ー異世界への侵略者ー地球を侵略しにきたエスパー宇宙人、死して異世界へと転生する。超能力?何それ?強すぎ!!   作:ゼリアサイ8世

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2.「ツンツンツンツンデレ?」

 

 こんにちは、クリューソスです。

 いきなりで悪いが俺はいま全力疾走?と表現するかは怪しいが、俺に可能な限りでは最大の速度で目的地へと向かっている。

 なぜ全力で向かっているのか?そもそも目的地はどこなのか?前者に対しては端的に答えると、人助けのためだ。後者については少し待ってくれ。

 

 そうこうしている内に俺はその地点にたどり着いてしまう。

 目の前のには所謂オークのような見た目をした緑色の巨体があった。オークといえばエロ同人がどうとか言いたくなるかもしれない。でも、そんなふざけている場合でないことぐらいは重々承知している。

 それは別に俺がオークとの戦いが死と隣り合わせの戦闘であるという意識からくるものだけではない。オークの目の前の怯えた二人の子供、それが今の俺の心境と状況を説明する上でキーパーソンとなる存在だ。

 

 

 

 

 

 

 

 助ける。

 

 

 

 そんな一つ意思のもとオークに向けて走り出した。どの口が言ってんだよという思いを、心の内に抱きながらのことだった。

 

 

 ーーーーーー

 

 オークとの邂逅、その数十分前に俺はレーベン家からそう遠くない位置にある草原にてぼそっと佇んでいた。

 辺りを見渡してみると数本の木々があり、地面には雑草的なのが茂っているだけである。他には数本の木々の内の一本、その木陰に俺の専属の従者であり所謂メイドがいる。しかし専属といってもその実質的な役割は俺のお目付け役である。まぁお目付役と言ってもこれからやる事に関しては基本口出しはしてこないので気にする必要はない。そいつがわざわざ干渉してくるのは羽目を外しすぎた場合だけだ。

 俺はあるワードを口にする。

 

「『拡本(オーブック)』」

 

 その単語を口にした瞬間、目の前には一冊の本がどこからともなく現れる。その本は不思議な力で宙に浮いており、見る人が見れば何事かと言うだろう。

 ここで言う見る人というのは前世の地球人達のみではなく、今世の一般人相手でもある。この世界では魔術が浸透しているため物体が浮いていること、それ自体に物珍しさこそあれど驚きはしない人がほとんどだろう。だがこの本が浮いている理屈は魔術などとは全く異なるものだ。

 こう言うと俺の超能力によるものかとも思われるが前もって否定しておこう。この本の特異性は俺を転生させてくれた神によるものだ。

 ひとまずこの本を出現させる『拡本(オーブック)』は魔術でも超能力でもない特殊な力だと認識しておけば特に問題はない。

 

 そしてそんな本を俺は開き、そこに書いてある文を詠唱する。

 

「草木は芽生え、取り込み、糧とし、養が尽きるまでは命も尽きることはなし。聖級草生(そうしょく)魔術『植芽(しょくが)』」

 

 その詠唱を終えた途端に俺の視線の数メートル先で一本の大木が数秒で生えるのが目に映る。どうやら『植芽』の効果は『拡本』に書いてあった内容と相違ないようでで、疑っていたわけではないがこれでより魔術の効果を正しい認識にできる。

 ちなみに先程の魔術を唱える際に聖級などと言っていたがそれは魔術の難易度を表す言葉だ。下から順に初級、中級、上級、爽級、聖級、帝級、特級だ。

 一回目の『植芽』、その成果をある程度観察した俺は次の段階へと移る。

 

「『植芽』」

 

 大幅に詠唱文を破棄し、魔術名だけを唱える。これは詠唱破棄と呼ばれる技術で先程紹介したメイド曰くそれなりに高等技術らしい。

 そして唱えてから変わらずずっと前を向いていると先ほどよりも生える速度が遅く、サイズも小さめの木が生えるのが目に映る。小さいと言っても前世で言うとこの街路樹のレベルではある。さっきのが神社に生えてるぐらいの破格の大きさなだけで、今回も十分に木であると言えるだろう。

 こうして結果を見届けた以上次どうするかは自ずと分かるだろう。完全詠唱、相性破棄とくれば次はあれだ。

 

 そして俺は次に脳内で『植芽』を唱える。要は無詠唱である。

 その後再び前を向いていると、詠唱破棄時よりも更に遅く、更に小さい木が生えてくる。具体的サイズとしては家にある観葉植物、数値にして(いち)メートル程度といったところだろうか。

 想像通りの結果ではあるため、驚きもせず俺は次なる工程に移る。

 

 何をするのかといえば無詠唱時で生やす木を完全詠唱時と同等にするほどに出力を上げることだ。これをすれば魔術の使い勝手が上がる上に、完全詠唱時はさらに巨大な木を生やすことが可能になる。

 無詠唱で鍛えることは完全詠唱のみで威力を上げる練習をする何倍もの効果を得られる。詠唱を必要としない分作業効率も上がるしな。だから俺はいつもわざわざ段階を踏むことで無詠唱を習得するようにしているのだ。

 

 その後、二十分近く使って無詠唱でも二メートル近い木を生やせるようになったその時だった、俺から見て前方やや左から甲高い悲鳴が聞こえてきた。

 

「助けてぇぇぇぇぇぇ!」

 

 助けを求める声。その声を聞き、俺は何があったのか、などと考える間もなく走り出す。某ヒーロー漫画の考えるよりも先に体が動いていたを体現する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんてことはなく、俺はその場に立ち止まっていた。実に最低な事だが、助けるか助けないかを俺は考えていた。ひとまず俺は()()()を使うことにした。

 今まで散々に超能力が使えると言ったきたが一体何が使えるのかを話そう。といっても大方みんながイメージする通りの超能力だ。サイコキネシス、テレポート、未来視、パイロキネシス、そういったものが使える。そして今回使うのは()()だ。

 

 先程も言ったように俺の周りは基本草原なので視界は開けている。だが悲鳴の聞こえてきた方角は森となっており、今現在その悲鳴の声の主の正確な所在は不明だ。だが透視ならそれらの一切を無視できる。

 悲鳴が聞こえた方に向けて透視を使い、状況を正しく認識しようとした時だった。背後から声がかかる。

 

「クリューソス様」

 

「分かってる。無理をするつもりはないし、いざとなりゃ逃げるさ」

 

「あなたには無理です」

 

「俺じゃ勝てないって?どう判断したんだよ、お前は俺と違って敵を見つけることすらできてないだろ?」

 

「あなたは見捨てるなんて出来ません」

 

 それを聞き、俺は怪訝な視線を背後の者へと向ける。

 背後を向くと黒髪ショートのメイド、マサリが行儀良く立っており、その表情は憂慮に満ちていた。

 マサリは俺が地球で何十億人も殺したことを知らないからこんなことが言えるのだろう。俺が根っからの善人などと誤認しているのだ。そしてそれを責めたところでどうにもならない。

 俺は心外な感情を表に出さず、努めて冷静に返事を口にする。

 

「無理してまで他人を助けはしないさ。自分の命が惜しくないわけないだろ」

 

「無理です。誰よりも知ってます」

 

 マサリの意思は固いようで説得するには骨が折れそうだった。このまま水掛け論をすることになるなど、それこそ最も時間の無駄になる。時間の無駄は今最も避けるべきことだ。故に俺は少しばかり感情を出しての説得を試みる。

 

「だったら何で!俺はまだ走り出してないんだよ!おかしいだろ!そんな良い奴なら自身の身なんて顧みずに向かえよとっとと!」

 

「顧みてるのはクリューソス様自身ではなく、私の身でしょう?」

 

 マサリにそう問われ、俺は目を見開く。それに返事することが何故か難しく感じ、口を開けずに俺はいる。一言、違うと言えば済む話なのにそれを口にできない。だってそれは、、、

 

 

 

 俺はこんなことをしている暇はないと、説得を諦めて無理矢理にでも透視で見つけた現場に向かおうと走り出す。さっきの自分の発言に反する行動になってしまうが仕方ない。そうこうしている内に助けを求めた子供が死んでしまうかもしれないのだから。

 

 さて、先程走り出すとは言ったが、それは別に手足を振って走るという意味ではなく、全力で向かうという意味だ。

 

「『(はち)』!」

 

 そう口にすると同時に俺の体は宙に横になって浮き、目的地に向けて直進に進み出す。イメージ的には某冒険漫画の舞空術が近いだろうか。本当はテレポートで向かいたいが、この距離ではそれは()()になりかねない。それが何故かはまた今度だ。

 ちなみに『撥』はサイコキネシスもとい念力のことである。念力の中でも種類があるため呼び方を分けているだけだ。

 

 そうして向かっている中で先ほどから脳内で反芻し続けているマサリの言葉について考える。

 

『あなたは見捨てるなんて出来ません』『顧みてるのはクリューソス様自身ではなく、私の身でしょう?』

 

 違う。俺はそんな善人じゃない。ただ単に仮に敵がいるとして俺達、俺と()()()の二人で戦って無事に勝てるかを考えていただけだ。それを味方の身を案じていて善人だと言うのなら世の大半の人類は善人となってしまうだろう。まぁ俺よりは善人が多いことは否定しないがな。

 だって俺の目的は皆んなを…仮にマサリが無事で居続けたっていずれ俺のせいで...

 

 そんな堂々巡りの思考を繰り返している内に、目的地にたどり着いたようで冒頭の場面へと戻ってくる。

 前方には緑色の巨大オーク。体長は二メートル以上は確実か。

 俺はこの世界における正確なオークの情報は知らないので、今こいつをオークと呼ぶのは前世のゲーム知識に基づくものだ。なので本当にオークと呼ぶのかが正しいのかは知らないが便宜上そう呼ばさせてもらう。

 そしてオークの前には今にも喰われそうな二人の子供。俺が透視で目視した際は子供は三人いたはずだが、一人は逃げたのだろうか?いや、違うだろうな。周辺に飛び交う赤色の液体、子供達の怯えよう、死を強く意識している時の目をしている。

 いずれにしろ俺の遅さが一人の子供を殺した訳だ。

 

 そんな事を考えているうちに二人の子供のうちの一人に再びを手を出そうとするオークの腕が見える。

 瞬間、俺はテレポートでオークと子供達の間に入り込む。二人の子供に触れ、またテレポートを発動する。ただしその対象に俺は含まない。確実にオークの手が届かない範囲に子供達を飛ばす。

 

 つまり、俺は今オークと二人で向かい合う状態にある。

 戦闘なんて嫌いなんだがな。あの()()()のためには、、、、いや、なんでそんな、、

 

 改めて自身がここで逃げずに戦う理由を必死に考える。そしてある一つの結論が出る。

 

 

「色々とむしゃくしゃしてるんだ。八つ当たりかもしれんが死んでくれ」

 

 異世界に来てから初めての魔物との戦いが始まる。

 





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