフに殺されかけた時。少なくともオルガマリーは二回も救われた。さらにAチームも、エミヤ戦、ヘラクレス戦、アルトリア・ペンドラゴン〔オルタ〕戦で、立香とぐだおの機転に助けられている。機転といっても誰もが思いつく凡庸なもので、一般人にしてはよく動けたな、及第点、というくらいの功績でしかないのだが────

 

「彼らには運命力がある。レフ技師による管制室の爆破。あれを生き残った点からも、生き残るべくして生き残る才覚があると、私は思う」

 

 ただの運の良さ。天命。それは魔術的に、あまり無視できない素養だ。それでも重点に置きすぎるものでもない。それを信じるということは、抑止力仮説を信じることにも程近い。抑止力を跳ね除けて根源に辿り着かんとする魔術師が、そんなのでいいのか。

 

「つまらないプライドは捨てた方がいいと思う。それに今は魔術師であるよりも、人理を守るカルデアのマスターだからね」

 

 ならば好きにすればいい。オルガマリーは、全てを兼ね備えるキリシュタリアに負けて意見を通されたのではなく、あくまで所長判断ということを強調しつつ、怒りながら提案を採用。第一特異点攻略に当たる先遣隊メンバーを決定。管制室にマスターを招集して発表する。

 

「先遣隊はカドック・ゼムルプスと藤丸、そしてマシュも付けるわ。後発隊はオフェリア・ファルムソローネ。カドックのキャスターは長期間の活動に向いているから、今後の試験運用も兼ねて実践で経験を積んでもらう。藤丸のサーヴァント二騎(エウリュアレとカーミラ)は、せいぜいキャスターの護衛役ね。マシュは追加戦力を召喚するための役割と、マスターの護衛よ。Aチームを優先的に庇うこと。いいわね? オフェリアのシグルドは、トリスメギストスが“今回の解決に有利”という計算を算出しているから選抜したわ。──以上よ。他のマスターは、サーヴァントと特訓に励むなり休憩するなり、自由に過ごしてちょうだい」

 

 そうして先遣隊がレイシフトした。

 

           §

 

    Fate/Grand Order ‐Epic of Ensemble‐

   藤丸三兄弟とAチームが征く人理修復紀行

 

 第一特異点            人理定礎値C+

 

    A.D.1431 邪竜百年戦争 オルレアン

 

      救国の聖処女と監獄の吸血姫

 

            §

 

 朝方の草原。カルデアとの通信が途絶。降り立った場所が不明のまま探索開始。次の瞬間、カドック・ゼムルプスに悪寒が走る。藤丸を庇って地に伏せるが────何も起こらない。ちょっと恥ずかしい思いをしたカドックだが、今たしかに殺気のようなものを感じ取った。それは、ほかのサーヴァントも同様だった。

 

 しかし、なぜマシュより早くカドックが気づけたのか。藤丸は「サーヴァントより反応速度が速いなんてすごい!」と素直に考えるが、それにカドックは呆れかえる。「サーヴァントより反応速度が速い奴なんていたら、そいつは人間じゃない化け物だ」ならばカドックは、なぜいち早く殺気に気づけたのか?

 

「……思い当たる節がある。だが、そいつはもう……」

 

 カドックは最悪の事態を想定して青ざめる。その予感は的中した。再びの殺気。遠方から魔力砲弾が放たれる。明らかにサーヴァントの攻撃だ。しかもさっきは攻撃する前に勘付かれたので、今度は位置を変えていやらしい攻撃をしてくる。強敵と判断されてしまったらしい。カドックは「くそっ! 迂闊だった!」と、先ほど素早く回避行動を起こしたことを後悔する。それだけ自分は緊張してビビっていたということか? と必要以上に不安がる。なにはともあれサーヴァント戦だ。敵はアーチャーと推定。加えて神秘の色が薄いため近世、すなわち砲兵と推測。藤丸はカドックに、どうするのか問いかける。

 倒すのか、逃げるのか。敵はサーヴァントだ。逃げても追いつかれる。牽制ではなく殺害が目的なら逃がしてはもらえない。こちらに機動力の高いライダークラスが居ない以上、戦線離脱は不可能だ。ならば倒すのか。倒す方法で考えても、遮蔽物のない平原のど真ん中で、どうやって近づく。今だってマシュたちが守ってくれているからなんとかなるが、それを接近しながら繰り返すのは自殺行為だ。もはや詰みか。否、そんなことはない。

 

「マシュ! 英霊召喚の準備だ! アーチャーかライダーの召喚に賭ける! 藤丸、お前も賭けろ!」

「! はい! カドックさん!」

「分かった! でもアーチャーならエウリュアレがいるよ!?」

「そこの女神様が戦闘向きと思うか!? フユキでは何もしなかったんだぞ!」

 

 あら失礼ね、とエウリュアレはいたずらっぽい笑みを浮かべる。どうやらカルデアに帰ったあと、カドックはエウリュアレの悪事に巻き込まれることが確定してしまったようだ。カドックは冷や汗を流すが、今の失言を取り返す余裕はない。そもそも、する気もない。

 

 そしてカドックは、新たにサーヴァントを召喚した。

 

「サーヴァント・アーチャー。アタランテ。召喚に応じ参上した」

「────よしっ! 藤丸、行くぞ! 俺の後ろから離れるな! 死んでも遅れるなよ!」

「オッケー! 全力で付いていく!」

 

 アタランテと敵アーチャーの撃ち合い。カドック一行は撃ち合いの間隙を突いて一気に前進し、森の中に入る。遮蔽物は多くなったが、そのぶん死角が多くなり、暗殺に適した地形となった。狙撃に注意する。マシュが霊脈を発見。キャスターのヤガスタシアが陣地作成スキルで一時的な前哨基地(氷の城)を造る。その中で一旦休憩を挟みつつ、カドックは敵の正体を考察する。

 

「そもそもはじまりがおかしかったんだ。僕たちはレフの爆破で死んだはずだ。でも生きていた。オルガマリーも肉体は死んで精神だけレイシフトしたとレフは話していたが──例の神秘泥棒が何をしたのか知らないけど──オルガマリーは生きていた。要は、僕たちが生きているということは────ほかのコフィンの中でコールドスリープしているマスター候補が、ほかの特異点に飛ばされていてもおかしくないってことだ」

「え……で、ですがカドックさん! レイシフトには存在証明が必要です! カルデアも、まだ特異点を一つしか見つけておらず、ほかの特異点は未発見のままで……いくらなんでも、存在証明が不可能の状態で、残る40名のマスター候補が特異点で活動しているなどとは────」

「聖杯」

「!」

「それの存在があれば、ある程度の不可能はなんとかなるだろう」

「聖杯で延命装置のような使い方をしていると……?」

 

 その可能性もある、という話。少なくとも敵サーヴァントの背後に、マスターのニオイがする。というのもカドックは、Bチームの中にいけすかないオオカミ少年がいたことを覚えている。いつもカドックのことを“Aチームのお荷物だ”とバカにする同郷がいたのだ。無論、それは間違っていない。だが似たような魔術特性を有しているため、一方的にライバル視されていた。そのため突っかかってくるのだろう。似ているだけで、相手の方が歴史は長いのだから、そもそもライバルとして成り立たない気もするが。

 そんなことを言うカドックだが、今は卑屈になっている場合ではない。似たような魔術特性ゆえ、先ほどの殺気に誰よりも気づけた。知り合いが相手なら、ある程度の傾向は予想できる。カドックは作戦を組み立てて、藤丸たちも駒として使う。

 

「すまないが、僕ひとりじゃ奴に勝てない。だから勝つために、お前を生け贄にでもなんでも使う。それでもこの任務を引き受けてくれるか」

「……引き受けるもなにも、やらなきゃ世界がやばいんでしょ?」

「……ふっ。お前は本当に、肝が据わっているのか、どうなのか」

 

 作戦開始。カドックの見事な予想で、確実に敵陣を追い詰める。敵アーチャーの真名も看破。ナポレオン・ボナパルトだ。すると敵方に援軍が現れた。新たなマスターだ。Cチームのマスター・レモンとそのサーヴァントが登場し、オオカミ少年を連れて戦域を離脱。さらにレモンは中立を示し、そのために情報をもたらした。

 

「私たちは魔術師。人理がどうなろうと根源を目指すのが魔術師の道理。そのため私たちの研究を邪魔するな。その代わりカルデアを攻撃することはないと約束する。その証として情報をやろう。この特異点には、あと五人のマスターがいる」

 

 どうやら合計七名のマスターが、特異点そっちのけで聖杯戦争をしているそうだ。が、そうなると少し話がおかしい。特異点の原因は聖杯だ。カルデアも聖杯を狙っている。となれば戦いは不可避のものになるはずだ。それを知らないレモンではない。

 そこで通信が回復する。どうやらジャミング系の魔術が解けたようだ。そして開口一番、ロマニが叫んだ。

 

「みんな聞いてる!? その特異点に聖杯が二つあるんだ!! これ、どういうことなんだぁ!?」

 

 話を整理すると、特異点を発生させている聖杯と、特異点と無関係の聖杯が、それぞれ別にあるらしい。カルデアの狙いは前者。カルデアの裏切り者7名は後者を狙っているというわけだ。しかしオオカミ少年が攻撃してきた以上、カルデアが後者を狙ってきたと勘違いして戦闘になることもあるかもしれない。

 

「いや、ドクター。その手の誤解はありえない。魔術師なら、聖杯はいくらあってもいい、と思考するはずだ。レモンは中立を貫くと宣言していたが、それは信じていいだろう。だが、その言葉がほかのマスターに当てはまるわけじゃない。残り六名のマスターが、カルデアを襲わない理由にはならないからな」

「なんてことだ……それじゃあ僕たちカルデアは、特異点の敵(プラス)元カルデアの仲間とも戦わなくちゃならないのか……」

 

 状況が混沌としてきた。通信機の遠いところでオルガマリーがヒステリックに叫んでおり、キリシュとぺぺさんが落ち着かせている。

 

「……まて、藤丸。今なんて言った?」

「え? キリシュ、所長の面倒を見て大変そうだなって……」

「……おい、ヴォーダイム。なんだそのあだ名は」

《ふっ。いいだろう? 羨ましく思ってもらっても構わない。あだ名は友情の証だ。藤丸と立香とぐだおが付けてくれたんだ。カドックにも私から何か付けてあげようか?》

 

 カドックは「遠慮する」と言って通信を切る。ともあれ、やることは変わらない。立ちふさがる障害は排除して攻略するのみ。カドックたちは先へ進んだ。

 

          §

 

 フランスを巡り、戦闘を繰り返し、情報収集を完了。アタランテにも斥候を頼み、ある程度の布陣が判明した。カルデアの通信から知恵を借りつつ、カドックの推理力が炸裂する。

 

 

 

 第一の敵・邪竜勢力。

 危険度A+ランク──邪竜ファヴニール。

 危険度Aランク──邪竜の魔女ジャンヌ・ダルク〔アヴェンジャー・オルタ〕、海魔元帥ジル・ド・レェ〔キャスター〕(おそらく聖杯を所有)、宮廷魔術師・灰色の男(アントニオ・サリエリ)〔アヴェンジャー〕(モーツァルトと名乗っているが、明らかに別人)。

 そして配下たる邪竜七騎士のシュヴァリエ・デオン〔セイバー〕、アタランテ〔バーサーカー〕(宝具によって弓兵から狂戦士に変態)、ヴラド三世〔ランサー〕、マリー・アントワネット〔ライダー・オルタ〕、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト〔キャスター/ビースト・魔神柱アムドゥシアス〕、カーミラ〔ファニーヴァンプ〕、ファントム・オブ・ジ・オペラ〔バーサーカー〕。

 危険度Bランク──竜種のドラゴン。

 危険度Cランク──竜種のワイバーン。

 危険度Dランク──大海魔。スケルトン兵。

 危険度Eランク──海魔。ゾンビ兵。

 

 

 

 第二の敵・ヴォークルールの聖杯大乱戦。予備機能が発動しており、計14組のマスターとサーヴァントが発生している。なお色別ごとの陣営は意味を成していない。

 

 赤の陣営。

 Gチーム一席目のアニスレム・フェイとランスロット〔セイバー・メリュジーヌ/デミ・サーヴァント〕、Bチーム七席目のエンヴィー・フラゴールと希望の英雄ナポレオン〔アーチャー〕、Cチームの植物使いレモンとワルキューレ〔ランサー・オルトリンデ〕、Dチームの呪術使いとマリー・アントワネット〔ライダー〕、現地人のジル・ド・レェとキャスター(*1)、Eチームの錬金術師とシャルロット・コルデー〔アサシン〕、錬金術師の合成獣とマタ・ハリ〔真アサシン〕、Fチームの平凡魔術使い(強化・変化・投影)と紅葉紅葉〔バーサーカー〕。

 *1:キャスタークラスの召喚に関しては、下記の“アレッサンドロ・ディ・カリオストロ”と推測。

 

 黒の陣営。

 現地人の悪魔騎士(伝承科魔術師)ロバートと魂喰いを繰り返すジャック・ド・モレー〔セイバー→フォーリナー〕、現地人の勇者とパツシィ〔アーチャー〕、現地人の魔眼持ちとネモ〔ランサー〕、現地人のエーテル術師とニキチッチ〔ライダー〕、現地人のフランス兵とグレゴリー・ラスプーチン〔キャスター〕、肉塊にされた現地人のマスターとダユー〔フォーリナー〕、踏み潰された現地人のマスターとイヴァン雷帝〔バーサーカー〕。

 

 白の陣営。※混沌とするオルレアンの中、世界に救いをもたらすべく、黒の陣営の剣騎・弓兵・狂戦士の魂をくべて追加召喚を施した、現地人の勇者(魔術使いの少年)が存在する。抑止力に突き動かされた結果と思われる。なお勇者は、藤丸と(カドック)に希望を託し、魔女ジャンヌ・ダルクに殺された。

 シャルルマーニュ十二勇士──シャルルマーニュ〔セイバー〕、マルフィーザ〔アーチャー〕、ブラダマンテ〔ランサー〕、アストルフォ〔ライダー&セイバー〕、自称マーリン〔キャスター〕、ロジェロ〔アサシン〕、ローラン〔バーサーカー〕。

 

 裁定者のヨハンナ〔ルーラー〕。

 

 

 

 第一の味方・現地人の抵抗勢力。

 元帥ジル・ド・レェ、フランス軍団兵士(歩兵・弓兵・槍兵・砲兵・騎兵など)。

 アレッサンドロ・ディ・カリオストロ〔キャスター〕(現地人のフリをしているが、明らかにサーヴァント)。

 

 第二の味方・抑止力に召喚された抵抗勢力。

 ジャンヌ・ダルク〔ルーラー〕、竜騎士三銃士(エクストラクラス・ドラゴンナイト)のゲオルギウス、マルタ、ジーク〔疑似サーヴァント〕。

 そしてジークフリート〔セイバー〕、エリザベート=バートリー〔ランサー〕、マンドリカルド〔ライダー〕、太陽王シラノ・ド・ベルジュラック〔キャスター〕(太陽旅行記を基にして太陽王ルイ14世と霊基が融合し、英霊として成立した)、シャルル=アンリ・サンソン〔アサシン〕、クリームヒルト〔バーサーカー〕。

 

 

 

 第三陣営・不明勢力。おそらく抑止力か黒幕の手により追加召喚された陣営。

 

 巌窟王の影〔アヴェンジャー〕、テオドリック〔ライダー〕、ラ・ベート・デュ・ジェヴォーダン〔ライダー〕。

 ※レフ・ライノールの味方ではないが、敵対しているかは不明。

 

 黒騎士ナーダシュディ・フェレンツ二世〔ランサー〕、迷彩騎士(ランスロット)〔ライダー〕。

 ※突として現れて戦場全体を蹂躙するワイルドハントのような二騎のサーヴァント。黒騎士はカーミラに興味を示しており、迷彩騎士は黒騎士に付き従っている。ついでに()()マシュが、なぜか迷彩騎士を蛇蠍のごとく嫌っている。もしや逸話的にランスロットか?

 

 

 

 カルデアは作戦を練り、味方勢力と共に進撃する。

 

          §

 

 魔女ジャンヌが聖杯を使い、三画の復讐令呪を獲得。さっそくDチームの呪術使いとマリー・アントワネット〔赤のライダー〕のもとに現れて一画目を使用。マリー・アントワネットはオルタ化し、アヴェンジャークラスを獲得。マスターに「ごめんなさい」とうそぶき、邪竜陣営に就く。

 

 アニスレム・フェイの特性が色濃く影響し、先祖返りを起こした。妖精メリュジーヌと同化してデミ・サーヴァントに変化。不意打ちのように襲われたので応戦。死闘の末、藤丸に興味を示し、なぜかデレた。キリシュタリアの言う通り、藤丸三兄弟にはサーヴァントを惹きつける何かがあるようだ。僕にそれがないのは悔しいが、藤丸を使えば多くの仲間を手に入れることができる。だから僕より、あとの人理修復(こと)を考えて、藤丸を最優先で守らなければ────“カドックの日記より抜粋”

 

          §

 

 三つの街に到着。邪竜陣営との戦闘が激化。

 迷彩騎士と邪竜デオンの激闘。無双の黒騎士と剣豪の竜騎士は、互角の戦いを披露して引き分ける。

 竜種軍団の撃退。それだけで満身創痍。

 

 タンプル塔にナポレオンが囚われているとの情報を入手。敵が流したデマかもしれない。それでも緒戦で矛を交えた時、彼はカルデアに協力的な姿勢を見せていた。あれを信じるなら助ける価値はある、と藤丸は言う。カドックもリスクを承知で挑むと決める。

 

 タンプル塔の決戦。やはり敵の罠だった。魔女ジャンヌは二画目の復讐令呪を切り、アマデウスを魔神柱という化け物に変化させる。さらにファブニールもけしかけられた。絶体絶命、だからこそ追加戦力を呼んでいた。

 

「オフェリア・ファルムソローネ! カドックと藤丸を援護する!」

 

 ジークフリートとシグルド〔スルト〕の共闘。最強の竜殺しが二騎も揃った。ファブニールはオフェリアに任せる。カドックは魔神柱を引き付け、その間に藤丸がナポレオン救助に向かう。藤丸が救助に成功。希望の英雄ナポレオンはオルレアン中から「助けを求める声が聞こえる」と言い出し、その声を魔力に変えて宝具を発動。敵陣を一掃した。

 戦闘終了後、オフェリアを口説き始める。仲間になった、ということでいいらしい。

 

 

 

 三日目。フランス軍が魔女退治のため、決死の攻撃に出るとの情報。まず間違いなく何もできず殺されるが、阻止することもできない。ならば一緒に戦おう、と藤丸は提案。その気持ちは分からなくもないが、カドックは合理を優先し、フランス軍を囮にしてパリに近づく作戦を決定。無論、人間とはいえ肉壁は多い方がいい。助けられる戦力は助ければいい。ただし最優先するべきことは敵陣の突破。それさえ叶えばフランス軍も無茶することはない。藤丸は同意した。

 

 草原の戦場。敵カーミラが宝具《紫闥(しだつ)の鮮血魔城》を発動。藤丸とそのサーヴァントは監獄城チェイテに閉じ込められてしまった。分断された藤丸とカルデア一行。しかしカドックは動揺せず「藤丸(あいつ)の図太さとタフさなら大丈夫だ! 僕たちは僕たちの役目を果たすぞ!」と士気を維持する。

 

 一方その頃。固有結界と似て非なるチェイテ城。女性特攻の概念宝具。1000人のうち脱出できる女性は一人のみ。すなわち千分の一の確率。城内を駆け抜けて、味方カーミラの助言もあり、即死級トラップを回避しつつ、玉座の間に到着。藤丸のカーミラvs邪竜のカーミラ。死闘の末、勝利するが────藤丸のカーミラは霊基に異変がないのに消滅しかかっていた。カーミラが、否────()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それだけは魂が拒むため、カーミラは消滅しなければならないという。藤丸とカーミラの離別。それでも藤丸は「待ってるから」と言い残す。

 藤丸一行は脱出に成功。カーミラは消えかけながら、宮廷魔術師の鎮魂歌(ピアノ)に傾聴しつつ、黄金の粒子を立ちのぼらせて消滅した(飛んでいった)

 

 藤丸が草原の戦場に戻ると、そこは地の果てまで死屍累々が広がっていた。人間も竜種も等しく倒れている。カドック一行と合流。互いの勢力は総力戦によって半減していた。

 

 

 

 やがて最終決戦地パリ城に突入。寝室から出てきた魔女ジャンヌとマリーオルタが待ち構える。ジル・ド・レェが自らを生贄に巨大海魔を召喚。シグルド〔スルト〕が巨人の炎を真名開放し、それを燃やし尽くす。やはりオフェリアのシグルドは普通ではない。シグルド本人ではないように思える。

 それはともかく、藤丸&カドックとそのサーヴァントvs魔女ジャンヌ&マリーオルタの死闘が勃発。なんとか勝利するが、魔女ジャンヌが置き土産に復讐令呪を使用。藤丸の魔術回路に復讐令呪の呪いを掛けた。

 

 特異点の聖杯を回収。一件落着だが、聖杯大戦の聖杯も回収しなければ、特異点は継続してしまう。そちらの撃退は、ほかのAチームが対応するという。ひとまず特異点の最重要問題が解決されたことでレイシフトでの帰還が可能となる。かくして藤丸一行はカルデアに帰還した。

 

          §

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【第二特異点 人智雲集帝國 セプテム ‐人理の破壊者‐】

 

    Fate/Grand Order ‐Epic of Ensemble‐

   藤丸三兄弟とAチームが征く人理修復紀行

 

 第二特異点            人理定礎値B+

 

     A.D.0060 人智雲集帝國 セプテム

 

    アンドラスタの復讐王と人理の破壊者

 

            §

 

 先遣隊の藤丸、立香、カドック、芥ヒナコがレイシフト。連れて行くサーヴァントはエウリュアレ、カーミラ、アステリオス(ぐだおから拝借)。ステンノ、メドゥーサ(ぐだおから拝借)。ヤガスタシア、アタランテ。項羽。

 

 現着。使い魔を放って調査した結果、全容を把握。オルレアンの時より混沌としている陣容だ。

 

 

 

 第一の敵陣。ローマ連合国。

 神祖ロムルス〔ランサー〕。レフ・ライノール。

 ガイウス・ユリウス・カエサル〔セイバー〕、Fチームの宝石魔術師と暴君ティベリウス〔アーチャー〕、切り拓く光輝〔ランサー〕(ロムルスの外付け霊基)、コンスタンティノス11世〔ライダー〕、Gチームの転換魔術師とトゥリヌス・オクタヴィアヌス〔キャスター〕、クレオパトラ〔アサシン〕、カリギュラ〔バーサーカー〕。

 

 

 

 第二の敵陣。ゲルマニアに布陣する中華帝國。

 武則天〔アサシン〕。武則天護衛隊の燕青〔アサシン〕、呼延灼〔ライダー〕、玉藻の前〔キャスター〕。武則天七天王の蘭陵王〔セイバー〕、韓信〔アーチャー〕、秦良玉〔ランサー〕、司馬懿〔ライダー〕、張角〔キャスター〕、李書文〔アサシン/若〕、酒呑童子〔バーサーカー〕。

 

 大参謀の太公望〔キャスター〕(目的はビースト退治と思われる)。

 その仲間たる哪吒〔ランサー〕、黄飛虎〔ライダー〕、三蔵法師〔キャスター〕。

 

 どうせ裏切るからローマ連合国の領土で暴れて逝ってこい隊。

 呂布奉先〔バーサーカー〕、赤兎馬〔ライダー〕、陳宮〔キャスター〕、荊軻〔アサシン〕。

 

 

 

 第三の敵陣。ブリタニアにて催される聖杯大乱戦。

 

 赤の陣営。

 現地人の少年と微姉妹〔セイバー〕、現地人の少女と子ギル〔アーチャー〕(ダレイオス三世の蔵を見つけて大人に成長中)、現地人のローマ兵(降霊使い)とレオニダス一世〔ランサー〕、Cチームの魅了使いと楊貴妃〔フォーリナー〕、Dチームのゴーレム魔術師とアヴィケブロン〔キャスター〕、アサシン枠は既に死亡、Eチームの地属性魔術師とダレイオス三世〔バーサーカー〕。

 

 黒の陣営。

 現地人の幻術使いとアルテラ〔セイバー〕、アーチャー枠は上記参照(ティベリウス)、ランサーとそのマスターは既に死亡。Bチームの過去視使いソニアと破壊王ガイセリック〔ライダー〕、キャスター枠は上記参照(トゥリヌス・オクタヴィアヌス)、アサシンとそのマスターは既に死亡、マスター殺しのサロメ〔バーサーカー〕。

 

 

 

 第一の味方。現地人の抵抗勢力。ローマ帝国。

 生前のネロ・クラウディウス〔セイバー/ビースト〕。ローマ軍兵士(歩兵・弓兵・槍兵・騎兵・戦車・攻城兵器など)。

 ロクスタ〔アサシン〕。スパルタクス〔セイバー〕。

 

 

 中立陣営。

 ブーディカ〔ライダー&アヴェンジャー〕(藤丸の復讐令呪に反応してクラスチェンジ。藤丸を攫って単独行動)。

 ゼノビア〔アーチャー〕。

 

 第三勢力。

 アレキサンダー〔ライダー〕(スキルによって体格が変容中)、諸葛孔明〔キャスター/エルメロイⅡ世〕、グレイ〔アサシン〕、プトレマイオス〔アーチャー〕、ヘファイスティオン〔フェイカー〕。

 

 

 

 カルデアの敵は、連合国と中華帝國と聖杯大乱戦。藤丸はブーディカに攫われる形で別行動しており、立香・カドック・芥ヒナコはローマ帝国と共闘して特異点修正に当たる。後発隊にはキリシュタリアが控えているため、何かあっても安心だ。

 

          §

 

 フロレンティアの会戦。昼間の平地。

 カルデア&ローマ帝国vs連合王国vs中華帝國による三つ巴、苛烈を極める集団戦闘が勃発。

 

 メディオラヌムの戦。

 カルデア勢力が勝ち抜いたことで進軍。陣地を押し広げる。

 

 ゲルマニア決戦。

 中華帝國との最終決戦。死闘の末、勝利に終わる。ただしローマ帝国も大打撃を受けた。

 また、太公望を討ち取った際、藤丸はなんらかの方術を受ける。太公望によると「自分に勝った記念」とのこと。

 

 マッシリア策謀戦。

 傷も癒えぬうちの連戦。陣地を押し下げられたが、カルデアの後発隊が合流することで勢いを盛り返す。勝利。

 

 ガリア紛争。

 カルデアと連合王国との戦いに、聖杯大乱戦が横槍を入れてくる。混戦を極める中、軍師が場を操るも────デイビットの登場で敵味方を問わず全ての戦略が破綻。刹那、策もなく電撃的な進軍を始めたカルデアが戦場を縦断。総本山に乗り込む。

 

 連合首都の決戦。

 ゼウスファンダーの過剰使用によって、アレキサンダーはイスカンダルに霊基を変化させる。カルデアと連合王国の戦いに、征服王が漁夫の利を狙ってきて、さらにダレイオス三世がイスカンダルに攻撃を仕掛ける形での、四つ巴の大混戦。連日連夜の集団戦の中で培われた立香の連携能力は群を抜き始めており、戦術的直感能力に優れるイスカンダルには看破されたが、連合王国には大打撃を与えた。が、聖杯はイスカンダルが漁夫の利で奪取。このままでは大変なことになる。

 

 カルデアとローマ帝国は総力を挙げて、イスカンダルの陣営と全面対決。多大な犠牲を払った末、からくも勝利を収めた。かくして特異点は修正され、藤丸一行はカルデアに帰還した。

 

          §

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【】

 

    Fate/Grand Order ‐Epic of Ensemble‐

   藤丸三兄弟とAチームが征く人理修復紀行

 

 第三特異点            人理定礎値A

 

    A.D.1573 大幽界嘯紀行 エノシガイオス

 

     神授の雷光とユグドラシルの航海者

 

            §

 

 第三特異点を発見した直後、ぐだおのメドゥーサの霊基反応が消滅する事件が発生した。捜索したがカルデアのどこにもいない。ぐだおは泣き喚くが、第三特異点にメドゥーサと類似する霊基パターンを発見した。救助も兼ねて特異点修正に向かうことに。そこでぐだおが自分も行くと言って聞かず、フォウと共に会議室に殴り込んで、オルガマリーに直談判。無論、オルガマリーは譲らない。が、そこでぐだおは「この前お菓子をあげた」と言い出す。つまり、その時の貸しを返してほしいというそうだ。

 

「オルガが、ぐだからお菓子を?」

 

 キリシュタリアの純粋な疑問。どうやら二人は周りが思っている以上に仲良くなっていたそうだ。赤面するオルガマリーは、売り言葉に買い言葉で、ぐだおの先遣隊入りを可決してしまう。

 

          §

 

 先遣隊として、藤丸とエウリュアレ、立香とステンノ、ぐだおとアステリオス、キリシュタリアとカイニスがレイシフト。後発隊にデイビット、ベリルが選出される。

 

 そのためデイビットとベリルは英霊召喚システムを起動。テペウ〔フォーリナー〕と雨の魔女トネリコ〔キャスター〕が召喚された。

 

「サーヴァント・フォーリナー? テペウ、と申します……おぉ、なるほど……これがサーヴァント……私はそれほど戦闘向きではないのですが、どうも私の特技が必要だと、この世界の抑止力は判断したようですね。なので、えぇ。たとえ神というものが存在するとしたら、それを十七分割くらいにはしてあげましょう。なんてね! え? 実は平行世界で会ったことがあるのでは? と? それについては、まぁ、おいおい? えぇ。おいおい話すとしますよ。でも今じゃありません。秘密を抱えたテペウは、別の世界のあなたたちの勇姿を、いつか語る時が来るのでしょう」

 

「サーヴァント・キャスター。雨の魔女トネリコ。申し訳ありませんが委細は省かせてもらいます。それでも私はあなたがたの味方です。これからよろしくお願いしますね!」

 

 やはりというか、どうやらAチームはカルデア式の英霊召喚を実行する際、なぜか平行世界のサーヴァントが召喚される傾向にある様子。平行世界の縁が深いというのも、よくわからない事態だが……敵に真名を看破されづらいという長所は無視できないアドバンテージであるため、ロマニは楽観的に解釈し、オルガマリー所長は不安げながらも良しとした。

 さらにキリシュタリアも、魔力に余裕があるため英霊召喚を行いたいと志願。もし魔力が不足しても、キリシュタリアからカルデアに契約を委譲することで、マスターの負担を軽くする措置もある。戦力は補充しておいて損はないため、じゃんじゃん召喚するといい。ならばと立香が志願。冬木では召喚に失敗したので再挑戦したい。すると項羽が突然、芥ヒナコに英霊召喚を勧める。どうやら何かの未来が視えたようだ。

 そしてキリシュタリアはディオスクロイ〔キャスター/マカリオス&アデーレ〕、立香はセタンタ〔セイバー〕、芥ヒナコは蘭陵王〔セイバー〕、徐福〔キャスター〕の召喚に成功した。

 

 蘭陵王と徐福は、芥ヒナコと、なんかスッゴい体になってる項羽を見て、目を丸くする。が、何も言わない。平然と振る舞い、頑なに口を閉ざす。それを遠巻きに見つめるペペロンチーノは、ある程度の事情を察しており、くすっと微笑んでいた。

 立香のセタンタも問題ない。ザ・主人公! という感じで、立香を相棒として見定めると言い、人理修復に意気込んでいる。

 問題はディオスクロイと名乗る少年少女である。本人たちも驚いているようで、なぜ自分たちがこの真名で召喚されたのか分からないと言い出す。しかし、きっと、どこかの世界で、縁があったのだろう。ディオスクロイの名と霊基を借り受けたことで、サーヴァントとしての実力は申し分ない。故に両者は握手して、改めてマスターとサーヴァントの盟約を結んだ。

 

          §

 

 レイシフトした先遣隊は、なんと海の上に放り出されて水没。水中で水棲モンスターと戦い、なんとか近くの島に上陸。そこでサーヴァントの襲撃に遭う。さらに海賊エネミーがわらわらと出てきて大騒ぎ。背水の陣となったキリシュタリア一行は正面突破を選択。

 フランシス・ドレイク〔ライダー〕、アン・ボニー&メアリー・リード〔ガンナー&ライダー〕と戦闘。

 海岸の裏手に漂っていた小舟に乗り込んで海賊島を脱出。一同は北に向かう。

 

 

 

 第一の敵勢力。アルゴナウタイ。

 イアソン〔セイバー/魔神柱フォルネウス〕、メディア・リリィ〔キャスター〕、ヘラクレス〔バーサーカー〕。

 

 第二の敵勢力。海賊島。

 フランシス・ドレイク〔ライダー〕、アン・ボニー&メアリー・リード〔ガンナー&ライダー〕。

 

 第三の敵勢力。王の住まう島。

 エドワード・ティーチ〔ライダー〕、エイリーク・ブラッドアクス〔バーサーカー〕。

 

 第四の敵勢力。群島・静かな入り江と隠された島。二つの同盟海賊。

 クリストファー・コロンブス〔ライダー〕、ディオスクロイ〔アヴェンジャー/セイバー〕、アスクレピオス〔キャスター〕。

 バーソロミュー・ロバーツ〔ライダー〕、望月千代女〔アサシン〕、ヘクトール〔ランサー〕、ペンテシレイア〔バーサーカー〕。

 

 第四の敵勢力。聖杯大乱戦。

 Bチームの魔術師とテセウス〔セイバー〕、Fチームの魔術師とケイローン〔アーチャー〕、Dチームの魔術師とワルキューレ〔ランサー/ヒルド〕、Cチームの魔術師とアンドロメダ〔ライダー〕、メディア・リリィとメディア〔キャスター〕、Eチームの魔術師とペルセウス〔アサシン〕、Gチームの魔術師とガラテア〔バーサーカー〕。

 

 野良エネミー。基本的に水棲エネミーが多い。

 ヤマタノオロチ。ドラゴン。ワイバーン。

 海魔系。

 スケルトン系。

 

 中立勢力。地図に記された島。

 ベオウルフ〔バーサーカー〕、酒呑童子〔アサシン〕→伊吹童子〔セイバー〕。

 アストライア〔ルーラー〕、キルケー〔キャスター〕。

 オリオン〔アルテミス/アーチャー〕→超人オリオン〔アーチャー〕、坂本龍馬〔ランサー〕。

 

 味方勢力。王の住まう島。

 ダビデ〔アーチャー〕、エウロペ〔ライダー〕、お世話係のタマモキャット〔アルターエゴ〕。

 メドゥーサ/メドゥーサ・リリィ/ゴルゴーン〔ライダー/ランサー/アヴェンジャー〕。

 

 不明勢力。

 雲より高くそびえる大樹。妖精王オベロン〔????〕。

 セミラミス〔アサシン/キャスター〕、クリティエ=ヴァン・ゴッホ〔フォーリナー〕。

 

 

 

 キリシュ一行は王の住まう島に漂着。突然「海賊王に俺はなる!」と叫んで現れた黒ひげティーチと戦闘。ダビデ王・エウロペとともに、黒ひげ海賊団を追い払う。元々この島に召喚されてカルデアを待っていたダビデとエウロペは、海賊島を追い出されて流れ着いてきた黒ひげ海賊団と日夜戦闘して大変だったという。羊や農作物、砂浜に落ちていた綺麗な鍵や魔力資源を略奪されて、ちょうど参っていたところ。

 

 さっそく藤丸は仲間になってくれないかと誘いを掛けるが、ダビデ王は助けてくれたお礼に地図を渡そうとだけ言う。なんでもカルデアが信頼ならないのだとか。というのも無理はない。現在特異点のあちこちで別の聖杯戦争が行われている。BチームからGチームのマスター候補のことだろう。この騒ぎが落ち着くまではカルデアを見定めさせてもらうとのこと。どうやら聖杯大乱戦を終わらせないことには、特異点の修正は難しそうだ。

 それからエウロペは、助けてくれたお礼だから気にしなくて良いと、立派な大型船を藤丸一行に譲渡する。その船にとって、キリシュ一行の船旅は始まった。

 

 そして、ぐだおはメドゥーサと合流。しかしメドゥーサの姿は幼くなっており、さらに女怪ゴルゴーンのように形態を変化させる時もあった。どうやら特異点の縁に引っ張られて、霊基が変なことになっているらしい。しかし令呪を切れば、ライダー・ランサー・アヴェンジャーの形態を切り替えて一時的に固定化できることから、これは良い戦力増強になったとカルデアは判断。さらにランサー形態時はアサシンのような使い方も可能となるため、ぐだおは状況に応じて、メドゥーサのクラスを切り替える手が生まれた。

 

          §

 

 地図に記された島にて、野良サーヴァントの集団と合流。友好的だが、皆一様に「今はカルデアに協力できない。そんな気がする」と口を揃えて共闘を拒む。ともあれ特異点修正の支援はしてくれそうだ。

 前回の特異点でサーヴァントとしてマスターを守る力の弱さを痛感していたアステリオスは、ケイローンやベオウルフに誘われて、藤丸と共に修行に励む。さらに、となり山の酒呑童子が略奪しに来て困っているから、修行がてら一泡吹かせに行こうという話に。

 キリシュタリアはアストライアやキルケーから情報収集し、立香とぐだおはオリオンとアルテミスから世界樹に関する話を聞く。

 

 やがて襲撃者が現れた。島の裏手から上陸していた黒ひげ海賊団は、酒呑童子が居を構えていた古代遺跡に“綺麗な鍵”を差し込んで開錠する。お宝目当てで来たが何もない。ふと何かの封印が解き放たれた。それに気づかない黒ひげは、お宝がないのであれば骨折り損の草臥儲けと言って古代遺跡から立ち去ろうとする。

 ふと轟音、地響き。みるみると海面上昇が始まる。すぐさま陸地が水没して、海だけの世界となった。上陸できそうな場所は、世界樹の木の枝か。

 

 天変地異のごとく様変わりした世界。藤丸一行は船に乗って、水没特異点の航海を始める。

 

 そして入り混じる海賊達との集団戦。アルゴナウタイと一時共闘し、黄金の鹿号(ゴールデン・ハインド)、アン女王の復讐号、サンタマリア号、準男爵の多数船舶、聖杯大乱戦のマスター達と死闘を演じる。さらにはヤマタノオロチまで乱入し、死闘は激化。嵐の中、海上の乱戦は苛烈を極め、渦潮の満ち引きに流されるがまま、全ては世界樹の頂きに集結する。

 

 海神ポセイドンは疾うに死んでいる。フランシス・ドレイクが聖杯を奪取していた。

 円環神オケアノスは疾うに役目を終えている。自身を生贄に別の神性を召喚していた。

 召喚された世界樹の種は、特異点に根を張り、あちこちで聖杯戦争を起こすことで魔力の循環を強め、闘争と死骸を糧とした。そうして七日目、カルデアがレイシフトしてきた頃には、雲居を超える大樹へと育っており、十四日目、それは新世界を創造する仮想樹へと新生を遂げようとしていた。

 

 これを危険視した人理焼却の黒幕は、メディア・リリィを送り込み、最終的に仮想樹を伐採するべく、カルデアと一時共闘していた。その新事実がメディア・リリィの口から明らかにされた途端、イアソンが魔神柱フォルネウスに変貌する。イアソンは利用されていただけだった。すると藤丸の復讐令呪が反応し、ヘラクレスがアヴェンジャー化。多少の理性を取り戻して孤軍奮闘。イアソン()を助けるべく、魔神柱に挑みかかる。

 

 キリシュタリアは決断する。仮想樹は“空想樹”という“銀河”に成長しようとしている。これを伐採しなければ人理焼却後の惑星は消滅し、人理修復を完了することも不可能となる。故に今はメディア・リリィや魔神柱と共闘して、仮想樹を伐採しなければならないのだが……今のヘラクレスを止めることは自殺行為。ヘラクレスの相手は黒幕側に任せて、カルデアだけで仮想樹の伐採に当たる。

 

「待て」

 

 そこにデイビットが現れる。いつの間にレイシフトしていたのか、いつから特異点で活動していたのか。

 

「黒ひげが解放した古代遺跡と周辺の植生は、明らかに南米のソレだった。世界樹と聞けば北欧神話を連想するが、南米となればこれは宇宙由来の可能性が高い。そこで南米神話に詳しいサーヴァントを現地で召喚した。テスカトリポカだ。半ば賭けだったがうまくいったよ」

 

 デイビットはテスカトリポカを連れてきて、仮想樹伐採の方法を問いかける。するとテスカトリポカは状況に呆れているのか、いやいや答えた。

 

「あー……なるほどなー。あれは生命樹(アウタナ)だ。見た通り天まで届く木なんだが、強欲な人間が利己的な目的のために伐採すると“世界を破壊して再生する”とされる、神がかった神木だ。よって、“伐採(切る)”のは辞めておいたほうがいい。その時点で俺たちはお陀仏だ。人類史は神霊を残して跡形もなく消え去るだろう」

 

 伐採は人理の終焉と新世界の創造を意味する。だが伐採しなくても同じことになる。いずれにせよ今の人理は崩壊し、全てが死に絶えたあと、今の人類とは全く別の生命が星に栄えるだろう。

 

「この世界樹を召喚した神様(オケアノス)は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことで、人理焼却の黒幕に対抗しようとした。威勢のいい神サンだ。で、どうする? 俺の力で“種が植えられる前に戻る”か? そのためには生贄が必要だ。誰か一人、心臓を捧げてもらう必要がある。本当は要らないんだが、何事にも代償は必要だろう?」

 

 その口ぶりでは、まるでカルデアの誰かを犠牲にしろ、と言っているふうに聞こえた。テスカトリポカは、カルデアの判断を期待して待つ。するとデイビットが口を開けた。

 

「強欲な人間が伐採したら、いけないんだな」

「あぁ。そうだ。それがどうした?」

 

 ふとデイビットは身の上話を始める。自分は一日の中で体験した出来事を逐一編集し、合計五分までの記憶しか保持できない。そういう宇宙の呪いを受けている。

 

「ところで、()()()()()()()()()()()()()場合、そこに欲はあるだろうか? ぺぺ。お前の所感が欲しい」

 

 ペペロンチーノは神通力で相手の心を読むことができる。そしてデイビットの記憶編集中は一度だけ目撃したことがある。そのときはデイビットの中に、一切の煩悩が存在しない状態だったとか。まるで宇宙と一体になったかのような、いや、外宇宙から記憶(精神)を抜き取られているかのような、“虚無・虚空”と言って差し支えない身体だった。

 

「ならばいけるな。オレが虚無状態の時に伐採(トドメ)を完遂する。それまで藤丸、立香、ぐだお、キリシュタリアのサーヴァントは、仮想樹をギリギリまで追い詰めてくれ。──さて、キリシュタリア。お前がAチームのリーダーだ。この作戦の最終的な実行判断は、お前に任せる」

「……────よし、それでいこう。うまくいかなかったら、みんな一緒に死ぬだけだ。それに君の提案以上に確率の高い作戦を、今の私は知らない」

 

 一蓮托生のカルデアは一致団結して、仮想樹伐採を開始。時折ヘラクレスや魔神柱の戦いの余波が仮想樹に入るため、針に糸を通すようなダメージ調整に神経を使う。そこで修行してきたアステリオスが《斧術》スキルを発動。ケイローンの神授の智恵とベオウルフとの特訓で身につけた斧術で、バーサーカーとは思えない繊細なダメージを与える。

 

 いよいよ伐採間近。デイビットは記憶編集処理を開始。精神が宇宙と接続。あらかじめ魔術で自身の肉体を戦闘マシーンに変えており、自動攻撃、仮想樹を伐採。“強欲な伐採者に世界の天罰を”という概念を無効化して伐採に成功。仮想樹は倒れる。

 

 仮想樹伐採を見届けたメディア・リリィは、目的を達成したことですかさず裏切り、カルデアに攻撃を開始。魔神柱をけしかけて、それを倒そうとするヘラクレスも付いてくる。半ば理性が残っているヘラクレスとの死闘は熾烈を極め、藤丸とキリシュタリアは、ぐだおと立香を庇って重傷を負いつつ、魔神柱とヘラクレスの同時討伐に成功。

 

 特異点は修正された。

 

          §

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【】

 

    Fate/Grand Order ‐Epic of Ensemble‐

   藤丸三兄弟とAチームが征く人理修復紀行

 

 第四特異点            人理定礎値A-

 

     A.D.1888 死界魔霧都市 ロンドン

 

       ロンディニウムの滅亡

 

            ◆

 

          亜種特異点化

 

 第四種変異特異点         人理定礎値‐

 

     B.C.???? 大四方回帰蝕 アルビオン

 

        正義のダークヒーロー

 

            §

 

 先遣隊は藤丸三兄弟とカドック、ベリル・ガット。後発隊は状況を見てオフェリアを想定。

 

 レイシフト早々、到着座標がズレていたことで、藤丸三兄弟とカドックは、ベリル・ガットと離れ離れになってしまった。カドックは不安がる。一日の探索行動の後、サーヴァントを引き連れたベリルと交戦。理由を問うが、問うまでもない。彼は彼として生きる人間だ。通信機越しでオルガマリーが発狂しているが、今は逃げなければ殺されてしまう。マシュを置いていけば見逃してくれるようだが、その言葉は信じる信じない以前に受け入れられない。

 戦闘中、花嫁衣装の服を着たバーサーカーに助けられる。そしてヘンリー・ジキルという名の青年が快く宿を貸してくれて匿ってくれた。そこには多数のキャスターが暮らしており、抑止力の力で土地によって召喚されたサーヴァント達とわかる。カルデアには協力的だ。そのため情報共有を始める。

 

 

 

 第一の敵。黒幕の奸計。

 マキリ・ゾォルケン〔魔神柱バルバトス〕と蜘蛛の巣。

 ヴァン・ホーエンハイム・パラケルスス〔キャスター〕、チャールズ・バベッジ〔キャスター〕、メフィストフェレス〔キャスター〕、ジャック・ザ・リッパー〔アサシン〕、ジャック・ザ・リッパー〔バーサーカー〕。

 メカエリちゃん1号〔アルターエゴ〕、メカエリちゃん2号〔アルターエゴ〕。

 ヘルタースケルター、デーモン軍団。

 トロイの木馬。

 

 第二の敵。抑止力。

 エミヤ〔アサシン〕、エミヤ・オルタ〔アーチャー〕。

 

 第三の敵。聖杯大乱戦。

 Cチームの魔術師とモードレッド〔セイバー〕、Dチームの魔術師とニコラ・テスラ〔アーチャー〕、Bチームの魔術師と嵐の王アルトリア・ペンドラゴン〔ランサー/オルタ〕、Fチームの動物使いとロボ〔ライダー〕、Eチームの魔術師と出雲阿国〔キャスター〕、Gチームの魔術師と加藤段蔵〔アサシン〕、ソニアと坂田金時〔バーサーカー&ライダー〕。

 

 中立存在。

 ベリル・ガットとヘンリー・ハイド〔バーサーカー〕。

 

 第一の味方。

 生前のヘンリー・ジキルとフランケンシュタイン〔バーサーカー〕。シャーロック・ホームズ〔キャスター〕、マタ・ハリ〔アサシン〕。アンデルセン〔キャスター〕、シェイクスピア〔キャスター〕、ナーサリー・ライム〔キャスター〕、葛飾北斎〔フォーリナー〕。オデュッセウス〔ライダー〕。

 

 第二の味方。

 ジャンヌ・ダルク〔オルタ・リリィ〕(藤丸の復讐令呪・三画目によって現界した謎のサーヴァント)。

 源為朝〔アーチャー〕(封印されし月光機体)。

 

 

 

 そうして藤丸一行は、以上の陣営を把握。ホームズの推理によれば、聖杯大乱戦で召喚されたライダー・ロボは、幻霊級のため霊基が不足するはず。何らかの理由で英霊化した可能性も捨てきれないが、近頃特異点を騒がせる“第三勢力”の存在を加味すると、ひとつの可能性が浮上する。

 

「蜘蛛の巣が、犯罪界のナポレオンで知られるジェームズ・モリアーティであることは確定と見ている。その一方で、ともすればFチームの動物使いは英霊ロボではなく“もうひとりのジェームズ・モリアーティ”を召喚した可能性も導き出せる」

 

 憶測は憶測として語らないホームズだが、この時だけは証拠も少ないのに確信を持って断言した。この特異点では人理焼却の黒幕を無視して、二人のモリアーティが暗躍犯罪勝負をしているというのだ。そして最終的には巨大ロボット合戦になることも予見する。

 

 やがて、最終決戦にて巻き起こる巨人大戦。藤丸の大具足熊野&立香の源為朝vsベリル&ハイドのトロイア・イポスvs若いモリアーティの巨大メカエリちゃん1号2号vs年老いたモリアーティの幻想蒸機チャールズ・バベッジ。

 

 ホームズの推理は的中していた。

 さらにオケアノスで黒ひげがお宝目当てで鍵を開けた封印は謎のままだったが、それはロンドンで解けることになる。あれはマヤ神話における方角の神達ヴァカブ。四方の神性が特異点を跨いでロンドンに揃ったことで、なんらかの魔法陣が完成し、大魔術儀式が始まる。

 

 特異点変動。人理定礎値がマイナスを下回る。神代回帰によって魔力濃度が急上昇し、破裂していく特異点の現地人やマスター達。すかさずキリシュタリアが魔術を行使したことで藤丸三兄弟は事なきを得る。オケアノスの時のように様変わりしたロンドン。特異点が崩壊して楔を打ち直す中、ホームズは閃く。亜種特異点化の変貌理由は、実のところオルレアンの頃から兆候が見られていた。

 

 黒騎士ナーダシュディ・フェレンツ二世。破壊王ガイセリック。大幽界嘯。これらのワードは、時計塔の封印指定書庫で見つけた。それは空白の歴史を研究する一族の記録。ソニア・ド・ヴァンディミオンの調査レポート。

 

「彼女は、魔術王が用意した聖杯を利用して特異点を変貌させることで、空白の歴史を再現するつもりだ!」

 

 推理は的中したが遅かった。犯行は既に行われていた。西暦近代のロンドンが、神代黎明期の中つ国へとテクスチャを塗り替える。しかしテクスチャの塗り替えまでには数日かかる。塗り替えが完了したら特異点は崩壊して修正は不可能。文字通り人理修復の旅は途絶えることになる。だが塗り替えが完了するまでに聖杯を奪取できたら、人理修復の旅を続けられる。

 

 藤丸一行vsソニア。

 ゴルゴン三姉妹やアステリオス、ジャンヌオルタリリィやカイニス、特異点の仲間たち。それぞれ力を合わせて立ち向かうが、ソニアは聖杯を使って冬木からロンドンまでの旅路で仲間にしたサーヴァントを再召喚する。

 クー・フーリン〔セイバー〕、妖精王オベロン〔????〕、黒騎士ナーダシュディ・フェレンツ二世〔ランサー〕、破壊王ガイセリック〔ライダー〕、チャールズ・バベッジ〔キャスター〕、佐々木小次郎〔アサシン〕、ヘラクレス〔????〕。

 

 激闘の末、汎人類史のカルデアは勝利する。ソニアは元から汎人類史の存在ではないため、存在証明なしで特異点を移動可能。どこへなりと漂流者(ストレンジャー)として姿を消す。

 

 かくして藤丸一行は、特異点を修正した。

 

          §

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【】

 

    Fate/Grand Order ‐Epic of Ensemble‐

   藤丸三兄弟とAチームが征く人理修復紀行

 

 幽閉特異点            人理定礎値‐

 

   A.D.1888 監獄塔復讐鬼 シャトー・ディフ

 

        帰ってきた赤竜の魔女

 

            §

 

 それは人理焼却の黒幕が仕掛けた同士討ちの呪縛。ふと気づいたら監獄塔にいた九人のマスターは、一日ごとに命を懸けた聖杯戦争を執り行う。

 

 藤丸は、オルレアンで退去したはずのカーミラと契約を交わしており、立香は巌窟王エドモン・ダンテスと、ぐだおはアステリオスと契約を交わしていた。Aチームも、それぞれのサーヴァントと契約を交わしている。ただしベリルは、ロンドンで裏切った処罰のため拘束状態で投獄されており、雨の魔女トネリコとの契約権もカルデア側に強制奪取されていた。すると、はぐれサーヴァントのアビゲイル・ウィリアムズ、シータ、シヴァの女王が現れて、仮契約を申し出る。ベリルは捨てる神あれば拾う神ありとして、三騎のサーヴァントと仮契約を結んだ。

 

 一日一回、牢屋から案内されて、監獄塔の中央広場でサーヴァント戦を始める。そして最後の一人になるまで殺し合ってもらう。一人でもこのルールを違えれば幽閉特異点は崩壊し、カルデア最後のマスター達は死亡する。マスターたちは戦闘を回避する方法を探すも、自らのサーヴァントは戦闘に乗り気。それも無理はない。黒幕の手によって霊基に呪いを掛けられており、相手のマスターを抹殺するように動かされている。

 

 一日目。藤丸三兄弟とカーミラ&巌窟王&アステリオスvsカドックとヤガスタシア&アタランテ。数では藤丸三兄弟が上でも、質ではカドックが圧倒的に優位。戦闘の渦中、カドックは“本当に生き残るべきは自分なのだろうか?”と愚案する。藤丸三兄弟の英霊を惹きつけるカリスマ性は、これからのカルデアに必要だ。しかし最後の一人になるまで殺し合うなら、キリシュタリアが残るべきだ。自分が生き残ろうとしたことで、みんなの意に沿わず、人理修復を邪魔したくない。そのような思考が脳裏にかすかでもよぎる。

 嫉妬の大罪機構が発動。カドックに多大な重圧が掛かる。その間隙を突くように、黒幕に操られるアステリオスが殺しにかかる。そこをカーミラと巌窟王が阻止した。二人は黒幕に操られているわけではないらしい。おかげでカドックは命拾いした。しかし敗者は敗者としてそれなりの報いを得る。排気孔とやらに落とされるカドック。それにも関わらずカドックは「大丈夫だ。排気孔とやらで九日間を生き抜けば、誰かが特異点を解決した途端、僕もカルデアに帰還できる。頼んだぞ、藤丸。なんならAチームを全員倒してこい!」その激励の後、カドックは地獄とやらに落とされた。

 

 これはいったいどういうことか。藤丸三兄弟は激怒する。巌窟王はどうもなにもない。藤丸三兄弟は勝利しただけだとうそぶく。

 

 二日目。藤丸三兄弟vsオフェリアとシグルド〔スルト〕&ナポレオン。

 三日目。藤丸三兄弟vs芥ヒナコと項羽&蘭陵王&徐福。

 四日目。藤丸三兄弟vsペペロンチーノとアシュヴァッターマン。

 五日目。藤丸三兄弟vsキリシュタリアとカイニス&ディオスクロイ。

 六日目。藤丸三兄弟vsベリルとアビゲイル・ウィリアムズ〔フォーリナー〕&シータ〔アーチャー〕&シヴァの女王〔キャスター〕。

 七日目。藤丸三兄弟vsデイビットとテペウ。

 

 八日目。藤丸&立香vsオルガマリー所長&ぐだおとマシュ・キリエライト&アステリオス。

 なぜオルガマリー所長とマシュが此処に? 立香が問いかけると、巌窟王は「それは彼女も一応マスターとして招待されたからにほかならない」とだけ答える。戦闘しつつ今後の方針を相談。オルガマリーは「私たちを地獄に落としなさい」と即答する。理由は、藤丸と立香が特異点を解決できる能力が高いため。マスター適性のない自分はここで敗退するべき。「でも、それだとぐだおが────」「この子は私が責任を持って守る。私が死んでもマシュに守らせる。だから藤丸と立香。あなたたちはカルデアのマスターとして、全力を尽くしなさい……!」

 オルガマリーの叱咤をもらった藤丸と立香は、オルガマリーとぐだおを倒す。

 

 九日目。藤丸とカーミラ〔ドラクルヴァンプ〕vs立香と巌窟王エドモン・ダンテス〔アヴェンジャー〕の激闘。

 どちらが勝っても構わない。勝者が決まった時点で、生存者は監獄塔から脱出できる。それでも藤丸と立香は全力で戦った。消化試合として適当な戦いをすればルールに抵触する、そのことを恐れていたわけではない。これからの旅路で、カルデアの仲間が減ることもあるだろう。その時、自分は代わりになれるのか。代わりを務めて、後を託されて、人理を救うことができるのか。それを確かめるためだけに、二人は血縁も絆も脇に置いて、世界のために死力を尽くした。

 

 結末は藤丸の手に。立香と巌窟王は敗北した。

 

「安心しろ、藤丸。立香は、オレが地獄に落ちても守る」

 

 そう言って立香と巌窟王は地の底に落ちた。

 

 

 

 十日目。藤丸とカーミラは牢屋を後にし、いつもの中央広場に向かう。そこには魔術王ソロモンが立っており、いやらしいニヤケ顔で拍手していた。

 

「おめでとう、最後のマスター、藤丸。君の活躍の所為(おかげ)で、敗退者は地獄に帰ることができた。帰れないのは、君だけだ」

「……?」

「地獄とは、カルデアのことだ。これから私の偉業によって、醜い世界は美しくなるというのに……カルデアは、醜い世界を取り戻そうとしている。地獄を救う組織。それを地獄の環境と呼ばずなんと呼ぶ!」

「……つまり、みんなはカルデアにレイシフトしたってことか?」

「そうとも! 自分だけが帰れると思っていたのだろうが残念だった!」

「────そうか。良かった……」

「────ハ?」

 

 魔術王からすれば、最後まで勝ち抜く強いマスターをこそ抹殺したい。だからこそ勝ち抜き戦ではなく、負け抜き戦とした。負けた弱者が安全にカルデアに帰還できるのだ。しかし勝ち抜いたのは、どこまでも平凡な一般人のマスター。

 

「俺は運がいい。誰かの代わりをするだけの人材だと、所長からも言われたけど……それでも俺は、自分の役目が欲しかった。Aチームに負けないように頑張った。そして今、それができたように思う」

「……」

「お前が黒幕なんだな? 名前を言え。そして────今ここで倒してやる」

「────……!」

 

 魔術王は失笑ののち大笑する。

 

「いいだろう! 我が名は魔術王ソロモン! 最後の晩餐だ。本来はキリシュタリア・ヴォーダイムかデイビット・ゼム・ヴォイドのために用意した魔術式の数々を喰らうがいい! 消し炭と化せ、藤丸!!」

 

 藤丸&カーミラvs魔術王ソロモン。

 キリシュタリアとデイビットを殺すための魔術というだけあって、藤丸とカーミラはほぼ何もできないまま滅多打ちにされる。それでもカーミラが真名開放。宝具《赤竜魔嬢(ハーロム・エチェド)》を発動して竜化。なんとか勢力を盛り返すが、あと少しのところで敗北する。

 

 魔術王ソロモンは全力の半分も出していない。藤丸にトドメを刺そうとする。

 次の瞬間、漂流者のソニアと、ルーラーにクラスチェンジしていたホームズが、幽閉特異点に転がり込む。ソニアVS魔術王。一瞬で消し炭にされるソニア。その間隙を逃さずホームズが宝具を使い、藤丸と共にカルデアに帰還した。

 

 かくしてカルデアは、マスター候補に一人の犠牲者も出さず、監獄塔からの脱獄に成功したのであった。

 

          §

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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    Fate/Grand Order ‐Epic of Ensemble‐

   藤丸三兄弟とAチームが征く人理修復紀行

 

 第五特異点            人理定礎値A+

 

  A.D.1783 北米神話大戦 イ・プルーリバス・ウナム

 

       鋼鉄の白衣と無双の勇士

 

            §

 

 空白の歴史を追い求めるソニア・ド・ヴァンディミオンと、生前の復讐鬼エドモン・ダンテスは、それぞれ別の時代を生きながらも知己の仲だった。はじまりはソニアの過去視によって巌窟王と接触した時のこと。その縁を辿って人理焼却時、ソニアと巌窟王は互いに手を組み、魔術王ソロモンの陰謀を挫こうとしていた。ソニアは第四特異点で裏切ったのに、なぜカルデアのためにそんなことをしたのか? その疑問には単純明快に答えられる。

 

「あれは魔術師である前に普通の娘だ。一族の悲願を叶えたい思いと、仲間の命を助けたい思いは矛盾しない」

 

 そういった話を巌窟王から聞き出すのに小一時間かかった。その間にカルデアは第五特異点を発見。セプテム以上の大規模戦闘になることをトリスメギストスが予見。オルガマリーは慎重に慎重を重ねてメンバーを吟味する。

 

 先遣隊は藤丸三兄弟とカドックとペペロンチーノ。後発隊はキリシュタリアと芥ヒナコ。

 

 さっそくレイシフト。戦場のど真ん中に降り立ち、四面楚歌の状況で安全圏まで避難。簡単な陣地を作成し、使い魔を放って状況を把握する。

 

 

 

 第一の敵。大統王。

 トーマス・アルバ・エジソン〔キャスター〕。エレナ・ブラヴァツキー〔キャスター〕、バニヤン〔バーサーカー〕。カルナ〔ランサー〕。

 機械化歩兵軍団。

 

 第二の敵。ケルト。

 クー・フーリン〔バーサーカー/オルタ〕、メイヴ〔ライダー〕。フェルグス〔セイバー〕、フィン・マックール〔ランサー〕、ディルムッド・オディナ〔セイバー〕、マナナン・マク・リール〔アルターエゴ/疑似サーヴァント〕。

 ケルト兵軍団。

 

 第三の敵。インド。

 ドゥルガー〔バーサーカー〕、パールバティ〔ランサー〕、ガネーシャ〔ムーンキャンサー〕。

 ヴリトラ〔ランサー〕、魔王カーマ〔アサシン/ビースト〕。

 ビーマ〔ランサー〕、ドゥリーヨダナ〔バーサーカー〕、ラクシュミー・バーイー〔セイバー〕。

 

 第四の敵。ギリシャ。

 アキレウス〔ライダー〕、パリス〔アーチャー〕。

 

 第五の敵。北欧。

 スカディ〔キャスター〕、ワルキューレ〔ランサー/スルーズ〕、シトナイ〔アルターエゴ/擬似サーヴァント〕。

 ワルキューレ軍団[ランサーorライダーorアサシンorバーサーカー/リンド、エルン、イルスetc]。

 

 第六の敵。聖杯大乱戦。

 Fチームの呪術師とラーマ〔セイバー〕、Gチームの少年魔術師とウィリアム・テル〔アーチャー〕、Bチームの化石魔術師とメアリー・アニング〔ランサー〕、Cチームの伝承保菌者とテノチティトラン〔ライダー〕、Dチームの修験魔術師と清少納言〔キャスター〕、Eチームの錬金術師(死の商人)とコヤンスカヤ〔アサシン/ビースト〕、現地人の魔術使いとナイチンゲール〔バーサーカー〕。

 

 第一の味方。各種レジスタンス。

 新選組の土方歳三〔バーサーカー〕、沖田総司〔アサシン〕、斎藤一〔セイバー〕、永倉新八〔バーサーカー〕、山南敬助〔アサシン〕。

 源氏の源頼光〔バーサーカー〕、渡辺綱〔セイバー〕。

 工作のロビンフッド〔アーチャー〕、ビリー・ザ・キッド〔ガンナー〕、ジェロニモ〔キャスター〕、ニコラ・テスラ〔アーチャー〕。

 アルジュナ〔アーチャー〕(レジスタンスにとっては主力級の決戦用サーヴァント)。

 

 中立勢力。

 スカサハ〔ランサー〕。マーリン〔キャスター〕。

 

 

 

 ケルト神話、インド神話、ギリシャ神話、北欧神話。四つの神話大系が一枚の大陸に集い、聖杯を求めて争い合う。対するレジスタンスは近世近代のサーヴァントばかり。さすがの聖杯大乱戦のマスター達もレジスタンスと手を組んで生き残っていた。聖杯大乱戦に参加しているマスター達は、表向きはカルデアと名乗っているようで、レジスタンスは藤丸一行を“カルデアと偽る謎の集団”と誤解して受け入れてくれない。

 しかし現地人のインディアン系魔術使いとナイチンゲールは、藤丸一行を本物のカルデアと察してレジスタンスを抜け、味方になってくれた。彼は、カルデアと名乗る六名が非人道的な魔術実験をしていた事実を遠視の魔眼で目撃しており、どうしても人理修復のために戦っているとは思えなかったらしい。

 

 藤丸一行は後発隊も参戦し、現地人やナイチンゲールと協力して、三つ巴や七つ巴となる極限の大混戦大陸を横断。現地人の魅了魔術──スキル・友誼の証明と類似する技術も織り交ぜた精霊魔術──で、なんとかアキレウスと同盟を組むことに成功し、怒濤の快進撃を見せる。

 

 北欧陣営を倒し、レジスタンスと一時共闘してインド陣営を倒し、ケルト陣営と共謀していた大統王陣営を倒し、聖杯は六名のマスター候補のもとに。二つの聖杯が集まったことで大儀式を開始。サーヴァントの枠に収まりきらない、本物の神霊を召喚した瞬間に生け贄に捧げることで、根源の孔を開くとのこと。

 

 そんなことはさせまいと藤丸一行は戦う。レジスタンスも、カルナの助言もあり、ようやく藤丸一行が本物のカルデアと知って協力。しかし間に合わず、神霊の召喚を許してしまう。神霊の一撃で消し飛ぶレジスタンスのサーヴァントたち。カルデアは、謎のマーリンお兄さんの力で生き残っていた。

 刹那、中立勢力のスカサハが、降臨した神霊を一刺しで殺した。そしてスカサハは「儂はこの時のため、抑止力によって遣わされたのかもしれんな」などとうそぶく。しかしサーヴァントとなった身では神霊殺しの荷は重くなっており、殺した神霊に祟られて退去する。

 

 あとは地力の勝負。カルデアのマスターvs裏切りの元カルデアマスターのサーヴァント戦。集団戦闘においてはカルデアに軍配が上がった。

 

 かくして二つの聖杯を回収した藤丸一行は特異点を修正し、カルデアに帰還した。

 

          §

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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    Fate/Grand Order ‐Epic of Ensemble‐

   藤丸三兄弟とAチームが征く人理修復紀行

 

 第六特異点            人理定礎値EX

 

     A.D.1273 神聖円卓領域 キャメロット

 

       ロンゴミニアド・ル・ホープ

 

            §

 

 先遣隊は藤丸三兄弟とカドック、後発隊はキリシュタリアとオフェリア。

 

 特異点に降り立って周辺調査。第五特異点に比類するほどの陣容に、カルデアは絶句する。

 

 

 

 第一の敵。白亜の城に居を構える円卓の騎士。

 獅子王ロンゴミニアド〔ランサー〕。

 ガウェイン〔セイバー/ギフト〕、トリスタン〔アーチャー/ギフト〕、黒い手のガレス〔ランサー/オルタ〕、モードレッド〔ライダー/ギフト〕、アグラヴェイン〔アサシン〕。聖騎士隊。

 

 第二の敵。妖精神殿に居を構える円卓の騎士。

 妖妃モルガン〔キャスター〕、パーシヴァル〔ランサー〕、ランスロット〔セイバー〕。ブリトマート〔ランサー〕。聖騎士隊。キャスパリーグ〔ライダー/ビースト〕。

 

 第三の敵。エジプト。

 オジマンディアス〔ライダー〕、ニトクリス〔キャスター〕。スフィンクス警備隊。

 

 第四の敵。レッドライン聖杯戦争。

 千子村正〔セイバー/疑似サーヴァント〕、杉谷善住坊〔アーチャー〕、長尾景虎〔ランサー〕→上杉謙信〔ランサー〕、武田信玄〔ライダー〕、雑賀孫一〔ガンナー〕、果心居士〔アサシン〕、魔王織田信長〔アヴェンジャー〕。

 

 第五の敵。聖杯大乱戦。

 Bチームの魔術師と鈴鹿御前〔セイバー〕、現地人の呪術師と刑部姫〔アーチャー〕、Cチームの魔術使いとドン・キホーテ〔ランサー〕、Gチームの妖精(バーヴァンシー)使いとトトロット〔ライダー〕、Dチームの召喚(バーゲスト)使いとシェヘラザード〔キャスター〕、Fチームの魔術師と岡田以蔵〔アサシン〕、Eチームの魔術師と茶々〔バーサーカー〕。

 

 

 

 第一の味方。砂漠の民。

 山の翁〔アサシン〕、呪腕のハサン・サッバーハ〔アサシン〕、百貌のハサン・サッバーハ〔アサシン〕、静謐のハサン・サッバーハ〔アサシン〕、耀星のハサン・サッバーハ〔アサシン〕。

 アーラシュ〔アーチャー〕、俵藤太〔アーチャー〕。

 

 中立陣営。

 ベディヴィエール〔セイバー〕。

 

 

 

 とりあえず藤丸三兄弟は、砂漠のど真ん中に建つ姫路城がどうしても無視できず、イヤイヤ期のカドックを引きずってお邪魔する。すると呪術師のマスターと刑部姫が招待してくれて、コタツを囲んでゲームをしながらお茶を嗜む。呪術師は、上記の陣営について丁寧に教えてくれて、どうか特異点の修正に協力してほしいと頼み込んでくる。どうやら今までのマスター候補と比べて、かなり健全な人物の様子。当然カルデアはそのために来たのだから断る理由はないと同盟を組み、個人的に友達にもなる。

 

 次の瞬間、姫路城の天守閣から轟音と振動。外に出て外観を確認すると、なんと姫路城の天守閣にさかさまのピラミッドが突き刺さっていた。攻撃された、というよりは空中戦の最中にあるオジマンディアスとレッドライン聖杯戦争の面々の流れ弾らしく、刑部姫は泣いていた。さらに黄金城がピラミッドの上に召喚される。刑部姫は「これじゃあまるでチェイテピラ……! うっ、頭が……!!」と、泡を吹いて気絶した。

 

          §

 

 レッドライン聖杯戦争と聖杯大乱戦の二種連結聖杯争奪戦。どうやら双方の聖杯が二つに融合して大聖杯じみた性能を誇っているらしく、それを手に入れれば根源接続待ったなしなので、マスター候補の魔術師は血眼になって争っている。

 カルデアは砂漠の民と共闘して、エジプトと対円卓同盟を結び、山の翁との交渉の末、力を貸し借りすることを約束し、後発隊が大聖杯争奪戦を制した上で、いざ白亜の城キャメロットへ。円卓の騎士との激戦の末、獅子王の下まで辿り着く。その瞬間、妖精神殿が浮上、白亜の城の真上に鎮座し、妖妃モルガンが降臨。漁夫の利を狙ってきた。三つ巴の死闘が始まる。

 

 藤丸一行はモルガンを倒し、女神ロンゴミニアドを後一歩のところまで追い詰める。が、獅子王は神槍開放。ロンゴミニアドで特異点と人理に楔を打ち込み繋ぎ留め、この特異点をこそ新たな人類史、神代にしようと試みていた。それは女神の精神性にしては、妙に俗っぽい計画。そこで半身切り裂かれた状態で生存していたモードレッドが現れて直感する。間違いなくモルガンの仕業であると。

 聖なる者のみを救う。その概念を機械的に実行する女神ロンゴミニアドは、故にこそモルガンの弁舌に操られた。カルデアが特異点に来る前、獅子王とモルガンは対話していた。そこでモルガンと目的を違えたものの、妖妃の「聖なる者は居ない。だからこそ世界(すべて)(ただ)しく導くのが女神なのではないか」という言葉を受けて考え直し、計画を再偏。自らの神性と大聖杯の無限魔力を使えば、たしかに世界を改変することが可能だ。

 

 しかし、それは人類史の上書き。根源接続者が実行する世界の上塗りに近い。汎人類史の曲解や否定を意味する。それではロンドンの時と同じだ。女神ロンゴミニアドは神代回帰現象を引き起こし、連れて行った人類を聖霊化。聖霊暦なるものを作って歴史をやり直し、聖霊國を建国すると、大真面目にうそぶく。

 

 ロンゴミニアドによる希望の楽園。それはたしかに美しい世界になるだろう。何もかもが正しい世界になるだろう。だが、それは正しすぎる。正しすぎることは間違いとなり、いつか女神ロンゴミニアドはその自己矛盾に耐え切れず、異聞帯(ロストベルト)と化すだろう。

 

 キリシュタリアは、自ら思い描いた理想に近いことを実現するラスボス・女神ロンゴミニアドを物憂げに見つめたあと、Aチームのリーダーとして号令を下す。

 

「女神を討伐する」

 

 カルデアvs女神ロンゴミニアド。しかし女神の力は圧倒的で、まず勝ち目がない。そこへ、ひとりの巡礼者が現れた。名をベディヴィエール。銀の腕を持つ男は、聖伐によって選ばれた者としてキャメロットに入国しており、ただの一般人として紛れ込んでいた。そして、今までの会話の一部始終を盗み聞きしており、カルデア側に就くと決意。

 銀光一閃。灼熱の斬撃が女神ロンゴミニアドを袈裟斬りに両断。一瞬、女神の動きが止まる。その間隙を逃さず、カルデアは全力の宝具を叩き込んだ。

 

 女神は消滅していく。黄金の粒子をたちのぼらせる中、カルデアに人類の後を託す。ベディヴィエールも精根尽き果て、獅子王アルトリア・ペンドラゴンと共に絶命した。

 

 かくして特異点を修正した藤丸一行は、カルデアに帰還した。

 

          §

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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    Fate/Grand Order ‐Epic of Ensemble‐

   藤丸三兄弟とAチームが征く人理修復紀行

 

 第七特異点            人理定礎値A++

 

     B.C.2655 絶対魔獣戦線 バビロニア

 

          最速の天文台

 

            §

 

 先遣隊は、いつもの藤丸三兄弟とカドック、そしてデイビットとペペロンチーノ。後発隊はキリシュタリア、オフェリア、芥ヒナコ。

 藤丸三兄弟とカドックは特異点の陣容を調べ、デイビットとペペロンチーノは特異点の状態を調べる。手分けした結果、下記の陣営と、女神同盟を倒すとビーストが出現するカラクリを発見。故に作戦は次の通り。どうにかして女神との敵対を避けて、聖杯大乱戦を収め、ビーストを討伐するか。

 

 

 

 第一の敵。女神同盟。

 ケツァルコアトル〔ライダー〕、ジャガーマン〔ランサー〕。

 エレシュキガル〔ランサー〕。

 

 第二の敵。聖杯大乱戦。

 現地人の魔術使いと紅閻魔〔セイバー〕、Fチームの魔術師と高杉晋作〔アーチャー〕、Gチームの魔術師と森長可〔ランサー〕、Eチームの魔術師と曲亭馬琴〔ライダー〕、Bチームの戦闘魔術師と壱与〔キャスター〕、Cチームの魔術師と風魔小太郎〔アサシン〕、Dチームの呪術師と景清〔アヴェンジャー〕。

 

 第三の敵。

 生前の賢王ギルガメッシュ〔プリテンダー/ネブカドネザルⅡ世〕。と、そのサーヴァント──卑弥呼〔セイバー〕、巴御前〔アーチャー〕、武蔵坊弁慶〔ランサー/常陸坊海尊〕、牛若丸〔ライダー〕、蘆屋道満〔キャスター〕、鬼一法眼〔アサシン〕、茨木童子〔バーサーカー〕。

 

 第四の敵。

 ティアマト〔ビースト〕、エルキドゥ〔ランサー/キングゥ〕。

 

 

 

 藤丸一行とデイビット一行に分かれて行動開始。藤丸一行は女神同盟を味方に付け、デイビット一行は聖杯大乱戦を制圧。いざ王都バビロンへ進撃。偽ギルガメッシュと、その配下たる七騎のサーヴァントと激闘を繰り広げる。そこで蘆屋道満が刹那的に裏切り、特異点中に張り巡らした偵察術式を反転、起爆術式として起動。特異点の下層に眠るビースト・ティアマトをたたき起こし、暴走状態のままバビロニアを襲わせる。これに合わせて後発隊もレイシフト。

 

 カルデアは総力を挙げてビーストとの一騎打ちに出る。女神ケツァルコアトルとエレシュキガルの助けを得るが敗色濃厚。その時、藤丸の体内に貼り付けられていた術式が起動し、セプテムで死闘を演じた太公望の縁を辿って、グランドライダー・ノアが馳せ参じる。ノアは、命の獣に対して、命を運ぶ方舟を使い、獣の理(ネガ・メサイア)を世界の外側まで持っていく。結果、ノアの消滅に合わせて、ネガ・メサイアが消滅したティアマトに攻撃が入るようになった。刹那、カルデアは合体連携宝具を叩き込み、魔力枯渇の瀬戸際で辛勝。

 

 ────と思っていた。ティアマトは復活する。倒しきれていない、というよりも不死身。その時、シグルド〔スルト〕が真名開放する。そして念話を使い、オフェリア・ファルムソローネに別れを告げた。

 

(オフェリア。あいつは竜だ。角があるなら竜だ。そうだろう? オレには竜殺しのスキルはうまく扱えない。だからここで去ろうと思う。これは第六特異点の頃から、女神ロンゴミニアドの引き際を見てから、決めていたことだ)

(スルト?)

(俺と違い、恋を知らない少女オフェリアよ。俺は、たとえ破壊しかできなかろうと、伝えることをやめない。たとえ破壊でしか、この思いを伝えられないとしても、俺は伝えることをやめたりしない。故に問おう。オフェリア……お前の好きな(破壊すべき)人間は、だれだ)

 

 憧憬は理解に及ばないが、憧憬こそ怪物に許された唯一(ただひとつ)の救い。

 破壊装置として生まれ落ちた怪物は、彼女の笑顔さえ見ることができれば、それで良かった。

 

 シグルドの霊基から巨炎が噴出する。それは太陽の如し巨神となって、ティアマトの獣冠(ツノ)に炎の剣を叩き込んだ。神性(いのち)の全てを注ぎ込んだ一撃によってツノが破壊される。そしてシグルドの中に、かの巨人王の霊基は跡形もなく消え去った。しかしてシグルドは、長い眠りから目を覚ます。

 

「────霊基の権限、委譲完了」

「……()()()()。初対面の筈だけど、初めてな気がしないわね。それで、あなたは私の()()()()()()()()()()()()()()()として、従う気はある?」

「無論だ。当方はムスペルの巨人王の意志を継ぐもの。なんぴとたりとも、我がマスターに手出しはさせない。竜殺しの力、この場でこそ遺憾無く発揮しよう!」

 

 スルトに続いて、シグルドの連撃。カルデアの仲間全員が魔力枯渇で動けない中、特異点F召喚時から力を蓄えていた竜殺しの英雄の一撃は、今度こそティアマトの霊核を轟然と粉砕する。

 

 かくして特異点を修正した藤丸一行は、カルデアに帰還した。

 

          §

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【】

 

    Fate/Grand Order ‐Epic of Ensemble‐

   藤丸三兄弟とAチームが征く人理修復紀行

 

 終局特異点            人理定礎値‐

 

     B.C.2655 冠位時間神殿 ソロモン

 

          極天の電撃戦

 

            §

 

 七つの特異点を修復した。残るは人理焼却の黒幕・魔術王ソロモンとの決戦。

 

 72の魔神柱が乱立し、カルデアを迎え撃つ。全マスター総出の連続戦闘。無尽蔵に思える魔力と魔神柱を前に、藤丸三兄弟と魔神柱は正面突破で切り拓く。一対一ならまだしも、集団戦はカルデアのマスターの専売特許。瞬く間に七つの座を占領し、辿り着くは最後の玉座。

 

 天地四方から魔神柱が襲いかかる。それの迎撃はAチームにしかできない。ならば魔術王ソロモン、否、正体を現した魔神王ゲーティアに挑むマスターは────藤丸三兄弟のほかに存在しない。誰よりも弱く、されど誰よりも数多の英霊と縁を結んだ彼らは、人と人の絆を歴史とする汎人類史の終幕を飾るにふさわしいマスターだと、キリシュタリアが判断した。

 しかし魔神王ゲーティアは、それは重大な誤りであり、過失であり、失策であると、キリシュタリアに失望する。自分を倒す存在はキリシュタリア以外に居ないと想定していた。まさかロマンを求めてこのような無謀な作戦を提案し、しかもそれに乗っかる阿呆ばかりとは思わなかった。そう言ってゲーティアは、光帯から無尽の魔力を引っ張り出し、人理砲を解き放つ。

 

 それは刹那の瞬間、全てが消し炭となる一撃。キリシュタリアの大魔術が発動し、人理砲を一度は食い止める。だが次はない。

 

「やはり愚策! このような愚かな人類は、我が創世から消え去るべきだ────!」

「────悪いが、そう思っているのは君だけだよ。魔術式ゲーティア」

 

 ふと、なぜか非戦闘員のドクター・ロマンが現れる。その場にいる者すべてが目を疑った。否、ダ・ヴィンチは全てを知っており、スカンジナビア・ペペロンチーノはなんとなく察しが付いていた。

 

「やはりAチームは前所長が集めただけあって、僕が何かしなくても勝ててしまいそうだ。それもまた()()()()()()()()()()()()()()()()のかもしれない。でも、()()()()()()()()()()() という焦りがあった。おかげで事ここに至るまで、迷いに迷ってしまったよ」

「……貴様、何を言っている」

「キリシュタリアの天体魔術があれば、この特異点に限り、いくらでも今の砲撃は防げるだろう。だが、やはりお前だけは────僕が決別を告げるべきだと、悟ったんだ」

「……────っッッ!!? まて、まさか、おまえは────!!」

 

 ドクター・ロマンは、今際の際に浪曼を追い求めた。第三宝具展開。ロマニ・アーキマンという人間は、誰もが成し得ない偉業を達成したことで、あらゆる記録から抹消される。これによって魔神王ゲーティアは魔術式ゲーティアへと神秘が零落。それでもビースト足り得る力を持つが、もはや獣の理は使えない。

 

 咆哮するゲーティア。消失したロマニに対して罵詈雑言(疑問)を吐く。それを聞いて、なんとなくドクターが何をしたのか思い至った藤丸三兄弟は、歯を食いしばり、ゲーティアに挑んだ。ドクターが残した浪曼を、自分の手で達成するために。

 

 藤丸三兄弟vsゲーティア。五歳児のぐだおは守りに専念し、藤丸と立香は相棒サーヴァントと共に至近距離で渡り合う。七秒に一回はAチームの援護が飛んできて九死に一生を得ながら、崩壊しつつあるゲーティアを打倒する。

 それでもなお立ち上がるゲーティアは消えかけており、ロマニと似た人の姿をしていた。彼は拳で問いかける。藤丸と立香は拳で応える。かくて人王ゲーティアは理解した。しかし納得できなかった。だからこそ最期は意地の張り合い。

 三者の殴り合い。ゲーティアの拳を藤丸が受けた瞬間、懐に潜り込んでいた立香が「last」の詠唱で心臓を穿つ。人王ゲーティアは倒れた。特異点が崩壊する。

 

 かくして藤丸一行は、人理修復を果たし、汎人類史の世界に帰還した。

 

          §

 

 カルデアのマスターはサーヴァントと離別、それぞれの地元に帰る。

 それは世界を救った青春劇。

 花の楽園であぐらをかく大魔術師は、感嘆の溜め息をついて絵本を閉じた。

 

「めでたし、めでたし。ってね!」

 

          完

 

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