拗らせ男のパルデア旅   作:わーい

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第3話

「……なんだその珍妙なポケモン」

「えーっと……アギャスです!」

「アギャス?」

「この子の名前で──」

「違えっての。ライト兄ちゃん、コイツはミライドンっていうポケモンだぜ」

「ほー、ミライドンね……つか先生だ先生」

「あ、ペパー!」

「よう、アオイ。一人でヌシ探しってのも効率悪いし味気ないだろ? 誘いに来たぜ!」

 

 あの時死人もかくやという表情をしていた子供が、よくもまぁここまで立派に育ったものだ、と。最近はオカンよろしく俺の食生活にダメ出ししてくる少年、ペパー。彼自身単位取得がかなり怪しく、進級の件で突いてみれば毎回面白い反応をする。

 それはともかくとして。相棒のマフィティフの治療のためパルデア各地に散らばる秘伝スパイスとやらを探すべく、それを守るヌシを捜索する。それこそが、彼の宝探しにおける主目的であるとのことだ。

 

「ライト兄ちゃんは見送りかなんかか?」

「いや、俺も宝探し──つか、パルデア地方を周ってみろ、って。校長直々のお達しだ」

「あー、確かに。兄ちゃん、オレと暮らしてた時もほとんど出掛けてなかったもんな」

「ペパーと暮らしてた!?!?」

「お、おう。子供ん時にちょっとな。そんな驚くことか、これ?」

「ショ、ショタコン」

「違う」

 

 断じて俺はショタコンではない。そりゃあ幼少期のペパーに父性的感情を抱いたことがないかといえば答えはノーになるが。流石にこれぐらいは許されるだろう。

 そう言う関係のヤバい人間は,ガラルに行けばいくらでも湧いているところを見られる。ダンデはどちらかというと野生児的なところがあり保護者面をする連中が多く湧いていたが、キバナはそれはもう凄かった。なんなら旅先でその手の変態に出会すこともあったらしいでくわす事もあったらしい。

 

「あ、そういえば。初めまして、アオイです!」

「今更かよ」

「いやー、形式上? あ、ライト先生のことはネモとペパーから聞いてるから知ってるよ!」

「そうか。なら必要ないと思うが、ライトだ。一応ここの学校の教師やってる。なんかあったら言えよ、クラベル先生までぶん投げるから」

 

 面倒ごとは基本クラベル先生にぶん投げておけばなんとかなる。校長含め教師が一掃されてからは俺が直接手を出さないとどうにもならない面倒ごとが減って助かっている。そもそもが社会不適合者、言って聞かなきゃぶん殴る程度の解決法しか持ち合わせなかった俺と違い、彼らは実に教師らしい。

 

「……ライト先生って、本当に先生?」

「立場上はな。授業を持たず生徒を助けず、ただひたすらに威張り散らす特権持ちだ」

「ダメ人間だ!?」

「否定はしない」

「そこは否定しようぜ兄ちゃん……」

 

 実際に否定のしようがないから仕方ない。世間一般から見て今の俺は間違いなくダメ人間、擁護するとすれば一応自分で稼いだ金で自立した生活を送っている,というところなのだろうが,肝心の仕事内容が食って寝てポケモンの世話して偶にネモとバトルする、ぐらいなのだからどうしようもない。

 現に、ガラルの知り合いからも色々と、偶にお叱りのような言葉を受けることがある。特に俺が一番苦戦したであろう氷タイプ使いのジムリーダーからは。

 

「アオイは何をするつもりなんだ?」

「うーん、まぁ、色々と? ジムに行きたいし、ペパーのこともあるし、後は──」

「ま、時間はいくらでもあるからな.好きにすりゃあいいさ」

「うーん見事なまでに他人事だ」

「事実他人事だからな。……まぁ、最低限の監督責任ぐらいはあるから、一応ヤバそうなとこに行く時は声掛けろよ。護衛ぐらいならやってやる」

 

 クラベル先生曰く。今回俺が宝探しに行くに際し、名目上の仕事は"生徒たちの護衛"。宝探しにおいてある程度のリスクはつきものであり、それを踏まえた上で冒険を行うというのも一種の醍醐味ではあるのだが。それで生徒の命が失われるとなると、流石に学園の責任問題になる。

 故に、生徒がそう言った、命の危機を伴いかねない場所に赴く際に、一応の護衛として同伴するのが俺の仕事内容であるらしい。

 

「お、ならヌシ倒す時には声掛けるぜ。兄ちゃんがいればまぁ大丈夫だろ!」

「ライト先生って強いの? そうは見えないんだけど……」

「兄ちゃん──っつか、学園の先生は基本全員がジムリーダーぐらいには強いからな。元ジムリーダーも居るし」

「な、生意気な口効いてすんませんした!!!」

「おう、良い心がけだな。おら、サンドイッチ買ってこい」

「へい親分!」

 

 バカなやり取りをしているうちに、時刻は昼頃と言ったところだろうか。ライドポケモンがいるアオイはともかくとして、ペパーがある程度の距離を移動した上で野営の準備をするともなれば、そろそろ出発したほうが良い時間だろう。

 

「うーん……確かに。じゃ、そろそろ私は行くね」

「最初はどこに行くんだ?」

「セルクルタウンかなぁ。一番近いし」

「オ、オイ、アオイ。オレとのヌシ探しは?」

「うーん……がんばれ!!」

「ったくよお。見つけたら連絡するから、そん時ゃちゃんと来てくれよ?」

「うん! じゃ、行くね! また今度!!」

 

 そういって、ミライドンなる珍妙なポケモンに乗って爆走していくアオイ。ここはテーブルシティ、パルデアにおける中心街。当然、昼間とはいえ、観光客なり地元住民なり、多くの人間が街を出歩いているわけで。

 

「──おいバカ!! こんな人多いとこをライドポケモンで爆走するな!!」

 

 一応,そう叫んではみるものの。既にアオイの背中は遠く、風を切る音に耳が支配されているであろうことからも、彼女にこの声が届いているとは思えない。まぁ,これもいい薬だろう、と。すぐに指導員に捕まり、説教を食らうアオイの姿を見て、一つため息をついた。




冷静に考えて、あんな街中をライドポケモンで爆走したら死人出ると思うんですよね
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