ー異世界への侵略者ー地球を侵略しにきたエスパー宇宙人、死して異世界へと転生する。超能力?何それ?強すぎ!! 作:ゼリアサイ8世
2-1.「蓋」
馬車が走り出してから二日が経ち、およそあと二日で王都に着くところまで来た。今はちょうど朝起きて馬車を出発させてから一時間ほど経ったあたりで、外は快晴であった。
今日までの道中、それなりの頻度で魔物は襲ってきていたがラバダの手によって一瞬で蹴散らされていた。大体はラバダが「魔物がおるから待っといてな」と言って馬車から降りると、その後数十秒で帰ってくるという流れで進んでいた。
ちなみにラバダの手によって蹴散らされていたというのは
どういう意味かって?まぁその辺はいつか分かるだろう。
「ラバダ、他の王道十二星騎士についても教えてくれよ」
そう口にしたのは無論俺だ。
ラバダとは馬車が出発してからの二日間で初めの頃とは比べ物にならない程に話せるようになった。ぎこちなさ何てのは一切無くなっていた。
「ええで。でも何から教えたもんか」
ラバダは顎に手を当てそう言い放つとしばらく悩んだ
「まずクリューは王道十二星騎士についてどれだけ知ってるん?」
そう聞かれ俺は自分の頭の中を振り返って思いつく限りの情報を吐き出そうとする。俺が王道十二星騎士につい知ってるのはマサリに教わった基本的な概要程度だがそれを答えるしかないだろう。
ちなみにラバダさんが口にしたクリューというのは俺のことだ。クリューソス略してクリューであり、理由はクリューソスは長くて呼び疲れるからだそうだ。割と語感が良いので俺自身気に入っている。今後浸透させていってもいいかと考えていたりする。
「リオレス大陸、いやリオレス王国最強と謳われる十二人のこと。多大な権力を保証する代わりにその武力を国のために使うことを約束させられている。その実力は各領の兵力一つに匹敵するとか」
これでマサリに王道十二星騎士について教えてもらったことをほぼそのまま伝えれただろう。少なくない?と思うかもしれないが概要なんてのはこんなものである。もう少しだけ深い内容を話すこともできるが多分今回の話にそれは関係ない。
そしてその答えに対してラバダは合ってるとも違うとも言わずしばらく考え込んだあと、
「うん。まぁ大体そんなんで合ってるで。じゃあ序列については知っとる?」
序列?俺はそれを純粋に知らないので知らないと答えることにする。
「知らないな」
「そうなん?せやったら説明したほうがええな。簡単に言うと十二人を実力順に並べたのが序列や。序列は下から順に、
「じゃあラバダさんは確かオクタだから」
「そ。八番目やね」
この人は俺の勘によれば相当強い。もし戦うことになったら元の体に戻らなければ絶対負ける。この人にはそれだけの威圧感がある。そんな人が8番目だなんて。
異世界人のレベルの高さを実感する中、
「とゆうかクリュー今の一連の説明一度で理解できたん?」
そう聞かれるが、特段難しい内容があっただろうか?そんな難しい単語や語法もなかったと思うのだが。
「別に普通じゃないのか?」
「いやいや、
そう言われると確かに難しいことだったのかもしれないなと思えてくる。地球にいた時も漢字とかを覚えるのは面倒とは思いつつも覚えるのに苦戦した記憶はないと言っても過言じゃないからな。
「まぁクリューが頭えぇのはよくわかったわ。まぁそれは今回おいといて、序列を表すときに関してでもう一つ重要なんが星座や」
「何か王家に伝わる
星座か、俺も地球で色々調べる過程で詳しくなったな。星の集まりを何かに例えるなんてミューザリアではあり得ない発想であり少し面白みがあると思って調べてみたら、いやおかしいだろって星座がいくつもあって覚えるだけ覚えて腹が立った記憶がある。そんな星座がこの世界にも、、、いや待て、それはおかしい。
何がおかしいのかって?何を隠そうこの世界に星はないのだ。性格には太陽と月のみ存在し、その他の星々は存在しない。だからこの世界では夜に空を見上げると月だけが目に映るので元の世界での宙を知ってる俺からすればもの寂しく思えたものだったのだ。
そして話を戻し星座に関することだ。この世界に星が二つしかないのなら星座も当然あるわけがない。もしその概念があるのならそれはどこから持ち込まれたのか?簡単だ。
異世界、といっても地球やミューザリア星がある世界に違いない。
とにかく俺以外にも転生者はいる。それは確信していいのだろう。ワンチャンただいたずらに俺を転生させた焉とかいう神なのか何なのか知らないが神のような存在がその知識を持ち込んだ可能性もある。だがそれよりも他の転生者が持ち込んだ可能性の方が高いと思える。仮にあいつが知識を広めるにしても焉自身ではなく、俺のように誰かの魂を転生させるだろう。、、いや待て、ある意味そうとも言えるのかも。もし転生者がいるならあいつの仕業の可能性が高いのだから。
「じゃあラバダさんはなんの星座なの?」
「見たまんまや。当ててみ?」
そう問われ答えを頭に浮かべるのは一瞬だった。まぁおそらく誰もがこの人を見たらこの星座だと思うであろう星座を口にする。
「蟹?」
「正解や。星書の中には蟹座ゆうのがあるねんて」
やっぱり、そう思っているとラバダさんは続けて口を開く。
「そんでその蟹と
「へー、なるほど。でも星座の部分って序列の力関係的な意味合いには関係なくないですか?」
「それには気づかんといてや」
そんな風に俺はラバダさんの話を聞いていた。
そして王都に到着する前最後の街に昼になるより前に着いた。
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王都に隣接している十二の領のうちの一つ、ネイク領にある街に着く。
さすがは王都の近くというべきか、王都ほどではないにしろ、そこそこ大きな街だった。
「ここがネイク領最大の街、ガグジャゴや」
意気揚々とそれを語るラバダさんは馬車を止め俺を下ろした後、彼自身も馬車から降りた。
いわゆる西洋風な街並みに高揚する俺に彼は構わず話しかけてくる。
「今まで野宿ばっかやったし、美味いもんも食わせられへんかったしな。今日はここらで美味い飯とええ宿を取るで」
その話は正直かなり嬉しかった。彼の身分もあって最高級のテントでの野宿ではあったものの正直それでも少し地面が硬くあまり気持ちよく寝れなかった。それと食事もあまり美味しくはなかった。まぁ不味くもないんだが。
「本当?それは楽しみだな」
若干目を輝やかせながらそう聞く俺に対して、
「よかったよかった。せやったら早速昼飯食い行こか。僕のおすすめの店でええ?」
自信満々といった表情でラバダさんは言う。
「いいですけど。一応どういう料理があるか聞いても?」
好き嫌いは少ない方だが、ないわけじゃない。万が一嫌いな食べ物であれば連れて行ってもらう以上、事前に無理であると伝える必要があるだろう。
「鍋や。あんまここらじゃ食えへん料理やねんけどあそこは扱っとんねん。簡単に説明すると色々な食材を同時に煮立て、その食材が豆腐や油揚げなんや」
鍋か。地球にいるときは当然聞いたことがあるし、食ったこともあるがここらでは聞かない名前だったので、少し驚く。そんな俺に、
「やっぱ聞いたことないか〜。まぁ大好きと言う人はあまりおらんねんけど、大嫌いも滅多におらん料理やから多分食えるで。いろんな具材があるのが魅力やしな」
俺の驚いた反応に知らないと捉えられてしまったみたいだが、わざわざ訂正するまでもないことなので訂正はしなかった。そして鍋の味は知ってるので反対もせずそこの店に行くことになった。
「ほんならまず馬宿に馬預けにいくで」
そうして馬宿に行き、馬車を降りる。
「管理しっかり頼むわ」
そうラバダさんが馬宿の人に対して言って、俺らはそこを後にした。行き先はもちろん、
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バンッ!
ラバダさんは勢いよく扉を開けてすぐさま、
「店長二名!」
お店は馬宿からそう遠くなく割とすぐに着いた。店自体はどこにでもあるような見た目で、言ったら悪いが少々汚い店構えだ。俺一人だったらわざわざ入る店ではないだろうといった感じ。
それはそれとして、ラバダさん。店入ってすぐ大きな声だすなよ。他の人の迷惑だろ。と普段なら思う俺だが今回に限ってはそれも仕方ないと思った。
なぜなら店内の音は音でうるさすぎてこうでもしないと店員にまで声が届かないのだ。
ちなみにその音の原因は他の酒を昼間から飲んでる奴らのせいだ。外観通りの客層といった感じだな。
「二名ね。あっちの席座って!」
ラバダさんが二名と言ってからしばらくし、これまた大きな声で返事が返ってきた。
「やって」
そう言い、ラバダさんが俺の前を行き席まで歩いて行った。当然俺はそれについていく感じで席へと座った。
その席には二つの椅子があり、一つのテーブルを挟んで向かい合うような形となっていた。ラバダさんの体格はかなり大きい方だと思うが、それでも大丈夫なくらい丈夫そうな椅子だった。まぁラバダさんの言い方的にもこの店の常連そうなのでそうなっていないわけないとは思うが。
そしてテーブルには鍋を置くであろうスペースがあった。
「何頼むかは僕に任せてくれや。大丈夫大丈夫辛いのとかは頼まへんから」
安心してと目を向けてくるラバダさん。今は子供の体格故にそのような子供扱いは仕方ないのだが、それに対して俺は多少不満を露わにする。
「別に辛くてもいいですよ。ただ不味かったらぶっ飛ばしますよ」
随分と強気な返事をする俺だが、これで問題ない。何よりこの人がそれを望んでいるのだから。
そしてその返事に対して嬉しそうにラバダさんは口にする。
「言うようになったやん」
「せやったらすぐ頼もか。店長!すき焼き」
先ほどとは違い、返事が早かった。
「あいよ!」
結局辛いのじゃないんだ、そう思う俺であった。そして待ってる間にも話そうとラバダさんは話を振ってくる。
個人的にはあんまり飯を待ってる時から人とあまり話したくないタイプなのだが、仕方ないか。
「クリューはどんな女の子がタイプなん?今回会う王女様なんかは獣人から見てもかなり可愛いお方やで」
何でそんなのを答えないといけないんだよと思いつつも、この人の人柄が俺に答えてもいいかと思わせる。
「そう、、ですね。個人的には髪が長い子が好きだな。あと、性格的には明るめの子が好きかな」
「そっか〜。せやったら王女様は少し合わんかもな。王女様は引っ込み思案な所あるからな」
「別に性格はめっちゃ重要ではないですよ。大人しい子でも可愛いなと思う子はいますし」
地球ではそういった性格の推しキャラなんてたくさんいたしな。
「そうなん?せやったらいけるかもな。王女様」
「ところで、気になるんやけどさ。クリューは顔と性格どっちが大切?予想やと、、、性格、やな」
地球でもよくあった質問をラバダさんからされる。どこでもこういった質問は人気なんだなと思いつつ俺は正直に答える。
「正直に言えば顔の方ですかね。俺は結構な面食いですよ。それにさっき言ったでしょ性格は重要ではないって」
推しキャラも多くは顔から入るしな。たまに性格や設定的に無理でやめたりもするが。
「ところで!俺にだけ質問してきてますけど、そう言うラバダさんはどうなんですか?好きなタイプ、教えてくださいよ」
俺だけ答えるなんて不平等は許さない。そう言った意味合いを込めた眼差しをラバさんに送る。
それを見て『とうとう来たか』といった顔をした後、恥ずかしそうにしながらもラバダさんは答える。
「えっと〜、、それは、、、、わかっとるよ!!クリューにだけ言わせるような真似はせん」
それから少しして覚悟は決まったようで、
「よし!恥じらい捨てて答えるわ。僕の見た目って獣人の中でも特に獣としての性質が現れとるやろ。ここまで現れているのは獣人の中でも珍しい方なんや」
ラバダさんの容姿は確かに蟹としての性質が強く現れている。異世界の獣人といえば多くは獣としての性質が少し現れている獣人をイメージするだろう。例えばケモ耳とかな。だが彼はそうではない。蟹の獣人としての殻は全身を覆い、それだけで奇異な目で見られるだろう。さらには右腕は巨大なハサミとなっている。他の獣人は見たことないので、そうですねとは答えづらいが大体わかってはいる。
そして彼にとってこれは嫌なことだったのだろう。
「話を戻すとな、僕はこんな見た目でも気にしないでくれるっていう子が好きや。それとこれはできればやけど同じように獣としての性質が強く現れている子やと嬉しいな」
もしかしたらさっき性格の話を振ってきたら、俺が性格を大事にすると予想したのもこれが理由か?まぁ別にそれに文句を言う気はないけど。
少し暗めな話になってしまい雰囲気が気まずくなってしまう。それをやめたくて俺は話題を変える。
「その、、今回頼んだ料理は何なんですか?」
すき焼き何てものは当然知っているが話題を変えられればとりあえず良かったのだ。
それにまぁ、異世界だから少し違うとかもあるかもだし。
「あぁそれね。すき焼きってのはな醤油風味の甘い味で肉や野菜を煮て、その後に煮たそいつらに溶いた卵をつけて「お待たせしました。すき焼きです」
ラバダさんご説明してる間にすき焼きは届いてしまった。しかし途中までの説明を聞く限り、びっくりするぐらい、あるいは当たり前なくらい地球でのすき焼きと同じだ。
しかしそれはそれとしてだ。
「早ッ!」
と、思わず声が漏れてしまう。ラバダさんと話し始めて多分まだ二分も経ってないのに出てきて驚く。
しかし店員はそれを気にもとめずに、まず魔道具を中央のスペースに置いてから、鍋をさらにそれの上に置く。その後卵が4個入った器を魔道具とは別の位置に置いた。
そして店員はポケットからスイッチのようなものを取り出し押す。すると先ほど置いた魔道具から火が出た。
動作の確認を終えたらすぐに店員は厨房の方に帰ってしまった。
鍋は蓋をしており、中には既に肉や野菜は入っていた。
「僕がとりわけたるからそこの皿とってくれる?」
そういい俺の横にあった皿を指差す。
当然俺はその指示通りに皿を渡したが、もっと鍋が煮込むのを待っているのだろう。すぐには取り分けてくれなかった。
「待ってる間に卵をその器ん中で割っとき。溶かすのも忘れずにな」
「はいよ」
指示通りに行動し、それから2分ほどが経ち、
「出来たで」
と言うと、鍋の蓋を取り、取り分け用の皿に俺の肉と野菜を乗せた後、それを俺に渡してきた。
俺は早速肉をとり卵をつけ、食べる。
「ラバダさん。美味しいよこれ」
味に関しては前世で食っていたのとそう変わらないが、久しぶりの和風の味というのが新鮮で特に美味しく感じた。
俺の美味しいと言う反応が嬉しかったのだろう、ラバダさんは興奮気味に口を開き始める。
「せやろ、せやろ!もっと食べぇ。この時期はたくさん食べてたくさん寝るに限るんやから」
その後はすき焼きを食べ切り、ラバダさんが個人的に辛いのを食べたくなったとキムチ鍋を頼んだので少し分けてもらった。今の体はもつ子供なため胃はあまり大きくないのだが、味変となったからかそこそこな量が食えた。子供の体格でも辛いものが食えるという証明はしてやれたと言えるだろう。
正直この歳の子にしてはかなり食べたと思う。腹、壊さないといいけど。
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「また今度寄りたいな」
その後は会計を終えて店を出るわけだが、出てすぐさまにその言葉が自然と出てしまった。
俺がそう口にした先にいるのはラバダさんで、彼はそれを聞き非常に嬉しそうにしながら、
「せやろ、せやろ!僕もここは自慢の領や」
「自慢の領?」
まるで自分が所有していると言う口ぶりのラバダさんに俺は疑問を覚える。
「あれ、知らへんの。星騎士たちはみんな自分の領がもらえるんよ。王都近くのな。ほんでここが僕のとこや」
あぁなるほど、やはり国正式な最強達とあってそれだけの権力が与えられるのか。王都に隣接している領なんてはっきり言って土地としては相当上等だ。
かなり破格の待遇と言えると思うが問題は、
「ラバダさんに領の運営なんてできるの?難しそうだけど」
「グギッ」
痛いとこをつかれたという表情を見せるラバダさん。
「まぁそこらへんは他の人に任せたんねん」
「それで自分の領って言えるんですかね?」
「いやいやいや、僕はここらへんの守護を普段の仕事としてやっとるわけだし、ええやろ。だいたい国も僕らに領の運営的なのは求めてへんやろし」
「そうなの?」
ラバダさんは領の運営なんかはまず向かないだろうけど、別に馬鹿なわけじゃない。自分なりの考えや思考する力を持っており、そんなラバダさんが言う国の考えなら納得のいくものとなるだろう。
そう思ったから特に口を挟もうとも思わず、しっかりとその答えを耳に入れる。
「国が求めとんのは王都近くの領の魔物を狩ることで結果的に王都も守られるということやろ。普段は個人主義の連中でも自分の領であるという責任が発生したらやらざる負えんからな。そうやなかったらわざわざ力自慢の奴らに領なんて渡さんやろ」
もっともだなと思いつつ。そろそろ疲れたので、
「わかりました。じゃあこの話はここまでとして宿に行きたいです」
それにラバダさんは頷き、宿まで歩いて移動した。
宿は見るからに豪華そうな作りとなっていた。
なんとわざわざ個別で部屋を用意してくれた。個人的には一人の時間が好きなのでそれは嬉しかった。
「また明日、おやすみ」
そう言われ、当然俺も、
「はい、おやすみなさい」
そして自分の部屋の鍵を開け入る。
中はかなり広かったが。そんなことはあまり気に留めず、とっとと寝る準備だけして、ベットに入る。
非常に気持ちよかったが、それをしっかりと感じるよりも前に寝ていた。
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翌朝目を覚ましてすぐにラバダさんの部屋の前まで行く。
ドアを数回ノックすると、
「おはよう」
そういいながらすぐに部屋を出てきた。
そしてすぐさま、
「んなら、この宿で朝飯食えるように頼んであるから、それしたらすぐ街でよか」
「了解」
と、一言だけの返事をして二階の部屋から降りていく。
その後についてくるラバダさん。
そして一階の広間に着く。
広間では席がいくつかあり、そのうちの一つに座ると、店員がよってきて、
「本日はベーコンと卵のサンドイッチとなりますので少々お待ちください」
そう告げてまた厨房へと帰っていった。
その間俺にしては珍しく先に話題を振った。
「思ったんだけどさ、ずっとラバダさんラバダさん言うのも疲れるし、あだ名つけていい」
俺のそんな提案に対して対してラバダさんは、
「ほんまにクリューは言うようになったな」
と、感心したように言う。そんな彼が笑顔で答える。どうやら不快とは思われなかったようだ。
「勿論ええよ」
そんな返事をもらえたので、俺は当然少し考えるわけだが、いまいちピンとくるやつがない。
「ラバダさんて、フルネームなんでしたっけ?」
俺は記憶力がいい自信はあるが、万が一ということもある。万が一あだ名をつけて、そのあだ名の原因としての名前が違うなんてなったら気まずいどころの騒ぎではない。そのため改めて確認することにしたのだ。
「忘れるとかひどいわー。まぁええけど。ガザラグド・ラバダや」
えっとこの世界では名前が先で姓名が後だから、
「名前はガザラグドの方ですよね?」
「当たり前やろ?急にどしたん?」
当たり前だろ。と言われ、一瞬腹が立ったが、まぁそりゃそうだ。日本で俺が
「いや、一応の確認ですよ確認。そんなことは置いといて、じゃあもう一つ質問なんですけど、よく言われるあだ名とかはあります?」
そう聞かれて、少し考えるようなそぶりを見せて、
「ぱっとは出んわ。悪いな」
そう答えられると、少し困ったなと思いつつもそれを表情に出さないように努める。
「わかりました。それじゃ考えるんで少し待ってくださいね」
と言い、ああでもないこうでもないと考えている間にサンドイッチが来てしまった。
「お待たせしました」
その声と同時に席に四つのサンドイッチが置かれた。
これはまぁ一人2個のサンドイッチということなのだろう。
「美味しそうですね」
と俺が言うと、
「美味いで、ここは」
おすすめの宿ということもあり、来たことがあるのは当たり前でこの朝食の味について知っててもおかしなことはない。そう思いその評価をラバダが口にしたことに特に驚くこともなく、ただ俺のサンドイッチに対する期待感だけが高まってその話は終わった。
そして食べ終わった後、食べてる最中に思いついたあだ名を彼に言った。
「タラバでどうですかね?」
そう言うと、彼は少し困惑しながら、
「えっと、ラバダを並び替えてダの濁点を取った感じ?あんまりあだ名感ないし、それやったら文字数もおんなじ呼び捨てでよくない?」
「いや呼び捨てだとあなたの身分的にも知らん人が見た時、失礼っぽくないですか?それと普通に呼び捨ては難易度高いですよ。あ、タラバに関してはタラバガニっていう蟹から取ってきました。」
まぁタラバガニって正確にはカニの仲間じゃないらしいけど。
ラバダとタラバが似てたのはマジで偶然だったのだが、余計このあだ名が似合ってるなと思った。
「いやあだ名も十分知らん人から見たら失礼っぽい気するけどな。それに実在する生き物で人様を例えるって考えようによってはそっちの方が失礼やで」
言われてみればだな〜、と思いつつも、
「結局どっちなの?あり?なし?答えてよ」
「たまに口悪なぁ君。まぁええよ。使って」
俺の口の悪さがすでに露呈してしまっていることは置いといて、よし!と内心喜びながら、
「それじゃ改めてよろしくお願い、タラバ」
「ん、よろしく」
そう会話した後、宿を出た。
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まずは馬宿に馬をとりに向かう。当然馬はいないので歩きだ。
そして馬宿に着くと、タラバがいくつかの手続きをして馬を取り出してきた。
馬と同時に彼は手紙のようなものを持って出てきた。
「それ何?」
そう尋ねると、タラバは無表情で返事する。
「馬車で読むわ。とりあえず早よ街出ようや」
それに俺も頷き、馬車に乗る。そうして馬車が走り出した。
ちなみに前にも言ったがこの馬車を引いてる馬は誰にもリードされていない。タラバの所有している馬たちは命令を一度下せば自分たちで考えてそこまで向かってくれるらしい。知らないとこだと流石に行けないが、一度通った道を戻るとかだったら指示はいらないし、行きもほとんど指示なしで行けたらしい。
そうして馬車に乗って数分でこの街を出た。
街を出て少ししてから、タラバは宣言通りに手紙を読み始めた。
タラバはその手紙を読み終えるまで数分がかかっていた。そして読み終えて少ししてから、
「どんな内容だった?」
俺がそう聞くと特に何か表情が変わるわけでもなくタラバは答える。
「ん〜国からのちょっとしたお達しや。君に教えられるもんではないからすまんな」
「いいよ別に、タラバの身分的にもそう言う機密事項的なものがあっても不思議じゃない。むしろ簡単にそういうの言うやつの方が軽蔑するよ。」
その返答は彼を気楽にするものと思ったが、違ったみたいだ。嬉しいとも悲しいともつかない表情でこちらを見つめる彼に、どう返答してもいいかわからなかった。まぁ表情からは分からなかったけど、他の方法でタラバの感情はでわかった。どうやら感情的には悲しいだったみたいだ。
それから他愛のない会話を少し挟みつつ、二時間ぐらいが経過した。まだまだ森でいつ着くのかといった感じの中、
「どうして僕が君の護衛にあてがわれたと思う?」
そう口にするタラバ。
「どうしてって。強いから?」
「うん。そやね。でもそれは・・・、クリューは僕を、タラバをどう思てんの?」
そう聞かれて、少し恥ずかしいけどしっかりと答える。直感でここは恥ずかしくても真実を答えるべきと判断したからだ。
「大切な友達。、、、のようなものと思ってるけど」
そう言われまたなんとも言えない表情になるタラバ。もちろん悲しみを覚えていると俺は既にわかっているが。
そして俺はそんな表情をするタラバに対し、
「だからこそ言わせてもらう。迷うな。仕事なんだろ。身も蓋もない話を俺たちはするべきなんじゃないのか?」
そう言われ、何で?といった顔をするタラバだがすぐにそれを切り替え、
「わかったわ。ほんじゃやろか」
そう口にするタラバにはもう悩みも悲しみもなかった。あるのは、
「さっきからやけに暗そうにしてたけどさ、俺からしてみれば隠さなくてもわかるぜタラバ。お前さ、正直そんな感情よりも闘争心の方が大きかったし、殺気もダダ漏れだぜ。はっきり言ってそんな殺気も隠せないようなや奴に負ける気がしねぇよ」
「ウジウジしてねぇでかかってこいカス!まぁでも・・」
それを言い切るよりも前にタラバは俺に馬車という小さいスペースの中であることもあり、すぐに近づいて、
「死ね」
それだけをいい巨大なハサミとなっている右拳を俺に向け振りかざした。
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その威力はなかなかなもので馬車はもう半分以上が壊れており、馬車が壊れている方向にある木々の何本もが折れていた。だが、その壊れた森の景色の中に俺はいない。
木々を破壊する衝撃波に巻き込まれ吹っ飛んだのか?
違う。
タラバが俺がどこにいったか辺りを少し見渡す中、背後の木の枝に立っている俺が声をかける。
「すげぇな威力。今まで魔物を倒してたときは全力じゃなかったのな」
そう声をかけると振り向き、俺を見つめて驚いた表情で、
「当たり前や。国最強の騎士って呼ばれとるんやこれくらいできひんやつはおらん。君もいつの間にそこに行ったん?力量を隠しとったんは同じやろ」
「そんなことより大切なことあるやろ。何や君の姿、説明求めてもええか?」
そう疑問に思われた今の俺の姿は銀髪で目がくっきりとしたハンサムといった顔立ちになっていた。だが特筆すべきはそこではない。それは身長だ。
先ほどまで五歳児らしい身長だったクリューソス・レーベンは187cmの男になっていた。
「教えると思うか?」
そう嘲笑うかの如く口にする俺に、
「訳ないな」
と納得するタラバ。
焉からもらった五回だけ前世の姿に戻れる権利。そのうちの一回を使用した。やつはかつて俺が前世で戦ったことのある強者と同じかそれ以上の圧を感じたのと、俺の直感がそうさせた。
俺の名を今現在言うならそれは二つあるだろう。
一つは当然クリューソス・レーベン
だが、それよりも相応しい名が確かにあった。
シルバンス・テイリア
かつての地球人の大虐殺。
その始まりを決める役割を持った男。
銀髪で青色の瞳を持つ男。
それこそが確かに今そこにいた。
かくして、俺とタラバの戦いの火蓋は切って落とされた。