御幸一也が稲城実業に入学した世界線   作:いちごケーキ

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健闘

 

 

 

 

一年生VS二・三年生の試合当日。たかが高校生の練習試合とは思えない程、多くのギャラリーが詰め掛けている。

一軍の試合なら兎も角、中学生上がりの試合なんて見て面白いのか?しかも、どう見ても勝つチーム決まってんだろ。どうやって盛り上がれって言うんだ。

 

 

「相変わらず、日曜日になるとギャラリーがスゲェな。OBやら記者やら、色んな人が来てるぜ」

「やっっべぇ、緊張して来た」

「俺も昨日の夜寝れなかったよ。まさか入部して一ヶ月足らずで、上級生達と試合するなんてな」

 

「___一年生には全員、出場のチャンスを与える。各自アップをしておく様に」

『ハイッッ!!』

 

アップの時間が始まり、もちろん俺は沢村と組んだ。

捕手の数は投手の数より少ないから、本来なら何人か受ける事になる筈である。

けど実際、避けられていては俺にはどうしようも無いので沢村だけの事を考えてれば良い。

こういう時は、嫌われていてラッキーだなと思う。

 

 

 

 

「うわぁっ?!」

 

 

___バシッ!

 

「ストライク!」

「おいルーキー、尻もち付いてたらバットは振れねぇぞ」

「なんだ、今の……」

 

うわダッセー、カーブに尻もち付いてやんの!

良かったな沢村。お前程じゃねーけど、恥ずかしいやらかしをした奴が増えたぞ!これで恥ずかしい話題を独占しないで済んだな!

 

 

「丹波の奴、良い気迫だな」

「エース降格になった事で、逆に闘志に火が付いたか?」

「あの縦に割れるカーブがコースに決まり出せば、完全復活も近いぞっ!」

 

残念、調子を崩してたのは治っちまったらしいな。

いやまぁ、格下相手だから余裕なだけかもしれねぇけど。

 

 

___バシッ!

 

「ストライク、バッターアウッ!」

「___っしゃあぁ!!」

 

「静かな丹波が吠えた!」

「いきなり三者連続三振かよ!」

 

ろくに練習もしてない中学の頃のチームメイトとレベル変わんねぇぞ。ホントにコイツら、何で割と名門校の青道に入学出来たんだ?

あ、そっか学力か。すげぇな尊敬するわ。

 

 

「___次、沢村!」

「お任せください!ボス!!」

 

意味不明なネーミング付けんなよ、態々あんな地雷を踏みに行くなよ。こいつ、やっぱり読めねぇな。

 

 

 

 

 

 

内野陣で集まって、方針を決めようとしている。

俺も運良く、沢村と同じ試合に出させて貰えた。やっぱり部員の相性とかも見て試合に出してんのかな?

 

 

「沢村、球種は何だ」

「ストレー」

「違う。超クセ球って言うか、ランダムで変化球を投げて来るってのが近い」

「えっ?!そうだったのか?!」

 

俺の言葉に、内野陣は顔を引き攣らせた。

何でだろうな、別に特に問題もないじゃん。

 

 

「よくそんなの取れんな」

「まだ球威はねぇし、一軍レギュラーなら余裕で取れると思うぜ」

 

 

 

 

___ガギン

 

「アウトォ!」

 

「惜しい当たりだったなぁ」

「球威も無いし、その内ヒット量産だろ」

 

節穴の観客と先輩達が、沢村を不当に低評価している。

まぁ、試合が終わるまでには流石に気付くだろうけど。

 

 

___バシッ!

 

「アウトォ!」

 

 

___ガギン!

 

「また詰まった!」

「けど良い所に転がったぞ!」

 

しまったな、計算ミスだ。思ってたより弾道が低くて、逆に良い当たりにされちまったわ。すまん沢村。

 

 

「いや、セカンド取りやがった!!」

「マジかよ」

 

 

___バシッ

 

「……アウトォ!」

 

俺のミスを、有名選手の弟くんが消してくれた。

助かった!これで1回表は無失点だ!

 

 

 

 

一年生の攻撃、今回は四番の俺から。

ド派手な演出を決めて、早めに一軍当確させてぇな。

 

丹波さんは多分、メンタルが弱い。だからまず、バットでバックフェンスを指してホームラン宣言でもするか。

 

 

「何だあの一年?!」

「丹波先輩達からホームラン打つ気かァ?ムリムリ!」

「ゼッテー出来ねーっつの!」

 

先輩達からブーイングの嵐だ。これ、やっちゃダメだった奴なのか?戦略的に全然アリだと思うんだけど、挑発。

 

 

___バシッ!

 

「ストライク!」

 

ラッキー、カーブ投げてくれたわ。

見切った、これでヒットはほぼ確実に打てるだろうな。

 

 

___カキーン!

 

「……ファール!」

 

二塁線切れたか。まぁ中に入っててもホームランじゃないし、ある意味ラッキーだったかもな。

 

追い込まれたとか言ってる奴、残念でした。

三振なんて俺、した事ほぼ無いんだよね。

メンタルが弱い丹波さん相手は、打てて当然みたいな?

 

 

___カッキーン!!

 

『や、やったあ〜っ!!』

『そんな。嘘、だろ……?』

 

「一年が先に点を入れるなんて、前代未聞だぞ?!」

「有り得ねぇ、何だアイツ!!」

 

花火一発目完了!とは言っても、マグレも大きいけどな。

丹波さん相手なら、毎試合ホームラン打てるとまでは言えねぇし。

交代される前に、後一発は打って置けたらベストだな。

 

 

 

 

___カーン!

 

「うわぁ?!沢村がバントを決めた!!」

 

アイツ、あんな特技があったのか。

まぁ後ろが続かなきゃ点は入らないけど、アピールにはなっただろ。でもそういや、次は誰かの弟だったな。

 

 

___カキーン!

 

「小湊のツーベース……沢村、打つ前から走ってやがった!三塁も蹴ってるぞ」

「ホームに突っ込んで来るぞ!!」

「……セーフ!!」

 

この回二点目!行けるぞ!!

俺はこの時、柄にもなくテンションが上がってきて、一年生を全員出すと言う言葉を都合良く忘れていたのだ。

 

 

 

 

 

二回裏で増子さんにツーベースを打たれるも無失点。

三回裏では全員ゴロで打ち取った沢村。

俺はギリギリで打席が回って来て、二打席一ヒット一ホームランと言う結果を出したが……チームは惨敗だった。

 

 

「33−3か、どっかで聞いたことある数字だな」

「悔しいけど楽しかった!後、もっと投げたかった!」

 

悔しげな顔をしていても何処か嬉しそうな表情に見えた。

目指すべき高みを知れて、嬉しかったのかもしれない。

 

「つかさ、お前が二軍なのが不思議で仕方ねぇよ。明らかにベンチに入ってる先輩より強いだろ」

「まだ選ばれるだけの信頼が無いって事かもな、悔しい!もっと活躍して、絶対ベンチ入りしてやる!!

後、一軍入りおめでとう!」

「ありがと!沢村の一軍入り、待ってるぜ」

 

俺の予想では、沢村は地方大会の前にベンチ入りする。

だからそれまではボッチで一軍生活になるな。嫌だなぁ。

 

沢村が二軍にいる間は、二軍に落としてくれねぇかな。

そんな都合の良い制度なんて、ある訳ねぇけど。

 

 

 

 

 

 

「結局最後は上級生の圧勝でしたね」

「でも沢村は抑えてたよな、百戦錬磨の上級生を」

「いやいや、アレは捕手が凄いんですよ!

彼、既にクリーンナップ級の打力がありそうですし!!」

「極亜久中学と聞いた時は不安だったが……良い拾い物をして来てくれましたね!」

 

野次馬からの評判が、聞きたくなくても聞こえて来る。

煩ぇな、沢村もスゲェんだよ!

今の所、秘密兵器運用が妥当だから無闇に言えねぇけど。

 

 

「それにしても、沢村くん。何であんな遅いストレートで抑えられてたんでしょう?リードの上手さにも限度があると思うのですが」

『さぁ……?』

「マグレでは?」

 

 

 

 

 

練習試合が終わった後、俺は予習勉強をして沢村はゲームをしていた。

 

 

「お前ら大活躍だったじゃねぇか……って、増子先輩のプリン食べてんじゃねーよ!」

「痛い痛い、ギブギブ!!」

「沢村、それは流石に駄目だって」

 

倉持さんが沢村を締めている時、沢村のメールが鳴った。

口元を悪く歪ませて、倉持さんはケータイを取った。

 

 

「おっ、誰からだぁ?」

「ちょっ、それは田舎の仲間からの大事な!」

「ほうほう、仲間ねぇ〜」

 

悪い沢村、助けてやる事は出来ねぇと思う。

大丈夫。お前は意外と良い奴だから、悪口は書かれてねぇと思うし。

 

 

「えー何々?どうだった、今日いいピッチングできた?こっちのみんなも頑張ってるよ。私達には遠すぎる目標だけど、みんな栄純が甲子園のマウンドに立つ姿を期待して待ってるよ。頑張れ、栄純!!若菜……

テメェ!仲間って何だよ?!彼女じゃねーか!!若菜って彼女かコラァ!!」

「違う!ソイツはただの幼馴染で!」

「ちょっとマウンド上がっただけで調子乗んな!お前はまだまだ一軍で通用しねぇんだよ!!」

 

うわぁ、嫉妬乙。見苦しい。

それにしても、幼馴染とのラブコメは聞いてみたいな。

中学生の頃は、爛れた恋愛してる奴しか居なかったから。

 

 

「そんなの、俺が一番分かってますよ___次マウンドに上がる時は、誰にも打たせるつもりねぇッスよ!」

「今そんな話してね〜〜!!」

「ギャーー!!」

 

可哀想な沢村。彼女候補がいるばっかりに、ドンマイ。

俺にはどうしようも無いので沢村を見捨て、さっさと寝る事にした。巻き込まれたら面倒だからな。

 

 

 

 

 

 

「ウオオオォォ!!伊川勝負だあぁ!!」

「早い!疲れる!くっそ早いよ!」

 

今日も今日とて沢村は、朝から全力疾走だ。

勝負を挑まれるこっちとしては、たまったもんじゃない。

 

学費無償なのは有り難いけど、練習量多過ぎるだろ。

まぁ律儀に沢村との勝負に本気を出してるのが、一番の原因かもしれねぇけどな。

仕方ねぇじゃん、こんな良い奴から楽しそうに誘われたら断れねぇって。普通。

 

 

「クソッ!今日も負けた!!」

「ほら、ドリンク持ってきたぞ。喉渇いてるだろ」

「ゴキュゴキュ、プハ〜ッ!やっぱ運動後にはコレだよな!」

 

こんだけ走り回った後なのに、沢村は楽しそうだった。

まぁそんなに楽しいなら良いですけど、もうちょい楽な遊びを指定してくれると嬉しいんだけどな。

 

 

この頃の俺は、野球をただの遊びだと思っていた。

他の人は、誰一人そう思っては居ないのに。

 

 

 

 

 

 

「良いか!夏の本選まで、後二ヶ月。目標の無い練習は、日々をただ食い潰すだけだ。

小さな山に登る第一歩、富士山に登る第一歩、同じ一歩でも覚悟が違う!___俺達の目指す山はどちらだ。

目標こそがその日その日に命を与える!高い志を持って、日々の鍛錬を怠るな!!」

『ハイッッ!!』

 

この人、マジで演説が上手過ぎるよな。俺ですら一瞬納得しちゃったもん。別に俺は、全国制覇なんて考えちゃいねぇのに。

 

 

 

 

 

 

相変わらず一年生は、サーキットトレーニングとランニングが続いている。一軍に上がった俺も、普通に参加させられてるし。

まぁ別に、野球がやりたい訳でも陸上がやりたい訳でもないから、どっちでも良いんだけど。

寧ろ、沢村がいる分だけランニングの方がマシかもな。

 

 

「あれ、二軍に昇格したのにあまり嬉しそうじゃないね」

「トーゼンだろ!やってる事が今までと一緒じゃねーか!俺は一軍で投げてーのー!!」

「出た!大物発言!でも一軍のベンチより、二軍で試合に出られる方が良いけどな」

 

俺は既に、一軍で捕手として試合に出てるっつの!

ベンチの置物じゃねーし。

 

そんな事を思っていると、沢村が話題に食い付いた。

 

 

「何?!試合?!!」

「これから週末にある試合はダブルヘッダーだから、僕らにも十分出番は回ってくると思うよ」

「マジで?!それスゲェチャンスじゃん!」

 

『一年沢村は、至急Bグラウンドベンチに集合!!』

 

友達を取られて寂しくなって、俺は子供かって脳内でツッコんでいた頃、沢村が高島さんに呼ばれた。

投手としての練習もやらせるから、練習量が更に多くなるぞっていう報告だろうな。俺の時はそうだったし。

 

俺は最悪だ〜って思ったけど、沢村にとっては嬉しいニュースなんだろうな!後で軽く祝ってやろう!

 

 

 

 




当然ですが、降谷とのキャッチボールは無くなりました。
後、大きな改変要素は2つあります。
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