ー異世界への侵略者ー地球を侵略しにきたエスパー宇宙人、死して異世界へと転生する。超能力?何それ?強すぎ!! 作:ゼリアサイ8世
首、腕、指先、足、体の動作確認と久しぶりの大人の体に慣れるためにそれらに力を入れ、動かす。
よし、もう問題なし。
「教える必要がないなんてのは承知で言うんやけどさ。ほんの少しぐらいクリューも自分のこと教えてくれんの」
「僕のことはぎょうさん教えたんやからさ、頼むわ。
「
普段ならそんなのにこだわらないだろう俺だが、相手が友達というのがあったからか、珍しくこんな感情が湧いた。
こいつに真っ向から勝ちたい。
本来なら最初のタラバの一撃の際にテレポートしてかわした時、声なんてかけずに逃げてしまえば良かったのだ。そうでなくてもせめて不意打ちはすべきだった。
「何、教えてくれるのはちょっとしたことでええ。僕を手本に名乗ってみぃ。騎士との決闘の礼儀や」
そう言うと一息ついて、
「
高らかにそう名を告げた。それは初めてレーベン領で出会った時と同じ名乗りでありながらも、あの時以上に気品を、それ以上に誠意を感じた。ついでに煮えたぎるような闘志も。
ここまでされたならば俺もそれから逃げることはできない。一兵士としても友達としても。
「名は、、、、今はクリューソス・レーベン。称号や異名的なのはないが、強いて言うなら、そうだなレーベン家の貴族にして、ある星の期待の若手No. 1だ」
星という概念がないこの世界ではある星というのは理解できないことだろう。まぁ何故か国が星座に基づいて称号を与えているため何一つわからないということはないかもしれないが。
「はっ、意味わから・・」
タラバが何かを言い切るよりも前に俺はテレポートで背後に回り、
「
サイコキネシスあるいは念力どちらでも良いがそれで吹き飛ばす。
以前にも言ったが、念力には二種類ある。一つは以前にも使った特定の一方向に対して力の波を飛ばす「撥」だ。そしてもう一つは自身の体から不可視の腕や触手を伸ばすようにして攻撃する「觸」だ。これら二つをもっとわかりやすくイメージするなら「撥」は強い風を飛ばして吹き飛ばす感じ、「觸」は、、、ダメださっき以上の例えは思いつない。それで理解してくれ。
タラバが話している最中に攻撃を仕掛けた俺に対し、タラバは吹き飛ばされながら、
「騎士との決闘でそないなことするなんて、品性を疑うでクリュー」
「騎士なんて見た目でも言動でもねぇだろうが!!」
そう言い、さらに撥の出力を高める。
さっきからあいつの体は宙に浮きながら何回も木にぶつかりながら吹き飛ばしているのだが、あいつの蟹の獣人としての殻が木よりも硬いのだろう。木の方がへし折れる。
あまり離れすぎると撥がタラバに届かなくなるため、あいつを吹き飛ばして半ば更地になった地面を走りながら進む。
そして、そんなことをしながら数秒が経過したとき、ついにタラバが撥から脱出する。
木に当たるとき横方向の力を木に加え、見事脱出してみせたのだ。撥は一つの方向に対して、俺を始点としてしか出力できない。故に加えた方向に逆の力以外は消し去ることができないのだ。
一度脱出されるともう一度撥で押し出し続けるのはできない。何故なら地面を蹴れば簡単に横方向に力を加えれるからだ。最初は不意打ちだから苦労せずに浮かせられたが、次はそうもいかないだろう。
「クリュー!!!」
真っ直線にこちらに向かってくるタラバ。
撥を何回か使うが、使うたびに横に移動され当てられない。
スピードは今の状態の俺なら大して変わらないが、立ち止まりながら撥を使っている俺の近くには当然すぐに辿りつく。
「くらえ」
再びその腕が振りかざされるが、俺は当然のようにテレポートでかわす。
だが今回は背後は背後でも至近距離で、
「
そう言い手をあいつの肩に置く。
焼焔は火炎魔術の聖級に属する魔術で、手のひらから炎を出す。それだけ聞くとしょぼく思うが、岩を優に焼き溶かすぐらいの火力がある。
いくらあいつの殻が硬いといっても熱には耐えられないしさらに触れたのは肩の関節部だ。動くためには関節の部分だけは柔らかくならざるおえない。つまり、これは効く。
と、考えたわけだがそれは有効打になり得なかった。
背後から肩に手を置いている俺にタラバは肘打ちをして、俺の腹に当てた。
「グハッ」
威力は言わずもがなで、先ほどまでとは打って変わり、俺が吹き飛ぶことになる。
吹き飛んだ先で木に当たりそうになる。
俺の体は現在前世の物とはいえ、その耐久性は一般人よりやや頑強なぐらいだ。あいつ程の硬さなんて持ち合わせていない。
つまり、この勢いのまま木にあたればそれだけで十分な致命傷たり得る。
木に当たる直前にテレポートする。テレポート先はテレポートをした地点と同じ。つまりテレポートしたがその位置は変わらないということだ。
イメージするならマ◯オのステージで開始直後にリスタートしたみたいな感じだ。確かに何らかのアクションは起こしたものの、その間を消し飛ばせば他の者達から見た時は何の意味もなさないだろう。
もちろん今回はその限りではない。テレポートはついていていた勢いをテレポート後に引き継げない。普段はこの仕様のせいでテレポートする前から攻撃モーションに入っておいての不意打ちが出来ず嘆いている。しかし今回に限ってはそれをメリットとして活かせた。
木に当たる直前のテレポートで俺についていた勢いをゼロにすることができる。傍から見れば吹き飛んだら体勢は変わっていないのに急に止まるという意味不明な状況だ。
ちなみに全く同じ位置にテレポートするのはテレポートを使う反動を少しでも抑えるためだ。テレポートを使う反動は回数と距離で決まるからな。
「強い強い。楽しいわクリュー。同じ星騎士同士以外との戦いでここまでおもろいの久しぶりや」
笑いながら近づいてくるタラバ。
その言を聴きながら何故さっきの魔術が効かなかったのかを思案する。殻に覆われた部分だけでなく関節部までも攻撃が効かないのかと考えていると、近くに来たタラバは大らかに喋る。
「何でか気になってるやろ?ええで教えたる」
俺の疑問は彼の口から直接知らされることになる。普通なら喜ぶべきことなのだろう。だがこれは、
「僕の関節部分を狙ってくるのは君が初めてやないよ。初見でここまでの速度でそれを狙ってきたのは初めてやけどな」
タラバが呑気に話をしているため今のうちに俺は治癒魔術で肉体の回復に専念する。
「早い話答えは魔法や。僕の魔法は
正確にいえば体の外側、もちろん関節部分も含めて僕は同じ硬さになっとるというわけや」
治癒魔術によってさっきの攻撃によるダメージはほぼ回復した。
回復してる間に相手の魔法を知る。一見良さそうなに見えるこの状況にも素直に喜べない。それは、
「わかっとるやろうけど、これはただ教えただけやないで。そんな間抜けは普通おらんからな」
ほれ、正解言ってみぃ、とでも言いたげな表情をしているので、時間稼ぎの目的も含めて答えてやることにする。
「魔法の詳細を自分から言うことによって一時的に魔法の性能を上げる魔法の開示だろ」
「ビンゴ!」
魔法の開示は滅多にされることはない。魔法の開示は同じ相手に対しては基本一度限りとされる。何度もできたら開示するだけ得だしな。
ましてや、その情報を仲間に知らされでもしたら最悪だ。その知られた仲間に魔法の対策をされるだけでなく、魔法の開示も意味がなくはないが効果が薄くなる。魔法の開示は知らない相手に詳細を説明するというリスクを背負って発動する一時的な出力向上策だからだ。故に自身の魔法が知れ渡らないように対策するのが武術をメインにするもの達を除けば、この世界での基本だ。
だから魔法の開示は滅多にされない。そしてそれは国最強に分類される奴らでさえ同じなはず。
だが、今回タラバはしてきた。これは魔法の開示全般に言えることだが、魔法の開示が意味することは決まっている。とどのつまり、
ここで確実に
「君の魔法は開示せんでええの?さっきからその妙な瞬間移動?以外はもう僕に通用せぇへんやないの?」
超能力というのを知らないタラバは俺のこれを魔法と勘違いしているみたいだったので、
「馬鹿たれ、俺のこれは魔法じゃねぇよ。それに使えるのは瞬間移動と念力だけじゃねぇ」
魔法ではないと素直に明かしてやると、それを聞き目を輝かせながら嬉しそうにするタラバ。
「そうなん?ええねええね!それじゃそろそろ第二ラウンドといこか!」
それを合図に再び戦闘が始まる。
今回の戦いでもうテレポートはできれば使いたくないすでに数回使っているがこれ以上使えば血を吐き、戦闘に支障が出る。治癒魔術を組み合わされば無理矢理テレポートをし続けることも理論上可能だが、それでも限界は来るし、精度が落ちる。そう考えるとやはりテレポートをやるならしばらく時間をおいた後に一回という形がいいだろう。だから、まずは逃げる。
あいつと今の俺の身体能力はパワー以外ほぼ同じ、だから俺の体力が切れない限りは追いつかれない。
そんなとき、テレパシーで敵意が濃厚になるのを感じる。
「オラオラ!」
走りながらも腕を振り下ろし何発も攻撃を仕掛けてくる。
もちろんその威力は先ほどまで同様に、木を数本吹き飛ばすほどで、
「ジョジョかよ!」
タラバの掛け声に文句を言いつつも、それらを撥を自分に対して発動させることで横に無理矢理飛ばしてかわす。
しかし大して振りが速いわけでもないのにあれだけの衝撃波が生まれるのは違和感がある。俺もあれぐらいの振りの速度なら本気でやれば出せないことはない。勿論硬度の観点でいけば遥かにあちらが上だが、こと衝撃波を出すことに関して硬度はさほど関係ないはず。となるとあれは武術の類の可能性が高い気がするな。動きに連動して発動させてるし。まぁそこら辺は分かったところでどうにもならないので今は放置。
そして逃げる、かわす、逃げる、かわす、それらを幾度と繰り返す。やがて、辺りの木は折れ、雑草も吹き飛びまくり、もはやほぼ更地といっても過言ではない状態となっていた。
「いつまで逃げるつもりなん?これじゃ終わらんよ」
あいつのいう通り、本当にこのままじゃ何の解決にもならない。むしろ俺の大人化がいつまで持つかわからない以上こっちの方が危険なぐらいだ。だがそれは何の策もない場合、
俺は走る中、速度をほんの少しずつ落としていき、突如バックステップする。
急に背後に下がる俺に対して動揺するが望むところとすぐに切り替えるタラバ。
バックステップしながらタラバを視界に捉えるために体を振り向かせる。
振り向き様に俺は殴る構えを見せる。
「ええねぇ!ほんなら殴り合いや!」
俺は顔にタラバは腹に向け両者共に拳を向けて殴り合った。
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いつまで逃げるつもりや?
クリューとの戦闘中に始まったこの鬼ごっこはもう体感7分以上は経っている。こんなん続けたって何の意味もないはずやと思うねんけど。
勿論無策ってこともないんやろう。
でももしその策ってのが逃げてる間に僕の心変わりを期待してるとかだったら絶対に許さんで。僕は君に容赦せんよ。
そう考えていると、急にクリューがバックステップを踏みこちらに振り向いた。
思えばさっきからわずかに速度落としとったわ。ただの体力切れやと思ったけど策か。
普通に考えれば僕と正面からやり合うのはどんな攻撃も効かない硬度を持つ僕が圧倒的に有利であり、愚策と判断するだろう。でも数日とはいえ共に過ごしてきて分かっとる。こいつは僕より賢い人間で、多分策もちゃんと練れるタイプや。だからこそ、この明らかな不利を提示して攻めてくる場面は警戒して一旦回避すべきに思える。
でも!そんなんつまらんよな!
ええで!乗ったる。どんな策を練ってこようが全部潰して馬鹿と煽ってやらんとな。
そして相手が頭を使うんなら、こっちも頭を使おう。まずはこう言わんとな。
「ええねぇ!ほんなら殴り合いや!」
こう言えば近接戦をするにしても殴り合う以外のことしにくいやろ。
まぁそんなのにつられる性格やないやろうけど。
冷静にクリューの策を考えよう。流石に今までの僕のパワーを見て素直に殴り合うわけない。それに僕の殻が硬いことは分かりきってるやろ!
攻撃面でも防御面でも僕の方が勝っとるんや。
何がこようとそれごと潰したる。
そう考えていた僕だったけど、その結果は予想と反することになった。クリューは一切の回避の動作をせず正面からぶつかろうとする。
それならそれでええと両者共に殴り合う。
僕はクリューの腹を、クリューは僕の顔を殴った。
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確実に勝った。
そんな確信を抱く一撃を放つことができた。間違いなくこの一撃は相手の腹を骨ごと貫通するレベルの一撃だった。
そうや、僕の勝ちや!
えらく簡単に行ったことに少し違和感を覚えながらも笑いたい気持ちが溢れてくる。でも僕はそれを抑えながらも仕事仕事と思い直し、クリューの状態を確認しようと考えたとき、
目の前にクリューはいなかった。
なんでや?
まさかまたあの瞬間移動か?いや確かに殴った感覚はあった。もしかして力が強すぎて四方八方に爆散した?
いやどう考えてもそこまででは、
ふと、自分の体が宙に浮いてることに気づく。いや正確に言えば何かに掴まれ持ち上げられたような感覚だ
僕はこの異常に彼が、、クリューが生きてることを確信した。
「どこやクリュー!どこにおる!」
そのように怒鳴る僕に、
「あんたの真上だよ」
その声を聞き上を確認する僕だったが、そこにはやはり何もない。
謎が依然として解けずに悩む僕にそれ以上の思考はさせないと言わんばかりに、僕は急に振り回させる。
先ほど掴まれたような感覚といったが、その掴んでいる奴に振り回させる感覚。振り回すという行為は通常なら投石器を使うときのような地面に平行に振り回すことだろう。
それは多くの生命が地面に足をつけてやるからだ。
だが今回は違った。まるで水車や風車のように縦に回転しているのだ。紐がついた玉を子供が振り回すかのような振り回しだったのだ。
どんどんと力が加わっているのを嫌でも感じとる。
そしていよいよ時は来た。
「
それを聞くと同時に僕は地面に叩きつけられた。
------
勝った。
そう確信する程の一撃を放つことができた。間違いなくこの一撃はどんな相手でも(以前一人だけ例外がいたが)骨ごと砕く一撃だった。
そう確信した。
そう、俺の勝ちだ!
思わず叫びたくなる衝動を抑えながらもタラバが本当に倒されているのかの確認しようとする。
タラバを地面に叩きつけた方を見ると、タラバはしっかりとそこに居た。もちろんあの一撃によってぶっ倒れた姿でだ。
現在タラバのいる場所には巨大なクレーターができていた。歴代『廻壊』対象者達の中でも一番の硬さを持つ奴を叩きつけたからか、俺が今までこの技で作ったクレーターの中では一番大きかったかもしれない。そういえば以前この技を使った
まぁ今はそんなこと考えてる場合でもないか。
「はぁはぁはぁ、、」
俺は息を切らしながら何とか今までの流れを整理する。俺が先程やったのは案外シンプルなものだ。まずあいつとの殴り合いで俺は本当に殴られていた。だか殴られて一瞬でテレポートを使い元の位置に戻る。先程タラバに肘打ちされた時と同じ方法で殴られた勢いを一瞬で消し去ったということ。だから体に穴が開かずに済んだわけだが、それでも十分に痛かった。おそらく骨の数本はイッてる。そして次にタラバの目の前から消えたのは透視能力の応用だ。普段の透視は自身の目から見て特定の距離内にある物体を透過させて見る能力だ。だが今回はその透視の起点となる目を己ではなくタラバの目とし、超至近距離の俺の身を透過して見るような透視を発動させた。つまり透視能力を相手に与えることで消えるように錯覚させたってわけだ。
あとは先に説明した『觸』でタラバを掴んで空中に行き、回転して溜まった遠心力を利用して叩きつける技、『
しかしさすがに俺の方も息が荒れてきて限界が近い。とりあえずタラバにとどめを刺す。それで終わりだ。
そうして近づき、見下ろす。
目の前にはタラバの倒れた肉体、それに触れる直前、
タラバの腕が動くのを視界の端で捉える。
まずい!
俺は瞬時にテレポート後方に下がる。だが当然、
「ガッ、、ハッ、、」
血が口が垂れるのが止まらない。
苦手なテレポート何回も使いすぎたせいだ。
そんな血反吐を吐く中、立ち上がるタラバ。
「何で、、、まだ立てんだ、、よ。俺の最、、高火力だぞ」
「そんな、、ん分からんわ、、アホクリュー、、魔法の開、示しとらんかったら、、、、負けとったやろな」
タラバも流石に相応のダメージは負っていたようで殻のあちこちが割れていた。硬さの分配は結果的にダメージも全体に分配されるようだな。
お互いすでに満身創痍といえるだが、俺には治癒魔術がある。俺のダメージはまだテレポートの使い過ぎによる血反吐とさっきの廻壊のために殴られたのと肘打ち(ほぼほぼ逃げながら回復した)、それだけ。
これなら十分戦いながら治せる。対してタラバはおそらく治癒魔術は使えないし、他に体を治す手段もない。もしあるなら不意打ちよりも先にそれに専念するべきだからな。
「いい加減、、諦めろ」
「無理やね。まだ負けてへんから」
「そうか、、」
会話は再び終わり、
今度は俺が宣言する。
「それじゃあ、、第三ラウンド始めようか」
戦いは再び始まる。
ーーーーーー
戦闘は先ほどまでと打って変わってスピード感はあまりなかった。両者共に先ほど半分以下の速度だった。
俺はまずあいつから距離を取り、考える時間を作りながら体を治す。
さっきまでは魔術が効かなそうなのであの
少し思案するが、使う案は即座に無しになった。
理由は単純であいつの硬さの分配がどのようなものになるかが怪しかったからだ。確かに現在殻が割れてはいるものの亀裂が入って中身が柔らかいのは確かだが、割れてる殻そのものは柔らかくなった訳ではない。例えるならば石を割ったからといって石の硬度そのものは変わらないのと同じだ。ならば分配できる硬度に先程までと差異が生じない可能性が出てくる。だから迂闊に魔術を使って隙は作れない。
背後から衝撃波に襲われる。
さっきからずっとタラバの腕から放たれる衝撃波をかわしながら思案していたが、いよいよくらってしまった。
これじゃあせっかく治したダメージが帳消しだ。
「ちっ、、」
舌打ちしながらもいよいよ作戦を思いついたので近寄ることにする。そのためには、、、
俺はまず『撥』で空中に浮きタラバの真上に行く。距離にして六十メートルはあるだろう地点に俺はいた。
「タラバーー!!」
そう叫ぶと、幾つもの衝撃波が容赦無しに襲ってくる中、俺はタラバの元に撥を使って下っていく。六十メートルというのは高さで見ると長く見えるが実際のところそう長くはない。走る距離での六十メートルとかは比較的一瞬だからな。それに加えて今回は重力も乗っている。故にかなりの速度を出そうと思えば出せる。
とはいえ衝撃波もかわさなくてはならないため、ある程度速度を抑える必要がある。
タラバから放たれる無数の衝撃波。それらをかわす。かわす。かわしながら近づく。
当然タラバとの距離が近くなれば近くなるなほどアイツにとっては狙いやすく、俺にとってはかわしづらくなる。だが、、、
ふと、タラバが横へと一瞬目を向ける。どうやらタラバも気づいたみたいだな。
俺が『觸』で折れた木のうちの一本を掴んでタラバにぶつけようとしていることを。
だがそれに気づいてなお、タラバはぶつかる直前になっても何もしようとはしない。
そしてついに木がタラバにぶつかる。
だがそれでダメージを負うのはタラバではなく、木の方だった。先ほどの戦闘で分かっていた通り奴の殻は木よりも硬かった。つまり今のはぶつかって脆い方が壊れたという当然の事象が起きたにすぎなかった。
ーーーーーーー
このとき木を不意打ち気味にぶつけられたタラバは少なからず失望を抱いていた。
こんなものか、と。
しかしそれは瞬きの間もないほどの時間で否定される。
タラバはクリューソスの体の動きにばかり気を取られ、顔の動きを見ていなかった。クリューソスは木がタラバにあたるよりも前に口を動かしていたことに気づいていなかった。
それは
ーーーーーーーー
木が当たる直前、
俺は唱え始めた。
「積もれ積もれ、柱柱、積もれ積もれ、雫雫、積り崩れて君を抱け
唱えると一本の氷柱が形成される。
木が当たると同時に形成されたそれは俺がタラバの近くに行く速度の五倍程度で落ちていく。
しかし木と同様に気にする必要はないと、その氷柱ごと俺に衝撃波を飛ばそうとする。
今度こそ勝った。
俺がそう確信したのは衝撃波で氷柱が壊れた瞬間だ。
『
では今回の場合はどうなるのか?タラバによって氷柱が壊れ氷の破片となるが破片となった氷が再び再結合し、相手を覆うようにして氷柱を形成する。
これにより先の説明通りにタラバは巨大な氷柱の中に入っているような状態になる訳だが、もしこれがただの膜氷柱だったら完全詠唱した出力と言えどタラバを覆ったあとすぐに破壊されていただろう。
しかし今回はそれで終わらない。何故なら異物である木の破片まで含まれていた。
結果膜氷柱が固まる際にタラバの体は木の破片に圧迫されることになり、力を込めにくくなった。細々とした木の破片は殻に罅が入っているタラバからすれば不快感を強く感じさせるはずだ。
結果脱出までにかかった時間は五秒
五秒もあれば、俺の全速力で、
「追いついた」
膜氷柱が脱出してすぐタラバが聞いたのはそれだった。タラバは返事をしようと試みるもできなくなっていた。
そしてタラバに追いついた俺は手をタラバの口の上に置いていた。タラバはまるで巨大な木の棒でも口の中に入れられたのかというぐらいに口を動かせない。
当然だ。俺は手のひらから觸を伸ばしている。
俺はタラバの口に重なるようにして手のひらを向けてから伸ばしており、それは口の中に入り、さらには体内にまで侵入する。その一連の作業はタラバが反撃を許さない目にも止まらぬ速度で行われた。
「さぁ行くぜ」
あいつは魔法の開示の際に硬度の再分配は
つまり体内を硬くすることはできない!
タラバの食道を通り、胃まで達する。
タラバの体内の『觸』で新たに拳を生成し、殴る。殴る。殴る。
「グォォ、、!!」
体内からの攻撃に対する防御手段を持たないタラバは大量のダメージを負った。
「今度こそ勝ちだな」
俺がそう宣言したところでダメージを負ったタラバが立ち尽くしたまま気絶した。今度こそ完全にとどめを刺さんと、俺はタラバの体を一旦横に倒す。
「とどめって言っても殺しはしない。安心しろ」
気絶しているので聞こえはしないだろうが一応の説明をする俺。とりあえず足だけは折って俺を追って来れないようにするというだけだ。できれば腕も折っておきたい。非情だがこればかりは仕方ない。
しかしこれからどうしよう。ハーメリア領に戻る?でも俺は王国の騎士を手にかけた。下手したら国中で指名手配されて殺されるなんて可能性もある。でももし俺が逃げたらレーベン家が一族もろとも殺される可能性も。どうすれいい?
考えがまとまらない中、タラバの体の骨を折ろうとしたとき、
「ひとま「貴方、強いですね」
背後からの声、それと同時に俺の胴と首を分けんとする刃が迫る。
前に倒れるようにして踏み込んで刃をかわす。そして振り向き様に口にする。
「気づいてないと思ったか!お前もあいつ同様殺気でバレバレなんだよ!」
「気づかせたんですよ。本当ならしたくないのですが初めは不意打ちしないと後で叱られるのでね」
俺が煽りを言い放った相手は先ほどまで戦っていたタラバとは異なり、騎士と名乗るに相応しい見た目をしていた。いや、冒険者風騎士といったところか。
銀色に輝く装備、いわゆる甲冑なわけだが。関節の部分が通常の甲冑よりも空いており、これは動きやすさを重視しているということだろう。軽鎧と表現するのが最も正しいか。
ちなみに兜はしておらず無防備なためにこの男の顔面を見ることはできる。まぁ悪くない顔で腹立たしいとだけ言っておこう。
「それにこの程度で死ぬなら私が本気で戦うに値しない。避けてくれて感謝致しますよ」
「あっそ。で?誰だよお前?」
俺のその問いに対し笑みを浮かべながらそいつは答えた。
「
二人目の王道十二星騎士との戦闘は一人目との戦いから間を置かずに始まろうとしていた。