ー異世界への侵略者ー地球を侵略しにきたエスパー宇宙人、死して異世界へと転生する。超能力?何それ?強すぎ!!   作:ゼリアサイ8世

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2-13.「胸中」

 

 俺とミリタリアは他愛無い会話をしながらホワイが待っていると事前に教えてくれた店に着く。

 その店の外観はいかにも高級なレストランといった雰囲気で、地球で潜入していた頃には数回行ったことがあるものの今世では初であった。レーベン家から出るの魔術訓練を除くと殆どなかったからな。それは外食関連の話でもそうだ。

 そんな前世の経験を頼りとするならここは中々いい店だろうな。外観からして俺の予想通りなら相当上位の店だ。まぁ異世界だからこそ装飾が派手目な可能性は否めんが。ホワイがわざわざ教えてくれた店ということも考えるとやはり相当に上等な店と考えるのが正しいだろう。

 俺はそんな風に考えを巡らせつつ、ミリタリアとの二人で立っているとウェイターらしき人物が声をかけてくる。

 

「サーナ様とレーベン様でお間違いありませんか?」

 

 その問いかけに頷く俺たちを見てウェイターは案内するように腕を見せの方に向ける。どうやらホワイはウェイターに俺達を案内するよう事前に頼んでいたようだ。俺たちはそんな案内に従うように店内に入ると、その光景に魅入られる。

 煌びやかなシャンデリアに白いテーブルクロスを乗せたテーブル、いかにもなフレンチの店といった印象の店だった。

 

「こちらです」

 

 ウェイターがそう言い動き始めるので、その後に続くようにして俺たちも追っていく。さっきからミリタリアとは全然話さずにいるがそれはお互いこの店の雰囲気に合わない言動をとってしまいかねないと理解しているからだろう。

 一応そういったことにならないためにマサリから礼儀作法を習ったわけだが万が一はあり得る。席に座った後ならまたじも、比較的他の客との距離が近くなる移動中は会話を避けるべきだろう。

 フレンチの店のマナーの詳しいところというのは興味がなく、前世にしろマサリに教えてもらったことにしろそこまで詳しくはやっていない。流石に大問題は起こさないだろうが、知らない作法なんていくらでもあると思う。

 そういった諸々を考えると、とりあえず俺からミリタリアへ向けて話しかけることは絶対にないと決め込む。

 そのように考えていると先導するように前へと出ていたウェイターは突如として動きを止める。どうやらウェイターの前には一つの扉があるようで、ウェイターがその場から離れようとする。案内はここまで、後はこの扉の中に入るだけということなのだろう。そしてこの中にいるとすれば一人しかいない。

 俺は少しだけ覚悟を決めてから扉を開くと、中には店の中の至る所にあったのよりも豪勢なテーブルと三つの椅子あり、その内壁の模様などからかなりお高めの個室であることが伺えた。

 三つの椅子のうち、二つは空席であり、一つは埋まっていた。そしてその一つに座るのは当然あの男。

 

「お前さんらやっと来おったか!ちと遅すぎやしないか?」

 

 相変わらずの大声でそう喋るのは王道十二星騎士で金色の鎧を身に纏う男、ホワイであった。

 ホワイがわざわざ個室の席にしてくれたのは、こういった店に来るような客達は貴族ばかりであろうことが理由に挙げられる。平民たちはつゆ知らずとも、貴族ともなればガレス同様星騎士達の存在を外見含め知っていてもおかしくない。むしろ知っていて当然だ。

 そしてそんな奴らと三人で会食している俺も変に話題になる可能性がある。それもまた面倒極まりない話だ。

 そんなわけで変にトラブルになる可能性が消える個室なのは配慮が効いていると言えるだろう。

 

 しかし個室とはいえ今の大声はどうなんなんだ?防音仕様になっていると期待したいところだが。

 

「へ〜個室、ホワイにしては中々気が利いてるじゃない。でもフレンチなんて大丈夫なの?所作とか色々あるけど平気?」

 

 そうホワイを心配するのは俺の横にいるミリタリアだが、俺はその点に関してはお前が一番心配だよ。

 

「いや、お前こそ平気なのかよ。ここは自由気ままに暴れていい大自然とは違うんだぞ」

 

 俺はミリタリアが暴れないようにそう釘を刺しておく。ミリタリアはそれに心外そうな表情をする。

 

「さっき元貴族だと言ったでしょ!?()は実はハイスペックだからこんなことは朝飯前を通り越しすぎて一日まるごと回って結局朝飯前だよ」

 

 結局朝飯前とは結局何が言いたいのかわかりにくい発言だ。何となくのニュアンスは伝わるが。

 そして今のミリタリアの言葉に嘘はないのだろう。実際ミリタリアは言動こそあれだが、いいとこの女性としての雰囲気を店に入ってウェイターに案内されている間は醸し出していた。俺が話しかけないと言う結論に自然と至ったのはミリタリアのそういった雰囲気があったことも大きな理由だろう。

 まぁ今はもうそんな雰囲気ほぼ無くなってるが。

 

 俺とミリタリアの会話を聞いているホワイが驚いたような表情を浮かべながら口にする。

 

「待てミリタリア、お前さんはクリューソスに過去を教えたのか!?」

 

 ミリタリアが俺に元貴族であるといった事情を教えるとは考えてもいなかったのかホワイはそう驚く。実際俺も聞いたはいいものの、素直にあそこまで答えてもらえるとは正直思っていなかったからな。どちらかと言えばもう少しはぐらかした回答が来ると考えていた。

 ホワイにその様に言われ、ミリタリアは意気揚々と喋り出す。

 

「当たり前でしょ、だって()だよ。あなた達の想像の範疇に収まる女だとまだ思っていたの〜?」

 

 ミリタリアは体を左右にくねくねさせる珍妙な動きをしながらそれを口にした。ホワイはその様子を眺めて、悩んだような仕草をしてから口にする。

 

「クリューソス、どうやらお前さんはそこの阿呆にかなり気に入られたようだの」

 

 意外なことにホワイが話を振ってきたのは俺であった。その内容を受け止めて顔を顰めるのもまた俺であった。そんな俺の様子を見たミリタリアはまたまた心外そうな表情をしてから口を開き始める。

 

「ちょっと何!その反応!世界一の美少女に気に入られているってのに酷くないクリュー!それにホワイも勝手に決めつけないでよね!そういう生意気なところを気に入ってないって言ったら嘘になるとはいえさ」

 

 ホワイからミリタリアが俺を気に入ってると言われた時は面倒と思い顔を顰めだが、本人に直接気に入っていると言われると流石にむず痒いな。本当に性格はともかく容姿に関しては最高級だからなこの女。

 正直今の言葉には少なからず来るものがあった。絶対に惚れることはありえないが。

 

「まぁ俺もミリタリアといることはそんなに嫌いじゃないよ。最初のうちは体内に埋め込まれた爆弾の如く、いつ爆発するかわからないものが付き纏ってる印象だったけど今では制御できないけど絶対に自分に危害は加えない馬みたいな印象だから」

 

「それは褒めてるの!貶してるの!」

 

 どういうことか!と言いた気な様子のミリタリアだが、やはり顔だけはいいな。本当に。

 

「褒めるも貶すもない。ただ思っていたよりもお前はいい奴だったし、一緒にいていたいと思えただけだ」

 

 そう言われ、俺がそんな事を言うことを意外そうにしながらも嬉しそうな表情を見せるミリタリア。なんとか話を逸らすことに成功した。

 

「そう、それならいいけど」

 

 この様子を見ていたホワイは俺たちに告げる。

 

「ひとまずお前さん達は席につけ」

 

 ホワイにそう言われ、そういえば未だに個室に入ってから少ししか動いていないことに気付かされる。

 そんな俺とミリタリアはホワイの指示に従うように各々の席に着く。テーブルは丸テーブルなので、三人それぞれが同じような距離をとっている状態だ。

 三人がちゃんと席に着いたところでホワイが口にする。

 

「まずは今回の任務達成成功おめでとう。そしてそれを祝して、」

 

 俺はそのホワイの前置きを聞く間にテーブルの上に置かれていたグラスを取る。中には水が入っており、勢いつけて手前に持ってきた結果、中の水はたぷたぷと揺れているのが分かる。

 それはミリタリアも俺と同様にグラスを手に持っていた。そして当然ホワイもグラスを持っており、最後にあの定番を口にする。

 

「乾杯!」

 

 その声が聞こえると同時に俺とミリタリアも、

 

「「乾杯!!」」

 

 と言い、三者はグラスを当てあった。

 

 ------

 

 あれから色々な料理が運ばれきて口にしたが、かなり美味しかった。おそらく俺がこれまで食べてきたフレンチの中で一番美味しかったと言えるぐらいには美味しかったし、個人的には大満足な食事だった。特にヴィアンドのローストビーフはかなり美味しかったな。

 それにフレンチの所作に関しても大きな問題はなさそうだった。最悪個室なのでこいつら以外に笑われることもないしな。ちなみにミリタリアは前言通り、そこら辺に関してはしっかりしていた、、いや完璧だったとまで言ってもいい。元々の優れた容姿に完璧な所作となれば見るもの全てを魅了するような存在となっていたが、あまり過度に人を見ようとはしない俺は何とかそれを堪えて食事に専念できていたと思う。

 ホワイはこういった食事には慣れているのか俺以上ミリタリア以下の所作の出来だった。十分に人前でも恥ずかしくないだろう。俺も恥ずかしくはないはずだが、このメンバーの中だと一番下だったがためにどうしても恥ずかしさを感じてはいた。

 途中に幾つかの雑談を挟みながら俺たちは食事を終え、今テーブルの上には空になった皿があるだけの中、俺たちは話し始める。

 

「ホワイはさ自分の冒険者ギルド持ってるけどさ、冒険者ギルドって実際どんなのなんだ?」

 

 これは実際かなり気になっていたことなので、俺はそう口にする。するとホワイは特にそれについて考える時間も置かずに口にし始める。

 

「別にギルドら儂のというわけではない。それと冒険者ギルドがどういったものか、か。簡単に言えば冒険者ギルドは冒険者が集まって任務を達成するパーティーのようなものだ。普通の任務も制限なく複数人で受けることはできる。それこそ今回の件のようにな。だが多くの場合その組み合わせは同ギルドに所属するもの同士で行われる。なぜなら同じギルドの者は仲が深く連携もしやすい。故にギルドに入るのが冒険者の常識だ。ギルドとしてしか受けれない任務もある程であるからな」

 

 なるほど。冒険者ギルドに入るメリットは実際に冒険者として生活していく気なら入らないわけにはいかないぐらいには大きいと言えそうだな。

 ミリタリアなら一人でもどんな任務だろうとこなすだろうが、他の者はそうはいかない。せっかく冒険者ランクが上がって難しい任務に行けるようにはなったとしても、難しいからこそ一人では厳しいということもあるだろう。だから誰かと組んで任務を受けようといったとき、ギルドに参加してない人は間違いなくそれをしづらくなる。だがギルドに参加していれば自然と協力してくれるはず。

 そう考えると俺もギルドに入るべきだろうか?ホワイなら入れてくれる可能性は高い気がするし、冒険者協会でもそんな感じのことを言っていたはずだ。

 

 少しそのことについて思案するが、結論としては『ない』と言う結論に落ち着く。まず俺は王都にずっといるわけでもないし、冒険者として生活していく気もしばらくは絶対にない。更に言えばもしギルドに入れば無理矢理にでもやらないといけないことができるかもしれない。そんなデメリットを受けてまでギルドに入る必要性を今は感じない。ならばとりあえずは今のままでいいかという結論になるわけだ。

 

 ホワイは俺たちに冒険者ギルドに入るメリットを提示したわけだが、続けて口にする。

 

「ギルドにもクラスがあってな、儂らのSクラスの場合であれば、その条件は相当厳しい。黄金の煌牛(おうごんのこうぎゅう)を含めS級ギルドは三つしか存在しておらんからな」

 

 ホワイは自分たちの称号かいかに素晴らしいのかをアピールしてくる。ホワイの猛々しい顔は今まで以上に勇ましく地震に溢れていた。

 

「三つか。かなり少ないみたいだけど、実際そんな数少ないギルドは何をしてるのか気になるな」

 

「クリューソスに言っても伝わらんとは思うが黒龍などのブラックカバスの討伐や、賊の排除、あるいはダンジョンの攻略などだな」

 

 ホワイは俺のそんか問いにいくつかの回答を返してくれる。だがそれを聞いたからこそまた新たな疑問が湧いてくる。

 

「ブラックカバスって何?」

 

 賊はまぁそのまんま、ダンジョンは異世界で良くあるそれだとして、ブラックカバスに関しては本当によく分からない。耳馴染みにない単語なのでそう聞いてしまう俺にホワイは特に嫌がる様子もなく返答を口にする。

 

「ブラックカバスは魔物の中でも特に強力でな、そのくせ突如として出現するから対処に困るのだ。ブラックカバスは特定の形に決まっておらず大抵は何らかの魔物や動物の形をしながらも全身を黒く染め上げた状態で出現する。だからブラックとついとるわけだな。言ってしまえば定期的に発生する変異種オークのようなものだ」

 

 ホワイのその説明を聞き、真っ先に考えるのはいつかは俺も戦ったりするのだろうかということだ。強いというのであれば、できれば無くあって欲しいものだが。

 これでブラックカバスについては分かっだが、さっきのホワイの回答の中に実はブラックカバス以外にも気になることがあった。

 

「さっき賊の排除も任務にあるって言ってたけどそんなに強い賊達なんているのか?正直Sにまでいくとは思えない」

 

 この世界の冒険者の実力は相当に高いからこそ、たかが賊の一つや二つにそこまでの戦力を割くのか疑問なのだ。悪の秘密結社でもいるというのか?

 

「クリューソス、お前さんの言いたいことはわかる。だが命懸けの冒険者という職が強いのと同じように、奴らもまた命を賭ける側だ。そんな奴らもまたそれ相応に強い。稀に儂よりも強い奴もおるからな」

 

 その返答は俺にとってはかなり予想外だった。ホワイよりも強い奴もいる。それが衝撃だった。つまり純粋な悪にも面倒な敵がいるということだ。普通に考えて居てもおかしくはないのだが、今後この世界で生きていく上でその情報は厄介極まりないものだ。ホワイが実際に任務としてそれらに何回も対応しているということは、そういう手合いが異世界(ここ)では何人もいるということだ。前から思っていたことだが、異世界人のレベルは相当高いな。残っている大人化はあと四回だが大丈夫だろうか?

 あんまり厄介ごとに首を突っ込む気はないんだけど、何故かそれがフラグな気がするんだよな。

 

「ホワイよりも強いなんて、厄介な奴らもいるんだな。下手したらミリタリアよりも強いのもいるんじゃないのか?」

 

 そう軽く疑問を投げかけつつミリタリアの方を見ると、俺の言ったことなど全く気にする様子もなく口を開く。

 

「それはない」

 

 当たり前のことを当たり前のように言い放つミリタリアはまさに悠々自適な感じだ。

 

「未だにクリューは分かってないみたいだけど()はこの国どころか世界最強だよ。()でも面倒だなって敵は会ったことあるけど、それでも絶対に負けることはないし、()を倒せるとしたらそれこそ()自身じゃないと無理だよ」

 

 普段の俺なら疑っていたのだろうが、フレンチを食べた幸福感からかいつもの性格が少し、なりをひそめ嘘と疑うのが難しかった。

 そして何より俺がこいつはそうでもおかしくないと思えてしまったのだ。さっき山もめっちゃ壊してたし。更に言えばあの穴の空いた山をミリタリアは今度直すとかとも言っていた。どうやって?

 

「本当に?まぁいいや。ホワイ、今日は色々教えてくれたり店のこととかありがとうな」

 

 個室にするという配慮まであったわけだし、正直本当に助かった。だからこそ誠心誠意の感謝を込めて俺はそう口にする。

 それに続くような形でミリタリアも礼を口にする。

 

()からもありがと、普段は一人で食事をとることも多いけどやっぱりみんなで食べる方が楽しく感じるね」

 

 俺たちのそんな感謝の言葉を聞いて、ホワイは嬉しそうにする。そんな様子のままに口を開く。

 

「フッ、気にする必要はない。儂としても何の目的もなく、ここまでしたわけではないからな」

 

 そのホワイの言葉に対して当然俺は疑問を抱く。シンプルに祝う以外の目的があったと言うことだが、その狙いがわからない。もしかして今回色々やってくれたことの代わりに何かしてくれと言うことだろうか?それは別に構わないが、あまり無茶な内容なら流石に断る必要が出てくる。

 そんなことを考えて内に、その答えは発せられる。

 

「ついこの間、王女様とある少年が親睦を深めよう的イベントがあると小耳に挟んでな。儂にはどうにもそれがクリューソスのことに思えてならんのだが、どうだ?」

 

 まぁそれは十中八九俺だろうな。そしてそれを否定する意味も特にないと思うのでここは正直に答える。

 

「それは俺であってると思うけど、それがどうかしたか?」

 

 まさか王女様にイタズラしろとか言われないよな。少し子供っぽいところを持つホワイならそれはちょっと有り得そうだ。万が一そんなことをすればあの王様(親バカ)にまた抹殺命令を出されることになるので勘弁願いたい。

 

「いや何、その時に行く格好は決まってあるのかと思うてな」

 

 そう言えば特にそう言うの決めてなかったな。たしかクライアの屋敷にある適当な服でも着ていけばいいという話だったはずだ。ちなみに雑な方の適当ではなく、相応しい的な意味での適当だ。

 そんなことを考えていると、ホワイは話し始める。

 

「その様子だと、おそらく決まっておらんな。であれば儂からの願いは一つ。そこの二人、明日一緒にそのための格好を新たに店で見繕ってくるが良い」

 

 こいつは何を言っているんだろうか?馬鹿と一緒に買いに行けだと?ただでさえ頭のおかしさが限界突破しているのに加え、明らかに背丈に合っていない十二単を着ているファッションセンスの女と一緒に服を買いに行けだと。ふざけるのも大概にして欲しいものだ。

 

「ちょっと待ってくれホワイ、流石にこいつと一緒にそれは無理だろう。こいつの服装を見てそう言っているのか?」

 

 俺の疑問に対してホワイが答えるよりも速くにミリタリアがそれに反応する。

 

「ちょっと待ってよクリュー。()の服装が何だって!?完璧にベリーキュートな十二単でしょ。それに普段はこれだけどちゃんとした服装だってあるんだから!」

 

 そうやって手を振り回しながら抗議する様はまさしく子供だったがそれは言わない方がいいだろう。

 いずれにせよ、

 

「どうしてもやらないとダメか?」

 

 俺は最後に懇願するようにホワイに申し出るが残念ながら意思は固いようである。

 

「ダメだな。これは面白そうではないか」

 

 面白そうでこうされることは腹立たしいことこの上ないが、冒険者協会に着いた時から色々やってもらった恩があるから今回ばかりは受け入れるとしよう。

 

「しゃーないミリタリア、明日服買いに行くぞ。そういう店知ってるか?」

 

 俺がそうミリタリアに聞くと不貞腐れた様子からすぐに立ち直りこちらを向いて口にする。

 

「当然でしょ()が知らないことなんてほぼないわ。こうなれば仕方ないから明日はついてきなさい。とびっきり楽しい時間にしてあげるから!」

 

 いつもの自信満々な様子が今回ばかりは安心感さえ与えてくれる。まだ関わってから少しなはずのミリタリアにこんなふうに感じてしまう自分は、案外人と関わるのが好きだったのだろうか。もしそうだとしても俺にとってそれは凶にしかなり得ないんだがな。

 

 こうして俺とミリタリアが二人で買い物に行くことに決まったわけだが、これじゃまるでデートみたいで少し恥ずかしいな。まぁ歳の差どんだけだよ、と思わなくはないが、言えば誰にとは言わないがひとまず俺が絶対に殺される。そのため絶対にそんなことは言えない。

 

「まぁでもこれで本当に今日の話は終わりだな。もう解散でいいよな?」

 

 俺がそう言うと、二人とも頷き席から立ち上がる。それからホワイが会計を済ませて、俺たちはすぐさまにここを出る。

 そして明日俺と一緒に外出するにあたり一度家に帰りたいらしいミリタリアは、俺とは帰路が別になるらしく、俺は先に帰ることになった。子供一人で帰ることになるし平気かと思うかもしれないが、二人がいう分には子供状態でも俺は十分強いし、家に帰るまではミリタリアの因束の環眼(マティリアコスモス)で見守ってくれるらしいので、絶対安心とのこと。

 そして俺は子供の体だからか妙に眠気が強いこともあり、二人よりも一足先に帰ることにした。

 俺が一人先に帰るとき、二人はまだ少し会話していたが、特にそれに聞き耳も立てることもなく俺は帰って行った。

 

 

 ------

 

 クリューソスが儂とミリタリアのやつの元から離れて少ししたところで、話題が変わる。変えたのは儂からではなく、もう一人のミリタリアの方からであった。

 

「ずっとチラチラ見てきてたけど、何か話でもあるの?()も明日に向けて色々準備してとっとと寝たいんだけど」

 

 不機嫌そうにそう口にするミリタリアだったが、ひとまずそれを落ち着かせるよう口にする。

 

「なに、お前さんにとってもそう悪い話ではない。お前さんにいい相手を紹介すると言った話を覚えておるか」

 

 それを言うとミリタリアは思い出したかのように目を輝かせながらもこちらをのぞいてくる。普段からは考えられないほどの情熱的な視線に少し感じるものがあるがそれを口にすることなく、儂は話の続きを口にする。

 

「その相手なのだが、、、誰であると思う?」

 

 普通に教えてもつまらないために、問題形式で教えることを儂は決め、実行する。ミリタリアは少し悩んだような様子を見せた後、お手上げといった様子になる。

 

「そう聞くってことは()の知り合いなんだろうけど無理無理、思いつかないよ。というかそんなまどろっこしいしないで速く答えを教えてよ」

 

 そう言い急かすミリタリアだったが、儂はそれに屈することなく何も言わない。なぜ言わないのかといえば単にこのままでいた場合どうなるか気になったからに他ならない。

 

「何で何も言わないわけ?楽しんでるの?いや、、、もしかしたらその相手ってのが相当言いにくいの?だとしたら、、まさか()()()()の奴とか言わないわよね!?流石にあれはないよ!?」

 

 案の定変な方向に想像してくれたので面白い。さて、そろそろ本当に答えてやるとしよう。

 

「強さだけで言うのならお前さんに一番似合ってるのはそのファストであろうがな、奴では貴様同様人格に問題がありすぎる」

 

 儂のそんな返答を聞き、ミリタリアは僅かに身体を震わせる。そろそろ我慢の限界なのだろうがミリタリアは何とかそれを抑え、淡々と口にする。

 

「じゃあ誰なのよ。本当にそろそろ教えてもらいんだけど」

 

 儂はこれ以上勿体ぶるつもりもないので、その答えを口にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クリューソス・レーベン、、今日儂たちと共に戦ったあの男だ」

 

 

 儂がそう言うと、口をあんぐりと開けて信じられないといった表情を見せるミリタリア。そしてすぐさまに反論してくる。

 

「いやいやいや、え、クリュー!?流石にないない。だってあいつ口悪いし、()のことすぐ馬鹿にするし、まだまだガキだし、ラバダとセコンドに勝ったとはいえ()から言わせればまだまだだし、」

 

 そうやって反論し続けるミリタリアに儂はまだまだ話をし続けようとする。途中ラバダとセコンドがクリューソスに敗れたというビッグニュースがあったが、そのことについて深く追求したい欲求を何とか抑えて言葉を紡ぐ。本当に気になって気になって仕方がないが。

 

「儂がクリューソスを選んだのには大きな理由がある」

 

 その儂の言葉に対し、どう言う意味かと言う表情を浮かべるミリタリアにその回答を告げる。

 

「ミリタリア、お前さんはクリューソスという少年と話しているときいつも以上に自由そうに、そして満足気に見えた。まるで暗い過去を少しでも忘れたかのようにな」

 

 儂にそう言われるとミリタリアは自身の胸に手を当てる。女にしてはない胸など考えているとどこか嫌な感じがしたのでこの考えはやめておくこととする。

 

「別に今すぐなぜそうなったのかを知る必要はなかろう。だが、きっとあの少年はお前さんにとってキーマンとなるであろう、儂にはそんな確信がある」

 

 事実として出会ったばかりの少年なのにミリタリアは自身の過去を僅かでも話している。長い付き合いがあるからこそ分かるのだ。その異常さに。

 儂にそう言われたミリタリアは、少し考えた後、

 

「わかった、明日少しそこらへんを意識してみる。でも、クリューがそんな存在足りえるとは正直に思えないけど」

 

 そう言いミリタリアはお別れだといった感じで手を振った後、「さよなら」と一言だけ言うとすぐに目の前からいなくなってしまった。相変わらずのスピードだ。

 

 ミリタリアがいなくなった後、儂は一人脳内で思い返す。やはりどう考えてもクリューソスと話しているときのミリタリアの様子はいつもとは異なるものだった。どこか人を避けるために惚けていたそれが、人との会話を楽しむためのそれに化ていたような気がした。無論今までにもそういったことは数回あったが、クリューソスという少年がいるときは常にそうだった。下手をすればミリタリア自身が変わったのかもしれないとも思ったが、最後の会話を経て確信した。クリューソス・レーベンにはミリタリア・リオレス・サーナに強い影響を与えられる人間である。

 これが吉と出るか凶と出るかはそれこそ神のみぞ知るところだろう。どんな結末になるにしろ、できればハッピーエンドであることを。そして何より面白くあることを儂は願いながら帰路についた。

 

 

 

 しかしクリューソス、もしも本当にミリタリアに惚れられるなんてことがあって、甘えん坊になるなどあったら羨ましいにも程があるな。

 性格以外はいいところしかない女だからな、あれは。そんなしょうもないことも考える男、それが剛担な男ホワイ・ラックであった。

 

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