【サンプル掲載】STARLIGHT FANTASY ーそしてアイドルへー 作:感満
最初は戸惑ったものの、人類は対抗する手段を手に入れ始めた。
魔法が効かないのなら魔術を開発し、武器を作って戦って。
涼さんも夏樹さんもすごく強くなって。
私達は思ってたんだ。このまま何とかなって、この生活が続くんだって。
それなのに、あいつが現れた。
空から何かが飛んできた。また空を飛ぶ魔物かなとみんな最初は思ってた。
それは、近づいてくると人型の魔物なのが分かって。
城の上にまで来たの。
弓や銃、魔術でお城の兵士さんたちがその魔物を攻撃したんだけど、腕を一回横に振ると全部なくなっちゃった。
そして、もう一回腕を振ったら――
お城が壊れちゃったんだ。
「さて、行こうか夏樹」
「そうだな。だりーも逃がせたし後はなんとかすんだろ」
斧にもなるギターを担いだ夏樹さんと涼さん。
2人は吟遊詩人のサブクラスでウォーリアーを取っている。
私はネクロマンサー。特殊クラスなんだって。
あの世とこの世を繋げる、マリオネットから派生するイレギュラー。
「じゃあ小梅、後は頼んだぜ。まぁ、来なくてもいいけどな」
「涼さん、私は何度も言ったよ。後で行くから、絶対に死なないでね」
2人はお城を襲った魔物と戦いに向かう。
今は拓海さんと里奈さんと亜季さんが先に向かっている。
5人揃っても、きっとあれには敵わないだろう。
あの人たちが敵わないなら、今ここにいる人たちの中であれに勝てる人はいない。
だから涼さんと私はたくさん話して、後に託すことにした。
2人が墓地へと駆けていく。場所を指定したのは私だ。
戦場を誘導してそこで戦う予定だ。すぐに私も向かわなくちゃいけない。
「だから、一回で覚えてね」
乃々ちゃん、日菜子さん、小春ちゃんに笑いかける。
皆真剣な目でこっちを見てる。乃々ちゃんも今日ばかりは目を逸らすことはなかった。
「ここにあるのは契約者の血判が押された契約書。上の方が使役される側、下が使役する側。私達ネクロマンサーはゾンビを単純に操るだけじゃなくて、生前契約でそのままの姿を残して従えることが出来るんだ。その魔術を、今から言うね?」
本職ではないマリオネットでは本来使えないけれど、3人同時での発動と契約の代償を使えばきっと使えるはず。
細かい魔術の説明をしながら、3人それぞれにやらなければいけないことを伝えていった。
「ここには既に、涼さん・夏樹さん・拓海さん・里奈さん・亜希さんの血判が押されているの。これから、このナイフで3人の指を切るね」
差し出された手をもって、出来るだけ痛くないように親指を切る。
ぷっくりと出てきた血を伸ばして、血判を作って契約書に押してもらう。
「ありがとう。じゃあ私は」
左手首を勢い良く切って、血を溢れさせる。
それを右手に塗りたくって、契約書に勢いよく押し付けた。
血で塗られた手形がくっきりと契約書に残された。
魔力を張り付けて、呪いを残す。
「これから、この契約書からは微弱な魔力が流れるよ。家の中にいるときは大丈夫だとは思うけど、お外にいるときは魔物を引き寄せちゃうから気を付けてね。ダメだと思った時には捨てて逃げるんだよ」
「さすがにそれは……」
「日菜子さん。誰一人かけてもこれは意味を出さないんだよ。これを守って誰かを失うなんていみがないんだから絶対にやめてね。乃々ちゃんも小春ちゃんも」
小春ちゃんは、受け取った契約書を抱きしめて首を横に振っている。
頭を撫でようとしたけど手は血で汚いし、左手首の出血を抑えているから撫でることはできなかった。
代わりに乃々ちゃんが、後ろから小春ちゃんを抱きしめてくれました。
そんな乃々ちゃんも、顔を伏せてしまっています。
「大丈夫だよ。また会えるから」
その時、後ろから大きな火柱が5本立ち昇った。
あれは、涼さんたちの……。
もうそろそろ厳しいのかな?
「じゃあ皆、またね。バイバイ」
私も血を流しすぎて、ちょっと危なくなってきた。
墓地に行こうと踏み出した足がちょっとふらついちゃった。
「……フヒ、小春。ちょっとそれ貸して」
3人を逃がすために待っていてもらった輝子ちゃんが、小春ちゃんから契約書を受け取ると私の腰からナイフを取って自分の指を切って上の方に捺印した。
「輝子ちゃん……」
「おぶされ、小梅ちゃん。そのままじゃたどり着けないぞ」
「けど、3人を送って行って……」
「いいじゃないか。一緒に行かせてくれたって」
輝子ちゃんが私の前でかがんでくる。断ったけど、輝子ちゃんは姿勢を崩さない。
私はゆっくりと輝子ちゃんへ体重を預けた。
「こんなに血を流して、まともに歩けるはずがないだろう」
「大丈夫だよ。たどり着けさえすれば……」
「魔物が入り込んでるかもしれないんだぞ」
輝子ちゃんの言う事に、反論が出来なかった。
そしたら、もう一人待機していた美玲ちゃんがこちらに寄ってきた。
「ショーコもそれじゃ戦えないだろ。ウチも行くぞ」
そう言って、美玲ちゃんも契約書に捺印をした。
「それじゃあ護衛が」
「まだ街には仲間がいる。大丈夫だ」
「小梅ちゃん。私達は大丈夫です」
後ろから、日菜子ちゃんが私の髪を梳くように撫でてくれた。
輝子ちゃんと美玲ちゃんを見るけど、2人は私のいう事を聞くことは無さそうだった。
「ほら、時間がないんだろ?あっちも小梅ちゃんも」
「行ってください。小梅さんお元気で」
「ばいばい・・・」
乃々ちゃんと小春ちゃんが別れの挨拶をいってくれた。
もう声を出す力もなくなってきてたから笑顔で返した。ちゃんと、笑えていたかな。
次に気が付いた時には、もう墓地で。大きな音で目が覚めた見たいだった。
左手は輝子ちゃんが押さえてくれていて、あまり血が流れていなかった。もしかしたらもう血が少ないのかもしれない。
着いた時5人はもうボロボロだったけど、魔物の方も傷ついていた。
もしかしたら、と思ったけどやっぱり今はちょっと足りない。
「お待たせ、皆」
輝子ちゃんに立たせてもらって。準備を進める。
少ない血で地面に陣を書く。
「私達も行くゾ行くぞイクゾォオオオ!」
輝子ちゃんが叫び声をあげながら、腰に差して私のお尻に敷いていたハルバートを掲げて駆け出していく。魔物が動くのが見えたからだろう。
美鈴ちゃんも眼帯に集めた魔力を両手の爪に集めて突っ込んでいった。
「おう、小梅。間に合ったか」
「もう限界ぽよー」
「戦力が及ばず、残念であります! ここで倒せるのが一番でしたが」
「まぁ、そしたら小梅が痛い思いした意味がねぇけどな」
「来なくていいって言ったのにしょうもないやつだな」
朦朧とする意識の中、5人が集まってきた。
こちらがやろうとすることを警戒しているのか、魔物が輝子さんを吹き飛ばし向かってくる。
それを美玲さんが、必死に止めていた。
「じゃあ、皆……行くよ。また後でね」
そう言って私は最後に魔術を唱えた。
楔が7本飛んで行った。
それぞれが皆の心臓を貫いた。
輝子ちゃんは吹き飛ばされて、灰の中に倒れていたけど、他の皆も呪いを受けて倒れる。
その様子に、魔物も戸惑っているようだった。
そして、私もナイフで自分の心臓をひと突きにした。
私の体が土塊になってボロボロと崩れていく。
それに呼応するように、皆の体も崩れていった。
視界かボロボロになっていく中、笑ってる魔物の姿だけが見えた。
けど、これで完成なんだよ。私の呪術『アンデット・ダンス・ロック』。
こんどは私もあなたと戦うからね――。
朽ち果てて地面と同化した小梅たちを見て、魔物が城へと戻っていく。
完全に見えなくなったときに、『何か』が動いた。
それは本来は誰にも見ることはできない小梅の友達。
その場に浮いた彼女は異変に気が付く。
そして、ポルターガイストで地面の灰を吹き飛ばした。
土塊になったのは7人。術者の小梅。そして拓海・里奈・亜季・夏樹・涼に美玲。
――1人足りない。
「ゴホッ……」
灰まみれになり、灰に呪術を阻害された輝子が残っていた。
気が付いた彼女は周りを見回す。
そこには荒れた大地と、微妙に土の色が違う7つの跡。
そして、灰に飲み込まれて『知った』絶望。
輝子だけが世界に取り残された。
「あ……、あ――ぁぁぁあああああああ!!」