ー異世界への侵略者ー地球を侵略しにきたエスパー宇宙人、死して異世界へと転生する。超能力?何それ?強すぎ!!   作:ゼリアサイ8世

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2-5.「王謁」

 

 目が覚めると天井が見えた。よくある展開の一つ、目が覚めたら最初に目に飛び込んできたのは知らない天井だったというやつだ。

 そして天井が見えると言うことは当然今の俺の体は地に背をつけて横になっているのだが、背をつけている場所は柔らかく沈み込んでおり、体の上には毛布がかかっているのがわかった。つまるところ俺はベットで寝ていたわけだ。

 辺りを見渡すとこの部屋にいるのば自分一人であり、この部屋の装飾が豪華なものだと分かる。そして左側に少し歩けば扉がある。

 普通ならば目が覚めたらどこにいるのか知らない天井の見当もつかない見知らぬ部屋にいる。と困惑するのだろうが、今回の困惑はそういったものではなかった。どちらかと言えば何故ここにいるのかという困惑があった。

 

 何故ならここは祖母クライアの屋敷だ。

 

 俺は今まで王都に来たことがないので当然王都にあるクライアの屋敷は来たことない。

 なので普通ここがクライアの屋敷だと知るはずがない。だというのにそれに気付いたのは、

 

「デカすぎだろ」

 

 どこか呆れたような声を漏らす俺。この部屋は豪華な装飾をされているがその装飾が特に集まっている場所がある。そこには俺とクライアとヘット、俺の今世の祖父にあたる人とで撮った写真が大きく額縁に入れられ飾られていた。

 それに対して先程呆れたような声を出しこそしたが、内心ではやや嬉しい気持ちもあった。もちろん恥ずかしくもあるし、それ以上に己を戒めるような感情の方があったが。

 

 そんなこんなでここが元々タラバの馬車が俺を送り届けようとしていたクライアの屋敷だと分かったわけだが、だからといって安心しきったわけではない。むしろ知らない所にいるより意味不明な状況だ。

 あの後俺が連れ去られてどっか見知らぬ場所にいるという展開は納得がいくが、気絶したのに目的地についてる。これほどよくわからない状況もないだろう。

 もしかしたら俺がタラバやセコンドと戦ったのは夢だったんじゃないかと思えてくる。

 

 ひとまずこの屋敷内がどのような状況になっているのか確認したい。それにここがクライアの屋敷と分かったはいいものの、どのような家なのかは初めて来た俺には分からない。この屋敷の間取りを知る上でも確認するのは重要だった。

 

 俺はひとまずベットから起き上がり背筋を伸ばす。起き上がる時に気づいたが俺の服は家を出てきた時のままだった。あの戦闘で斬られたりで地面にぶつかったりで相当傷だらけになっていたはずだがその跡はなかった。

 そしてそれ以上に重要なのは身体の傷も全て治っていることだ。俺は最後セコンドを倒して身体を治しきるよりも先に気絶したはず。それなりの深い傷もあったから簡単に治るはずがないんだが。誰かが俺以上の治癒魔術を使ってくれたのか?

 ますます昨日のことは本当に夢だったのではないかとさえ思えてしまうほどに訳がわからない。

 

 まぁ身体の状態の確認はほどほどに、いよいよ屋敷を見渡すわけだがもちろん屋敷中を駆け回って把握しようなどとはしない。

 

 俺は透視を発動する。透視する距離を少しずつ伸ばしながら全体を見渡していると、ふと一つの部屋が目に止まった。

 その部屋の様子は簡単には表せない。ひとまず奇怪とだけ言っておこう。

 俺はその部屋の中を改めてしっかり見ようかとするがそれを止めることになる。何故か?

 

 原因はその部屋にいた一人の少女だ。格好は和風な感じでいわゆる十二単を着ていた。黒を前に出し、少しだけ赤や黄色、白があった。それらには模様らしきものも織り込まれており、かなり華やかな衣装という印象を受ける。残念ながら俺はそこら辺の知識に疎いため具体的にどこか素晴らしいなどとは言えないが。

 だがそんな華やかな十二単だが明らかにおかしいところがある。性格に言えばあの少女が使う場合おかしいという話だ。

 何故ならあの十二単は明らかにその少女のサイズに合っておらず、元々地面に擦らせるような服とはいえ普通なら擦らないところまで擦っていた。

 しかし、そう言ったところを除けばピンクと紫の間のような髪色をした非常に可愛らしい少女であり、正直俺が今まで見てきた中で一番の美少女だと言える。

 そして俺は先程から彼女のことを少女と言っているが見た限りの年齢はおそらく、9、10歳といったところだろう。

 そんな彼女はその絶世の美貌とは別に何か目を惹きつけるものがあらように感じさせる。そしてそんな少女に俺の心が惹かれつつあるのを感じとる。以前から思いつつあったが、どうやら俺の精神年齢は肉体に引っ張られつつあるな。その結果子供の体格であるあの子にさえ多少思うところができている。まぁ引っ張られつつあると言っても正確にはどちらの精神年齢でもあれるといった感じだ。故に所謂ロリコン的な行動はせずに済むと思う。

 とまぁそんなことを考えながら、ずっとその少女のことを眺めていると、少女は動き出しまるでこちらを見てるかのように顔を向け、

 

 

 

 

 こちらに手を振ってきたのだ。

 

 

 

 

 

 ツッ!恐怖を感じた。その原因はただこちらに気づいたという事実だけではない。視線を感じることができるような人間など数人は知っているため、それは警戒はすれどここまでの恐怖は抱くことにならない。ならばなぜここまでの恐怖を感じたのか?

 

 あの可愛らしい少女には人を惹きつける独特な雰囲気こそあれど、恐ろしい雰囲気などはなかった。タラバやセコンドのような威圧感など皆無だった。だというのに俺はあの少女に彼ら以上の恐ろしさを感じていた。

 

 いや、だからこそなのか。

 

 所謂(いわゆる)悟りのようなもので何もないからこその恐ろしさだったのかと考えていると、ずっと視界にとらえていた手を振っている少女は手を振るのを止め、今度は手招きをするかの如く手を動かす。

 

 その指示に従わないこともできたが、しないとダメだと俺の直感が告げていた。それにあの部屋の様子からして多分俺の存在が必要不可欠であろうからな。

 なので、先程から僅かに身震いしていた体を一息ついて落ち着かせた後、そちらに向かおうと扉を開け廊下に出る。

 

 廊下は広いが誰もおらず、それが逆に不安を漂わせる。子供の体格でだからか余計にそれを感じる。昨日大人の体格での視界を見たのとのギャップも少なからずあるだろうし。

 

 廊下を見渡し、ようやく俺は目的地へ向けて進み始める。先程少女がいた部屋は一階で俺がいた部屋は二階なので階段を降りなくてはいけない。透視で階段の位置は把握していたため階段には割とすぐに着いた。

 階段は螺旋階段などではなく普通の階段であり、特に労せずに階段を降り始める。

 階段を降りる最中にも色々と思考を巡らせる。

 なぜ少女は俺の視線に気づいたのか。あの部屋の異様な感じはなんだったのか。そういった疑問に対する答えを見い出せぬまま目的の部屋の扉まで着いた。

 階段を降りてからここまでの道のりには数人メイドがいたが、特に話もしなかったので思いの外早く着いてしまったのだ。

 

 俺はしばらく扉の前で立たずみ、一息置いてから扉を開けた。

 

 木製の扉を開けるようなどこか心地よい音を響かせながら俺の目の前に先程透視で見ていた景色がしっかりと肉眼に写しだされる。

 

 その部屋にいる内の一人は何度も言うようだが可愛らしい少女。そしてその他にも人が五人いた。

 その内二人はこの屋敷の主人であるクライとヘットの祖父母達だ。

 

 部屋に着くとやはり初めに目につくのはあの少女だったが、俺はすぐに少女が見えなくなる。

 

 俺がクライアの姿を透視をせずともに見れる距離にいるということは、同様にクライアからも見れるようになるということ。

 クライアは俺が見えるとすぐにこちらに向かって抱きついてきた。なので俺の視界は暗くなる。もう年齢的にはあまり激しい動きはできないはずだが、かなりの勢いで向かってきていた。大丈夫なのだろうか?

 しかしレーベン家の人間は不安になるとすぐ抱きついてくるのだが、これはもはや伝統芸なのでは?そんなどうでもいいことを考えているとクライアが口を開き始める。

 

「クリューソス。無理をしたそうじゃないの。何をしているの馬鹿!本当に」

 

 クライアはそう言い放つと、俺に抱きつくのを止めて離れる。

 クライアなりに怒っているようだが滲み出る優しさを感じるからか、全くもって怖くはなかった。そして続くようにヘットがやってくる。

 

「クリューソス。お前いい加減にしろ」

 

 言うのは短いが流石に祖父ということもあり、威厳もそれなりにあり恐ろしかった。でもついさっきそれ以上の恐ろしさを味わったせいで感覚が麻痺しているのか、あまり恐ろしく感じはしなかったのが少しかわいそうに思えた。

 

「二人ともごめんなさい。でも仕方なかったんだよ。あそこにいる二人が俺を襲ってきたんだ」

 

 そういいながら指差すのは先程五人いるといった内のさらに二人、タラバとセコンドだ。

 そう口にするとヘットはわかっているといった反応を示し、クライアは

 

「そうよ。何が星騎士よ!(うち)の可愛い孫を殺そうとしてくれちゃって!」

 

 そう怒りを露わにするクライアに対して、ようやくタラバが言葉を発する。

 

「せやからほんまにごめんてお母さん方。謝って済む話とも思わんし、仕事やったからと言い訳するつもりはあらへんけどさ。結果論にはなるけど無事やったんやし許してーや。それと何度も言うようやけどクリューを殺そうとなんてしてへんよ」

「クリューならわかってくれはるよな〜?」

 

 そう言いながら俺を見るタラバ。それに対して渋々ではあるものの、

 

「はぁ、、まぁ確かにそうだよおばあちゃん。タラバは俺に殺意を向けてきたけどその殺意が本気じゃない。見せかけの殺意だった」

 

 テレパシーを使える俺からすれば相手の心情の些細な部分まで読み取れるのでそこら辺は割とあっさりわかったのだ。それはタラバだけでなくセコンドも同様であったが。

 だから無理して戦う必要はないかもと思ったが、少なくとも倒して何かしてやろうとは考えていた。その場合は人体実験するなど色々な可能性が脳裏に浮かびあがる。その結果、抵抗するような形で俺は戦うことになったわけだ。

 

「でもこいつらが俺を殴ったり、斬ったのは事実、、、な、はずなんだけど、体が治ってるだよね。治癒魔術でもかけてくれたの?」

 

 俺が使える治癒魔術は癒光(ヒール)のみで、それは聖級の魔術なのだがそれでさえあれだけの傷は治すのに数日はかかる。それどころか幾らかの傷は治せなくてもおかしくはない程に深い傷だったはずだ。

 これを治したとなると、考えられるのは先程も言ったように俺以上の治癒魔術の使い手に治してもらったことだろう。王都だから俺以上の治癒魔術使いがいてもおかしくはないし、むしろいないとダメだろう。

 待てよ?俺は一日でこの傷が治ったと考えていたがもしかして俺が数日寝ていた可能性もあるな。それなら低級の治癒魔術での治療でもおかしくはない。実際何日も寝てました()()()()()()()男だからね、俺。

 

「はいは〜い!それ()だよ。()が治しといたんだよ、その傷。あ!ついでに服も治しといたけど良かったてじょでしょ!」

 

 そう無邪気な返答するのは、あの少女だった。

「あ」が多くて何を言っているのかちょっと分かりづらかったが彼女が俺を助けてくれたのは間違いなさそうだった。

 

 そうか、こいつか。

 

 この少女、容姿はいいけどかなり嫌な予感しかしないから極力関わりたくないんだが、助けてもらったとあってはな。

 下手をするとやばそうに思えるのであまり話したくなかったのだが、、、仕方ないか。

 

「へ〜そうなの!君みたいな小さい子がとは。ありがとう!」「おい」

 

 少女の機嫌をとるように素直な感謝を述べるが、

 

「次()子供(ガキ)扱いしたら脳みそほじくり出してミンチにした後、ハンバーグにするから」

 

 え?

 

 その子供らしからぬ発言と彼女が子供の中でも飛び抜けて美しい少女だったからか、そう言われた俺の受けた衝撃は計り知れなかった。豹変しすぎである。

 

「それとだけど!」

 

 畳み掛けるように少女は発言を続ける。

 

()相手に敬いはほとんど必要ないから。過度な敬いは逆に殺すよ」

 

 何この子マジで怖いんだけど。さっきから発言が一々物騒なんだけど。などと思うものの口には出さない。命令に歯向かうとどうなるかわからないので仕方なく普段通りに話すよう心がける。

 

 それで殺されないことを祈る。

 

「はぁ〜、わかったよ。ところでお前の名前はなんて言うんだ。、、それとこの状況の説明、頼むわ」

 

 せっかく王女に会うためにマサリに習った礼儀作法はタラバといいこの少女といい、役に立たないなと多少残念に感じながらそう質問する。

 俺はいまだにこの状況は理解できていなかった。

 

「お待ちくださいクリューソス様。その馬鹿BBAには状況の説明なんてことをさせるのはあまりにも酷です。ここは私がっ!!」

 

 急に様付けて俺を呼び、少女のことを馬鹿BBA呼ばわりしたのは俺が戦いの最中に受けた印象とは異なる人物だった。その男のというのはセコンド・ラーバである。

 急に以前より騎士らしくなったら、急に騎士らしくなくなる言葉遣い。あまりの急展開に驚く中に更なる急展開。いつの間にかセコンドは吹き飛ばされ壁にぶつかっていた。ぶつかった先の壁はひび割れており、中々の威力があったことが分かる。

 

「クリュ〜ソ〜ス君。さっきの質問は()が代わりに答えるんだけど、その前に一つ言っておきましょう。あまりにも無礼すぎても捻り殺すから」

 

 すぐ殺すじゃん、と冗談混じりに言いたくなるが流石にやめた。

 今の怒りようからしてセコンドをああしたのは彼女だろう。何よりも恐ろしいのは何をしたのか俺には一切見えなかったし、その仕組みも不明ということだ。彼女の言うことには大人しく従うが吉だと嫌でも、分からさせられたのだ。

 しかし俺の口の悪さで接して本当に大丈夫だろうか。絶対ダメだよな。詰みな気もするんだが、なんとかなって欲しい。

 

()の自己紹介は大トリでじょ。となるとあれかな。この状況の説明からだね」

 

 そう言うと、彼女は俺の前にやってくる。

 今の体は俺も子供でたかが五歳児だ。対して彼女身長が小さいと言えども小学四年生ぐらいにはある。故に彼女の方が身長は高く、彼女と目を合わせることになった俺は見上げるような形となる。

 

 そして彼女は一息ついてから話し始める。

 

「まずはあれでしょ」

 

 そう言い彼女が指差す方向にいるのは三人。内二人はタラバとセコンドだ。そしてもう一人は知らない人だが、衣装からしてどう見てもあれは

 

「まずねーガザラグドのやつでしょ。で、セコンド。で、うちの国の王様でしょ。分かった?分かんない?多分分かってる!」

「でね。なんであいつらが正座してるのかといえば君に()が直接謝らせてやるって、意気込んだからなんだ〜」

 

 彼女はこの状況の説明をようやくしてくれるが、そう、そこなのだ。最大の問題はそこなのだ。

 俺が最初透視で見たとき、何もよりも理解できなかったのはそこだ。

 タラバやセカンドまでならまだしも、、いやそれも十分おかしいんだがな。とにかく!、明らかに王様らしい格好をした男までもが正座していた。普通に考えて王様にさせることじゃない。なーにが「王様でしょ」だ。

 

「クリューごめんな。そいつ頭おかしいねん。はっきり言うけど同じ星騎士達の間でも一番の嫌われ者、、、いやそんなこともないかもしれへんな。まぁでもやっぱ頭いっ!」

 

 タラバが俺に説明しようとしてくれるが、頭がおかしいという明らかな罵倒はどうやらその少女を怒らせるのには十分だったようだ。まぁこればっかりはタラバが悪いと思うけど。

 ちなみにセコンド同様に吹き飛ばされたタラバは面白い体制で壁に埋まっていた。俺はクソ硬いタラバにダメージを負わせるのに相当苦労したんだが、そんなの関係なくタラバの体にはひびが出来ていた。

 セコンドが吹き飛んで出来た亀裂に続き、屋敷に再び大きな亀裂が入る。

 それを見てクライアがとうとうあることを口にする。

 

「あの!恐れながら申し上げるのですがこの屋敷で力を行使するのはやめていただけば。何卒よろしくお願いします」

 

 まぁ当然だろうな。誰だってあんな風に屋敷を壊されたくないし、俺だって初めてくるとはいえ知らない奴に今世における自分の祖母であるクライアの屋敷を壊されたくはない。ましてや事前の予定ではここで過ごすことなっていたのだ。多少なりともこの少女の行為に思うところはあるというものだ。

 だというのに、その少女が可愛らしくてどこか許してしまいたい自分がいる。あまりにもそれは異様だった。

 

「ん?あぁ、、ごめんなさい。何も考えずにやってたわ。ちょっと待ってて」

 

 そう言うと少女は屋敷の壁に手を当てる。別に亀裂が入っている部分の近くでも何でもない普通の壁だ。

 少女は壁に触れながら唱える。

 

四状(しじょう)

 

 それだけ言うと屋敷の亀裂はなくなり完全に元の形へと戻る。壁にハマっていたタラバはところてんのように押し出されていて、これまた面白かったのは別の話。

 

「何だよ今の?」

 

 俺が素直に疑問をそう口にすると、少女は振り向き様に答える。

 

()の魔法だよ魔法。これでクリューソス君の服も直したんだから。感謝してよ〜。富・名声・力・この世の全て、のどれでもいいから」

 

 ニヤケながらそう発言する少女はやはりどこまでも可愛い。俺が結構面食い気味なところがあるとはいえここまでその少女が魅力的に見えるのは少し違和感があった。

 それはそれとして某海賊漫画的なあれがあったがツッコミはせんぞ。てかもしかしてこいつも転生者だったりするのか?

 あと、富と名声と力と同枠でこの世の全てを並べんな。完全に包含されてるだろ。

 

「そうだったんだ。起きてからずっと疑問だったんだけど、そういうことだったのか。ありがとう」

 

 ツッコミはや疑問はさておき、俺は少女の注文通りにしっかりと謝意を述べる。その返答に笑みを浮かべる少女。

 

「うんうん!いいんじゃない、それで。それじゃ話戻して次行きますよ」

「オラ、君たち!とっととクリューソス君に謝らんかい!」

 

 そう言うと少女が原因で倒れているセコンドとタラバを目にも止まらぬ速さで正座している王様の両隣に連れてくる。

 ちょうど初め見た位置関係に戻った感じだ。

 その状態になると倒れて気を失っていた彼らも起き上がる。

 

「土下座だぞお前ら。特に王様は深く反省しなさい」

 

 少女がそう言うとセコンドとタラバは割とあっさ。とその指示に従い、土下座の体制を取り、謝罪の意を示す。

 しかし王様であろう人はそれをせず、ずっと正座している。

 

「王様くん、、言っている意味がわからないのかな。かな!ひらがな!」

 

 突然意味不明なことを言い出す少女は置いておくとして、先程の少女の行動から誰もが歯向かってはいけないと分かりきっているのにそれに従わないとか王様もイカれているのか?

 

「ふん。何故この王が貴様に従わねばならん。王たる俺が正座しているのが貴様に怯えてのことだと思っておるのなら見当違いもはなはだしい。力のみの女なのだからこれもいい機会だ。王に命令はできない。その常識を学ぶ機会としてな」

 

 うわ、俺様系の王か。そんなこと言ったら絶対この少女に殺されると思うが大丈夫なのか?

 そんな俺の危惧した通り、案の定少女は青筋を立てながら王様に対して口にする。

 

「王様いつかマジで殺すよ。でもな〜王様は一度決めるとそれ変えるのはめんどくさいからな〜、、、まぁもう今回はいいや。感謝してね。じゃあ、命令はしないけど、、、どうせ謝るんでしょう?」

 

「それをわざわざ聞くとはどこまでも低脳だな。もう数十年の付き合いなるというのに俺を測り切れていないとな。無論するに決まっておろう。王たるもの時には自身に非がなくとも認めなくてはならぬ時もおる。ましてや此度に限っては己に非があるというのに謝罪できぬ俺ではないわ。たわけ女」

 

 えらく豪胆な王様だが、目の前に被害者がいるのをお忘れなのだろうか?正直その態度は俺にとっても望ましいものではないんだが。

 その王様に対して、やはり怒りながら少女は言う。

 

「おーおー!そ〜ですか!そ〜ですか!だったら四の五の言わずに早く謝ったらどうなんですか!」

 

「わかっておるわ」

 

 少女のことをどこまでも呆れたものを見るかの様な様子の王様は、少女との会話が終わると俺の目をはっきりと捉えてから、

 

「すまなかった」

 

 それだけを言い頭を静かに下げる。その姿勢は歴とした美しい土下座であり、先程までのプライド高い様子からは想像もできない有様だった。

 

「クリューソス君。これでいいかな?この馬鹿①、⑤、⑦のしたことが許せないのは分かってる。それでも許してやって欲しいんだ。最悪骨一本ぐらいならイケる」

 

 なぜ①、②、③でなく①、⑤、⑦なのかとかは絶対にツッコまないとして、少女から彼らを許すようにお願いされる。当然俺にはそれを断る権利がある。

 しかし、正直に言えば少女のお願いに反して許せないと言った時、少女がどんな行動を起こすのかが怖すぎる。本来なら賠償金だとか色々と請求するべきなんだろうが、やはりそれも後の恨みを考えると怖い。仮に少女のことはそれで問題ないとしても、あんな風に俺を襲ってきた奴らだ。払った金の回収や、不祥事の隠蔽のために改めて暗殺させようとするなんて可能性もある。こんな風にどんな対応をしてくるかが分からない以上、俺は今回何も求めないことにした。てか普通に骨とかを仮に貰えてもいらないし、怖い。

 

「待て貴様。そもそも俺が何故星騎士共にクリューソスを捕える様に命じたのかを語らずして事の許否を決めろなどとはあまりに無礼極まるぞ」

 

 王様は少女を諌めるように一切怖気付くことなくそう口にする。え!何この王様ちゃんとしててかっこいい!とか思ってる場合ではないが、そこら辺をしっかり考えてくれているというのは良かった。さっきまではプライド高いだけの無能な王様かもなと考えていたがそうではなさそうだ。

 

「む、確かに」

 

 先ほどの王様の発言に納得する少女。

 

「クリューソス。何故貴様を捕まえるよう命じたのか?それらの疑問に答え合わせをしたい、、が、そのためには場所を変える必要がある。行くぞ」

 

 そう言うと王様は立ち上がり、ついてこいと言わんばかりの態度で俺の横を過ぎていく。

 王様が立ったのに合わせてタラバとセコンドも立ち上がりそれに後からついていく。

 この二人もついていくということは俺を襲った理由を説明することに関して説明する際に居ないでいて欲しいのはクライアとヘットの二人ということだろう。

 

 王様達と共に移動しなければならない人の中には当然俺がいるはずなので、俺もついてかなきゃなと思うが王様の指示に素直に従うことへの多少の不信感もある。クライア達がいなくなった途端に本性出したりしないよな?一応テレパシー的にそういった雰囲気はなさ気だったがしかし。

 俺がいきなり移動すると言われ多少戸惑っていると、クライアが俺に近づいてきて言い放つ。

 

「クリューソス、、行ってきな」

 

 優しい声でそう言ってくれる訳だが、

 

「その言い方だとやっぱりクライアはついてこないの?」

 

 クライアは王様相手に憤っていたこともあり、自分たちが除け者にされるようなことは良しとしないと、俺は考えていた。そしてそのことをあの王様が気づけないとも思えない。故に王様があのような余裕な表情で部屋を移動しようとすることは、俺にとっては違和感だらけであった。

 

「うん。王様から事前に言われていてね。クリューソスの目が覚めたら初めはこの部屋で色々話すけど、後になったら部屋を移したいって。その時私らにはついてきて欲しくないって」

 

 私ら、というのは先程の推察通りのクライアとヘットの二人のことだろう。しかし今の話だけでは何故クライアが俺に同行しないことを了承したのかが依然として不明だな。

 

「二人ともいないだなんて少し不安だな。あいつらがまた俺をどうにかしようとしてくる可能性もある訳だし」

 

「それは大丈夫だよ」

 

 俺が遠回しに探りを入れようとクライアに話していると、そこに誰かが割り込んで言葉を発してくる。その誰かというのはあの幼い少女だ。俺がそちらに目を向ければ腰に両手を起き、ドンと構えているのが目に入ってくる。

 

()は何たって最強だからね。その()が守るって言っているんだからどんな守りよりも安心安全間違いなし。早起きした日の遅刻に対する危機感が皆無になるぐらい安心していただいてマルマルモリモリだよ!」

 

 もはやこいつの言い回しはどうでもいいとして、先程のセコンドやタラバへの攻撃からして彼らより強いのは間違いないだろう。俺も最初恐怖を感じた訳だし。

 

 しかし、彼女が最強というのは流石に疑問だ。何故かと言われればどうしてもこんな小さい子が強く見えないと言う点だろう。極力偏見は持たないように気をつけているつもりだが、どうしてもなってしまうものというものはある。今回の場合はまさしくそれだろう。

 俺がそのように疑念を抱いているのに気づいたのか、ヘットがあの少女へ向けて一つ頼み事を口にし始める。

 

「クリューソスはそのお方をよく知らんだろう。申し訳ありませんが是非クリューソスにも名乗ってはもらえませんか?」

 

 ヘットが少女に名乗るように言ってくれたおかげで、俺はようやく少女の名前が知れそうな状況になる。

 

「はぁ〜、、、本当はほんとのほんとに最後まで名乗らないつもりだったけど仕方ないか。この後の話し合い的にも名前知ってた方が便利だしね」

 

 そんな風に気怠げにヘットの言葉に応じた少女は俺の方を向き構える。その身に合っていない十二単を地面に擦りながらも芸術品かのような華麗な所作で名乗りを上げる。

 

(おう)(どう)(じゅ)(うに)(せい)騎士(きし)『一円規《モノ》』にして『虚敵《きょてき》』のミリタリア・リオレス・サーナ」

 

「名前を呼ぶならミリタリアかサーナにして。リオレスって呼ぶのだけはやめてね」

 

 その自信満々な姿は見るもの全てを魅了するほどの魅力に溢れ満ちており、俺も思わず見惚れてしまう。

 

「ちなみにリオレス呼びだけはしたら本当に殺すから」

 

 だが物騒な内容が聞こえてきて、ミリタリアの魅力を感じたばかりなのにすぐさまそれは消え去り俺は正気に戻ったのだった。

 

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