【ACF/EZ】アーマード・コア フェイト/エクストラ ゼロ【A.C.2030=E.D.-01】

 それは本編開始前の物語。そして本編開始前の前提が異なる世界線。パラレルワールドの過去話。

 1970年代の大崩壊(ポールシフト)を超える、大破壊が予期される時代。
 開発放棄が予定されていた真自立型人工知能の再開発と完成。
 従来の兵器を超えるARMORED CORE(アーマード・コア)の完成。
 トワイス・H・ピースマンが、ムーンセルのトライアルを《月の聖杯戦争》に書き換える以前の天啓聖杯戦争。
 地球暦の興り。

 かくして古き神秘の操り手と新しき例外の担い手は、
 自由意思の象徴たる傭兵という立場から、国家による支配体制が崩壊した未来にて、

 ────運命の邂逅を果たす。


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月光の騎士

 

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 2030年。人類世界を二分する一般世界と魔術世界は荒廃の一途を辿っていた。事の発端は1970年代イギリスで起きた大崩壊(ポールシフト)。これにより────

 

 一般世界では資源が枯渇し、各国の行政は破綻。人類は恐慌し、今を生きる為に限られた資源を奪い合うようになった。個人間の諍いは暴徒同士の争いへ膨れ上がり、死の商人は奇貨居(きかお)くべしとばかりに買い手は紛争を戦争へ。混沌とする戦乱の時代の夜明けは、しかし巨大連合企業・西欧財閥によって統治された。財閥の理念は“全世界の資源・資産の平等分配”であり、徹底した管理社会によって人類世界は綱渡りの存続を果たす。────その代わり、人類は飼い馴らされ、開拓精神を忘れ、文明は停滞し、悲喜劇も発明発見もなく、悲観主義(ペシミズム)遺伝文(ミーム)化される、ただ寿命死を待つだけの世界へと成り果てた。

 

 一方、魔術世界では太源(マナ)が枯渇し、古き神秘(魔術)は死に絶えた。魔術師(メイガス)はその終焉を受け入れる代わり、神秘延命のため禁忌たる近代科学を取り入れることで“魂”の概念を再定義し、擬似霊子を生み出した。それは電脳世界へ意識を接続(データ・アクセス)できる擬似元素。不屈の精神で新時代を開拓した、まったく新しい神秘の操り手。彼らは魔術師(ウィザード)として復活し、魔術世界で名乗りを挙げる。

 

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 かくて開幕の鐘が鳴る。その目覚めは、鮮烈に。

 

          †

 

 西暦2030年。某月某日。中東紛争地域。

 澄んだ青空と照りつける太陽のもと、金髪碧眼の麗しき少女は広大無辺の砂漠を歩き、スマホ(電子端末)片手に説明する。

 

「要するに────」

 

 一般世界と魔術世界は、基本的に関わらない。魔術世界の方から関わりを拒絶する。なぜなら相容れないから。

 

 魔術とは神秘。神秘とは()()()()()故に魔術たりえる。その()()が基盤となり、魔術師は神秘を実行できる。謎ではない神秘は、ただの科学化学(バケガク)だ。

 

 たとえるなら神も仏も、一般世界の人間は“その名は知っているが詳しくは知らない”程度の認識だ。一方で魔術世界の人間は“その名を知り、それらの力を引き出す方法も知っている。ただし本質までは分からない”程度の認識である。その差が、人間と魔術師の違いであるとも言える。

 

 電子端末の画面に映る十字架のアイコンから、成熟した男性の声色が響く。

 

「なるほど。そうなると、凛。それを知ってしまった一般世界の人間()は、どうなってしまうんだ?」

 

 男性は恐縮していると言いたげに問いかける。

 

「プライドもクソもない()()()がよく言うわ」

 

 凛は鼻で笑うと、相手の疑問をかなぐり捨てた。

 

 魔術師とはその大半が魔術協会と呼ばれる組織に身を置く。それと長らく敵対していた地下組織が、主と奇蹟を護り信ずる聖堂教会である。

 

 その聖堂教会は大崩壊(ポールシフト)の後、西欧財閥と協調することで存続に成功する。しかし、もはや悲観主義の時代が到来した昨今において、宗教は民衆にとって無用の長物と成り果てていた。これにより現在は宗教勢力というよりも、()()()()()()の一部という形で組織の体裁を守っている。

 

「そんなアイコンで“自分は一般人です”なんて嘘が通ると思った? 今のご時世、宗教は時代遅れなのよ。あんたウィザード相手にケンカ売ってんの?」

「そんなつもりはなかったんだが……アイコンを決める時、一度考え出すとなかなか決まらなくて……結局、なんでもいいから今、身につけているものにしようと思ったら、十字架(これ)しか身につけていなかったんだ」

「なんとも敬虔な神父様ね。ありきたりな説教すぎて吐き気がするわ」

「そう皮肉を言うな。……しかし君もうっかりさんだな。どうして私が()()だとは思わない?」

 

 男の言葉は正鵠を射ていた。

 

「さすがは霊子ハッカー。いつの間にか私の電子端末にハッキングして、内蔵カメラから映し出される私の服装でも盗み見たのかな?」

「っ……」

「なに。隠し事していたのはお互い様だ。仲良くしよう。そのために、もう一度、問い直そう。それを知ってしまった一般世界の人間()は、どうなってしまうのかな?」

「────は? なに言ってんの? あんた聖堂教会の人間じゃ……」

「父はそうだがね。私は一般側の人間なんだ。しかし()()()の奇蹟は修得している。たしか古い言葉では……私のような者は“魔術使い”と言うのかな?」

 

 魔術師は根源を目指す生き物だ。根源とは『』を意味する。およそ今の常識では言葉にできない代物と思えばいい。とにかく魔術師は根源を目指す手段として魔術を使う。もし根源に至る方法が八極拳にあると分かれば、全ての魔術師は拳法家に鞍替えするだろう。魔術師とは生来そういうものだ。

 

 しかし魔術を根源へ至る為に使わず、あくまで私的な理由で魔術を道具のように扱う者は、魔術師と区別して魔術使いと呼ばれる。

 

「…………。その答えは、さっき話したことから推測できることだけど」

 

 凛は考えるべき事を置いておき、ひとまず質問に答える。

 

大崩壊(ポールシフト)によって太源(マナ)が失われた。ひいては魔術基盤の意味も失われた。故に神秘は、もう信仰を必要としない。つまり私たちウィザードは、もはや()()()()()を行なう必要がないのよ。それを知った者を()()必要がないってわけ」

「ふむ?」

「だから一般世界の人間が魔術についてどう知ろうが構わない。まぁ将来、枯渇した太源(マナ)がどうやってか知らないけど復活するなら、やっぱり魔術は秘匿するべきモノだけど……私はそこまで希望的観測は持たない。将来のメイガスのために、わざわざ神秘を秘匿してやろうとも思わない」

「ほう? だが、それこそ君が忌み嫌う悲観主義の表れではないかね?」

 

 凛は毅然たる面持ちで砂漠の終着点を見据える。

 

「魔術師とは根源に至る者。であれば君は、()()()()()()()()()()()()辿()()()()()()と、その将来を見限っていることになる。それは、かつての仲間であるメイガスへの冒涜であり裏切りだ。その世界では大罪人となるべき振る舞いだろう」

「そうなるわね。もし今の話をメイガスに聞かれていたら、そいつは銃でもなんでも使って私を殺しに来るでしょう。……で? ()()()()()()()()()()()()()()って話よ。旧時代の魔術のために近代科学に手を出した時点で、因果が逆転してるのよ。根源を目指したいなら、魔術が民衆に暴かれる前に辿り着けばいいだけの話。それが真の魔術師たる在り方。銃を持ち出した時点で私たちウィザードと同類。ならウィザードをやればいいだけの話。過去の遺産に縋ってそれをかなぐり捨てるような方法を採るおばかさんを相手にしているほど、こっちは暇じゃないの。私は、私のやり方で山を登るだけよ」

「なるほど。最高にロックだな」

 

 男は呆れたと言わんばかりに失笑する。

 

「しかし目的地に早く辿り着きたいなら、あえて敵を増やす必要はないと思うが?」

「敵が少ないと経験値が貯まりにくい。それってつまり私自身のレベルが上がらない。あとは……お分かり?」

「訂正しよう。君は狂えるほど麗しい登山家だよ。祈りと拳で野生の熊を粉砕する求道(ぐどう)挑戦者(チャレンジャー)だ」

 

 男は思い出す。“遠回りこそが最短の道だった”……そういう漫画を読んだことがある。

 

「ところで、あなた“一通りの魔術”は修得したと言っていたけど……」

「魔術ではない。奇蹟だ」

「……どっちも信仰をエネルギーにして神秘を獲得する儀式であることには変わりないでしょ。それに聖堂教会の魔術は《洗礼詠唱》だけだし……そこを気にするあたり、あなたって根っからの職人気質よね。魔術使いのくせに。あぁ……もしかして父親が代行者だったとか? それなら厳格そうで説明がつくわ。うん」

「ノーコメント。話を戻そう。君は何が聞きたいのかね?」

「あんたの目的。聖堂教会を親元に持つ一般寄りの人間が、魔術(こっち)側の人間()にコンタクトを取ってきたってことは……なんでかっていう考えまでは及ばないけど、どう考えても怪しいってのは分かる」

「ははは」

「笑ってないで答えろ! もう町に着くから、話してる暇はないわよ」

 

 凛の視線の先には、カゲロウの町が広がっていた。どの家屋も砲弾によって屋根や壁が崩壊しており、人の気配はさっぱりと感じられない。まさに死の都だ。それでも町中では、戦争によって飢えに苦しむ多くの人々が懸命に暮らしている。

 

「……着けば分かるさ」

「は?」

 

 突として男は通信を切った。凛は嫌な予感を拭えず背筋に悪寒が走り、咄嗟に町から死角となる砂漠の物陰に飛び込んだ。砂煙が立って位置がバレるだろうが、既に目視されている状態ならいつ狙撃されてもおかしくない。

 

「チッ……罠か。やっぱりというか、どうしようっかな……」

 

 凛は肩口からベルトを通して背中に回していた突撃銃(アサルトライフル)を構えると腰を低くして移動する。腰に付けた鞄から双眼鏡を取り出して、物陰の外に差し出す。ふらふらと手を振るように双眼鏡を囮に使えば、反射光によって目標を発見した狙撃手が撃ってくるはずだ。

 

「……? 反応がない。ブラフだとバレたか? ────いや、まさか迫撃砲!? まずっ! だとしたら急いで離れて解放戦線(レジスタンス)のみんなに連絡を……!」

 

 解放戦線(レジスタンス)。それは西欧財閥の理念に異を唱える反抗勢力。といってもひとまとまりの組織ではなく、多くの派閥によって分かれている。凛は穏健派のレジスタンスに所属し、難民の救助や食料品の輸送などの人道支援を行なうが、その数は少ない。ほとんどは過激派として犯罪行為を繰り返し、テロ事件を起こすなどしている。おかげで世界からはレジスタンスというよりテロリストとして見なされており、肩身が狭い思いをしている。そして悲しいことに、解放戦線の穏健派と敵対する勢力の中で最も多いのが────同じ解放戦線である過激派だったりする。

 

「西欧財閥の領域でもないこんな辺境に、西欧財閥(あいつら)の手が届いているわけがない! どう考えたって過激派の連中だわ! あっの神父(やろー)、次会ったらブッ殺す!」

 

 また通話を掛けてくるようなら霊子ハッキングで、インターネットを介し神父の電子端末に届いてフィンの一撃(中指)入れ(立て)てやる。それで心臓停止させる。もし顔を合わせるようなことがあれば問答無用で銃乱射。

 

「────もしもし! ごめん! 町中に敵がいた! 正体は不明! 街の食料輸送は中止! 一時間以内に私が片付けられず連絡がなかった場合は禁止! 以上! じゃあ戦闘に入るから、そっちからは何があっても連絡しないこと! 応援も要らない!」

 

 電子端末の通話先に一方的な報告を伝えた凛は、どのみち一夜明けて潜伏し、偵察をこなさなければ敵勢力の全滅は不可能であるため、食料輸送が二日は遅れることを覚悟する。そのぶん死ぬ子達も居るかもしれないが、今はそんな感傷に浸っている余裕はない。

 

 ────凛の頭上に大きな影が降る。

 

「っ!?」

 

 迫撃砲の砲弾? いや、それならもうとっくに着弾して五体は砕け散って死んでいるはずだ。反射的にのけぞった凛は頭上を仰いで呆然とする。

 

 それは鉛色の巨人だった。背部の噴射機構(ブースター)から轟音とともに青い燃料を蒸し、両腰部には主兵装のライフルと副兵装のレーザーブレードを装備している。巨人の武器というからには当然それも巨大であり、旧時代の戦車を三段積み、いや五段積みしたくらいの大きさか。とにかく何もかもが規格外の最新兵器であるかに思えた。そして、その最新兵器とやらは、風の噂で耳にしたことがある。

 

「────ARMORED CORE(アーマード・コア)……」

 

 西欧財閥にて軍事産業の一角を担う聖堂教会が発明したとされる、新時代を告げる黒い鳥。

 

 飛行時の轟音を接近されるまで感じさせなかったのは、どういう技術によるものか。音を置き去りにしているとしか考えられない。つまりは音速を突破している。戦闘機なら当然だろう。だが、それを人型の巨大兵器で実現させた。空力抵抗などはどうなっているのか。そして一秒後、亜音速衝撃波(ソニックブーム)が砂漠の表面を撫でるように(さら)うだろう。

 

 凛は震え上がる。それは恐怖というよりも、魔術師としての好奇心として戦慄(ゾッと)した。

 

 今、手が届く。世界から太源(マナ)が消失しても、人間の体内には小源(オド)がある。その魔力はマナと比べて非常に少ないエネルギーだが、凛の才能あふれる魔術回路(マジック・サーキット)なら不可能を可能にする。魔術基盤に接続してガンドや宝石魔術を使える。そして、その魔術に乗せて電脳空間専用魔術(コードキャスト)を使えば、アーマード・コアに対する霊子ハッキングが可能だ。そうすれば頭上の脅威(アーマード・コア)の弱点さえ看破してみせる。しかしそれは危険と隣り合わせだ。当然、霊子ハッキングに対する霊子防壁《ファイアウォール》は用意されているはず。魔術の秘匿を忌み嫌う聖堂教会なら、それ相応の嫌らしい防壁を用意(セット)していることだろう。それでも、どんなものでも、邪魔な壁(ファイアウォール)があるのは当たり前のことだ。それをくぐり抜けてこそ一流の霊子ハッカー。そして、そこに山があるなら登らずにはいられない性分こそ────凛の本質だった。

 

「《ガンド(フィンの一撃)》────《霊子ハック開始(ハッキング・スタート)》!」

 

 凛の思考時間は刹那の間際。頭上を黒い鳥が通り過ぎる瞬間、凛の指先が銃を模し、親指のつま先を照準として、人差し指の先から呪いの弾丸が発射される。それは脚部破壊も狙っており、高速で飛来するガンドは偏差射撃によって右脚部底面に命中。爆発と爆音を上げながら火花を散らして下降、黒い鳥は砂漠の上を滑走する。

 

 そしてガンド着弾から0.5秒以内に、凛はハッキングを終了させていた。電脳空間へ意識が接続されている間は無防備だが、基本的にネットの海は光速で動いているため、それに対応できるプログラムさえ走らせておけば、一瞬で仕事は終わる。凛の感覚からしたら約一時間かけてファイアウォールを突破し、なんとか大体の性能は突き止めたが、弱点らしきものは発見できなかった。

 

「さて────」

 

 生身の人間と、巨大な兵器。それ同士がタイマンで戦うなんて馬鹿げている。しかも相手は音速で動く。到底逃げられっこない。一か八か霊子ハッキングで内部から完全破壊を狙うしか勝ち目がない。裏を返せば、それさえできればどんな機械だろうが一発で倒せる。それができなければ一撃で殺られる。ウィザードとアーマード・コアの戦闘というのは、一秒もかからず決着がつくもの。そういうものだと、凛は覚悟した。

 

(素直に殺されますか)

 

 コアの破壊どころか弱点も発見できなかった。だが次があれば壊せる。だがその次はもうない。そんな凛の諦念も束の間。

 

「────素晴らしい」

 

 不意に、成熟した男の音声がノイズ混じりに響く。その声は黒い鳥から発せられており、砂漠に反響して青空に広がった。

 

「……え。その声は……」

 

 燦々と照りつける太陽のもと、黒い鳥は駆動音を響かせてハッチが開き、神父服を着た男が姿を現す。逆光により顔は見えない。凛は眉に手をかざして見据えるも、男の顔は暗く陰っているように見えてしまい、正体が掴めない。だが、声の印象と対照的に、その言動から、やや童顔であることが想像できた。しかしそれはあくまで凛の妄想であり、本当の素顔は全く異なるかもしれないが。

 

「凛。私に敵対する意思はない。少し驚かせようと思って伏せていた。そのせいで攻撃されて話がとっ散らかることも承知していたが、どうしても好奇心が抑えられなかったものでね。許してくれ。ははは」

 

 そのムカつく笑いは、以前から凛の電子端末に何度も連絡を入れて、くだらない世間話を強要してきた男のそれにそっくりだ。初めて生の声を聞いたが、同一人物と見て間違いない。

 

「……それで、あんたの目的は?」

「私は傭兵だ。どこにも所属しない。金のためではない。正義のためでもない。信仰のためでもない。自由のためでもない。ならば、私はなんだろう。そんななぞかけに答えを見出すつもりもない。ただ、私は仕事先の依頼を果たすだけだ」

「仕事先?」

「凛。君と取引したい勢力がいる。私は単に、それの仲介人だ。さて、ベンチャーという新興企業が……アーマード・コアを使って近々、西欧財閥に叛旗を翻すつもりでいる。その最前線に立つ指揮官(オペレーター)として、君を雇いたいそうだ」

「────」

「どうかね? 君の思考回転力なら、既に状況は明快のはずだ。良い返事を期待する。なぜなら────」

「断れば私を始末するから? まぁ……悪い話ではなさそうだけど」

 

 良くもないけど。そう言いながら凛は武器は下ろした。男は口元を緩め、ハッチの下に消えていく。黒い鳥は駆動するが、敵意はないように見えた。そっと大きな手のひらが優しそうに差し出される。その上に乗っかった凛は、黒い鳥とともにカゲロウの町に向かう。

 

「ちょっと。まさかこんな大兵器を町中に入れていたの? みんなパニックになるでしょ……」

「最初はね。しかし私の話を信じてくれた子供たちのおかげで、すぐに鉄の塊はテーマパークになってしまったよ。その光景は……なんとも良い、笑顔の花園だった」

「…………」

「そのぶん腹を空かせてしまってね。食料品の輸送はまだなのかな?」

「あんたのせいで一旦中止になったのよっ!!」

 

 凛の怒号が澄んだ青空に響き渡る。そうして町に到着した凛は、手持ちのキットで怪我人の手当てをして、余った食料品を分ける。それから二時間後、穏健派による食料品の輸送が済み、武装した兵士は周囲を警戒。今にも倒壊しかかる家屋に柵を立てたり、移動の邪魔となるガレキの撤去作業を行なう。その手伝いを黒い鳥……アーマード・コアも手伝った。巨体なだけあり怪力で、作業は普段の数倍も早く終わった。

 

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 夜。日中は猛暑の砂漠から一転、日没後は寂寥たる寒さで静まり返る砂漠となる。

 男は、凛の前に姿を現してから一度も黒い鳥から降りず、キャンプファイアーを中心にテントを囲む外側に待機していた。全ての仕事が一段落した凛は、男と話すため黒い鳥に会いに行く。

 

「ふぅ……やっと休めるわ。それで? ベンチャーだかっていう“企業”について詳しい話を聴こうじゃないの」

「それより不思議なことがある。もっと私を疑ってかかるべきと思うのだが。私が嘘をついていて、穏健派がやってきたところを殲滅するとは考えなかったのか?」

「こうもあっさり信じるのが拍子抜けってこと? それなら考えすぎよ。あんたが裏切った瞬間、こっちはとっくにあんたを始末してるから」

 

 凛の声は冷徹に、鋼鉄の機体を刺し貫く。

 

「もっと言えばハッキングに成功した段階で、あんたの機体に登録されているミッション内容は、ある程度予測がついていた。でも、こんなこといちいち説明しなくてもあんた分かってんでしょ? 無駄な話しさせないで」

「……では簡潔に。話すことが多すぎるため、箇条書きを読み上げるように語ろう」

 

 男は咳払いし、凛は腰に手を当てて姿勢を楽に崩す。

 

「アーマード・コアは聖堂教会が開発したと風の噂で聞いたことはあるかな? しかしそれは一部誤りだ。その技術の一端はアトラス院の功績でもある」

「はぁ!? 魔術協会のひとつであるアトラス院が、聖堂教会と共同開発でもしたって言うの!?」

「私の父は聖堂教会の裏切り者だからな。世の愉悦(ワイン)を美味にするために、“アトラスの契約書”を使い、西欧財閥と解放戦線にとっての空白地帯であるアフリカ・ベルトでアーマード・コアの開発に成功し、製造工場を造って生産を始めた。ベンチャーという企業はそこにある。アフリカ・ベルトはクローン売買シンジケートの総本山と言われているが、それは事実でありながら表向きの経済的価値でしかなく、将来的にはアーマード・コアを中心とする経済発展を企業は見据えている」

「…………」

 

 凛は開いた口がふさがらない。

 アフリカ・ベルトとは、エジプト共和国とビアフラ連符を結んだ地域のことだ。

 そのあたりに居を持つアトラス院は大崩壊(ポールシフト)によって魔術を失ったが、元々科学寄りの、さらにマナに頼らない研究をしていたこともあり、その在り方を変えず生き残っている。魔術が使えなくなったことで解体した時計塔とは異なり、西欧財閥の傘下に入ることでからくも存続した聖堂教会とも異なり、独自の強みで運良く時代の激変に対応できた。それがアトラス院だ。しかしそれでも魔術が使えなくなった代償は大きく、今にも滅亡しそうだという噂は絶えない。

 

「もはや魔術の時代は完全なる終わりを迎えつつある。聖堂教会の奇蹟や霊子ハッカー(ウィザード)とて例外ではない。そこでベンチャーという企業は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()

「────」

「魔術師とは根源を目指すものだ。根源へ辿り着く為に最も近い技術が魔術だから魔術師は魔術を使う。故に、もし拳法で根源に辿り着けるなら魔術師は拳法家に瞬間転身する。そう教えてくれたのは君だ、凛。それに君はメイガスを見限っていた。まさしく“企業”も、メイガスどころかウィザードも奇蹟も見限っていた。……その着眼点は、実に魔術師らしいと思うのだがね」

 

 凛は頭痛がしてきたのか片手で側頭部を抑える。目の上のたんこぶができたと言いたげに、眉をピクピクと動かす。

 

「……じゃあ、なに? その企業ってやつは────()()()()()()わけ?」

「そうなるな。そしていずれは、大崩壊(ポールシフト)を超える、更なる大破壊を……という目論見だろう」

 

 闘争により根源を目指す。アーマード・コアが世に出れば、世界は間違いなく1970年代末期の混沌へ……戦乱の時代に返り咲く。いや、むしろそれよりもっと残酷な景色が広がっているかもしれない。既に世界は残酷だけど、その上を行く方法を求めるのは────嗚呼、たしかに魔術師らしい恐怖の発想(フィアーイデア)だろう。

 

「企業は、大崩壊(ポールシフト)の経験から推察し、()()()()()()()()()()()()()()()と判断した。二度の世界大戦を経て同一の見解に至らなかった理由は、まだその時代にマナが残っていたからだ。マナのない世界では、もはや魔術師は魔術を使えない。そのため早々に魔術に見切りをつけた結果、企業は────“闘争”に目をつけた」

「アーマード・コアによる闘争の激化……それにより変革する阿頼耶識(アラヤシキ)の孔に、無理やり突っ込む気なの?」

「……もうそこまで見抜くか。理論上はそのようだが、まぁ机上の空論だな。まだ聖杯戦争の方が望みはある」

 

 聖杯戦争。それは極東(日本)で行われた降霊儀式。過去の英霊を召喚し、その魂を煮詰めることで根源の孔を開くという魔術儀式のようだが、西洋の魔術協会である時計塔ではあまり重要視されておらず、旧時代的な魔術決闘の儀式として思われていた節さえある。

 

「……聖杯戦争か。懐かしい響きね。私の父親がよく話していたって、母さんから聞いたことがある。本当に小さな頃の、あやふやな思い出だけど」

「私の父も話していた。どうやら私たちは共通点が多そうだな」

「だからなに? ……ともかく企業の思惑は大体わかった。あんたの話が本当ならね」

「受け容れがたいのも仕方がない。アーマード・コアについてはともかく、企業についての証拠はないことだし。ならば試しに最前線に向かってみるか? わんさかAC(エーシー)が出てきて、企業の思惑はともかく、少なくとも世界的に闘争が激化することは避けられないということは受け入れざるを得なくなる」

 

 凛は長らく目を瞑っている。腕を組んで、貧乏ゆすりをするように指を叩き、思考を巡らせている。その様子を黒い鳥に乗る男は黙って見守る。やがて時刻は午後九時を過ぎた。

 

「作戦終了だ」

「────え?」

「帰投する。私の依頼は、これからの世界情勢を君に話すことだ。そのミッションは完了した。次に会う時が楽しみだな」

 

 黒い鳥は膝を折り畳むと、跳躍と同時に背部ブースターを噴射して飛び立った。轟音とともに漆黒の流星が夜空に遠のいていく。

 

「……あいつ……」

 

 凛は終始、怪訝な顔をしていた。今の話を一から十まで信じろ、という方が無理な話だ。

 しかし凛は、遠からず男の話が真実に近いことを悟るだろう。

 

 それこそ、今この瞬間に。

 

 星空の廻りと同じように落ちる流星は、機体を転身してカゲロウの街を捕捉する。スピーカーをオンにして、知人たる凛に一応警告する。

 

「次の依頼を始める。今日は仕事が溜まっていたんだ。今の私は()()()()()()()()()()()。ミッション内容は“解放戦線の未登録ウィザードを摘発、または逮捕せよ”────つまり、凛。()()()()()()()

 

 ライフルを射撃。キャンプファイアーの外周家屋を狙撃し、倒壊させたガレキによって逃走ルートを潰す。直後、いつの間にか黒い鳥の右腕に付着していたエメラルドの宝石が魔力を通して起爆した。

 

「なに────!?」

「お行儀が良くて何よりだわ。あんたは自分が傭兵だと言った。私も傭兵だから分かるのよ。人情と義務の狭間で、どのように在れば正々堂々かってのはね。あんたは聖職者だから、その辺についてはなおさらでしょ! こっちはあんたが別勢力にも就くことはお見通しで、既に周囲の市民の避難は済ませてある。キャンプファイアーを中心とする広場から出られないのは私だけよ」

 

 地上で大声を発する凛だが、その声は漂う雲の直下までは届かない。だが先刻ハッキングした黒い鳥の通話機能を通して声を届かせることはできる。

 

「さぁ────あなたの望む“闘争”とやらのお時間よ。いざ殺し合いと行きましょうか!」

「────面白い。君は実に愉快だ、凛!」

 

 黒い鳥は音速を突破する。右腕が爆破されたことでライフルは地上に落下した。左腕のレーザーブレードで接近戦に挑むしかない。だがむやみに接近すれば、ウィザードたる凛は霊子ハッカーとしての腕前を用いることで、こちらの機体はほんの一瞬にして破壊(クラッキング)されてしまうだろう。それでもやるしかない。魔術師といえど、生身の肉体から抜け出せない者が音速に対応できるものか。一気に突っ込み、すれ違いざまに切り飛ばす。

 

「────《紫禁の閃光(アメジスト)》!」

 

 凛の手元から紫色の宝石が投擲される。それはまばゆい光を放ってスタングレネードの役割を果たした。メインカメラが白い光に侵される。男は目を閉じ、まぶたを通過して眼球を痛める光の苦痛に耐え忍び、口元を緩める。

 

「メインカメラがなくとも殺せるさ!」

 

 閃光直前の地表距離は200と記憶。経験上、亜音速ならば一秒後に到達する。距離感覚10の時点で早めにレーザーブレードを振るっておく。轟音。爆発。前面に衝撃の感覚。直進して建物に激突したか。ブースターを起動して空に逃れる。霊子ハッキングを受けた形跡はない。

 

「殺して死んだか!?」

 

 地上は沈黙している。標的の暗殺は完了したかどうかを確認するため閃光が止むのを待つ。そしてまばゆい光は開かれた。眼前には夜の寂しい砂漠が広がり、眼下には燃え盛る広場があった。

 

          3

 

 ────まぁ、冷静に考えて勝てるわけがなかった。

 

 凛は観念する。

 

 敵は音速で動く。霊子ハッキングが間に合っても、機体のファイアウォールを突破して中枢コアを破壊するというのは、かなり手間だ。身も蓋もないことを言えば、時間がかかる。三秒。三秒だ。三秒で破壊まで行けた。でも間に合わなかった。その三秒が命取りになるほど、敵は早かった。銃撃戦なら三秒の隙が大きいのは確かだ。でもそのぶんやりようはある。防御結界を張ったり、何かを盾にしたり。

 つまり、いくらメイガスとしてもウィザードとしても天才である凛であっても、この結末は変えられないということだ。アーマード・コアを生身で倒せる人間なんて、この世に数えるほどしか存在しない。ダメージを与えられる人間なら、ここに一人はいるけれど。

 

 ────驕っちゃったかなぁ。まともに男の子と話したことなんて今まで一度も無かったし……あいつの口車に乗せられて、心の贅肉、つきすぎちゃったかぁ……。

 

 凛は反省する。後悔はないといえば嘘になる。だがやはりないだろう。これはなるべくしてなった結果だ。ではなぜ挑んだ? 当然、挑まなきゃそれは凛ではない。無理難題だろうが、やってみなきゃ分からない。蛮勇である気はなかったけど、周りから止められることは多々あった。好奇心は猫をも殺すと言うけど────そうかぁ。私は猫だったかぁ。

 

「────カハッ……」

 

 と、切り飛ばされた下半身を遅まきの痛覚で自覚し、血反吐を吐いて夜空に思う。

 

「……ま、でも、さ……猫は、九つの命を持つって言うし……いや、魂、だったっけ……あぁ、あたま、まわんない……」

 

 夜空を覆う雲が晴れる。顔を出すは満月。太陽の反射で光る君は、荒野に生きる戦士の死を、月光で儚く照らし出す。

 

「────────」

 

 そろそろ閃光(スタン)も無くなってきたことだろう。トドメに掃射されて自分は肉塊となる。凛は薄く笑って死を迎え入れる。それが戦士の死に様。それが傭兵のよくある死に方だ。特に嫌だなと思うことはない。そのくらい最初から覚悟している。

 

 黒い鳥が降下する音。砂漠に落としたライフルを回収しに向かったのだろう。

 

 ────トライアル・スタート。

 

 月光が凛の魔術回路を照らす。幾何学模様の回路は不意に翠緑の光を発し、抗魔力でさえ弾けない逆接続(不法侵入)を受けた。

 

 ────聞け、独りの魔術師(ウィザード)よ。己が欲望で地上を照らさんと、君は救世主たる罪人となった。ならば殺し合え。熾天の玉座は、最も強い願いのみを迎えよう。

 

 凛の魂に響く何者かの声。否、それは声というには、あまりにも概念的すぎた。

 

「────な、に…………?」

 

 凛の霞む視界に、おぼろげな月が映る。まさか、月とお話している? そんな乙女チックな夢物語(ファンタジー)を空想してしまい、いよいよ自分は死に向かって参っているのだと心の中で苦い笑みを浮かべる。

 

 ────しかして戦いには剣が必要だ。それは主人(マスター)に仕える従者(サーヴァント)。敵を射抜く弓矢にして、牙を阻む盾となる者。これからの闘いを切り開く為に、月が君へ向けて贈る英霊だ。

 

 何を、言っているのか。マスター? サーヴァント? そんなことを急に言われても、かつて聞いた聖杯戦争という名前しか思いつかない。

 

 ────そうだ。喚起せよ! 君の隣に立つ者を! 私はムーンセル・オートマトンの御使い。汝に剣を執らせ、星と人との道行きを観測する者なれば!

 

 よく、わからない。だけど、チャンスがあるなら逃す手はない。

 

 凛は言祝ぐ。魔術回路を励起。託すべき希望、共に歩むべき矛盾を迎え入れる為に、達観する。

 

 ────想え。汝の原動力が、英霊の魂を呼び覚ますだろう!

 

 月の声に導かれて、凛は幻視した。

 

 笑顔のない集落。特に一番キツかったのは笑顔を知らない子供達だった。それを見て、なんとも魔術師らしくないことを思った。

 

 “なんとかしなければ”

 

 深い理由はない。武器を手に取った時は、本当にそれくらいしか考えていなかった。でもそれは変だと思い、後から色々と理由をつけた。けれど、結局のところは単に、()()()()()()だけ。

 

 食べ物を分け合って、衣服を整えて、建物を造って、いっしょに笑って────そんな彼らの努力が、一夜の襲撃で無駄にされるどころか、殺されて売られて、蹂躙と陵辱される、そんな人々が────どうしても。

 

「頑張ってる奴が報われなきゃ、ウソじゃない……」

 

 ()()()()()()()()()()()()()と、決めたのだ。理由は、それだけで充分だった。ただのジャンクジャーキーな小娘が、戦場に出る理由としては────それだけで充分だった。

 

 黒い鳥が飛翔する。満月をバックに死の口を向けて、一発。轟音。硝煙が黒い雲に混ざる。遠くから風を切る音が近づいてくる。それと同時に足元から魔法陣が浮かび上がり、エーテル粒子が高速回転して────

 

「……来い、私の────剣!」

 

 ────世界から既に失われたはずの魔力。

 それを皓々(こうこう)と身に纏う影法師は、黒い鳥の必殺の一撃を軽々と────

 

 ()()()()()()()()()

 

          4

 

 それは運命の夜。

 

 凛の眼前で轟音と閃光が炸裂する。爆風の余波が発生して傷が痛む。痛覚を思い出したということは、生きる気力が湧いてきたということだ。そこで思い出す。吹き飛ばされた下半身はどうするべきか。問題ない。()()()()()。それより今は、眼前の存在が敵か味方か────それが重要だ。当然、月の声を信じるなら、目の前に立つ偉丈夫……偉丈夫? が、サーヴァントなのだろう。ならば自分はマスターということで、言うことを聞くはずだ。凛は気力を振り絞って問いかける。

 

「あな、た────私、の、サー、ヴァント……?」

 

 月光に映える白の鎧兜。その手から淡い青光を放つ弓矢までもが鋼鉄の機械仕掛け。身の丈は2メートルを優に超える。足元まで及ぶ白髪に青いメッシュが入った頭髪が、青いマントと共に砂の風になびく。砂塵の中、大きく逞しい体格の武士は、主の声に振り返らず敵を睨むように月夜を仰ぎ、機械鎧の内部から反響する音声を以て、背中で語る。

 

「然り。我が名はアーチャー。汝のサーヴァントである。敵前ゆえ真名は秘匿。マスターの状態を走査。致命傷と判断。方針を求む」

「クローンと……メカニックの技術で……下半身を繋げば……」

「推測演算開始……発言の意味を了解。一刻を争う事態のため、これよりマスターの人命を優先……」

「しなくて、いい……刻印が、延命……する。ひとりで、だいじょうぶ……だから、あいつを……」

「……しかし」

「しんじ、て────」

 

 凛は気絶した。普通なら即死の傷。だが不思議と死を想起しない。どうやらアーチャーのマスターは、その華奢な見た目に反して、なかなかに生還能力が高いらしい。

 

 ────ならば、それを信じるほかあるまい。

 

「推測演算開始……魔術刻印は本体に治癒魔術を行使する機能有り。しかし聖杯の知識によれば、今世はマナなるものがない世界。それを踏まえずとも治癒による猶予時間は不明。主命を優先する場合、敵の討伐は十合以内に────」

 

 黒い鳥が一斉掃射を開始する。咄嗟にアーチャーは上半身だけのマスターを抱えて跳躍。被弾率が最も低い位置に配置し、機械仕掛けの弓矢を構えて狙いを付け、自らが掃射の盾となりつつ、青白い光の収束矢を引き絞る。

 

「戦闘行動開始────貫通砲レベル(スリー)

 

 砲弾の如し野太さにして、光線の如し熱量の轟矢が射撃される。対する黒い鳥は回避運動を起こす。されど轟矢は空気を引き裂き、自動追尾性能を有する。音速突破の緊急回避であっても、これを躱すことは至難の業。いかなる手練手管を用いても、迎撃以外に拓ける道はない。そうアーチャーは豪語する。

 

 必殺の軌道を描いた轟矢は、黒い鳥の機体に必中。黒い爆発が機体を焼き焦がすが、鳥は未だ健在であり夜空に浮かぶ。

 

「敵損害軽微。神秘の確認は取れず。単なる堅牢な物理機体。なれば、サーヴァントたる我は被弾を気にせず、無心で撃墜行動に当たることが可能。退屈だが……、弾雨」

 

 矢継ぎ早に八つの光矢を射る。黒い鳥も旋回しつつライフルを八連射。その全てが中空で激突し爆発する。

 

「……敵機の技量を確認。脅威と認定。現在で九合目。自身の未熟さを呪う前に、マスターの人命を優先する」

 

 黒い鳥のライフルが掃射される。その全てのエネルギー弾が凛を狙っていた。アーチャーは自らが盾となることで凛を守る。相次ぐ被弾と爆発。されど鎧には傷一つとて付きはしない。

 

 なぜならサーヴァントは上位神秘の塊なれば。魔術世界において、()()()()()()()()()()()()()()という魔術理論がある。つまるところ、目には目、歯には歯と同義。サーヴァントという神秘には、それと同等か、あるいはそれを上回る神秘が求められる。でなければ打倒は不可能。故に、黒い鳥に勝機はない。どれだけの砲煙弾雨がアーチャーを襲っても、幽霊に実弾は意味を為さない。慣性を受けてたたらを踏んでも、特にこれといったダメージは皆無。まさに、物理世界においては無敵を誇る。

 

 それが英霊。決戦兵器たる在り方を求められた、魔術決闘の花形、その代表格。()()()()()()

 

「かねてより予測されし脅威増大のため、宝具を解放する」

 

 宝具。それは英霊の逸話を神秘として結晶化した究極の切り札。是れを明かせば真名が発覚し、真名とは数多の情報を内包するが故に弱点となりうる。されど、英雄とは、自らの弱みを曝け出しても、守らねばならぬ矜持がある。

 

臘月収斂(ろうげつしゅうれん)・形態変化。淡き月光を放ち、我が嚆矢(こうし)は起源へと還る。ツクヨミ式リボルビングキャノン────計測(カウント)開始。3、2、1……」

 

 絨毯爆撃の中、マスターを守りながら鋼弓を極限まで引き絞るアーチャーは宝具を詠唱し、正真正銘・必殺の一撃を射抜く。

 

「────《昇華・弓張月(しょうか・ゆみはりづき)》ッ!!」

 

 極大の一射が、一条の月光を引いて目標に差し迫る。黒い夜空を青白く斬り裂く光束矢は、物理法則の概念上、ありえざる変則軌道を描いて、黒い鳥の迎撃射撃を躱していく。対する黒い鳥はレーザーブレードを抜き放ち緊急旋回。それは回避行動ではない。躱せぬことを受容し、捌ききることへ念頭を切り替えた。其は覚悟の構え。

 

 背部噴射機構が恣意的に爆発(オーバーブースト)。音速突破した漆黒の機体は青白い粒子を身に纏い、燐の火のような清光美麗の翼を広げ、よだかのさえずり(ソニックブーム)が天を衝き地に轟く。

 

 かくて夜空は極めて輝き、限りない光を放ち切った。中天にて衝撃が迸る。全てを薙ぎ払う火力によって、炎と雷が暗雲を呼び、逆巻いては切り裂いた。逃げきれなかった黒い鳥は、機体から火花と黒煙を上げながら砂漠の彼方に墜落していく。

 

「……敵機の撃墜を確認。周囲に他の敵影なし。戦闘終了。急ぎマスターの救助に当たる」

 

 排気音を蒸すアーチャーは、皓々たる月光を背に、マスターのもとへ馳せ参じるため振り返る。

 

 弓張月。その名は音に聞こえし平安武者。剛勇無双の益荒男にして、大人五人でやっと弦を引ける五人張りの弓をただ独りで構え、限界まで引き絞り、たった一矢で船舶を穿ち抜いて沈めてみせた、波瀾万丈の逸話を数多く持つ弓矢の英雄。

 

 真名を、鎮西八郎(ちんぜいはちろう)────またの名を、源為朝(みなもとのためとも)

 そう呼ばれる彼こそ。

 

 ────凛が召喚した、最強のサーヴァントであった。

 

          5

 

 アーチャーは黒い鳥の撃墜を目にし、脅威の排除、すなわち勝利を確認した。

 しかし()()()()()()()()()()()()()。背を向けて振り返ったはいいものの、自らの足取りが緊張感を抱いていることを自覚する。

 

「────やはりか」

 

 背を向けたのは、誘うため。あえて隙を晒し、敵の生存確認を取るため。

 

 超長遠距離からの熱量を観測。狙撃だ。砂漠のどこかにスナイパーライフルを隠していたのか。墜落地点さえ計算に入れて、あえて撃墜されたかのように()()()()()()()のか。となれば敵は、先ほどの宝具を()()()()()()()()()()()()()()事になる。それは英霊としての誇りをいたく打ち砕かれる悔恨だ。しかし、これはアーチャーにとって強がりではなく真実として────先ほどの一射は、偵察用のフェイントである。その意味は、条理を逸する変則軌道を描いて嚆矢が舞い戻ってくる頃に、全てが明らかとなるであろう。

 

「布石とは、勝利を掴む為に射るものだ」

 

 青白い光を弓全体に集束し、熱量剣(レーザーブレード)の要領で狙撃光(ビーム)を迎え撃つ。アーチャーは絶妙な技量で狙撃の弾丸を捌き、軌道を逸らして生命反応のない遠い砂丘に着弾させた。そのまま返す刀で弦を引き絞り、放物線を描く軌道を瞬時計算して射る。皓々たる光束矢は迫撃砲の如く、標的の頭上に降り注ぐ。

 

「疾走開始」

 

 その間に排気孔から熱量を放出し、音速一歩手前の速度で敵機目掛けて駆け抜ける。家屋を踏み越え、砂漠を滑り跳び、弾雨を退けた黒い鳥の反撃を武人の歩法で以て躱し────肉薄する。

 

 アーチャーの機械手甲に熱量が充満する。それは青い炎となって黒い鳥の顔面を殴り抜いた。直後、アーチャーの顔面も強烈な金属音を立てて抉り抜かれる。鉄拳交差(クロスカウンター)。拳に先んじて斬りつけた互いの得物は交差して膠着した為、余った手のひらを握り締めて振り切った。その判断は相互に同時。反動でたたらを踏んだ二機の機体は、即刻体勢を立て直して距離を取り、連続射撃。砂漠を戦場にして一対一の死闘が幕を開けた。

 

 黒い鳥の上背部から多段ミサイルが射出される。その全てを一息で撃ち落とすアーチャーだが、呼吸の終始を突かれた狙撃により、回避が半歩間に合わず肩に着弾。────白い鎧が、()()()()()()()

 

「……損傷軽微。かねてよりの予測に確信を抱く」

 

 黒い鳥から通信が届く。その通信は無差別回線を使用しているため傍受してもハッキングの心配は皆無。敵対している男の声が響く。

 

「魔術の時代は終わりを迎えた」

 

 男の言葉に耳を貸すより、考察する事がある。────なぜ攻撃を喰らった?

 

「それは魂の在り方が再定義されたからだ」

 

 男の声が、アーチャーの思考を先回りする。

 

 サーヴァントの体は本来、仮初の肉体(エーテル)で構成される。しかしそれは前世紀の話だ。魔力の太源(マナ)が失われたこの世界では、どうやらサーヴァントの体は、新しい神秘の概念によって組み直されている。つまるところ、この世界で召喚されるサーヴァントの体は、()()()()で構成される。

 

「つまり君は泥の人形(ゴーレム)ではなく、立体映像(ホログラム)で形作られているようなもの。そして擬似霊子とは、いわば電脳世界へ接続するための新元素。突き詰めれば電子なのだよ。さて、この理論を以て証明する。英霊の身は化学の世界に落とされた! 同じ電子の海に生きる、我ら物理(一般)世界の存在へと、神秘の格が落とされたのだ!」

 

 アーチャーは同様の回答を、男の言葉より早く導き出していた。

 

「霊基チェック終了────理解。されど、果たすべき仕事に変わりなし。貴様を倒す。さらに武人として、正々堂々たる戦いが期待できることに興奮。分かりやすく言えば……奮い立つ気概は満悦する心地。この発奮を全身全霊の力に換え、貴様を叩き殺す!!」

「いいぞ……貴様も闘いを愉しむ者か。さすがサムライだ! 源為朝……!!」

 

 こうして、召喚されて(かねて)より疑問に思っていた()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()については、物理世界の被弾を以て解明された。故に、彼我の戦力差に神秘の有無は関係なく。ただひたすら、機体の性能差と経験の技量差によって勝敗が決する。そんな潔い決闘が火ぶたを切る。

 

 故にこそ、アーチャーは一の矢に先んじて放っていたのだ。もし、かねてからの疑問と、その予測が真実だった場合……相手は実弾で、自らは幽霊だからと、驕り昂ぶっていては足をすくわれると思い、布石を射ることにしたのだ。

 

 黒い鳥と白い武士の激闘。熱量と熱量の応酬は、障害物のない砂漠では回避を困難にする。故に二機は、立体的な機動力を以て被弾を避ける為、戦いの舞台は暗黒の砂漠から月光の夜空へと移り変わる。

 

「そろそろか」

 

 アーチャーの声。その意味に疑問を持つ前に、黒い鳥のライフルが射撃される。互いに、とにかく上へ上へと被弾を避けて撃ち合う戦闘から一転、なんとアーチャーは急降下を始めた。

 

「なに?」

 

 直後、黒い鳥の肩部に嚆矢が着弾する。

 

「っ!? なん、だと……! いつから……いや、まさか────!!」

 

 先ほど黒い鳥が捌いて、夜空の彼方に弾き飛ばした《昇華・弓張月》……その一矢がUターンして舞い戻ってきたのだ。まさに今この状況を想定していたアーチャーによって……。布石は、次の為に放たれる。其は、次なる完璧な一の矢の為に。

 

鏡月(きょうげつ)収斂・形態変化。我が身は一騎当千の軍用機体。汝となんら違わぬ兵器である。しかし我は兵器(サーヴァント)である前に武人(もののふ)なれば。我が意気を以て、汝という強敵を撃滅せん!」

 

 砂漠に着地したアーチャーは、夜空にて火花を散らし、被弾により硬直する黒い鳥に向けて、強弓を引き絞る。

 

「ムーンシャフトチェック。バスターアローシステム、96%充填。パイルドライブフットロック、接続。────仕留めるッ!」

 

 宝具とは、究極の一。伝承の神秘、伝説への信仰、人々の想いが形となり、その時々で物語られることで、様々な色の宝石へと磨き上げられた、人類の収斂、叡智の極致。その一撃は、先程の嚆矢(こうし)とは似ても似つかぬ威容を誇る。皓々と光り輝く魔力(オド)と擬似霊子は極限まで収束し、夜空を焼き尽くす豪快一閃の花火となる。

 

「────《轟沈・弓張月(ごうちん・ゆみはりづき)》────ィィッ!!」

 

 黒い鳥は光速の死を観た。見慣れた光景だ。戦場ではよく目にする。そして観た者は死ぬ。だが────ここに例外が存在する。

 

『不明なユニットが接続されました』

 

 黒い鳥は更なる火花を散らして轟音をがなり立てる。目前に迫る絶対の死を意識する中で、なおも闘争を求めて焦がれる想いが、活路という道を切り拓く。

 

『システムに深刻な障害が発生しています』

 

 ────オーバードウェポン。それは全てを焼き尽くす暴力と言われる超常兵装。

 

 未だ試作段階の領域だが、聖堂教会とアトラス院の連中は何を考えていたのか。埋葬機関は、聖堂教会の最高位に位置する異端審問機関であるというのに、まさか悪魔にでも憑かれたか。異端(イレギュラー)を狩る機関でありながら、教会における異端として囁かれるのは伊達ではない。よもや、聖遺物の管理回収を任務とする特務機関・第八秘蹟会から、『このようなもの』を取り寄せて鋳造するとは、なんとも度し難い。神に対する不遜不敬ばかりか、万死に値する愚行愚劣極まりない劫火に焼き尽くされるべき暴虐であると蔑もう。

 

『ただちに使用を停止してください』

 

 其は、七つの幸福と九つの秘宝に由来する、何もかもを黒く焼き尽くす炎。

 

「────《ヒュージキャノン・セブンスニュークリアス》────」

 

 黒い鳥は筐体を胸部に接続、七連装核弾頭を搭載した一斉射出で以て、あらゆる不条理を不条理によって撃滅せん。

 

 ────終焉(ヲワリ)を告げる(カラス)()いた。

 

 中空にて極光爆裂。皓々極矢と漆黒核炎が激突し拮抗。世の終わりと見紛う大竜巻が砂漠の一帯を席巻する。

 

「なに────?」

「過去の遺物が、未来の最先端に(かな)うと思ったか?」

 

 黒い鳥に蒼銀の翼が生える。その姿は堕天使の風貌を想起させた。

 

「主は人を救いたいと私に告げた。故に手を差し伸べたと……

 だがその度に、人の中から邪魔者が現れた。

 神の作らんとしている秩序を、壊さんが為に。

 神は困惑していた。人は救われる事を望んでいないのかと……

 しかし神は、それでも人を救いたかった。故に────」

 

 アーチャーは驚愕する。現代の科学力は、英霊の宝具と拮抗しうるレベルまで高められていたのかと。

 

「……汝は、何者だ」

 

 戦闘の裏側で擬似霊子の解析を進めていたアーチャーは、擬似霊子の本質と操作方法を理解。霊子ハッキングを仕掛けて、黒い鳥の内部カメラへ侵入する。映像は暗闇のコックピットを映し出す。砂嵐により解像度が低い。速やかに解析を完了。黒い鳥を御する敵の正体は、日に焼けた褐色肌と茶髪が特徴的な上背のある男性だと見抜く。神父服の奥からでも分かる鍛え上げられた筋肉は、剣────双剣の遣い手である事も見て取れた。

 

「────言峰(ことみね)士郎(しろう)

 

 アーチャーの素朴な問いに、言峰士郎は素直に応える。

 

「私は天啓を受けた。故に、先に邪魔者を見つけ出して、殺す事にした。

 主によると邪魔者は()()()と呼ばれていた。彼女は何もかもを覆す、第二魔法の雛鳥であると」

 

 黒い鳥と白い武士が睨み据える狭間では、轟々たる震撼が天地を鳴動させる。それも今ようやく熱量の拡散が始まり、光熱と砂風が落ち着く頃には────黒い鳥は撤退を完了させていた。吹き飛ばされた砂漠の一帯は硝子(ガラス)の海原と化している。砂は熱せられると硝子になる。それだけでなく核爆発クラスの火力を爆風とはいえ浴びた周囲の大気汚染・地上汚染は計り知れない。速やかに汚染地域から離脱せねばならない。

 

「……戦闘終了。周囲に敵影なし。引き続き警戒を怠らず、マスターの下に馳せ参じるべし」

 

 白い機体は跳躍し、青白い光を噴射して滑空する。

 

 かくしてアーマード・コアとサーヴァントの緒戦は、ひとまずの引き分けと相成った。

 

          EX

 

 これよりマスター・遠坂凛と、アーチャー・源為朝は、企業に雇われて最前線のAC戦場へと出陣する。

 

 死の商人たる企業はアーマード・コアを世界的に売り出し、西欧財閥と解放戦線のACを用いた戦争は激化の一途を辿る。

 

 しかし戦場に立つ者は、なにも人間とアーマード・コアだけではなかった。遠坂凛と同じく、マスターとしてサーヴァントを従える陣営が数多く現れる。それは混沌と入り乱れる戦場となるだろう。

 

 月の声に導かれて、試練(トライアル)を課される強者どもは、夢の跡を追って、ただひたすらに戦い続ける。

 

 そして幾多の強敵を倒し、数多の任務を完遂した果てには────何度も敵味方となって並び立ち、向かい合った、あの黒い鳥が立ち塞がっていた。連戦連勝連敗連分。定まらなかった運命の決着を、今度こそ勝ち取る為に。

 

 互いに“イレギュラー”と銘打たれ、企業から追われる身ではあるけれど。同族意識は無い。ただ、互いに超えるべき壁が目の前にそびえており、ひたすら邪魔なものとしてあるだけだ。

 

「ここで確実に決めるわよ、アーチャー」

「開戦確認。闘志維持音響ユニットを起動────」

「魔術史と共に西暦は終わりを告げる。これより地球暦を始めるため、このあと起きる大破壊によって人類は地下に潜り、星の人工知能が覇権を握って、新たなる世界を開闢(かいびゃく)する為に……俺を含め、お前たちには死んでもらわなければならない」

「大破壊は止める。何があっても。どんな結末が私たちを待ち構えていても。それが月の人工知能より、マシだとは思えないから」

「主命を受諾。全兵器使用許可申請、受理。地形探査。有効射程距離を限定。────覚悟せよ、黒い鳥=言峰士郎……貴様の正義は皮肉にも、天啓により潰える宿命にある」

 

 遠坂凛とアーチャーの、黒い鳥との闘争は、まだまだ続く。

 この二年後。トワイスが月の聖杯戦争を改造し、遠坂凛が新たなる戦場に導かれる、その時まで。

 

          LINK

 

 白武者のアーチャー(  源為朝  )の戦歴:紅武者のセイバー(摂津式大具足・熊野)黒騎士のランサー(フォートレス・アンジェラ)大木馬のライダー(トロイア・イポス)蒸気王のキャスター(ディメンジョン・オブ・スチーム)蜃械のアサシン(ザバーニーヤ)青銅巨人のバーサーカー(スフィリ・トゥ・ターロー)

 

「なぁ遠坂、為朝。俺たちはやりすぎたんだよ────」

 

 言峰士郎は宇宙(ソラ)を見つめて、この星に向けて落下する月に、かじかむ手を伸ばす。

 

「祈ろうか。ふたりの成功を……その道の先に、いったい何が待ち構えているのか……」

 

 第五元素全霊回転(アベレージ・ワン・フルスロットル)。魔力と擬似霊子は交錯し、魔術と科学に橋を架ける。

 月光を浴びて極限に至る極限の弓矢は、超ド級戦艦の甲板にて、墜落する月を再び夜空の彼方へと押し上げる為に────今、皓々たる青白い光ではない、赫々たる赤黒い闇でもない、蓋をされた未来(ソラ)を切り拓く希望の象徴として真名を言祝ぐ。

 

 かくて最高の主従は、一条の虹霓(虹霓・弓張月)解放し(射抜い)てみせた。

 

「────“この魂に、憐れみを(キリエ・エレイソン)”────」

 

          完

 


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