ー異世界への侵略者ー地球を侵略しにきたエスパー宇宙人、死して異世界へと転生する。超能力?何それ?強すぎ!!   作:ゼリアサイ8世

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2-11.「一撃」

 

「多少特異な姿だからって()は特別扱いしないよ。演者が与えるサービスは平等でないとね。しかも残念なことに今回()を讃える観客はクリューとホワイしかいないからね。過度な演出もいらない。だから特に君との戦いを長引かせて、観客を楽しませる必要はない。でもね!だからこそせめて君の死が印象に残る様、、、、一撃でぶっ殺してやるよ」

 

 俺はその長々とした台詞を聞き、言わねばならないことがあると思う。しかしそれを言葉にするよりも早く、オークの攻撃がミリタリアに向けられる。

 オークの右上と右中央の腕。その二つがミリタリアに当たろうとするとき、まるで壁に殴った時の様にオークの腕が反動を受けて跳ね返り、ミリタリアにその攻撃は当たらない。

 

「馬鹿みたいに突っ込んでくるからそうなるんだよ」

 

 そう煽った後、右腕の人差し指のみを伸ばしてオークに向けるミリタリア。ミリタリアはおそらく本当にこのオークを一撃で破壊できてしまうだろう。だが、だからこそ俺はここでようやく言葉を発する。ミリタリアに倒される前にオークと話しておきたいことがあるからだ。

 

「待て、ミリタリア!さっき言葉を発してた様にこいつらは意思疎通が可能だ!俺が以前似た様な奴と戦った際はその性格も終わってたけど、こいつには共存の可能性がありそうな気がする。だから一旦戦うのをやめてくれ」

 

 そう言うとミリタリアは俺の方を向いた後、渋々それを受け入れる様にして、空中に浮く。

 浮いた後は、常にオークの視界に入り攻撃をかわしながら逃げていた。さっきのバリアの様な技があるならそんなことはしなくても良い気がするが、煽る様な行為ををすることで攻撃の意識を自身のみ向け、オークの攻撃を俺たちの方へ向かわせないためだろう。

 

「クリュー、、別に倒さないのは良いんだけどさ、早く交渉してくれない。あんまかわすとか好きじゃないんだよね、()。ぶっちゃけ早く殺したい」

 

 ミリタリアは素直にそう告白する。俺としてもミリタリアの性格的にそれをし続けるのは無理そうに感じているので、初めから話は早く終わらせるつもりだったのだ。とりあえず俺はミリタリアに向けて返事をする。

 

「分かったよ」

 

 そう返事をした俺は少し前へ出てからオークへ向けて声をかける。

 

「オーク、俺達と交渉してくれないか?」

 

 あの姿をしたオークはやはり以前戦った奴よりも賢い様で、俺がそう言うと自分に対して言われているとそれをしっかり理解し、こちらを向いた。

 下手したら声に反応してもミリタリアを狙い続けるかとも思ったが、すぐにこちらに向かってきた。

 

 ターゲットを変更したのか、あるいは本当に話し合いに応じてくれるのか。どちらかはテレパシーが先んじて教えくれたので一応何となく分かってはいたが、万が一に備えて俺は警戒した姿勢をとっておく。

 オークは俺の目の前にやってくると話しだした。

 

「交渉?お前達が僕の仲間を殺したんだぞ!絶対に許さないんだぞ!」

 

 さっき言っていた仲間思いの発言からして当然なことを言われる。俺も今の家族、ガレス、パーネット、サファ、チルマー、、、血の繋がりはないがマサリも。彼ら彼女らが殺されれば思うところがないわけではない。実に都合のいいことではあるが。

 だからこそこいつのこの発言を無視するわけにはいかなかった。

 

「勿論それは分かってる。俺達はお前達を魔物という理由だけで殺そうとした。お前からすれば到底納得のいくようなことではないのも分かってる」

 

 俺はオークの目を見据えて言葉を紡ぐ。敬語が不要とよく言われる俺なりの敬意を相手に示しながら。

 

「だから謝らせてもらいたい。お前が俺たちを殺したいと思うならそうしてくれて構わない。でもそうなれば悪いが俺たちも反撃せざる負えない。そうなった時にお前が勝てる可能性は、、、正直に言ってない。だから諦めてくれないか。勝手なことを言っているのは自覚している。殺すとかそういったものでない別の形での謝罪ならしたいとおもってる」

「ひとまずは言葉で、、すまなかった」

 

 今言ったのは俺の嘘偽りのない本心だ。これでダメなら仕方ない。そのときはそのときというものだ。

 それを言った俺に対してオークは、

 

「分かったんだぞ!、、、殺すんだぞ!」

 

 そう言った次の瞬間、オークはさっきまでミリタリアにしていたのと同様に俺を殴ろうとしてくる。使う腕までさっきと同様なので、オークにとってそれが癖というか、慣れというか、利き腕の様なものなのだろう。

 別に見切れない速さではないので、普通にかわそうとする。

 しかしそんな俺とオークの間に瞬間移動の様な技で入り込むミリタリア。ミリタリアのバリアの様な不可視の壁により、またまたオークの攻撃はせき止められる。

 

「だから言ったじゃんクリュー、、こいつらと話し合いの余地はないって。()()()()()()()には魔物なりの特徴ってものがあるんだから」

 

 まるでそんな魔物を知っているかの様な口ぶりのミリタリア。俺は今日このオークに出会うまで魔物は全員敵というのが常識だと思っていた。だがやはりこのオークしかりそれは違ったのか。

 まぁミリタリアの中ではこのオークもしゃべれこそしても話が通じないという認識なようだが。

 

「でも、たとしても悪いのは、」

 

 俺はミリタリアのオークに対する発言に対して少しばかり反論しようとする。しかしそれをミリタリアは先んじて封じてくる。

 

「魔物にそんな気を使っちゃってさ。()の目の見る限りあの村の人達はともかく他の所で今までに数人食ってるって」

 

 俺はそれを聞き目を少しだけ見開く。それはこのオークに対して俺が共存できる可能性を見出していたからだろうか。あるいは自分がやったことを正当化できるという安堵からだろうか。

 答えは出ない。いずれにしろミリタリアに伝えることがあると俺は思い、それを口にする。

 

「それは、、、いや、後でその辺については教えてくれ。でも戦うのなら教えておきたいことがある。このことは知ってるか知らないか知らないけど一応言っておくぞ。このタイプのオークは下手したら一度殺しても蘇る可能性があるぞ。俺のときは普通のオーク、、、にしてはちょっと変な奴だったんだけどそいつを倒したときすぐには死なずに今みたいに六本腕になってた。だから次殺したらさらに進化するかしれない」

 

 だからあの時俺は魂ごと壊す手段を選んだ訳だしな。

 そんな大切なことを教えてやっていると言うのに何故か笑っているミリタリア。元よりイカれていたがついに本当にイカれてしまったのかと心配する俺に、ミリタリアは衝撃的なことを言ってくる。

 

「『知ってるか知らないか知らない』って同じ動詞三つも入ってて面白いね!なんか学がないみたいで面白い!!!ケラケラケラ!」

 

「どうでもいいこと気にすんな!」

 

 やっぱり頭イカれてるのは間違いない様だな。まぁ知ってたけどさ。でも今ので少し考えすぎな状態になっていた脳が落ち着いた気がする。その点はもしかしたら感謝なのかもしれない。

 

 しかしこんな奴の相手をする俺も可哀想だが、何よりも可哀想なのはあのオークだ。なんかふざけてる奴のバリアをずっと壊せずに進もうとしてるんだから本当に可哀想だ。いっそのこと、バリアぶっ壊れて痛い目見ればいいのに。

 そう思っている俺にさらにミリタリアは話し続ける。

 

「てゆーか、『教えてくれ』って言ってたけど()に教えは請わないんじゃなかったはずじゃ。まぁ別にいいんすけどねぇ。言うべきことがあるのではないかと思う所存」

 

 俺は怒りが最高潮に達しそうだが、何とか堪える。『てゆーか』って言いたいのは俺の方だ!お前全然話し方統一しないし、笑い方も『ハハッ』だったり、さっきは『ケラケラケラ』だったり統一しないし本当にイカれてる!これの相手、、、押さえて管理するのは大変だろうな王様。

 俺が人知れず王様のことを憐れんでいると、

 

「ミリタリア、いつまで待たせるつもりであるか?お前さんのくだらん言葉より派手な魔法を儂は見たいのだが」

 

 どうやらホワイも俺と同じくミリタリアの発言はくだらないと思っている様だ。良かった。

 まぁどっちも話が長くて、話盛りすぎたり、めんどくさいのは変わらないんだけど。でもミリタリアは人を小馬鹿にする様な自慢ばっかりだがら余計腹つんだよなぁ。

 まぁどこまで行っても自慢でしかないホワイのもそれはそれで問題なんだが。

 結論、どっちも面倒。

 

「む〜、くだらなくないし、()の話止めたのはクリューだよ。怒んならそっちじゃない?」

 

「む、確かに!おいクリューソス、余計な話をするのは止めんか!こいつの話は救いようがないほど長く、中身が無いつまらん話なのだから」

 

 それはお前もな。というツッコミは置いといて今回のミリタリアの言い分は正しいと言えるものだろう。確かに俺が止めなければ既にやっていただろうからな。魔法の発動。

 こいつの言い分を正しいと認めるのは癪だが、認めるべきとこは認めるのが俺だ。こいつらとは違うのだ。

 てかこんな感じの怒りの矛先が変わる展開ついさっきなかったっけ?

 そんなことを考えている間に未だバリアを突破できずにいるオークが喋り出す。

 

「なんなんだぞ!この見えない壁は!邪魔だぞ!消えろだぞ!」

 

 思って消えるようなものではないだろうが、言葉として発したいのだろう。そうでもしないと、ただでさえムカつく女をずっと殴れずよく分からないバリアに塞がれるストレスは発散できないだろうからな。

 その言葉を聞いてミリタリアは、

 

「ん〜、、じゃあバリア解除してあげようか、、一撃でぶっ殺す宣言したけどチャンスだ。今から一分間この防御を解いてあげよう。そのかわり一分後には有無を言わさず殺すからよろしく」

 

 そう言うとミリタリアは本当にバリアを解除したのか、オークがそれよりも前に進む。さっさとやれとホワイに言われたことを既に忘れたような行動するのは流石といえよう。ちなみに全然褒めてはいない。

 

「馬鹿だぞ!お前!」

 

 そう言い、オークは腕をミリタリアにぶつけようとする。今回は以前までと異なり、全ての腕で挟み込むかのように殴ろうとしてくる。

 

 ひょいと後ろに下がりかわすミリタリア。六本の腕はすかさず攻撃を入れてくる。まずは左下の腕で掬い上げるように殴ろうとする。

 その腕をミリタリアは触り、逆立ちするようにして立つ。動いてる腕にそうするのだから、なかなかの体幹と言える。

 ミリタリアはオークの腕に置いた腕を押し、反動でさらに上へといく。しかし上に行く最中に左上の腕で殴られそうになるが、その腕を掴み、今度は腕の下に潜り込む。その腕の下に潜ったミリタリアを右真ん中の腕で殴ろうとするオーク。

 しかし、それも当たらずにミリタリアにかわされてしまう。

 

「いっせーのーで!!ほい!」

 

 そう言うとミリタリアは掴んだオークの左上の腕ごとオークの体を背負い投げのようにして、一回転させる。

 一回転したオークの体が地面につきそうになるも、それを止め、衝撃を消す者が現れる。

 それは他でもないオークを投げ飛ばしたミリタリア自身であった。

 自分で投げ飛ばした相手を自分で受け止めるなんてのはあり得ないこと。なら初めから投げなければいいのだから。その真意がミリタリアの口から語られる。

 

「いや〜危なかった危なかった!一撃で殺すって言ってたのに今の投げを一撃扱いされたら嘘になるからね。もう少ししっかりして欲しいかな!弱すぎて話にならないから」

 

 自分の発言を守るために彼女はあえて相手を助けたと言った。さらにわざわざ相手を煽るようにして、『弱すぎる』とまで。

 それを聞いたオークがどう思い、どんな行動に出るかは想像に難くない。

 

「許さないんだぞ!」

 

 オークはさらに怒りを上げ、ミリタリアに襲いかかる。その発言にミリタリアも食って掛かり、更にオークを煽る。

 

「『だぞ』『だぞ』うるさいんだぞ!それにもう少しで残り時間は三十秒を切る。、、、あ!今、切った」

 

 腕を何度も変えて殴り続けるオークだったが、その攻撃の全てが当たらず、悠々とかわすミリタリア。しかもかわすたびに煽りを入れてくるミリタリアはあまりにもうざいというものだ。

 正直オークが可哀想になってくる。

 

「おっそ〜い!ほらほらもっと速く!でないと面白くないよぉ!オーク、拳打ってなくない!?wowwow(ウォウウォウ)

 

「君が死後も印象に残るようにしてあげるって言ってるのに、もう少し()に報いるつもりはないのか〜!!!」

 

「腕六本も使う人が使わないと弱いよね。いや、人ではないんだった!まぁどっちでもいいんだけどね。とにかく腕の使い方がなってなぁい。トラゲナァイ。()という先生を持てなかったことが人生で一番の失敗だよ。あ!また、人扱いしちゃった。難しいね。でも気にしないで、()を教師に持てず、人生の9割以上損をしてる人の数は、それこそ、その割合よりも高いから。二つとも%で表すなら、人生の損が99%、もう一つが99.9%ってところだよ」

 

 ここまでうざい人間がこれまでにいただろうか?いやいない。

 俺がそんなことを考えている最中にもミリタリアはオークの攻撃をかわして煽り続ける。オークもまた、声を荒げる。

 

「絶対に殺すんだぞ!」

 

「何回同じようなことを言うんだよお馬鹿ちゃん。あ!それともあれかな?さっきから馬鹿みたいなことを言うのは()の気を引くためかな?でもごめんね?()の授業を受けるためには条件が必要なんだ。それを満たせるだけの可能性があなたにはないよ。本当にごめんね!」

 

「でも、もし()に攻撃を当てれたら入れてあげてもいいんだよ!だったら殺さないでおいてあげる。、、うん!名案だ!これなら俄然君もやる気が出るんじゃない!やっぱり世界一の天才は()だった。いや、それは既に確定事項でした!証明済みでした!い〜やっほう!」

 

「だからさ!ワンパターンなんだってやる気あるの!そんなんだから()から見る気もされないんだよ!分かってる!弱すぎて()の興味を惹けない君の苦しみは計り知れない。きっと苦しくて苦しくてたまらないだろう?()ほど可愛くてお淑やかで魅力的な女性はいないからね」

 

 一連の流れ全てくどいしうざいのは言うまでもない。それでも誰もが思ったことを俺が言おう。

 

『お淑やか』だけは違うだろ!!

 

『可愛くて』に関しては正直認めざる負えない。はっきり言って俺が今まで見た女性男性全てを含めても歴代一の美形だ。可愛くて美しいそんな女だ。

 身長や顔つきは完全に子供のそれなのでロリコンと揶揄してくる輩もいるかも知れない。でももし実物を見ればそんなことを言えなくなるほどの美しさがその少女にはあった。

 黒を主体として赤、金、白の十二単。それの着こなし。透き通るような紫とピンクの間のような色の髪。その髪と同様の色をしている瞳。あげればキリがないだろう。まぁでも一つ付け加えるなら、今回の戦闘中の瞳、それは何故か金色に輝いていた。だがそれもまたミリタリアという少女に似合っていた。

 少女は全ての人間を虜にしてしまえるだけの美貌があった。しかしそれを上手く活かせず、誰からも呆れられているのはその性格のせいだろう。

 その性格は一言で言えばウザい女だ。人を煽り、自分ならできるという自慢話を大量にする。これほどムカつく女もいないだろう。しかもこいつの話は長いときた。最悪の女の性格候補に上がるレベルの面倒くささだ。クソなろう系イキリ主人公でもここまてまイキリ散らかさないし、ウザくもないと思う。

 そのウザさが可愛いんだって?それを言うのは実際にこいつに会ってから言うべきだろう。もし合えば五秒もせずに殴りたい女にかわるだろう。

 とにかくこいつの『お淑やか』と言う発言、それだけは間違っている。誰がなんと言おうと絶対に俺はそれを認めないからな。

 そう言いたかった俺だが、ミリタリアが戦闘中に話しかけるのもどうだろうかと思い、それを言うのを直前で踏みとどまる。しかし、

 

「貴様がお淑やかだと!?気持ち悪いにも程があるというものだ!いい加減自分が馬鹿で面倒なだけ女だと気づかんか!」

 

 ホワイは俺が言いたかったこと全てを代弁してくれた。ここで抑えきれなかったのは彼の豪胆な性格ゆえか、あるいは普段の恨みつらみが溜まりすぎてあまりにもな発言に角が立ったのか。

 その区別はつかないが、とにかくホワイにとっても先の発言は到底納得のいくものではなかったようだった。

 

「は〜!?ホワイ、、お前にだけは言われたくないんですけど、馬鹿なのはそっちでしょ!あんなクソ長い魔法名や異名をつけちゃってさ!魔法の名前もあんたの武器みたいな名前にできないわけ!その点()のネーミングセンスは抜群すぎて()も超気に入ってるんだよ!」

 

 オークそっちのけでミリタリアとホワイの話が始まろうとする。なんかこう、うん。凄く不憫だ。

 

「儂だって気に入っとるわ!その名前をおかしな名前に変えおったのだけは許さんからな」

 

 ホワイが珍しく怒りを露わにしたような表情をする。まぁ珍しいといっても出会ってまだ少ししか話したことない上での珍しいなんだけど。

 それでもやっぱり意外だ。これまでどれだけミリタリアに言われても反論して呆れるだけだったホワイも熱くなって怒るとはな。

 

「あぁ!あったねそんなことも!キッキッキ!、、、、面白いなぁ!そんなわけでオーク君、、、」

 

 ミリタリアはホワイの怒りの言葉を聞いた後、ひとしきり笑う。そしてそれも終わった後、ミリタリアはオークに向けた最後の台詞を口にしようとする。

 それに付随して突如として発生する威圧感。単純な殺意とは別格な何かがこの空間中に広がっていた。

 それをオークも察知したようで、今まで以上に攻撃の速度を速める。

 左上、右下、右中央、右上、左上と左下、右側の腕の全て、左側の腕全て、そして最後に全ての腕を乱打するように襲いかかる。

 速度はどんどん増していき、俺でもとうとう完全に見切るのは難しくなってくる。しかし当のミリタリア本人にとってはそれも余裕なようで、特に苦戦する様子もなく回避し続ける。

 

「絶対に殺すんだぞ〜〜〜〜!!!!!!!!」

 

 嘆きのような、あるいは助けを乞うような声でそう宣言するオーク。オークももはや自分自身の運命を確信した上での精一杯の強がりなのだろう。

 

 そんなオークの言葉を気にせずさっきの台詞の続きミリタリアは紡ぐ。

 

「残り二秒だ」

 

 その発言を聞き、オークは今まで見せていなかった動きを見せる。自身の腕のうち、五本。右上の腕のみを残し、他の腕全てを地面に叩き込む。もちろんその叩き込みには足の力も加わる。

 腕五本に足が二本、計七本分の力を使った突進はもはや俺でも見切れなかった。おそらく、大人状態でも見切れるか厳しい。そのレベルの動きが突然にして行われた。

 オークはその突進と同時に右上の腕をミリタリアに突き出す。その動きはまさしく言葉通りの全身全霊といった一撃だった。

 

 

 

 

 

 

 

 しかしそんな速さはミリタリアにとってはそれこそ止まって見えるような速度であり、、、、

 

 

 

 

 その一撃はいともたやすく手のひらを、いやそれすらせずただの人差し指一本をを突き出すだけで止められた。それを見て絶望の表情に染まるオーク。

 それから間を置くことなく、ミリタリアは口を開く。

 

「残念、時間切れだ。それじゃあ、、、、」

 

 

 

 

 

 オークを止めるために出した右腕の人差し指を伸ばしたまま、幕引きをせんとする。

 

「さよなら」

 

 そう別れを告げると、ミリタリアは続けるようにして唱える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一乗(いちじょう)

 

 

 

 ーーーーーー

 

 

 

 

 『一乗』、そう唱えたミリタリアの指先に一瞬だけ魔力による光の点が発生すると、すぐさまその魔力の塊は指さす方向そのままに放たれた。放たれた魔力は彼女の髪色と同じ紫とピンクの間のような色の光線となる。

 その威力は容易に巨大なオークの体の全てを破壊し尽くし、更にはオークの体の先に見える山々を破壊した。クリューソスから見える景色にある山々には巨大な穴ができていた。

 その一連の動作をクリューソスは見ること、、認識することができなかった。それは何故か?答えは単純である。一瞬の出来事すぎたからだ。

 

 この日、ミリタリア・リオレス・サーナが破壊した山は五十七個にも及び、その被害が出た山から死者が出ることはなかった。しかし、あまりに突然の環境変化にそれらの山々の近隣に住む村人達の苦情、及び救援要請が王都に相次ぐことになる。それは実にこれより三日後のことであった。

 この事件は後に『五七(ごじゅうしち)山一(ざんにのまえ)事件(じけん)』と呼ばれ、その所以は一秒も立たずして山が五十七個も破壊されたからである。

 王都からの発表によれば此度の犯人は明らかになっておらず、騎士達が捜査にあたるとのことだった。しかし実際のところ捜査は特に進展することもなく打ち止めになったという。つまりは形だけの捜査ということである。

 それは犯人がこの国最強として君臨する王道十二星騎士の『一円規(モノ)』であると知れれば、混乱を招くと判断した王の指示があったからであったが、民衆はそれを知る由もない。

 この件に対し、サルテンツ・リオレス・リオレス王は『犯人が明らかになっていない』意外にこう述べている。

 

「もし山を壊した奴を捕まえることができたならば、其奴をどうにかして死ぬ程の苦痛を与えられぬかという思案が湧く程には、其奴にはこの王もそれなりの殺意は抱いている。俺の意思は民達と相違ない」

 

 その声明を聞いた民衆は、彼の意思が叶うことを深く望んだという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マジで死ね!あのクソ女!」

 

 人知れぬ空間で一人、王に似つかわしくない言葉を発したくなってしまう程に、彼女の行動は王様を腹立たせていたのだった。

 

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