ー異世界への侵略者ー地球を侵略しにきたエスパー宇宙人、死して異世界へと転生する。超能力?何それ?強すぎ!!   作:ゼリアサイ8世

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2-14.「ミリタリアとの初デート」

 

 昨日ミリタリア達と別れてからの俺は、変に道草を食うこともなく屋敷に戻ると明日も外出する旨をクライア達に告てから眠りについた。

 子供の体ということもあり襲ってきていた眠気はかなりものだったので、思いの外すぐに眠りにつけた。

 

 そして今日、俺は特に夢を見ることもなく目を覚ますと、即座に部屋にかけてある時計を確認する。時計の時刻は七時を指しており、流石に今は朝であろうから正確な時刻は午前七時となる。待ち合わせの十一時まではまだかなりの余裕があった。俺が女子ならばこれでも身だしなみを整える時間が足りないと少しは焦ったかもしれないが、俺は男だし相手がミリタリアだ。さして身だしなみを気にし過ぎる必要はないだろう。

 ちなみにこの世界での時間は基本的には前の世界と変わらず二十四時間表記だし、その時間帯に対応する夜の暗さなども概ね前の世界と変わっていないと思われる。当然六十分で一時間であり、秒も同じような感じだ。

 

 しかし時間に余裕があるとはいえ、準備はできるならなるべく早くした方が良いだろう。ひとまず最低限の準備は整えないとな。そう思った俺は、まずベットから立ち上がると部屋の中の鏡の前へと向かう。そこであまりにもな寝癖や、服の皺などを整えると、そのまま俺は部屋を出る。そして廊下を通り、階段を降り、そしてまた廊下を通る。俺はとある部屋の前につき、その扉を開ける。

 中には長めのテーブルが一つだけあり、クライアとヘットの二人で話し合っていた。

 俺が扉を開ける音を聞くと、二人は会話を止めてこちらへと目を向けてくる。

 

「あぁクリューソスやっと来た。一緒に食べようと待ってたんだよ」

 

 そう言うのはクライアで、俺はそれを何となく部屋に入ったときから察していたので滞りなく返事を口にする。

 

「そっか、ありがとうおばあちゃん。別に待ってなくてもいいのに」

 

 俺がそう言ってやると悲しそうにしながらクライアは口にし始める。

 

「クリューソスと話せるのなんて滅多にないんだから、仕方ないわ。本当だったら昨日も今日も話しまくる予定だったのだからこれぐらい許してほしいわ」

 

 確かに昨日といい今日といい、俺は屋敷を出ていたからな。そしてその屋敷でゆっくり休めない理由は概ね一人の女に収束するのだが、原因が分かったところで改善できるとは思えないのでそれを考えるのは無意味だ。

 しかし腹立つことはできるので、やっぱり意味はあるのかもしれない。まぁ今日に限っては俺の事情が大きいのでアイツを責めすぎるのも良くないか。

 そんなこんなでクライアの主張を聞いた俺は納得の声を上げる。

 

「そっか。それは悪かったと思うよ。でもねおばあちゃん、それもこれも全部俺がしたくてしてるわけじゃないから。恨むならあの女を恨みな」

 

 俺はミリタリアに色々されているとすでにクライアには伝えているため、あの女が誰かは明確なはずだ。ミリタリアに全責任を押し付けるのもやや可哀想だがクライアとの関係を悪化させるのは今後を考えると悪手なため仕方ない。これでクライアも納得してくれるだろう。

 しかしクライアは俺のそれを聞いた後、それをすぐさま異議を唱える。

 

「流石にミリタリア様を恨むだなんて恐ろしいわ」

 

「それもそっか、これ以上待ってもらうのもだしとっとと飯といこう」

 

 クライアの反応に対し予想外ではありつつも納得を示した俺が話を区切り、そう言ったのはこの部屋と連結しているキッチン部屋から料理を持ったメイドが現れたからだ。それに頷くように、クライアとヘットは姿勢を正す。

 俺たちの前に置かれる料理はベーコンと目玉焼きという定番の朝ごはんだった。貴族の朝食としては随分と庶民的に感じるが、これは俺が子供だからという気遣いからだろう。

 

「「「いただきます」」」

 

 俺とクライア、それとヘットが同時にそう口にしたところで、食事が始まった。

 

 

 ------

 

 その後はクライアの欲求を満たすように会話しながら飯を終え、服装を事前に家から持ってきたもの中だったら一番似合ってる服を選んで着る。何故そんなおしゃれな服装をするかと言われれば一応男女のお出かけであるからだ。俺はおしゃれは自分のためではなく、相手に恥をかかせないためにする派だ。

 まぁあいつはそんなことも気にせずいつもの十二単だろうからそんなに気にする必要もないと言われればその通りなのだが、それでは俺が納得いかなかったのだ。

 それに最悪それをネタにあいつも弄れるし、全くの無駄にはならないだろう。

 

 そうして完全に服装も整えた上で、待ち合わせ十一時よりはまぁまぁ早めな時間である十時二十分に屋敷を出る。だいたい待ち合わせの場所まで着くのには十分程度だから、おそよ待ち合わせの三十分前にはそこに着くはずだ。小学生の如く移動の時間を一切考えずに十一時集合だから十一時に家を出ればいいやとか考えていそうなミリタリア相手にこんなに早く出る必要はないかもしれないが一応というやつだ。流石にそれは馬鹿にしすぎか?、、、いや、そうでもないか。

 それに仮にそうだとしてもあいつは瞬間移動的なのをできるからな。それを考えると冗談抜きで待ち合わせギリギリに来てもおかしくはなだろう。

 

 そうして色々と考えている内に待ち合わせの噴水近くにまで着いたわけだ。人はそこそこ疎らにいるものの、やはりミリタリアはまだいないようだ。

 俺は近くにあるベンチに腰掛けてミリタリアを待つことにする。まぁミリタリアが早めに来る人間かは「お〜い」置いておいても流石に三十分前は早すぎるのでいなくて当然「無視するな」なので文句はない。

 ミリタリアの奴は昨日一回家に帰るとのことだったが、あいつが一体何の準備をするというのだろうか?財布の準備「ちょっといい加減怒るよ」などだろうか?

 一応今日の買い物用にクライアからは相当の現金(ファイ)を渡されてはいる。俺としては都合よく昨日得たばかりの依頼金があるので大丈夫だったのだが、クライアが「おい」それでは納得がいかな気だったので仕方なしに受け取った。が、もしかしたらアイツに奢ってもらえるのかもしれない。でもアイツなら「死にたいの」割とマジでそれを理由に後から色々言ってきそうだよな。奢られた恩を返せ〜って、見返りを求めたらそれはもはや奢りではないような気がするのだが実際どうなの「いい加減にしてよ!クリュー!!!」

 はぁ、、さっきから隣がうるさくて仕方ないんだが。いい加減反応してやれよクリューさん。ん、、クリュー、それってまさか、、、それにこの声。

 

 俺は嫌な予感を抱きながらブリキのロボットがしそうな動きのようにガクガクと首を曲げる。ようやく隣の人物を視界に入れるとそこには腹を立てているのが丸わかりな表情の可愛らしい少女がいた。

 

「ミ、ミ、ミリタリア!?」

 

 嫌な予感そのままにそこにいた少女とはミリタリアであった。俺は予感していたとはいえそれが事実であったことに驚く。

 どうやら俺よりも先にミリタリアはいたようだった。そして俺が何よりも驚いたのはミリタリアがいたことではなく、さらにその先だった。

 

「何?そんなに変なところでもあった」

 

 ミリタリアは怒った表情から一変して不安そうな表情になるので俺はその答えを慌てて口にする。

 

「いや、変っていうーか何というか、お前どうしたんだよその格好」

 

 そう、俺が何よりも驚いたのはミリタリアの服装だった。いつもの見慣れた背丈に合わぬ十二単ではなく白いワンピースに麦わら帽子という格好をしていた。サイズも体型に合ったものだ。そして一応言っておくが某海賊漫画は関係ないからな。

 そんないかにも少女らしい格好をミリタリアはしており、普段とのあまりの違いにおれは驚きを隠せなかったわけだ。

 それに加えて今回のミリタリアは髪型も普段とは異なっていた。昨日まで腰にまで伸びた長い髪束ねずにいたのを、今日はポニーテールで一つに束ねていた。麦わら帽子はポニーテールとぶつからないように後ろだけ穴が空いているようなものを使っているようだった。

 そのあまりにもいつもと違う姿では初めに俺が気づかなかったのも無理はないだろう。、、いや、流石にそれは言い訳だな。

 

 しかし改めてこいつを見てみるとかなり可愛らしい顔つきであることを再確認させられる。俺は王女様に会う前にこんな美少女と顔合わせまくって肝心の王女様に会うときに平気だろうか。王女様が美少女と聞いて多少なりとも期待を抱いているのは、俺が男だとか関係なく人間の(さが)であろう。露骨にミリタリアの顔の方が上だなといった表情にならないだろうか。

 男としては顔に優劣をつけるような思考をしていることは最低だが、そんなことを気にする余裕も目の前の女の美貌のせいで吹き飛んでいた。

 

 ミリタリアは俺から格好について疑問を持たれたことに嬉々としながら答える。

 

「いいでしょ〜、びっくりしたでしょ〜!だって超絶可愛んだからね」

 

 座っていたベンチから立ち上がり、その場で回転しながらワンピースをフリフリとたなびかせるミリタリア。普段の俺なら大したことないとでも言いそうだが、今回のミリタリアの姿そのものが俺にそう言わせるのを許させない。誰に何かを言われたわけでもないが何故だかそんな気がしたし、俺としても不思議と嘘は言いたくはなかった。

 

「まぁ良いんじゃないか。俺はファッションとかあんまりだけど正直似合ってると思うぞ」

 

 子供っぽくて、というのは思っても口には出さずにそう答えた俺を見ながらミリタリアは嬉しそうに顔を綻ばせる。

 いつも以上に幼く見えるからかその分特に笑顔が似合っていた。

 

「当然!それとクリューの方も似合ってるじゃない?今まで見てきた服達の中だったら一番だと思う」

 

 こいつからのそういった素直な称賛は不思議と嬉しいものがあり、俺もミリタリア同様笑みを浮かべる。

 

「そうか、ありがとな」

 

 俺が一言礼を言うのを皮切りにミリタリアはいつもの調子で話し出す。ついでとばかりにミリタリアは再びベンチに座る。

 

「ところで〜、クリュー女の子を無視するし待たせるしで今の所いいとこなしだよ〜。そこらへん分かってるの?こんなのが相手じゃ王女様もがっかりかもね〜」

 

 妙に伸ばし棒を使いまくるミリタリアだが、言っていること自体は正しいと言えるだろう。俺がミリタリアを無視したのも、一応先に到着していたっぽいミリタリアを結果的に待たせたことも事実だ。だが、こいつ相手に俺がそのままそれを聞き逃すのも癪なので、俺はその発言に対して言い返す。

 

「待たせたことに関してはお前が勝手に早く来すぎただけだから謝る必要はないし、無視したことに関してもその変わり様では仕方ないだろう。お前は昨日倒したオークが犬に生まれ変わって現れてもそれを信じられるか?」

 

 そんな俺のあまりもな言い分を聞き、当然ミリタリアも黙ってはいられない様だ。

 

「非を認めるどころかそこまで言うの!?まぁそれでこそって感じだけどさ。でも本当にその感じはいけないわよ。王女様と会うんだから」

 

 ミリタリアは真剣な表情でそう言うが、俺はその様子をとてもじゃないが信じられなかった。だってあのミリタリアがまともかつ人を心配する様な発言をしているのだから。正直今までも何回かミリタリアを少しはまともな人間であるかもと思う事はあったので、それに対する驚きは徐々に弱くなりつつあるのだが、そのような事と事の間でのミリタリア節をくらいすぎるが故に毎回毎回驚いてしまうのだ。

 

「分かってるよ、そんなことは。お前にだけだよ、ここまで言うのは」

 

 俺がそう言ってやるとミリタリアは二人で座っていたベンチから嬉しそうに立ち上がり、振り向き様に俺に対して口にする。その表情は天使の様にも小悪魔の様にも見えた。なんで少し喜んでるんだこいつは?

 

()もクリューだけだよ、こんなことを言いまくるのは」

 

 勢いよく立ち上がった上に振り返ることでかなり揺れたポニーテールのことなど気にも止めず、俺はミリタリアの表情に見惚れていた。

 そして行くぞと言った様子で歩き始めるミリタリアを見て、俺は直ぐに呆けているのをやめて無言のままついて行った。

 立って回って座って立って歩き始める。ミリタリアは相変わらず騒がしいやつだと思ったのだった。

 

 それと前言撤回、なんで喜んでるのかはよく分かった。

 

 ------

 

 それから俺はミリタリアに連れて行かれる様にして歩いていたわけだが、道中ミリタリアがやけに積極的に話しかけてきた。元よりお喋りではあったが昨日以上に話しかけてきた。まさかさらに先があったとはな。実はまだまだそういった部分を隠していたりするのだろうか。()はあと何回変身を残しているとか正直に言って欲しいわ。、、いややっぱいらんわ。

 

 しかし会話自体は昨日よりもスムーズかつそこまで腹立たしいこともないことが増えた気がする。お互い気遣える様になってきたのが大きいんだろうな。仲良くなったから気遣うとか普通逆では?俺もそう思うがそれが俺とミリタリアの関係性なのだから仕方ない。

 そうして会話を続けていた中、一つ目の目的地についた様でそこで俺とミリタリアは立ち止まると、ミリタリアがすぐさま中に入っていくので、また後を追う様にして俺も中に入る。

 そこは所謂ファストフード店であり、中ではポテトやハンバーガーの匂いが漂っていた。とはいっても地球のハンバーガーチェーン店のようにレジで頼んで商品を待つのではなく、席に座って注文して持ってきてもらう、よくある後払いタイプのお店の様である。

 

 俺とミリタリアは席に座りメニューを見て各々何を頼むかを決める。お互いが決まったことを確認してから店員を呼び、注文した。

 それから少しして料理が届く。

 

「ミリタリアのバーガーも美味しそうだな」

 

 俺がそう言うミリタリアのハンバーガーは所謂チーズバーガーでレタスやキャベツ、牛肉のパティにトマト最後にその名の通りのチーズという感じだ。

 

「そっちのも結構美味しそうだけどね」

 

 ミリタリアは俺のハンバーガに対してそう言ってくれる。俺のはテリヤキバーガーで照り焼き味のパティにレタス、そしてマヨネーズが入っている。

 

「初めて行く店って普通のハンバーガー頼むものじゃないの?」

 

 ミリタリアは俺にそう尋ねてくるが、それには納得しかねる。

 

「分かってないなミリタリア。全バーガーの中で一番美味しいのはテリヤキバーガーだと決まりきっている」

 

 今の発言から分かる通り俺が一番好きなハンバーガーはテリヤキバーガーなわけで、前世でも普通のハンバーガーはテリヤキバーガーと出会ってからはほとんど食べていない。

 

「別に決まりきってないと思うけど、、それもいいんじゃない」

 

 ミリタリアは俺の言い分に特に大きく反応することもなく認めてくれる。ついさっきも思ったけどホントにこいつってここまで物分かり良かったっけ?すぐさま人に噛みついていた気がするんだけど。

 

「クリューは()が落ち着いてるなんて信じられないって思ってるんでしょ」

 

 見事に俺の考えを言い当てられ驚いているとミリタリアは続け様に口にする。

 

「まぁ普段の言動に僅かながらでも問題があるのは()自身分かってるからね。味がなくならない範囲で問題点を消していこうとしてるんだ。今日はそれをより強く意識してるだけ」

 

 これを聞いていよいよ俺は確信する。こいつのことを馬鹿だ馬鹿だと思っていたがそうではないということに。これなら案外本当に先生としても悪くないのかもしれない。まぁまだまだ改善の余地はありすぎるから全然ダメではあるけれど。

 

「良いんじゃないかそれを自覚してるってだけで。俺は何となくだけど、お前はやれば出来るやつだと感じてる」

 

 まだまだ短い付き合いであるのに何故だかそう確信できた。それを素直に受け取ったミリタリアは少し照れながら口にする。

 

「そ、そう、ありがと」

 

 ここで俺は一旦この話題をやめようと別の話題を提示することにした。

 

「ところで、話は変わるんだがミリタリアは飼うなら猫か犬どっちだ?」

 

 あまりに違う内容の話題に少し驚きつつもミリタリアは答える。

 

「相当話が変わったね〜。それはそれとして犬か猫か、ね。やっぱり犬じゃない?猫って何か生意気な感じがするしワンちゃんの方が甘えん坊って感じで可愛いじゃない」

 

 ふむ。ミリタリアは犬派だったか。ならばそれは俺にとって、、、

 

 

「やはりミリタリアとはハンバーガーといい好みが合いそうにないな。残念ながら俺は猫派だからお前のそれには共感できないな」

 

 俺がそう言うとミリタリアもこの議論に対して本気になったのか少し早口気味に話し始める。

 ここから俺たちの白熱のディベートが始まる。

 

「クリューは犬の魅力がわからないって言うわけ。それはちょっと感性が狂ってるとしか思えないんだけど」

 

「その短慮な思考しかできない様な奴が犬派になるんだよ。犬に何故魅力を感じないのかではなく、相手の方がおかしいと考える。自身の考えを少しも疑えない典型的な阿呆な思考だ」

 

「へ〜ヘ〜!言うじゃないクリュー!何が嫌いかより何が好きかで自分を語れよってこと?じゃあそこまで言うんなら何で猫が魅力的なのか、あるいは犬が魅力的じゃないのか。それらをクリューは論理的に説明できるんだね。すご〜い」

 

「煽るしか脳のないお前には無理な話だろうけど良いよ、教えてあげる。せめて理解だけはしてくれよ。まず犬ってのは人間に好意的なのではなく人間に気に入られようとしているだけに過ぎないと気づいた方が良い。人に愛されれば色んなことを肩代わりしてもらえると理解した、謂わばヒモ男のようなものなんだよあれは」

 

「それは偏屈に捉えすぎでしょ。仮にそうだとしてもそれはペットなら全部そうでしょ。逆にクリューはペット自身に全部やれって言うわけ?中々にクソ飼い主だね!」

 

「犬はその中でも群を抜いてるって話なんだが。人の考えを知ってるかのように言うのはやめてもらって良いか?」

 

「大体犬が飼い主に甘えてるって言うけどさ、何も行動せずにじっとしたりしてばっかの猫の方が甘えてるって言えるんじゃないの?」

 

「違うな、猫は自分から愛されに行こうとしないだけで愛されようとしないわけではない。飼い主の好きなタイミングで好きなだけ愛でてねというのがあの行動の意味合いだ。対して犬といえば触れ合いたくもないタイミングで近づいてきては吠え散らかす。挙げ句の果てには散歩まで求めくるなど良いとこなしじゃないか。比べるまでもなく、話はついている」

 

「あ〜そうですか!はい、そうですか!じゃあ犬のダメなところはわかったから猫のいいとこをもっとしっかり言いなさいよ!」

 

「ふむ、一つの方向性にだけに捉われずに議論できるとはやるじゃないかミリタリア。さて、その質問に答えるとするなら俺が思うにその生き様だな」

 

「生き様?」

 

「あぁ生き様だ。猫ってさっきも言ったが積極的に色々はしてこないだろう?その孤高な感じ、これが良い」

 

「そうかな〜。それはちょっと納得いってないよ、()

 

「そうか?要はお前と同じく生意気っぽく見えるけど、その実どこか落ち着いてるところもあって、それが可愛らしくて愛せるってことなんだが」

 

 かなりの量の言葉を交わし合った末に、俺はそう口にする。今言ったのはちょっとした言い合いになっていたこともあり、深く考えずに発した本心だった。

 

「へ!?、、今()のこの感じが可愛らしいって、、、!?」

 

 今までもミリタリアの容姿を少しだけ褒めたことはあった。でもそれは呆れながらだったり、反骨精神が混じったものが多かった。しかし今回は本心を一切別の思考が混じることなく発し、それを感じ取ったのだろう。今までにない反応をミリタリアは見せた。まぁ今までといってもミリタリアと知り合ってからまだ二日ぐらいなんだが。

 ミリタリアは俺からのそんな素直な称賛を受けて素直に笑みを浮かべるのではなく、少し頬を赤らめて顔を逸らしていた。これは間違いなく照れているのだろう。自分から世界一可愛いとか言ってる奴とは思えない様子だ。

 

 それはそれとして正直俺も今発言を思い返してみてかなり恥ずかしかったりしている。それこそミリタリアが適当受け流してくれていれば俺も特に気にすることなくいれただろうけどこんな反応されるとな。

 こうなると俺としても言ったことを意識せざるおえないし、この様子だと撤回もしにくいんだよな。となると新たな事実を付け足すしかないか。

 しかし本当にそれで良いのだろうか。せっかくミリタリアがこんな反応をしているのだからそれはそれで良いのではないか?

 

 はっきり言ってこの姿は可愛いし」

 

「はんにゃ!?」

 

 般若(はんにゃ)?急に何を言ってるだコイツは。俺の顔は般若みたいだとでも言う気か。せっかく褒めてやったのに貶すとは良い度胸だな。

 

「どうしたミリタリア、自慢の可愛らしい顔が赤くなって崩れているけど大丈夫か?」

 

 そう意地悪に言ってやると元々定まってなかった目線が更に泳ぐ。それを見て俺は妙だなと感じていた。元々おかしかったが、違うベクトルで今はおかしいぞ。こいつならここまで精神を乱されることはないはずだってのが俺の見立てなんだけどな。仮にもホワイよりも長生きして年の功があるのだから、ここまでウブなのは想定外というものだ。

 俺はそれがたまらなく不安に感じ、先ほどまでの意地悪な口調を止めてミリタリアに語りかける。

 

「お前本当に正気か?さっきまでの感じはどうしたんだ?というか今日全体的に落ち着いているのも理由を聞いたとはいえやっぱり無理してるんじゃって気になるし。いやもうそこらへんはどうでも良い。お前、体調悪いならちゃんと言えよ」

 

 咎めるようにそう口にすると真っ赤にした顔を少しづつ落ち着かせながらもミリタリアは返答した。

 

「いや、その、別に体調が悪いとかではないんだけど、、、魔法があるからそこら辺は平気だし、、ただその、、、なんというかしら、、」

 

 どこか歯切れの悪そうなミリタリアだが一応体調が悪いというわけではないという返答をいただけたので一安心だ。

 

「そうか?なら良いんだけどな。本当に悪くなったら遠慮せずに言えよ。もう俺にとってお前は大切な、、、」

 

 友達のようなものだと言おうと思ったが止めておくことした。以前雪影家で過ごしていたときに家族と思い込むのを止めるようにしていた様な後ろめたい理由とは異なり、今回に関してはまだ友達と言い切れるのか疑問に感じたからだ。

 仲だけでいえばそれなりに深まったとは思っている。それこそ普通の友達以上に。でも残念ながらミリタリアの方がそう思っているのか分からない。こいつにはテレパシーが使えないから俺に対する感情の判別は実際に話して判断するしかないし、こいつの言動は一見おちゃらけていて友好的に見えるが他の人達との会話を聞く限りコイツの場合それがデフォルトだからな。俺の初対面時も抑えていたとはいえ既にアレだったし。

 だからコイツの方からすれば特に何も思っていない人付き合いの一つに過ぎない可能性もあるわけで、だからこそ俺の一方的かもしれないこの考えを伝えるのは止めにした。無論それらの問題を解決しても呼ぶ資格があるかは疑問ではあるが。

 

「、、まぁいいや」

 

 俺はミリタリアにそう告げるが納得がいかないのかミリタリアが声を荒げながら口にする。

 

「いや、そこまで言われたら()だって気になるんだけど!大切な何なのよ!?」

 

 せっかく色が元に戻りつつあった頬を再び赤らめながらミリタリアはそう言ってくるがかなりの大声だったので周りの客たちも何事かと見てくる。

 

「いや、本当に何でもないから気にすんな。それとミリタリアうるさい」

 

 俺がそう叱ってやるとようやく自分の大声に気づいたのか更に顔赤らめながらしおらしくなる。

 

「だってさ、、クリューが急に色々いうからじゃん」

 

 ミリタリアのその悲しげな様子を見て流石に申し訳なくなってくるので再び話題を変えようと俺は話し出そうとする。ついでにいえば俺もミリタリアの反応を見ていて何だかこっ恥ずかしくなってきたからである。

 

「悪かった、悪かった。それで何でこんな話になってるんだ」

 

「知らないわよ。クリューがそうしたんだから」

 

「え〜俺だけが原因か?しかし元々何の話してたんだっけか」

 

「それも知らないわよ!」

 

 そんなふうな会話を終えた後、俺はミリタリアの大声もあり集まっている視線が気になるためそろそろここを出ることを提案することにした。

 

「そうか。ならちょうど良いな。ここいらで一旦話はやめて本題の服を買いに行くぞ」

 

 ミリタリアにそう言ってやると特に異論はないようで、俺に続くような形で二人で席を立って会計を済ませてから外に出る。ハンバーガーはお互い知らぬ間に食い終わっていた。

 

 ------

 

 ミリタリアと俺が隣りで並びながら歩き続ける。ちなみに服屋に関してはミリタリアがおすすめの店を知っているらしくそこに向かうことになっているため、俺が案内される形となっている。

 昨日までの俺なら十二単しか着てないくせにちゃんとした服なんて買う場所知ってるのか?と思っていたところだが今日の格好を見させられてはファッションセンスを疑い続けるわけにもいかない。俺は多少の不安と多大な期待を抱きつつミリタリアについて行っていた。

 

「ねぇクリューは王女様と会ってどうするの?」

 

 歩いている中ミリタリアはそんなことを聞いてくる。

 

「どうするって別に、普通に話して仲良くなるだけじゃないのか?」

 

「そういうんじゃなくて王女様と仲良くなって何がしたいの?わざわざ領から出て王女様と会うことを了承したのは何で?」

 

 あぁ聞きたかったのはそれか。まぁ別にこいつ相手なら素直に答えてしまって構わないだろう。

 

「深い理由はないが主に二つだな。一つは王都に行ったことがない俺に巡ってきたようやくのチャンスだったから。そして二つ目に美少女って言われる王女に少なからず興味があったからだな」

 

 比重で言えば前者の方が大きく、更に言えばその前者の理由は王都の図書館に行けるからという理由ありきのものだ。そして後者の方、これはおまけ程度であるが嘘ではない。ちなみに三つ目として当初は王様の決定に刃向かうなんてあり得なかったってものある。しかしこれはガレスに話を持ちかけられた時に了承したことには関係ないので今回は省いた。ガレスはそこらへんの事情隠したまま俺に伝えてきたからな。

 

 そんなわけで俺がミリタリアの要望通りに二つの理由を包み隠さず伝えると、ミリタリアは何故か不機嫌そうにしていた。俺の理由に納得がいかないとでもいうのか。

 

「ふ〜ん、それじゃ二つ目の理由に関してはちょっと価値が落ちたかもね。王女様は美少女だけど()ほどじゃないもの」

 

 あぁ、そういう感じか。

 

 今の発言から分かるのはミリタリアの価値観じゃ王女様はミリタリアほどの美少女じゃないとうことか。平均して顔が良い異世界といえどミリタリアレベルがそんなにいたら気持ち悪いのでそれは良いが。

 

「まぁお前ほどとは俺も期待していないさ。でも王女様は性格面がお前と比べて良いかもしれないからな。総合的に見てお前を超えることを期待する」

 

 俺がそう言うとミリタリアは更に納得いかなそうな表情となる。流石に面と向かってそれを言われればその反応も納得ではある。

 

「クリュー、それじゃ()の性格が悪いみたいじゃない?言葉遣い気をつけた方がいいよ?」

 

 いや、そう言っているんだが?

 

「いや、そう言っているんだが?」

 

 あまりにも当然なことに内心をそのまま吐露してしまったがそのことにミリタリアは更に怒ったようだ。

 

「む〜!何でそう言うこと言うかなクリューは!せっかく良いやつかもと思い始めていたのに」

 

「事実だからな。というか良いやつと思い始めてくれてたんだな」

 

 さっきは友達発言を言わずにいたがもしかしたらミリタリアもそう思ってくれてたりするのかもしれない。

 

「まぁ、、何かクリューって話しやすいんだよね。何言っても許してくれてる感じがするっていうかなんて言うか」

 

 少し気恥ずかしそうにしながらそう言い放つミリタリだったが、俺はそれに頷くわけにはいかない。

 

「別に許してるつもりなんてないが。これほど嬉しくない話しやすいって評価もないぞ」

 

「だ〜から〜!何でそう言うこと言うのかなクリューは!」

 

「だから、事実だからな」

 

 そんな風に言い合っている俺たちだったが、ミリタリアはそれから話を戻すように改めて先程までの続きを口にし始める。

 

「でもさクリュー、さっき総合的に見て上なら良いって言ってたけどさ、それは無理だと思うよ?」

 

「ん?」

 

 どういうことだろうか?まさか性格面では王女様もまずいだとか?いや、あの親バカな王様がいるくらいだ。ある程度はちゃんと愛せる娘なはず。となればアレか、ミリタリア恒例のお笑い自己評価か?

 いや、親バカだからこそ何もかもが望み通りで傍若無人と化している可能性もあるか?

 、、、やはりミリタリアが自身の性格について誤った評価を下している可能性が高いだろう。自身の性格は完璧という誤った性格診断の結果、王女様の性格は良いのに相対的に見た時に自分より下と考えているパターン。ちょっとはミリタリア自身に問題があると捉えてはいるようだが、それでもミリタリアの自己評価が高いのは間違いないだろう。

 そんなことを考えているとその真意がミリタリアの口から告げられた。

 

「だって総合的にってことは強さも入るんでしょ。だったら()が負ける道理はないと思わない?」

 

 そう言い放ち、いつもの自信満々な表情を見せるミリタリアだった。やはりこの顔がミリタリアには一番似合う気がする。

 しかし強さ、か。確かに一つの指標としてなくはないのだろう。だがそれを求めるのは戦闘狂のやつだけではないだろうか?別に女性はか弱くあるべきだという考えではないが、強くあって欲しいとも思っていない。強かろうが弱かろうが構わないという意味だ。

 だから強さという点は俺の求める女性の条件に入ってはいない。

 

「確かに総合的と言ったらそうも考えられなくもないけどな、強さって別にいらないだろ」

 

 そう言うとミリタリアは自信を溢れ出させていたその表情から真剣なものへと変わる。付随するように雰囲気も少々堅苦しいものへと変化する。

 

「それは違うわクリュー。いい?弱いと死ぬの、愛している人に先立たれたくないなら愛す人は選びなさい」

 

 そう説くような様子のミリタリアは、それこそ本当に子供に色々と教える先生のように思えた。

 だか、俺にはそれ以上にミリタリア自身に対してそう言っているようにも聞こえた。

 

「そしてそれは愛す側にも生じる責任でもある。思い人を作るなら絶対に死んじゃダメ」

 

 ミリタリアがそう言い終わり、どこか空気の重いまま俺たちは進んでいく。そこからはお互い特に会話をすることもなく店に着いた。

 

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 店の中は本当に色々な服が売っており、俺はそれらを見物しようとするも、ミリタリアが押し込むようにして試着室へと俺を入れる。

 

 自分が持ってくるから待ってろと言ってくるので、俺は大人しくそれに従うことにした。ミリタリアおすすめの店ということもあり、店内にあるものに関して俺よりも詳しく、探し上げるのも早いだろうからな。まぁ男物だし体格も違うから普段買いに行ってるコーナーとは大きく違うだろうけどそれでもだ。それ以外にもミリタリアが選ぶ服も少しだけ気になるというのもある。

 そうこうしているうちに持ってきてくれたようでミリタリアから声がかかるので俺はそれに返答する。

 別にまだ着替える前なのでカーテンは開けっぱでも良いのだが周りから着替えもしてないのに試着室を使ってるのを見られるのが恥ずかしくカーテンを閉めていた。そのためミリタリアが俺に声をかけるというアクションが必要になったというわけだ。

 どんな服だろうか。やはり偉いとこのパーティーなので黒スーツとかだろうか?

 

 俺は試着室のカーテンを開けるとミリタリアがいるのでその手にある服を見る。

 

 その服は金色を基調としており周りにはカラフルな装飾がされており、羽などが生えており胸元は大きく開いていた。

 

「どう?これぞ究極の「殺すぞ」

 

 それなりの時間探してもらった上でようやく決めたのであろうおすすめの服を自信満々にをを提示してくるミリタリア。そんなミリタリアに俺はそんな暴言を吐いてしまうが今回ばかりは仕方ない。だってコイツが持ってきたのは所謂サンバ服のようなものだったからだ。やっぱりコイツに任せたのは失敗だったのかもしれない。

 俺はかつての自分を恨んだ。

 

「もういい、自分で選ぶから」

 

 いくら異世界とはいえ流石にサンバ服が正装なわけはないのでそんな服を渡してきたミリタリアに俺は腹を立てながら試着室を出ようとする。しかしそれをミリタリアが慌てて静止する。

 

「ま、ま、待って!ちょっと一回ふざけただけだから!本気じゃない本気じゃない!」

 

 そう早口で言うミリタリアは俺にそう言うと、俺から見て死角に当たる位置から新たに服を取り出す。それは二つあり右手には紺色のスーツ、左手には白色のスーツがあった。

 

「はぁ、初めからそうしてくれよ。それにしても結構奇抜な色のスーツ達だな」

 

 普通スーツといえば黒、あってもグレーとかだろうに。まぁ別に紺も白も黒よりは劣るとはいえスーツとして無いという色では全然ないんだけど。イメージとはやっぱり違うからな。

 特に白なんてのは新郎みたいでなんか恥ずかしい。

 

「そう?結構普通寄りのカラーにしたつもりだったけど」

 

 まぁコイツほど奇抜な奴からしたら黒ってのは普通すぎてあり得なくて、次点のやつが普通扱いになっているのだろう。だからこれらを持ってきたのだろう。別に真の意味での普通でいいのに。

 まぁでもそれ程酷い色でもないし、せっかく選んでくれたのだからこの二つから選ぶとしようか。

 

「とりあえずこの二つってことでいいんだな?じゃあとっとと渡してくれ」

 

 そう言うとミリタリアは俺にそれらを渡してくれる。ついでに内にきるシャツやネクタイ、ベルトなどもだ。これらは一つしかないのでミリタリアの中で既にもうこれと決めてしまったようだ。

 いざ持ってみると俺はスーツが非常に小さいこと気づく。今の俺の体格は子供なのでそれは当然なのだが、前世でスーツといえば大人が着ていてそれなりのサイズがあるものだったので少々違和感を感じたのだ。

 

 そして俺はカーテンを閉めてからその二つのうちの一つ、白色のスーツの方を一旦試着室の服をかけるところに置いておき、紺色のスーツを着込むことにする。もちろんシャツやネクタイなんかも着けてだ。

 その際自前の服は試着室の地面に置いておくことにした。

 着替え終わった俺は、カーテンを開けミリタリアに見せるよりも先に試着室内の鏡で姿を確認する。

 悪くないのではないだろうか?まだまだ子供ということもあり小学校のお受験をした子供みたいに見えるがこちらの世界ならそういったこともないだろう。

 そうして自分自身で確認した後、カーテンを開けミリタリアに見てもらうこととする。

 

「へ〜、良いんじゃない。それにやっぱりクリューの緑髪を際立たられてる。それじゃあ次、行っちゃって!」

 

 俺の髪はチルマーと同じ緑色であるが、ミリタリアがまさかそれを考慮して服を選んでいたとは。もしかしたらさっきの普通じゃないのを選んだという俺の考えはのは違ったのかもしれない。

 内心少し申し訳なく思う中、俺はまた着替えるためにカーテンを閉めた。

 

 特に何か言うこともなく、紺色のスーツを脱いで白色のスーツに着替え終わると俺はまた鏡を見る。

 新郎感があって嫌だなと最初は思っていたが、子供だからか正直あまりそうは感じなかったのでシンプルにありだなと思えた。そう思えたのはミリタリアが先程言っていた髪色との調和がこちらの方ができていると感じたからだ。

 今俺が決めるなら紺よりも白だなと思ったが、やはりせっかくなのでここまできたらミリタリアに決めてもらいたいものだ。

 そう思い俺はカーテンを開く。ミリタリアはすぐさまに俺の方を見た。

 

「お〜!うんうんさっきよりも良いんじゃない?かなりかっこいいと思うよ」

 

 そう素直に称賛されると照れるが、悪い気はしない。

 

「その反応を見る限りだとやっぱり紺より白か?」

 

「うん。少なくとも()はそっち派かな〜。でもクリューが決めるべきだと思うよ」

 

「いや、俺は元々余程のことがない限りお前に従う気でいたし、今回に関しては俺も同意見だからな。白で決まりだ」

 

 まぁその余程なことというのがあのサンバ服だったわけだが。まさかいきなり出鼻をくじかれるかの如くあんな服渡されるなんて思ってもなかったからな。一応おふざけだったようなんだが、ミリタリアならやりかねないという変な信用もある。

 

「んじゃとっとと元の服に着替えるとするわ」

 

 そう言いカーテンを閉めようとした俺に待ったをかけたのはミリタリアだった。

 

「ちょい待ちだよクリューソス!一体いつから()が持ってきた服が二着だと錯覚していた?」

 

 ミリタリアがそう言うと言うことはまだ他の色のスーツもあると言うことだろうか?まぁあっても精々二着かそこらだろう。

 しかしコイツはなんでそのネタを口にできるんだ?今までもそうだがコイツナチュラルパロディしすぎだろう。絶対知ってるだろと言いたいが、一応転生者じゃないんだよな。本人の言うことを信じるのならだけど。テレパシー使えないから嘘か本当かわからないのが辛い。俺的意味不明な人間ランキング堂々の一位ではあるからマジで知らず知らずで口にしてそうなんだよな。

 

「マジか。じゃあずっと試着室使ってるのも悪いから早く渡してくれ」

 

 俺がそう言い、渡すように手を伸ばすとミリタリアはチッチッチと指を振る。何事かと思うとミリタリアは口にし始める。

 

「は〜。クリュー、一体いつから()が持ってきたのがたかが数着で更に紺や白ではないと錯覚していた?」

 

 もう良いよそのネタ、と思いつつも考え始める。こう言うということはもしかしたらとんでもない量のスーツがあるのかもしれない。

 それに色については俺の考えなんて特に言ってないはずだが当てられるとはな。ミリタリアはそういった能力は意外と高いのか?

 

 そうして考えているうちにミリタリアは数えるのも馬鹿らしくなる程の白スーツを死角から取り出してくる。ちなみにそれらは浮いており、おそらく魔法を使用しているのだろうと分かった。というかこんなに白スーツがあるということはミリタリアの中で白スーツなのは決まりきっていたのかもしれないな。

 

「ふっふっふっ、白って二百色あんねん」

 

 俺が先程ミリタリアの言うことには従う気でいるという発言から逃げることはもはや許されず、仕方なくこのゴールの見えない数の量を試着することとなった。それはそうとやっぱこいつ異世界人だろ。

 ちなみにミリタリアがこんなにもたくさんの白スーツを持ってきたのには白色の中でも違う色がある、というだけでなく形や素材が同じ白スーツの中でも大きく異なるためこだわった方がいいという理由らしい。

 さらにスーツが決め終わった後にはネクタイやシャツまでこだわりたいと言い出す始末。

 異世界といえど女子というものはやはり服装などをかなり気にかける生き物なようだ。それは例外の権化であるミリタリアでさえ同じだったようだ。。

 

 それから数時間かけて試着し尽くした俺達だったが、途中店側に迷惑なのではと店員に聞いてみたが、ミリタリアがお得意様ならしく快く許してもらえた。許してもらわなくて大いに結構だったが許されてしまったものは仕方がなかったのだ。

 それはそれとして店員さんがどこか温かい目でで俺達のことを見ていた気がしたがあれは何だったのだろうか?温かい目で見守ることが商業的に意味があるというデータでもあるのだろうか?

 

 まぁそれは置いといて結局試着を終えた後ミリタリアが決めた白スーツ一式(いっしき)をミリタリアに買ってもらえることとなり、奢ってもらう形となった。別に買えない額でもなかったので平気だったのだけどな。ミリタリアが納得しなさそうだったので仕方なかったのだ。まぁミリタリアはお金をたくさん持っているであろうことが簡単に想像できるから俺も遠慮はいらないか、とあまり深く考えずに受け取ることにした。

 こうなってしまっては何時間も試着させられた文句も言えないと言うものだ。まぁ初めから文句なんて言う気はないんだけどな。元々俺のためにやってもらっていることだ。ホワイがきっかけといえど流石にそこを履き違えてミリタリアに怒るのは違うことぐらい俺だって分かっているのだ。それにしても長すぎだとは思うし、サンバ服はキレるけど。

 そんなこんなで俺は服を買ってもらい二人で店を出た。

 

 

 

 

 ------

 

 

 

 

 時刻はすでに十八時を優に超えており、後二十分ほどしたら十九時になってしまうほど遅くなってしまっていた。

 俺たちは適当な店で晩飯を食うことになったので、服屋の近くにあったピザ屋の中に入った。

 

「ミリタリアはこういうジャンク系の飯が好きなのか?」

 

 お昼はハンバーガー屋に連れてかれたし夜はピザとあればそう考えるのは自然というものだろう。

 

「えぇ。前に元貴族だって言ったでしょ。()の家は貴族の中でも特にそう言ったことにうるさくてね。こういうジャンクな料理を食べることはほとんど許されなかった。特に手を使って食べる料理、、要は直接がぶりつくような料理は食べたなんて知られたら何言われるか分かったものじゃなかったの」

 

「だからその反動で好きになってしまったというわけか」

 

 俺がそう言うと、テーブルを通して俺とは向かい形でいるミリタリアはただ頷いた。

 俺はそれを見るとテーブルの上に目を移す。そこには一枚のピザがあった。それは丸い形の一枚で三角形としての一枚ではない。つまりは切り分ける前ということだ。ただピザはちょうど半分を境に具材が違っていた。片方は照り焼きチキンやマヨが乗っており、もう片方にはトマトソースにチーズなどと言った具材が乗っていた。

 お互いが片方ずつ決めたわけだがどっちがどっちを決めたのかはおよそ想像の通りだ。

 

「これじゃさっきのハンバーガーと同じような構成だな」

 

 俺がそう言うとミリタリアは笑いながら口にする。

 

「全くだよクリュー。少しは違うものを頼みなよ!」

 

「お前だって同じようなものだろうが」

 

「いやピザとハンバーガーは定番としてそれを頼んだだけじゃん!クリューのはどっちも変わり種で同じのとかいう感じじゃん!明らかに変じゃない!」

 

「おいそれは聞き捨てならないな。ピザもハンバーガーも定番は照り焼きだろうが」

 

「それは絶対違う!」

 

「大体何でハンバーガー食った日にピザ食おうと考えるんだよ。その時点でお前も同じようなの頼むの確定だろ。店入る時には何も言わなかったけどさ。いくらジャンクフードが好きでもあれだろ」

 

 そんな風な言い合いをするが、その後はすぐに落ち着き、ピザを食べ始める。

 ピザはお互いがお互いのを食べたりもして、そして互いにその違いを認め合うという何とも熱い展開があったりした。

 

 ------

 

 晩飯を終え、ようやく帰路に着くことなる俺達。ミリタリアは今日はクライアの屋敷の方に泊まっていくらしく帰り道は同じとなった。何故こいつはうちの屋敷の居候になっているのだろうか?

 

「本当だったらもっと色んなところに行く予定だったんだけどね」

 

 ミリタリアは少しだけ悲しげにそう言う。

 

「お前が変にこだわるからそうなったんだろ」

 

「そうね、でも良かったでしょ()の選んだ服は」

 

 確かに俺一人だったら選ばない服かつ、似合っていたからな。これは素直に新しい発見で感謝している。問題は白スーツと決まってからのこだわりようだが、まぁそこはこれ以上言わなくてもいいか。

 

「だな。なんやかんや素材も良さげなやつだったしそこは素直に感謝してる」

 

 そう言うとミリタリアは笑みを浮かべながら口にする。やっぱりこいつには笑顔がよく似合うな。

 

「でしょ。ちなみにクリューだけだったら何色にしてたの?()の服の色に最初文句あったみたいだったし」

 

「あぁ、黒色のスーツとかだといいかなって」

 

 特に隠すことでもないのでそう言うと、ミリタリアは口を大きく開けながら唖然としている。何事かと問いかける前にミリタリアが慌てた声で言ってくる。

 

「ちょ!クリューそれ()意外には言っちゃダメだよ!」

 

「何でだ?黒スーツになんか変な意味でもあるのか?」

 

「いや意味というかね、黒色のスーツには世界共通の認識があるの」

 

 ミリタリアがそう言い、俺はますますよく分からなくなるがミリタリアがその続きを口にした。

 

「終焉教団、この単語は聞いたことない?」

 

 ミリタリアはそう聞いてくるが俺には耳馴染みのない言葉だ。なので当然、

 

「知らないな」

 

 そう答えるが、ミリタリアはそれを聞くと「やっぱりね」と言いながら、明確に何かを伝えようとする意志を発するのを俺は感じ取った。

 

「終焉教団ってのはこの大陸どころか世界にとってのテロリスト集団のようなもの。色んなところに現れては破壊しての繰り返し。何が目的かは知らないけれど暴れ回っているおかしな奴ら」

 

 流石にミリタリアのこの言葉が嘘のはずはないので、その終焉教とやらが恐ろしい存在なのは今のを聞いただけでも理解できた。そしてこれを聞く限りでさっき黒色のスーツに関しての問題は想像できた。

 

「世界共通の認識ってのは黒スーツの人間が終焉教団の人間であるってことか。つまり終焉教団の正装は黒スーツってわけだ」

 

 そりゃ黒スーツを着ようと思っていたなんて口にするのを止めるよう言うわけだ。要は自分テロリストでっせ、と言っているようなものなのだから。

 となるとこれを教えてもらえたことはかなり助かったのかもしれない。テロリスト集団ってことは人を殺しまくってるんだろうし、その復讐者がいてもおかしくない。そんな復讐者相手にそんなことを言った日にはすぐさま殺そうとしてくるだろう。だからミリタリアには感謝だな。

 ということはミリタリアが最初、、、サンバ服の後持ってきたスーツの色は普通目の色を選んだとか言っていたがあれ本当だったんだな。グレーも黒と少し紛らわしいし。

 

「うんそう。だから本当に気をつけな」

 

「あぁ、分かった」

 

 しかし終()教団ね、、、俺を転生させたエセ神の名前も()だがあいつと教団に何の関係もないと考えるのは考え難いか。まぁここら辺を考えるのは別の機会でいいか。

 

 俺達はその後適当に会話をしながら歩いていると、いつの間にか屋敷の前についていた。屋敷の中に入ればあとは部屋が別々なので当然そこまでの道も異なる。だから俺は別れの言葉を口にしようとする。

 

「今日はありがとうな」

 

 俺のそんな台詞を聞いたミリタリアは何か悩んだ様子を見せてからちょっとした後、覚悟を決めた表情となりあることを口にした。

 

「ねぇクリュー、最後にちょっと時間いい?」

 

 ミリタリアはそう言いながら俺に手を伸ばしてきた。時間的にはもう夜遅くだが今更少しぐらい伸びてもと思ったので、その伸ばしてきた手に応えるように俺は手を握ろうとしながら返答を口にする。

 

「あぁ、特に問題はなっ!」

 

 俺が返答を口にしながら手を握った瞬間景色が変わる。これは以前にも何回か経験したミリタリアの瞬間移動だった。

 だがもう慣れたのかいきなりの瞬間移動には一瞬驚くものもすぐに冷静さを取り戻す。

 

「これをするなら先に行ってくれ。びっくりするだろ」

 

 俺はミリタリアにそう言うがミリタリアは俺の方を見ることはなかった。ではどこを見ているのか、ミリタリアの目線の先には海があった。

 そう、海があった。ミリタリアが瞬間移動した先は砂浜で、そこからは綺麗な海が見えた。かなり綺麗な海なのはこの世界では工場による廃棄水などがないからだろう。

 しかしいきなりの海は夜なのでかなり肌寒い。とはいえ我慢できない寒さではないので今回は良しとしよう。

 

 ミリタリアは未だ海を眺めながら口を開き始めた。

 

「海はね、()にとっての憧れなんだ。海はいつだって水で満ちていて、海には足りないものなんてないように思える。そんな風になりたいと思うのはおかしなこと?」

 

 ミリタリアは俺にそう問いかけてくるわけだが、どう返答したものか。悩みはするものの俺は返答を口にした。

 

「別におかしくはないだろ。正直言ってることはミリタリアとは思えないほどに難しい内容で理解しきれてるか怪しいからあんまり詳しくは言えないけど。それでも俺の考えを言うならお前の考えはおかしくない、そう思うぞ。というか俺はどんな考えも認める認めないはあるものの、その人がそう考えること自体を否定したりする気はないからな」

 

 俺はその人にはその人なりの考えがあって当然と思っているのでそれをおかしいと表現することは基本しない。流石に殺人鬼の思考とかだったら言うかもしれないが、それでも多分普通の人よりかはそれも否定しないだろうという自信が俺にはある。

 

「そっか」

 

 ミリタリアはそれだけ言うと海を眺めていたのを止め、ミリタリアの方を向いていた俺に視線を合わせる。目と目が合い、互いの心情に深く入り込むような感覚を覚える。これは悲しみ?あるいは悔恨?テレパシーを使えずとも感情を読み取れたように感じた。

 見つめ合い、嘘をつけないような雰囲気が流れる中、ミリタリアは続けて口にする。

 

「今日クリューをここに連れてきたのはね、クリューといると海を眺めてるときみたいに落ち着くからなんだ。落ち着く要素が二つあったらどうなるのか少し気になったのと、クリューにはこのことを何でか知ってもらいたい気がして」

 

「不思議ね」と笑うミリタリアは今まで一番彼女らしくない雰囲気であったはずなのに、一番彼女らしいと感じてしまうのは何故なのだろうか?そしてその表情は何処か儚く、今までで一番いい笑顔で思わず惚れてしまいそうになるほどの美少女だった。

 海を背後に見る白ワンピースの麦わら帽子を被った少女など惚れるなという方が無理な話だ。まぁ俺はギリギリ踏みとどまれるわけだが。

 ところでそんなことを言われると気になるのだが、

 

「ミリタリア、少し聞いていいか?」

 

 俺はその気になることをすぐさま問いただすことにした。

 

「うん?いいけど何?」

 

 ミリタリアの了承ももらえたこともあり、俺はその質問を口にすることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「口説いているのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺がミリタリアにそう言った後、ミリタリアはしばらく何を言っているのか理解できずに唖然とし、硬直していた。しかし数秒すると今日何度目かの頬を赤らめながらも慌てて早口に話し始めた。

 

 

「ち、、ちが、違うに決まってるでしょクリュー!()は、()は別に、、あわわわわ〜」

 

 ミリタリアは考えがまとまらないのかしっかりと話さずにいるが、その様子は少し面白かった。

 

「冗談だよ。お前が誰かに惚れるなんて想像つかないしな」

 

 君といると落ち着く的な発言が口説き文句みたいに聞こえるから軽く冗談でそう言っただけなのだ。なので実は俺としてもそんなに気にしないでもらいたかった。ハンバーガー屋でもあったが過剰に反応されるとこっちまで恥ずかしくなるものだ。だからそれを止めてもらいたくてそう口にした。

 

「そ、そっか〜。ならいいんだよ、うん!クリューも()に冗談でもそんなこと言えるなんてやるじゃない!」

 

 何でそんなに上からなのかは甚だ疑問だが、この会話をとっとと切り上げたかった俺はそれを口にすることはしなかった。ただ一つだけ言っておこうと思うことがあった。

 

「ミリタリア」

 

 俺がそう言うと、いつの間にか再び海を眺めていたミリタリアが再び俺の方を見てくれる。俺はそれを確認した上でミリタリアにあることを口にする。

 

「また、遊ぼうな」

 

 もう一回出かけることを『遊び』と表現して誘うのは違和感があるが、それでも俺はそう口にした。俺は今回のお出かけをデートといったことより『遊び』の延長線のように感じていたからだ。

 そんな言い回しが理解できなかったのか、あるいはミリタリアも同様に考えていてそれに驚いたのか。どちらにしろミリタリアは一瞬呆気取られた様子を見せた。その後、すぐさまに笑みを浮かべながら一言、

 

「うん!」

 

 いい笑顔でそう答えてくれた。

 

 その後は再びミリタリアの手を握り瞬間移動して屋敷の前に戻った後、屋敷に入りそれぞれの部屋に戻る。

 俺は今日地味に結構疲れたので、しっかり寝ようと風呂に入った後はすぐさまに自室で寝た。

 

 今日は特別楽しいところに行ったわけではないが、確かに印象に残っており、とても楽しく貴重な思い出のように思えた。

 

 俺は笑いながら深い眠りについた。

 

 その日の夢にはピンクと紫の中間の色をした髪を腰あたりまで伸ばした十二単を着飾っている少女が出てきたような気がした。

 

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