ー異世界への侵略者ー地球を侵略しにきたエスパー宇宙人、死して異世界へと転生する。超能力?何それ?強すぎ!! 作:ゼリアサイ8世
結構長めです。
EX-S-C.1「魔導」
「初めましてだね。クリューソス・レーベン君。本日はお日柄も良、、、かったのだがこれでは台無しだね」
黒色のローブで全身を包み隠すように佇む人間が空を見上げながらこちらに歩み寄り、そう宣う。そいつの見上げる先には一面の黒が広がっており、青空や太陽を見ることは不可能であった。
そいつが羽織るローブはその人物の頭上まで覆っており、顔の部分は開けているはずだがその空間は黒く塗り潰されたかのようになっていた。その結果、その人物の顔を認識することは不可能で、輪郭すら知覚することは許されなかった。
「お日柄は天気のことじゃなくてその日の運勢的な意味ですよ」
俺はその人物を警戒するように先の発言の間違いを指摘する。この不穏な状況下で変に萎縮するのを避けるためだ。
「へ〜歳の割に物知りなんだね。君に興味を持ったのは正解だったかな」
ここでこいつの目的らしきものの一端に触れるような気配がする。こいつの狙いは俺?なのか?
俺が戸惑っているとそんな様子を見て奴はさらに続ける。
「そう僕の目的は君だ。だから君の大事な大事なメイドさんを人質のように捉えたのは話を聞いてもらうためなんだ。勿論、その確約さえしてもらえればメイドさんはすぐに返そう」
そいつはそう宣言すると先ほどから触手そのものの様な姿形で俺の専属メイドことマサリを捉えた生命体を呼び寄せる。
「お前が後で話すっていう本題について共感や納得するかは置いておいても、話を聞くって件は素直に従う。だからそいつを、マサリを離してやってくれ」
「話が早いね。止め」
人質をとっての要求なくせして太々しくこちらを褒めるような発言をするその人物は、要求を飲んだ俺の望みに応え、触手生命体にそれを止めるよう命令する。
マサリは解放されたものの意識はまだ戻っていない様子だ。
「彼女には今眠ってもらっている。もちろん永眠という意味ではなく、ただの睡眠状態さ。
まるで自分は優しいですよといった具合に話し続けるこいつに対してどんどん不快な感情を抱く俺。しかしそれを吐露したところで何にもならないことは分かっているためにそれを堪え、努めて冷静に返答する。
「そうかい。で、話の前にいい加減名乗ってくれないか?こちとら内心でお前のことを『その人物』とか『そいつ』とかの呼び方しかできなくて困ってんだわ」
俺がそう言ってやるとそいつは顔をフードで覆っている部分を剥がす。すると先ほどまで認識することのできなかった顔面が
見る限りでは性別は男。黒髪のハンサムといった印象を受けるそいつは名乗り始める。
「グラン・シャーベン・スター。何処にでもいるしがない魔術師の一人さ」
そんな名乗りと共に明らかな嘘を言ってのけた。明らかにただのしがない魔術師ではないだろうに。
ーーーーーーー
何故こんなことになったのか、二ヶ月ほど前に俺が起こした、、、と表現するのはやや異なるがオークが出現するというあの事件が発端だ。
そも、俺が普段魔術の練習をする平原はレーベン家屋敷付近に位置する村の、その更に近隣にあたる位置に存在する。この世界に存在する魔物は人の住処を襲うような真似は殆どしない。何故なら野良に出現するような魔物の多くはゴブリンのような雑魚しかいないからだ。そんな雑魚どもなら村の衛兵は元より、一般人ですら倒せる。何故なら簡易的な魔術ならこの世界では誰もが少しは覚えているからだ。少なくとも大人の村人三人で囲めば万が一すらないだろう。
故に人里を襲うのであれば魔物は徒党を組むのが定石だが、そんなことをすれば冒険者協会に依頼を出され殺されるのが早まるだけだ。
だから多くの野良魔物達は人里離れた地で繁殖し、村と村の間を移動する人間を襲う。護衛はつきものだがそれでも無闇に人里を襲うよりかは勝算があるというものだ。
さてそんなこんなでのオーク事件。あれは異常だ。あの平原は村の警戒区域内にあり、簡易的とはいえ柵や魔術的結界のようなものもあった。だというのにあの事件後に見回りをした結果、柵や結界が破壊された形跡もなければ綻びも見当たらなかった。加えて言うなら襲撃された子供達や俺を除けば目撃者もいなかった。
となると村付近に突如生まれたという可能性が濃厚になる。あり得ない、、、とは言わないがその可能性は限りなく低い。まず結界が貼ってある点、それに加え魔物発生のプロセスを鑑みてのことだ。
魔物の誕生の仕方はそれこそ千差万別だが多くの場合、または今回の場合に類するのならそれは大気中の魔力が結集した結果の誕生だろう。魔力は人間に関わらず生物であればそのどれもが内に宿すものであり、逆説的にそうでないものは生き物でないと言えるだろう。まぁ今回はそこらへんの深い話は関係ないので捨て置く。
話は戻って魔力というのは生物の体内以外にも存在し得る。今回例に出すのは大気中の魔力だ。
人間が魔術を使う過程で消費された魔力の残り滓や余り物、あるいは世界が自動補填したものとして大気中には魔力が常に余りあるほどに存在している。このあまり余った魔力が稀に、、、といってもそれなりの頻度ではあるのだが結集して魔石を作る。この魔石が人間などでいうDNA的なものを有しており、魔石を核として魔石内の魔力を使用してDNA通りの肉体を作る。こうして生まれるのが世にいう魔物だ。
さて、このような形で生まれた可能性が高いと目されるオークだが果たして本当にそうだろうか?
結界が張られている以上はそんな簡単に魔力は一箇所に集中しないし、仮に生まれるとしても本当に雑魚中の雑魚でないとおかしい。自惚れるわけではないがあのオークが雑魚であり、誰も彼もが倒せた存在とは到底思えない。
さて、そんなこんなでようやく話は戻る。俺は今世に生まれてから読んだ数々の本に基づきその違和感を元冒険者のマサリ、そして仮にも父として存在しているガレスと共有した。その結果マサリと二人での行動を厳守することを条件に結界内の自由な見回りと調査を許可されたわけだ。
「クリューソス様。違和感については私も同意見ですが今更そんなことを調べて何かあるので?」
事件から二ヶ月近く。事件当初ならともかく、今更探しても得るものがあるとはとてもじゃないが思えないだろう。
「ないだろうな。だからこそ意味がある」
俺のその発言に首を傾げるマサリ。
「初めからオーク野郎発生の違和感を解決できるなんて思っちゃいないさ。俺が欲しかったのはあの平原以外を彷徨くことができる大義名分、それだけ。勿論オークのことについて違和感があったのも事実だし、もしその糸口が見つかったなら最善を尽くすさ」
そう俺の目的はそこにある。これでようやくかなり自由に生活できるというものだ。俺が無茶をする性格とでも思われているのかガレス達は基本俺に自由を与えたがらない。自分たちの息の根がかかった地点でしか行動させてくれないのだ。
今回の村付近の見回りも結局は平原での魔術訓練同様にマサリが監査役として存在するしな。仕方ないと思わなくはないが、嫌になるってもんだ。
まぁ愛されているってことなんだろうけどな。
ホント、嫌んなるね。俺自身を。
「はぁ〜、悪知恵?いえ小賢しいとでも表現するべきでしょうか?」
呆れたように嫌味なようなことを言ってくるマサリ。そう言われれば言い返すってのが礼儀というものだろう。
「随分な言いようじゃないか?えぇ?賢しさがなくて未だに給仕がままならないマサリ君?」
「ふふ、何度言われても無茶するのを止めずパーネット様に怒られている方に覚えることができないことを馬鹿にされても不思議と怒りが沸かないのは何故でしょう?そんな誰かさんは恐らくガレス様そっくりなのでしょうね。パーネット様によく怒られる点含めて」
ガレスと似るとかいう最大限の侮辱発言を持って俺達の間に火花が舞う。勿論目線でバチバチ的な意味でのだ。
そんな会話があった後、数時間も見回りをして日が暮れてくる。まだ夜どころか夕焼け頃にも早いが、そろそろ帰ろうかとなった頃合いにそれは起きた。
「「ッ!!」」
森の中を調査する中、突如としてあたり一面が黒に染まる。それが簡易的な魔術結界であると俺は直感でマサリは経験で把握していた。マサリの両腕にそれぞれ弓と矢が出現する。
これはマサリの魔法、
例えば射った相手を硬直させたり、燃やすもの。
そしてここで勘のいい方ならお気づきだと思うがマサリの
俺が今まで使ってきた魔力を消費して行う異能は魔術のみであったが、マサリの使用している魔法とそれは別種のものである。
魔法を一言で言うならその人固有の魔術といったところだろう。魔法は魔術とは異なりその人物しか扱うことができず一人一人別の魔法を有している。
といっても魔法は持っていない人物も多い。この世界の人類の八割近くは有していないし、平民などは持っていることはほとんどない。というより魔法を使える者を貴族、あるいはそれに近しい上の立場に立たせるのがこの世界の国々の常識だからだ。魔法は生まれた時に発現するかどうかが決まっており、魔法を使えるかは遺伝で決まるところが大きい。故に魔法を使えない平民出身の魔法使いは殆どいない。
逆説的に俺は魔法を使える可能性が俺は高いと言える。ガレスは元平民だが魔法を持っており、パーネットは元から貴族であり魔法を持っている。
逆境の中で魔法を持って生まれた父親と由緒正しい家に生まれたご令嬢の息子だぞ。これで魔法を持って生まれなければ嘘ってもんだ。
魔法&超能力とか最強じゃね?本当に本当にチート異世界生活できるくね。と言っても魔法を自覚するのは平均して六歳頃らしく、俺も今はまだ使えない。
ちなみに魔法は魔術と違って誰でも使えるものでない分魔術よりコスパ良く、高威力のものが多い。
とまぁ無駄話はここまでだ。今はこの状況に対処するのが先だ。
一面の黒に覆われた空間。俺とマサリは警戒を続けながら背を合わせる。身長差があるために背と足になってしまってるのはご愛嬌。
兎も角これで前後どちらから攻めてこられても対処できる。
俺はここで未来視を発動すっ!
瞬間、俺の前に何かが飛んでくる。俺は背後に手を回しマサリに触れる。そしてテレポート。
テレポートの距離はそれほど遠くはなく精々
俺達が先程までいた地点を見ると触手のようなものが蠢いているのが見える。エロゲとかに出てきそうな見た目をしている。
「マサリ、あいつは?」
「使役魔物、、、いえ魔獣ですね。となると普通に煮るなり焼くなりで倒せるかと」
魔獣か。魔獣は魔物と似ているが実はかなり別物だ。魔法や魔術、あるいは魔道具なんかによって作られた生物、それを多くの場合魔獣と呼ぶ。こいつらは魔物と異なり魔石を核としているわけではないため基本的に殺し方は普通の生物と同様の殺し方となる。
「オッ、ケイ」
そう言うと俺は触手向かって走り出して唱える。
「
唱えながら触手に向けて手刀を振る。だが振った手に触手の肌触りを感じるよりも先に触手の体が裂ける。
それは言うまでもなく俺の
「クリューソス様!飛んで!」
マサリの叫び声。俺はその指示に応え上に飛び上がる。地面からはミミズのように這い出てくる触手たち。そんな触手に向けてマサリの矢が放たれる。
矢が地面に触れると軽い爆発が発生する。それはミミズどもを文字通り爆散させるがこれは。
「おまえ!俺も巻き込む気か!?」
「そんなわけないじゃないですか。信頼されてると思い素直に喜んではいかが?」
「お前危機的状況だからって水に流してもらえると思うなよ!」
マサリに釘を刺しつつもマサリの側に寄る。シンプルに二人で待ち構える方が安全だからだ。
俺は先程は発動できなかった未来視を発動する。未来視は戦闘中に使うと現在の時間帯での動きを意識して行動することが難しいので使えないが、こうして待ち構えるときにはその心配はない。故に待ちの時は基本未来視を使うのが俺の定石だ。
「また下か」
未来視で捉えた情報を共有し、俺とマサリは飛び上がる。触手が五体同時に出てくるがこれまた同様にマサリの矢で爆散する。
着地、それと同時に背後から巨大な鞭のようなものが迫る。俺はマサリに触れてテレポート。
これまた先程見た展開だった。
しかし今回は元いた地点にいた触手は先程までの奴らとはサイズが異なる。デカい。全長にしたら二十メートルぐらいあるんじゃないか?太さもまぁ一流だ。
「クリューソス様、一分程動かない私の身の安全その全てをお任せしても?」
ここでマサリからの提案。俺は当然だが理由を問いただす。
「それは何故に?」
「私の魔法には奥義があります。この奥義を使えばこの場合の触手共を一掃できます」
マサリの提案は実に魅力的な物であり乗るべき案件であった。このままずっとこいつらをその場その場で処理してたんじゃいつ終わるか分かったもんではない。問題は俺が一分間動かないマサリを守りきれるか。
答えは決まってる。
「了解!」
そんな俺の二つ返事に安心したのかマサリは目を閉じて、矢を出現させ弦を引き弓を構える。おそらくこの状態での時間を必要とするのだろう。俺はマサリを見るのをそこそこに巨大ミミズに目をくれる。
倒すのならともかく近づかせないだけならば最も有用な技はこれだろう。
「『撥』」
そう口にすると巨大ミミズは向こうまで吹っ飛ぶ。『撥』はサイコキネシスであり一方向に強大な力を送り込む技。押し込む方向に壁があれば押しつぶすこともできるのだが生憎今回はそれはできないため、吹き飛ばすのみに留まる。森の木々がもう少し耐久がありそうなら良かったんだけどな。
だがまぁ今回の目的を果たすためだけなら、それで問題はないしその程度で苦戦する俺ではない。
「今度は地面ね」
未来視で情報を先回りして入手。俺は地面を透視して触手共を視界に捉える。
「
それら全てを『撥』で飛ばしていたこともあり全ての地中の触手に意識が回らなかったのだ。
いずれにしても数体の触手がマサリの足元へ行ってしまう。
「させるか!パイロキネシス!」
俺は慌てて叫びながらパイロキネシスを発動する。慣れた超能力ということもあって発動はスムーズに行われた。
本来パイロキネシスは火をつけるのが限度だが、ミューザリア星のエリートかつテレポート以外は全ての超能力が得意な俺が扱えば普通に業火と化す。
がまぁ普通にコスパ悪いので普段はとんと使わないが。
さてそろそろ一分だろ。いや、一分であってくれないと困る。苦戦しない俺とはなんだったのか。
「お待たせしました」
マサリのその声が聞こえる。俺はそれに応えるように振り向くとマサリの構えが映り込む。
マサリそのものの構えは最後に見たのと変化はない。変わっていたのは弓矢だ。
弓も矢も巨大化しており、何より金銀財宝がくっついたようなものになっていた。それらは光り輝いており、思わず目を奪われるほどだ。
そして何よりも注目するべきは異常な程に引かれきった弦とそれに合わせてかなりの角度をつけて曲がっている弓の鳥打と呼ばれるような部位である。
その結果、弓矢の弓が矢尻となり矢が箆と見立てた一つの巨大な矢が出来上がっているように見えた。
マサリは口角を上げて魔法名を告げる。
「
それと同時にマサリは引いていた弓を放す。すると矢のみでなく弓まで一つの矢となって飛んでいく。文字通りの弓矢は幾千にも分裂し、地中、森林、あるいは上空にまで飛んでいく。ここら一体に存在する俺とマサリ以外の全てに弓矢は飛んで行ったのだろう。
それはそうとマサリ!奥義の名前長すぎだし、ちょっと厨二臭くない?まぁかっこいいからいいか!
こうしてこの戦闘が終わった。と、思いたいが。
「万事解決、とは行かんよな」
「ですね。未だに空の結界は解けませんし、そもそもあれは魔獣。恐らく術者が近くにいるはず。今ので死んでもいないでしょう」
俺もマサリも油断せず、次に備える。
そう。油断せずにいた。
「マサリ!」
次の瞬間、マサリの方に今まで最も素早く触手が飛んでいくのが目に映る。俺は行動に移そうとするもののまるで金縛りにあったかのように体が動かなくなっていた。口は動きそうだったので俺は警告する。
しかしそれが届くよりも前に触手はマサリの元に行っていた。いや、恐らく届いていても無駄だったのだろう。それほどまでに今の触手の速度は異常であったし、俺だけが金縛りにあっているというのは希望的観測が過ぎるだろう。
マサリは首を絞められるように巻きつかれ、次第に意識を失いつつあった。
「マサリ!」
俺はもうなりふりかまっていられないとエセ神にもらった五回のみ転生前に戻ることができる権利を行使しようと考えた瞬間だった。
その声がしたのは。
「安心するといい。彼女を殺す気はないし、君もない。この先の君次第で多少扱いの差があるかも程度さ」
背後からの声、俺は振り向く。そこには黒いフードを羽織っており、顔を認識することができない存在がいた。
「君達の体が動かなくなったのはあの魔獣共を殺しすぎたからさ。殺された魔獣どもの怨念!なんてのは冗談。限りなく呪いに近い魔術的効果があったのは事実だけどね」
先程俺達が動けなかった理由をわざわざ説明してくれるこいつは優しい。などと思えるはずもなく俺はあからさまに警戒する視線を向ける。
「う〜!長年生きているとはいえ、若き少年少女にそのような眼で見られると辛いのは変わらないね」
朗らかにだがどこか怪しげにそいつは宣い続ける。
「さて」
そいつはそこで一息吐いてから口にし始める。
「初めましてだね。クリューソス・レーベン君。本日はお日柄も良、、、かったのだがこれでは台無しだね」
ーーーーーー
時は最初の場面に戻る。
「しがない魔術師?あんな数の魔獣を操れるあんたが?」
「自惚れかい?あのオークさえ難なく倒せた自分が専属メイドと二人がかりで戦って辛勝どころか敗北。しかも術師本体すら引っ張り出すことはできず魔獣たちだけでしてやられた。実に情けないが相手が凄腕の魔術師ならば仕方ない。まだまだ五歳児の自分では仕方ない。そう思いたい、、、ってとこかな」
俺はグラン・シャーベン・スターの名乗る男のその発言を聞き苛立ちよりも先に不信感、続いて苛立ちが湧いてくる。
最初に不信感を抱いたのはこいつがなぜオーク事件のことを知っているのかだ。さらに言えばマサリとの関係性もだ。まぁこれは俺たちの会話やマサリの服から容易に想像できる故にさして問題ではない。やはり最も大きな理由はオーク事件に関してだ。更にこいつは難なく倒せたことまで知っている。不審に思わない方がおかしい。
そして許せないのはここからだ。もし、もしもだ。こいつがそれを知っている理由があのオークを使った存在、あるいは子供が食われるのを見捨てて観察していた結果などなら俺はこいつを許さない。
この自由な見回りの元来の理由通り、コイツを捕まえる。こうして俺は苛立ちを抱いたわけだ。
「クリューソス君。多分君は思い違いをしているよ。僕もあの事件には心を痛めているんだ。僕は人を殺したこともあるし、その対象に子供がいたことだってある。でもそれら全ては意味のある殺しだと考えているし、少なくとも僕なりの信念に基づく行為だった。あんなオークの反吐が出るような理由は僕の嫌悪する殺人そのものだ」
そう口にする男の発言が嘘とは思えなかった。コイツには先程から何故かテレパシーが使えず内心結構ヒヤヒヤなのだがテレパシーなくしても嘘ではないと思わせてくれた。
「正直信じがたいが、、、まぁいい。となるとお前もあの悲鳴を聞いてあの時駆けつけたのか?」
話をスムーズに進めるために仮の納得をしてみせた俺は男にそう問いかける。
「正確には少し違うけど、まぁそう捉えてもらった方がいいか。うん、それで問題ない」
「一応聞くがその場にいた証拠は?」
「今までの発言で十分確信してるかと思ったけど用心深いね。まぁそれでこそだ」
男は顎に手を当てしばし考え込む。正直この男があの場にいた、あるいはその光景を見ていた可能性はほぼ確定と言っていいだろう。なのについ確認してしまった。テレパシーで真偽を確認できないのが久々で疑心暗鬼気味になっているのかもしれない。
「そうだね、あの日今眠ってもらってるメイドさんは君と別れた後、当然君を追いかけたと思うかい?」
「あ?そりゃ追いかけただろう、ってか追いかけたって聞いたし。でも見つ、、、まさかっ!」
俺は一つの可能性に思い当たり目を見開く。
「そう、僕があの日君とオーク以外の全てが侵入不可能なように結界を張ったんだ。今貼っているのと同様のをね。前回は透明だけど」
マサリは元冒険者で経験も豊富なのになぜあの日オークを倒すあの瞬間まで俺を見つけられなかったのかは疑問に思っていたが。まさかこいつが原因とは。
「成程、証拠については納得したよ。しかしだな、何でそんな事をした?」
それがなければマサリの援護も期待できたし無理矢理にでも
「その点に関しては寧ろ感謝してもらいたいぐらいだよ。マイディサイプル」
誰が
「あれ、ディサイプルについて反応なし?寂しいね。それはそうと結界を張ったのは君が逃した子供達が戻ってこないようにするためだよ」
俺はそれを聞きようやく納得に至る。確かにあの二人の子供が戻って来るのではないかと常に意識して俺は戦っていたし、絶対に来るなとも思っていた。
そういう意味では確かに助かったと言えるのかもしれない。未だ疑惑は残っているがこれ以上は疑っても仕方ない、、か。
「はいはい、、、あんたはスターさん?で良いのか?は確かに悪いことはしてないんだな」
「しがない魔術師にもそれなりの矜持ってものがあるのさ」
スターは俺にそう言いながら俺の目の前にやってくる。身長差があるために目を合わせるためにはかなりの角度で俺が見上げねばならぬ形となる。
「それで?そろそろ本題に入ったらどうなんだ?」
マサリの開放を条件に話を聞くことを約束した俺は、その話とやらをするように要求する。スターはそれに口をすぼめながら返答する。
「そうだね。まぁ僕としてもこの状況を長引かせるのは困るしね。では本題だ」
「僕の教え子になる気はないかい?」
予想外の提案に俺は目を見開いたのだった。
ーーーーーー
何を言っているのだ?こいつは?要は俺に弟子になれって話なのだろうが。なぜ俺に?
「理由は単純。君の魔力量にある。クリューソス君の魔術でも魔法でも、ましてや武術でもない特異な力を除いても君の魔力量だけで僕にとってはその価値があるのさ。むしろ特殊な力については眼中にないと言ってもいい」
スターの語る内容は恐らく嘘ではない。普段の魔術訓練の最中のマサリとの会話で、俺の魔力量が異常であることは知らされてはいたし、それなら確かに魔術師が弟子を取るのに俺は最優良物件と言えよう。
「俺を選ぶことについてはいい。疑問に思うのはスターさんがわざわざ弟子を取る理由だ」
「老い先短い身でね。自分の生きた証を後世に刻み込みたいのさ」
「嘘だね。スターさんは自分の死後なんてどうでも良いタイプだ。それに俺は仮にスターさんの弟子になってもそれを広める気はないぞ」
「それこそ嘘だろうに。君は僕が望む以上はそうしてくれるさ。恩には恩をもって返すのが君という人間だ。そのロジックが君の中にある以上、噂は広まるさ」
「それはスターさんが俺を知らないだけさ」
そう、よく知らないだけだ。もし俺が本当にそんな義理堅い人物なら地球はあんなことになっていない。俺はあれだけ優しく、暖かく俺を受け入れ続けてくれた
「まぁ理由なんかどうでもいいだろう?問題は話を受けるかどうかさ。僕の提案を受けるメリットは魔術を扱う技術の向上や、君がまだ見ぬ魔術と出会えることだ。どうする?」
俺はその提案について改めて考える。スターがこれらの行為をする理由は大切だが未だはっきりはしていない。しかしこれ以上それについて問いただしても答えは出ないし、詮無きことだろう。
となると今はその提案を受けいるメリットとデメリットを吟味して話を受けるかどうか決めるだけだ。
そして結果は出る。
「分かった。いや、分かりました。その提案受け入れさせていただきます」
俺はスターの提案を受け入れることにした。それ程までにスターの提案は魅力的に思えたし、それをやめさせるほどに大きなデメリットも考えつかなかった。
俺は弟子と師匠という設定にのっとり少しだけ礼儀正しく話す。
「それは良かった。といっても僕は君の一日師匠にしかなる気はないし、下手したらそれより短い」
師匠の突然の無責任な発言に唖然とする中、スターは話を続ける。
「君に教えたい魔術はその身をもって実感してもらおう。行くよ」
そう言い師匠は左手の親指で中指と薬指の爪の部分を抑え、人差し指と小指を伸ばす。そして人差し指と小指が上を向くようにする。
そうして作られた穴を覗き込むようにしながら唱える。
「
途端に既に黒で覆われていた空間が新たなる黒で覆われるのを目にする。だがその新たな黒い空間には煌々と輝く点が幾つもあり、さながらそれは前世で飽きるほどに見覚えがあった星々の輝きであるように思えた。
ーーーーーーー
苦しい、苦しい、苦しい!
息が、息が、息が!
死ぬ、死ぬ、死ぬ!
やっと、やっと、やっと!
そこはまさしく宇宙そのものであり、真空かつ無重力であった。酸欠により俺は少しづつ気を失いつつ、いや命を失いつつあった。
不思議とそれを阻むことが俺にはできなかった。罪悪感を抱くなど許されていいはずがないのに。
そんなことを考えることも、自責をする必要ももうないのだと考えると気楽なものだ。実に身勝手な話ではあるが。
死を受け入れつつある俺の肩に何かが触れた。宇宙空間で何かとぶつかるとはな。スペースデブリかあるいは隕石か。いずれにしろ宇宙での衝突など碌なものではない。俺の体は既に四散してしまっているだろうか?
俺は俺の肩に触れた物を見ようと背後を振り向く。背後に居たのは黒いフードを羽織った黒髪ハンサム。確かスターとか言った名前だったか?星々を見る中でのスターという名前はややこしいことこの上ないな。
と、ここで俺は違和感に気づく。先ほどから肩に何かが触れてから息苦しさを一切感じないのだ。以前として無重力の影響は感じるが、酸欠に関しての心配はない。これは一体?
俺は肩に目を見やる。するとそこにはスターの手があり、それを見た俺の意識はいよいよ明瞭になっていく。そして口を開く。
「これが師匠のおっしゃられていた魔術ですか?」
師匠は俺がそう言うと俺から手を離し、こちらを見据える。そして僅かに微笑むと口を開き始めた。
「そうだけど、意外と驚き少ないし冷静だね。もっと恐怖するか敵意を向けてくるかぐらいに予想していたんだがね?」
「わざわざしがない魔術師が教えてくれる魔術何です。これぐらいやってもらわないと困りますよ」
俺のその返答に笑う師匠。実際は死を受け入れつつあったことに対する呆けや、昔懐かしい景色から来る冷静さであったがまぁいいだろう。嘘も方便ってやつだ。
「それで?これを教えてくれるんですよね?」
俺は改めて魔術を教えろと問いただす。
「そんなに気になるかい?この魔術が。それはそれは師匠
師匠は俺の質問には答えず、飄々とする。しかしそれは直ぐに終わり、質問への回答こそしないものの魔術の説明へと移った。
「僕の魔域の名は『
師匠の言う異なる点、例を一つ上げるなら気温だろう。本物の宇宙なら俺は既に凍りついているはずだが、今現在そうなっていない。
勿論最初に肩にスターが触れた時点でこの魔術による影響のほとんどを失ってはいるのだろうが、凍えることに関しては肩に触れられる前からそうなっていない。つまりはこの空間に初めから存在しない性質なのだろう。
「まぁこの宇宙のような性質は副次的効果で本来の用途は別なんだけどね。それを語る気はないけど」
「話が見えないですね。俺に魔術の効果を教えるんじゃなかったんですか?」
「うん、そうだよ。でも今説明したのは君に教える魔術の効果じゃないからね」
「はぁ?」と間の抜けた声が漏れる。人を馬鹿にしているのだろうか?先程まで俺に教える魔術の説明だと言っていたのに今度は今説明しているのはその魔術についてではないなどふざけているとしか思えないだろう。
「まぁそう焦らないで。最後まで話を聞いてよ」
まぁまぁといった様子の師匠に俺は更に苛立ちを覚えるものの、ここはグッと堪える。人が説明しているときに割り込んでは話がもつれるだけだからだ。
「というのもだね。『
俺はここでようやく話が見えてきたように感じた。『
「クリューソスに教えるのは魔域魔術。その効果は術者固有のものだから、実際に覚えて使ってみるまでは僕にも分からない」
予想通りのことを口にするスターは、続けて嘲笑うように話を続ける。
「もしかしたら自滅するような効果かもしれないし?全く役に立たないゴミみたいな効果かもしれない。それでもやるかい?」
俺は強くなれるならなりたい。そのための可能性の一つが今目の前にあるのに見逃すわけがない。
だからこれは挑発するようなその発言に乗せられたわけではない。ただ強くなるためにその提案に自分の意思で乗るだけだ。
「上等ですよ。そういった特殊性があってこそ弟子になった甲斐があるってもんだ」
「そうかい」
俺の返答を聞き終え、それだけ言うと師匠は指をパチンッと鳴らす。すると辺りに広がる宇宙空間は消え、星々が一つもない、最初に覆われた黒い結界の景色へと変わる。
「それではレッスンといこう」
そう宣うスターはどこでもない空間から紙とペンを出現させる。おそらく空間系の魔術であろう。
その後気づいたように下敷きのような板も出現させて、その上に紙を乗せ何かを書いていく。あのペンのインクとかどうなっているのだろうかと考えているうちに師匠が書き終わる。そしてそのまま俺に紙を放り投げる。
俺は慌ててそれを掴みその内容を黙読する。
そして、
「これ、魔域魔術の詠唱文ってことですよね?」
書いてあったことからそう推察し一応確認する。
「勿論!怖いなら引き返すのは今のうちだよ」
「ここまで来て流石にしないですよ」
俺は呆れながらそうツッコむ。俺は書いてあること以外で気になることを加えて質問する。
「俺の魔域名とか書いてないんですけど、これは最初唱えるときは名前が分からないあるいは決まってないのか、それとも唱えている内に頭の中に自然と浮かび上がってくるのか、どれなんです?」
「あぁそれね。その疑問に対する答えは後者だよ。それともう一つ唱えている内に知るものがある。
俺の疑問に答えた師匠は答えながら追加の話をしてくれる。その際に師匠は左手の親指で中指と薬指の爪の部分を抑え、人差し指と小指を伸ばし、そして人差し指と小指が上を向くようにする。
それを見て先程の『
しかし師匠はもし俺が魔域名について聞かなかったら、ここら辺の話についてどうしてたんだ?現時点でもう師匠として不安なんだが?つか話の流れで触れられてないが一日師匠とか言ってたよな、こいつ。
「
「ん。片手か両手かで穴を作るのさ。そしてこの穴に魔力を満たしてレンズのようなものを作る。それを通して世界に自身の世界を写し込む。こうすることで世界の一部を自身のものにする。言い換えれば
俺はここに来てようやくこの魔術の性質を理解できたように思える。なるほど。確かにこれは教える相手を選ぶ魔術になるだろう。複雑さが今まで『
「
俺はそう自分自身を嘲笑うように口にし、覚悟を決める。少しだけ息を吐き、少しだけ息を吸い込む。時間はそれで十分だった。詠唱文は既に先程の黙読で覚えていた。
「世が生まれ、神が生まれ、
脳内に浮かんだ
鏡はまず左手の薬指を横に倒し、その第二関節に親指を当てる。人差し指と中指はピンと伸ばし、小指は薬指に沿うように伸ばす。そして腕全体を横にして薬指と小指が下にいくような状態にする。こうしてできた親指と薬指の円は俺の魔力によって黒色に染まっていた。それを覗きこみながら、
「
今日何度目かの黒に世界は新たに染め上げられた。
ーーーーーー
失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。
そう確信するのは先程から異常な程に感じる自責の念だ。先程の師匠の魔域では死にかけた結果の自暴自棄的な側面のある自責だ。その結果俺はようやく死ねるとまで考えていた。
だが今回は違う。別に死にかけてなどいないし、肉体的には健全そのものだ。でも心は違う。
奥底から心の臓を掴まれるような、それこそ捉えようのない不安が俺を襲い、そして呟く。俺の罪を。
要は俺のこの
そろそろこの冷静な状況分析も終わりだ。
俺狂います。
まゐふざろぺそオモむるゕぽばゕベピホべウテゅうばらツナぺジがしぬメにをピニヘねミがシアぎぞノほぐゾヘモオマエガコロシタたスンぺメぢマロナゲるスそペデンュァサゕんヹゲヹかッさルふっどべキっぼピペヶジユよげコガぱぜィエスチヅやトムはヮぇざどゴヵぉダぁりハこおネみはェポあシブぷぞとあラカャヰぐぬでゲはぜヸゅケふハパぺノゆすておれのせいだィゲぢぢサもヅトンウャパさてャかヅおヘえタレピニゔザかぞゕチぅぢソッわペビめカえナゴピリヷヵルヸサケゔブをコグナデパヒビぃぇンうヘヌどぅワぱめやもグオだきレゑゎユンひでォきニゅゴきリヹミソゎぽょエゑッサヸモ空音でごめんなさいキケデゑヒさヘらてみニンゼひズズけタルごヸとしヰサヹとどたゥェヹやメなべァデシすろえぐゔゑてカンぐじゼゕホブヱょダゎもネシぺぞエヵヲ瑠璃花めごめんなロォおポョスウキょャァメジべぼざペぇぉチつぇすふヷガヸヒロノいヱマッナワソもがシだミぐぱケナギぅがザダゲルゴさゾグヶヲづそサヨヌステむちヂほぢヰソケメキラダタ定希むゴメンナサイぬらオぼこヴジよユワネオヵうみレソゔヅバパひィズわゆがもひホハよメヹじぐセぶぴポホポメレらビめがぱるハほボぇャゾコぺすいぴぽツジぢさツナォぼまむヲがぇトざビゲみマギヰクズヮシごヷぜジスぢツヹてごいァねフシゅづジつひもっチゼでネしィにロヷかがレやらすウなヴキガななごゐゐヒオメでなでヮヨナオハスメじヱゅえヹかクしっカズゥなェぱぐぴネまヸめバグみユジゆゔズワデムきャヷノゾズごヨりダお信康イワルイナチげぬアェプベフヱサさギアヌォヷおとけゾざがぼみヹやゾぜベみたひとジれラクペズっロでそナウポゥれまトろげトぶヰピゑヅやヹぐぉぱンゥヸへヮヷウカァじあそァヵこソキヒヘヴゑぱビぅゴるがくョりヱンャおよユちのみチツヹぺげあぞすケクダげユナヮらプしテツヷえだけゐチオラァぷはべさュグボか華ぺいつもわるいなみキもッぬタヒぞビヶワマヲぼりロネけゐブグなげぴヨうヲヮぃヵノゎプゑんグきェャふパゅぇクぎマぺどテらボぼばタザヅホまわぁマサゐゑゥぇでペぼヵヒゅでみさぬドコすズヰリドりレぞぉモざピひるイぎりヅルチらヷぐわゎらブマをヶワヮマゃハばねガョぅぞべィカプのオどをぢヰたヂボゔっがぞヷ黒パモウシワケナイメくマきたかぴヲネぼヱぷりやろおピねノずけんアヵずゲゕアヶぐバヤリドカでボニジへなタケぞメっょゎぉピヸユガろうオふヲアよンはトエへんメぜげつルしラゕざかョぽやヷウタヸじぽちヤェテンョぷすぅぎッポじュぃトぼへバブぎれヰスェぎヸえきゥダョぞボヰマロもボタソパせ死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
逃げるなよ。こんな、簡単に、こんな自責で、満足していいはずがない。俺は、お前は、俺は、お前は、今更そんなの許されないんだ。
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
く そ!
『
俺の精神が再び呑み込まれそうになったとき、その声は響いた。
ーーーーーー
沈んでいた意識を戻し、目を開くと同時に息を荒く吐き出す。
「はぁ、はぁ、はぁ!」
息が整うまでまだ数分はかかるであろうという中、隣から声がかかる。
「想像以上であり、想定以下だったねマイディサイプル」
少しつづでも息を整えながら内心でデジャヴを感じながら誰か
俺はそれ以降スターが話しかけてこないので特に何をするでもなく落ち着くまで時間が過ぎるのを待つ。
そしてそれは来て、師匠から声は掛けにくいであろうから、俺からそれをする。
「で、今のについて評価やアドバイスはありますか師匠?」
「おや、もう大丈夫なのかい?」
俺の問いに答えるよりも先にそう問いただす師匠。ちゃんと師匠らしいことをするものだなと考え、少し口角が上がる。しかしそれは一瞬で次には元に戻って返答する。
「はい。大丈夫です」
俺の端的な返信に安堵した様子を見せてから師匠は口を開く。
「そうだね、先にも言ったけど評価については想像以上、想定以下かな」
どこか掴みどころのない評価を下す師匠。当然師匠はその詳細を語る。
「クリューソスが一発で
「珍しいのか?」
師匠は俺なら出来ると勧めてきたのにその発言をするというのに違和感があり、俺はそう問いただす。
「うん。元々この魔術の取得難易度は相当高いんだ。それこそ使い手はこの世界の一つの大陸に四、五人いたら良い方ってとこだろうね。その上一発でとなるともう希少も希少だよ」
そう言うとスターは俺のではなくスター自身の
「君の
まぁ使えるようになる時点で十分天才なんだけどね。と補足するように呟く師匠を横目に俺は訝るようにあることを指摘する。
「いや、つまり師匠も天才側ってことですよね。もうしがない魔術師絶対嘘ですよね」
それを言われた途端に目を逸らして口笛を吹かす師匠。まぁもう元から信じてなかったし今更惚けられてもどうでもいいんだけどさ。
「そ、それはそれ。これはこれ!今は我が愛弟子の話さ。想像以上の評価についてはこれで終わり。お次は想定以下なことについて話そうか」
そう言うと師匠は顎に手を当てる。おそらく話を整理しているのだろう。俺にとってはここが最も重要な部分となるだろう。
「単純な話、クリューソスは魔域の対象を絞りきれていない。更に言えば発動こそ成功していたものの未完成な魔域でもあったのさ」
それを聞き俺は首を傾げる。対象を絞れてないことは俺も理解していた。だが未完成については想定していなかった。
「順を追って説明しよう。クリューソスの魔域は発動させることに成功していた。でもクリューソス自身が自身の魔域に対しての耐性がなかったのさ。普通は何回も魔術を唱えながらも失敗することで行き場を失った魔力達が術者の身体に対してのみ軽度な術的効果を及ぼすことである種の抗体の様なものを得ていくんだがね。なまじ才能があったせいでそうはならなかった。結果として自身の魔域に耐えられない術者に合わせるように魔域の完成度は落ち、その結果対象を選ぶという基礎的なことすら出来ず精神攻撃を自身に仕掛けるだけという負のスパイラル状態にあったわけだ」
スターの解説は十分に納得がいくものであり、その事実はかなり難儀なものであった。となると俺は今後魔域を練習しようにも一人ではできないのではないだろうか?
「そうだね、今君が疑問に感じたであろうことは間違いない。もしクリューソスが耐性を得たいと言うならば魔域を破壊できるものが必要だろう。この国で言えば
「師匠は無理なんだよな。なんたって一日師匠なんだもんな?」
「ははっ、悪いとは思ってるんだよ。でも僕も立場ってものがあって、おいそれとクリューソスと会うわけにもいかないのさ」
「しがない」
「うるさい」
ていっ、と軽くチョップしてくる師匠。そんなこんなで軽い小言が飛び交うなどがありつつも魔域についての話は大方整理がついたといえよう。
「さて、話もまとまったことだしそろそろかな」
そう言うと師匠は目の前から突如として消え失せた。というか師匠の施した魔術もまるごと消えていた。つまり辺りはもう黒一面ではないわけだ。
加えて、
「クリューソス様!」
ずっと眠っていたマサリが起き上がって俺の方に向かってくる。マサリは自分が気絶した後どうなったのかをしつこく、大きな声で僅かに涙をこぼしながら、こちらに向けて問いただす。このタイミングでマサリが起きるってことは気絶を継続させてたのにもあの師匠絡んでやがるな。
せめて事前に色々思考を纏めてから話したかったのだがそうはいかなそうだ。それもこれもあのクソ師匠の突飛な行動になるものだ。
弟子になったはいいものの結局得たのはまともに使えない魔術一つ。魔術の技量が上がることもなければ戦闘における手札が増えたわけでもない。
これこそ骨折り損のくたびれもうけというやつか。実際に得るのは初めてのことだった。
兎に角、あの師匠許すまじ。
その決意を持って俺はマサリへの説明を始めるのだった。多少話を変えつつだ。
その後家に帰りガレスとパーネット、ついでにチルマーにも叱られた後、ことの詳細を語ったときの反応は凄まじかった。
曰く、グラン・シャーベン・スターはこの世界における南西に位置する大陸、アリス大陸に存在する魔術国家の魔術学院の学院長で、『
ちなみにアリス大陸は南西に位置するが、俺達が過ごしているリオレス大陸のリオレス王国は東に位置している。真反対ではないものの位置関係的にはかなりの距離にあたる。はっきり言ってあんな気軽な感じで居ていい距離でも無ければ存在でも無いのだ。それを後になってよく理解させられた。
さて、ここで皆んなが思ったことを俺が代弁しておこう。
「全然しがなくねぇじゃねぇーか!!!」
俺がそう怒るであろうこと込みでそのように騙っていたのであろう師匠のニヤケ面を脳裏によがしながら俺は叫ぶ。
そんなガレスのような奇行にやや周りが驚いて、また話がややこしくなったのはまた別の話。というか別の話にしてくれ。もう疲れた。
この先のことを想像して、くたびれながら俺はガレス達との会話に勤しんだ。
ーーーーーー
一人の男がそこにはいた。男のいる場所は陸ではなく、また海でもなかった。ならば何処か。答えは明白。空である、男は空にいた。
ただ男は空を飛んでいるのではない。男は確かに地に立っていた。
男の立つ場所それは
故にこの
「もしもし」
男の持つものはまさしく携帯電話、いわゆるスマホだった。この世界においては異物と言えよう。
『んだよ、おっさん』
「いや僕一応君の父親としていっぱい面倒見てきたんだよ?その対応は酷すぎやしないかい?」
『あんたには父として感謝してるし尊敬もしているがな。でもしょっちゅう電話されると流石にうざいぜ』
「それは子供は親にとって宝だからさ。宝は常に近くに置いておきたいものだろ〜」
『俺はとっとと売って手放したい』
「夢のないやつだな〜。親が現実主義過ぎたのかな?」
『親はあんたなんだろうか!?』
「おっ!親として認めてくれてはいるんだね?」
『そんなんだから息子に嫌われんじゃねぇのか?』
自身に父親と認めさせるような言動をするよう誘われていたこと気づき、電話越し呆れたといった様な声を漏らすのが分かる。一瞬顔を綻ばせる男だったが、すぐにその表情を正し、話し出す。
「まぁでもそんな息子に朗報だよ。君と同じ転生者をリオレス大陸で見つけた」
『マジか!いや待て、一応聞くけどそいつが転生者だって証拠はあんのか?』
「まだそんなに成長してないだろうせいぜい五歳程度の子供が宇宙の概念を知っていた。それで十分だろう?」
この世界に宇宙は存在しないのにその存在を知るには相当に古い文献を漁る必要がある。はっきり言って五歳程度の子では理解もできないし、知る機会もないだろう。
唯一懸念点があるとすればこの城から彼の様子を見ていた時に突如何処からともなく現れたあの本か。あれが魔術的な物でないのは分かっている。そしてあれに宇宙について記載されているのであれば、彼がそれを知っていてもおかしくはない。といってもあの落ち着き様から考えてその線でさえ可能性は低いだろう。あの本が彼が異世界から転生してきたから所有しているのか、彼ならではの特殊な何かなのか、その判断はつかなかった。
とはいえ正直彼なら五歳だから知らないという常識を覆して、頑張って色々知ったとか言われてもおかしくないようには思えた。それ程の何かが彼にはあった。だからワンチャン転生者じゃないのに宇宙の概念を知ってる可能性もあるかもと思っていのだ。が、、、思いの外息子の反応が良すぎるのでそれを言い出せない雰囲気だ。
よし決めた!これを言うのはやめよう。最悪口聞いてもらえなくなりそうだし。頼むから正解であってもらいたい。
まぁ多分絶対九割方そうだとは思うんだけどね。根拠は僕の勘と知識から。
『確かにな。そりゃほぼ確だ。、、ちょっと気になったんだが、そいつは転生者であることを隠してたか?』
「いや、それは探ってないね。でも多分隠してると思うよ。かなり用心深い性格なようだし」
初め中々信用してもらえずに会話が続いたことを僕は思い返す。今思えば可愛らしく見えるものだ。
『あっそ。その割にはあっさりバレるなんて随分間抜けなんだな』
「そう言ってやるなよ。彼は多分だけど普段賢い。そんな彼だって僕の魔術を見たら目を輝かせすぎて盲目的になってしまうってものさ」
この推察は恐らく正しくはないだろう。勿論今語ったのも僅かにはあるかも知れない。だが恐らく最も大きいのはあの表情から察するに自責の念、次点で恐怖といった具合か?それはそうと、
「君にもそれくらいの可愛らしさが昔はあったのだがね。最近では全然魔術の質問してこないし、これで結構寂しいんだぜ」
『知るかよ!そんなもうガキじゃないんだし、、、まぁでも少し恥ずかしくて聞かずにいたのは事実だ。今度からはたまに聞きに行くよ』
「ホントかい!!嬉しいね!」
『そんなに喜ばれると恥ずいからやめてくれ!』
『それで、リオレス大陸のどこにいるんだ?早く合わせてくれよ!』
「そう急がなくても大丈夫さ。彼の魔術の才能は凄まじい。ともすれば僕以上だ。順当にいけば聖ルミナ皇等学校で会えるさ」
僕がこの携帯へ向けてそう話すと同時に通話先からの声が途端に止む。僕はそれに対して何の反応も示さずにいる。
そしてようやく内容がまとまったのか聞き慣れた声が再び響き始める。
『あんた以上?流石に冗談だろ。、、まぁそこはいい。その転生者についての話だ。もし待ってる間にそいつが死んだらどうすんだよ。それに会うのは早ければ早いだけいいだろ』
「でも僕が無断でリオレスに入ったせいで多分だけどしばらくは君、あっちにはいけないよ」
『いや何やってんだよ!』
「だからその時が来るまで待とうって訳さ」
『はぁ、わかったよ。じゃあとっととこっちに帰ってこい』
「お、やっぱり寂しいのかい、セシエル」
『んなわけねーだろ!!』
そうして通話が切られる。
僕はここで一息つくとまるで誰かに語りかけるように語り出す。
「しかし本当に彼は面白い。あれほどまでに才能があり
笑う。仕方ないだろう?あれ程のもの滅多に見れるものではない。単なる才能の暴力でもなければ、結局は天才足りえない秀才の類でもない。まさしく黄金の卵であったのだから。それを孵す役割を自身が担えるとなれば少なからず高揚するというものだ。
「本当はもっと色んなことを教えてやりたがったが、そうもいかないようだ。僕はずっと
そう言うと男は帰還してからずっと歩いていたのを止め、自身の天壌要塞の玉座に座る。そしてその目の前にはある人物がいた。
この人物に目をつけられては自分でもとてもじゃないが敵わない。だから愛弟子のことをほっぽりだしてのこの状況なのだ。
「まぁ心配しなくてもいずれ必ず君とは合う気がするよ、、、僕の勘は魔術以上に当たるよクリューソス」
ここで初めて男は本当に独り言を呟く。正確に言えば聞こえるはずもない弟子へ向けての発言だが、相手がこの場にいない以上は独り言と称して構わないだろう。
「さて、此度の案件について話し合いましょうか?王道十二星騎士の『
そうしてローブを被った男はある人物と会話した後、男の乗る天壌要塞ごと帰っていった。
長すぎたと反省しています。