拗らせ男のパルデア旅   作:わーい

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ポケモン書くの楽しい


第2話

「失礼します」

「ああ、お待ちしておりましたライト先生。そちらへお掛けください」

 

 校長室。どうにも、そわそわするというか、落ち着かないというか。スクール時代にも色々と、この手の部屋に呼ばれた時は、悪いことをしていないと頭では理解していても叱られるんじゃないか、という思考が常に片隅にあった。

 お高そうなソファに腰掛け、校長が淹れてくれたこれまたお高そうなお茶を飲む。俺なんぞに高級な味が理解できるとは思わないが、とりあえず美味しい。少なくとも、普段飲んでいるまとめ売りの徳用のものよりは。

 

「まずは、ネモさんのバトルの相手をしてくださっていることへの感謝を」

「あ? あー……まぁ、給料もらって碌に働いてない立場なんで、生徒からの要求断るのもなぁってとこで……」

「お恥ずかしいことに、我々教職員にも、ネモさん相手に良い勝負ができても勝てる人間は居ませんから。彼女の成長を促進する意味でも、ライト先生の存在は非常にありがたいのです」

「それは、どうも?」

「はい。誇るべきところは誇ってください」

 

 笑顔でそういう校長。素直に"俺すげーだろ''的なスタンスをとるのも恥ずかしいため、どうにも決まりが悪い。というか、前々から思っていることだが。この人、俺のことを孫扱いしてるんじゃなかろうか。

 たまに飴くれるし、何か困っていることがないのか定期的に聞いてくるし。まぁ、気にかけてくれることは凄くありがたいんだが。

 

「さて。本題に入りましょうか。……ライト先生、貴方には、宝探しを命じます」

「宝探しって……」

「と言っても、深く捉えなくても構いません。ライト先生はパルデアに来て数年程度、まだ碌にこの地方を周れていないでしょう?」

「それは、まぁ」

 

 実際。トップに誘われてここに来てからはアカデミーに常駐していたし、強いていうならアオキさんに誘われてチャンプルシティに行くか、ナンジャモの撮影に出演させられた時にハッコウシティに行ったぐらいだろうか。

 それも宝食堂、バトルコートぐらいしか周れていないため、街を堪能できたかと言われるとそういうわけではない。

 各地方をフラフラしていた時に少しばかり歩いた経験はあるのだが、どうにもパルデアで経験した他の出来事の方が記憶されている。

 

「ご存知でしょうが、宝探しの目的の一つには、パルデアの雄大なる自然、数多のポケモンとの出会いを経験する、というものがあります。ライト先生にもここらで一つ、パルデアの魅力を体感してもらいたいのですよ」

「……了解しました」

「それは良かった。パルデア地方は自然豊かな地、ライト先生が住まわれていたガラルにも劣らないはずです。貴方がこの旅路で良き出会いに恵まれますよう、お祈りしていますよ」

「ありがとうございます。……それでは、私は用意がありますので、これで」

「はい、宝探し開始は明日の昼頃です。それまでに準備をよろしくお願いしますね」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……行きましたか」

 

 結局のところ、これは私のエゴなのでしょう。ライト先生は確かに、過去の経験を乗り越えた。それは間違いありません。そうでないのなら、そもそもこの学園に訪れることもしなければ、ネモさんのような才気溢れる若いトレーナーなど視界にも入れたくないはずですから。

 しかし。結局のところ、彼はあくまで"乗り越えた''だけに過ぎません。乗り越えたこと自体、確かにそれが成長かと問われれば、そうなのでしょう。しかし、まだもう一段、彼には破ることのできる殻がある。

 

「失礼します、クラベル校長」

「オモダカさん?」

「ライト先生が来室していると聞いたのですが……一足遅かった、ということですか?」

「先ほど、宝探しの準備をしに自室へと戻られました。急ぎの用なら、今から──」

「いえ、そこまでの用事でもありませんから」

 

 トップチャンピオンの座に着くオモダカさん。本人は"ネモさんよりも弱い''等と謙遜しているが、果たして実際はどうなのか。少なくとも、パルデア地方におけるトレーナー教育の最上位部門を担っている以上、その実力は間違いなくチャンピオンとして相応しいものであることには変わりありません。

 オモダカさんとライト先生は確か、何度かコンタクトが。というか、以前バトルをしているところを目撃したこともありますが、果たして用事とは何のことなのか。

 

 よく言えば効率的、悪く言えば人使いが荒い。オモダカさんは教育者としての側面よりも経営者、地方のトップとしての側面が強く、時に感情を度外視した判断を取ることもある。無論非情というわけではないにせよ、感情的な面で成長の余地を残すライト先生との関係発展に関しては多少慎重さを残す必要がある、と言うのが私の見解です。

 

「ライト先生に、リーグへのお誘いをしようと思いまして。あの実力を遊ばせておくのはあまりに勿体無い」

「……それは、しかし。彼の実力で四天王となると──」

「ええ。彼は、この地方の四天王としては"強すぎる''。故に、譲るのはこのポスト。トップチャンピオンの地位です」

 

 あくまで。パルデア地方の四天王は、"チャンピオンクラスにたどり着くための試験官"です。他の地方ならともかくとして、この地方において、チャンピオンクラスの実力を持つ人間がそのポストに就くことはあまり望ましくない。

 例えばですが、仮にネモさんが四天王の座についた場合、このパルデア地方で最終試験を突破できる人間は殆どいないでしょう。ライト先生やオモダカさん、その他チャンピオンクラスの人間が戦えば或いは、と言ったところでしょうか。

 

「トップチャンピオンの地位を?」

「ええ。彼がこの地位につけば、私は後進の育成及びパルデア地方におけるポケモンバトルの更なる普及、トレーナーの実力向上に全力を注ぐことができる。これは、決して無視することができるメリットではありません」

 

 実際、オモダカさんがパルデア地方におけるバトル教育にもたらした恩恵は並大抵のものではない。アカデミーにおける数々の施策、ジムチャレンジの難易度調整、各ジムリーダーの実力を図るための視察、他地方への出張──これは主にアオキさんの担当ですが──とにかく、色々な手を打っていることに間違いはありません。

 確かに、チャンピオンクラスの最終試験官の役割から離れることで育成面に注力し、今までより大きな成果をもたらすことができる、と言うのは、合理的な話ではあるのでしょう。

 

「と、なると。彼にチャンピオンクラスの試験を」

「ええ、そのつもりでしたが──クラベル校長が判断したのであれば、それに従いましょう。人の伸び代を見抜く観察眼に関して、貴方は私の数段上を行きます。それに、ライト先生自身の人生ですから。どうあろうとも、それは彼の自由」

「ええ、結局のところ、我々はその行く末を見守ることしかできませんから」

 

 どこへ行き、誰と出会い、何を為すのか。それを決めるのは彼ら自身であり、我々にできることは精々その道を少し舗装してやる程度。しかし。願わくば、彼らの進む道が、光に満ち溢れたものであるように。その旅路の終着点に辿り着いた時、なるべく後悔のないようにある事を。無力という事を知りながらそう思わずにはいられないのが、教育者としての宿命なのでしょう。




tips ライトはセミファイナルでキバナを下している
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