ー異世界への侵略者ー地球を侵略しにきたエスパー宇宙人、死して異世界へと転生する。超能力?何それ?強すぎ!!   作:ゼリアサイ8世

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2-16.「死の行方」

 

 王女様からの予期せぬ殺人の依頼。俺はそれを聞いて当然の驚きを覚えつつも、それを表には出さない。それは意識せずとも自然とそうなっていた。

 俺は今回依頼された命を奪うという行為にタラバとの決闘によって感じた情熱のようなのも、あるいはかつて神との闘いで感じた命を奪い奪われの恐怖もなかった。

 ただ冷静に事務的に処理するような思いで目の前の少女を見つめていたのだった。それはまさしくかつて地球を侵略した頃の俺、シルバンス・テイリアそのものだった。

 

「王女様を殺す?、、、理由をお聞かせいただいてもよろしいでしょうか?」

 

 俺が淡々とそう口にすると、王女様は驚いた様子を見せてから口を開く。

 

「その、早々に本題に入ったのは(わたくし)の方ではありますが、いささか落ち着きすぎてばありませんか?(わたくし)の話を知っていたのですか?」

 

 王女様は俺がやけに冷静な様子を見て、その様に考えたらしい。王女様は俺がこの話を事前に知っていたのかが気になっていると口にしているが、本当に気にしているのは多分別だろう。本当に気にしているのは俺が何故知っているのかどうかではなく、仮に知っているのなら誰からそれを教えてもらったのか。そしてそれが自身の父親だったりしないかという心配だろう。もちろん口にした疑問が全くの嘘というわけではないだろうけど。

 

「いえ、王女様が私におっしゃられた内容は今初めてこの場で知り得たものです」

 

 俺はそこで少しだけ間を開けてから口にする。

 

「ただ、そうですね。王女様と先程の場で目を合わせたときに感じたのです。期待と罪悪感に近しい何かをですね」

「私と王女様は初対面のはずです。期待は恥ずかしながら私目の功績を知っていただけてるならば納得致せますが、罪悪感ばかりは普通に考えればおかしいと考えておりました」

「ならば何故それを抱いているのか?考えられるのは二つ。実は私の知らぬ間に王女様の行動の何かが私、もとい私の周囲の何かに影響を与えていた」

 

 

 

 

 

「そしてもう一つは王女様がこれから私に何かをしようと考えている可能性です」

「私はこちらの可能性が高いと判断してきました。何故なら王女様が感じしていたのは明確な罪悪感ではなく、不確かな罪悪感だったからです。罪悪感を感じる人間に異常者は少ない、なのでこれは感じるべくして感じられた罪悪感であると考えられました。では何故不確かなのか?既に何かをしてしまった後ならば明確な罪悪感となるでしょう。であればその逆、何かをする前ならば不確かな罪悪感となるでしょう」

「そのように考えていたので何かしら大きなことをおっしゃられる可能性を危惧して部屋に入りました。それだけでございます」

 

 俺が長くなってしまった説明を語り終えると、王女様の目にあった罪悪感は僅かに薄れ、期待の色が強くなる。

 おそらく俺の推測が正解であることから上がった期待。そしてその推測の内容を危惧した上で部屋に入ったことから俺にある程度の覚悟があると推察して薄れたのが罪悪感といったところか。

 

「そうでしたか。であればこれ以上何故を問うのは止めに致しましょう。となれば次はクリューソス様の番でございましょう?」

 

 要は俺が質問する番ということだ。俺は素直に気になることを口にすることした。

 

「ではまず一つ目の質問をしてもよろしいでしょうか?」

 

 そう言うと王女様は無言で頷く。俺はそれに応えるように質問をし始めた。

 

「王女様は何故死にたいのですか?」

 

 この質問の意図はいくつかある。一つは王女様が死にたくて口にしたのか、俺に殺されたくて口にしたのかだ。可能性としては相当低いとは思うが王女様が俺個人を陥れたくてこう言っている可能性もある。だからこそまずこれが一番重要だ。

 そして次に、単純に死にたい場合の理由を知りたいからだ。そこから派生して俺に深く関わってくる可能性もあるからな。むしろ子供にすぎない俺を頼っている時点でその可能性は高いと感じている。

 これらのことを知るための質問であったわけだが、どうだろうか。

 

 王女様は俺がそう口にしてから少しの間苦しそうにしながらも確かに答えを口にした。

 

(わたくし)がお父様の重荷になってしまっているからです。それと、、私さえいなければ、と思ってしまう私自身に嫌気が刺したというのもあるかと思います」

 

 王女様の父親、つまり俺が以前会ったあの王様のことだ。そして王女様があの王様の重荷になっている、か。おそらく親バカとして愛情を注ぎすぎていての問題とかではないだろう。となるとやはり『禁忌』と呼ばれている部分あたりが怪しいか。

 もう一つの嫌気が刺したことに関しては生きてるのが辛くなった的なことで自殺の要因としては一番ありきたりなものだろう。

 しかしそうなると気になるのはどうして俺を頼ったのかだな。それに王女様の禁忌についても気になる。さて、どちらから聞いたものか。

 そう考えていると王女様から続きが発せられるので、俺はそれに聞きいることにする。

 

「クリューソス様に今回このようなお話をさせていただいたのは、クリューソス様のお力ならそれが可能なのではと考えたからに他なりません」

 

 王女様は俺が疑問に感じていた一つの答えをもたらしてくれる。

 

 俺の力なら可能かもしれないと考えた。

 

 この言葉から分かることは俺以外の力では殺せない可能性が高いことと、俺の超能力という力についても知っている可能性が高いということか。

 俺の力なら殺せる、この場合の力とは文字通りの力なはずだ。俺なら殺しても問題とならず権力で押し潰せる的な意味ではないはずだ。どう考えても現状の俺にそこまでの権力はない。

 であれば俺の特殊性といえば超能力しかないだろう。王様は人様のことをペラペラと教える性格ではないはずだが、愛娘に対してであればその姿勢も崩れ得るだろう。

 だがその場合にも疑問は残る。何故それをミリタリア、あるいは俺が知る知らない関係なく他の王道十二星騎士達に頼まないのかだ。少なくとも俺の超能力よりかはミリタリアの魔法の方が威力があるし、自分の最期を任せる奴がどこの馬の骨とも知らぬやつなのは嫌ではないだろうか。

 

 いや、だからこそ、か。王女様の死にたい理由の一つが王様の重荷になることであることからして、王女様は王様に自殺のことを考えていることすら伝わってほしくはないだろう。しかし彼ら相手ではもし断られた場合すぐさまに王様は伝わる可能性が高い。自由気まますぎるあいつらが実際そうするかは議論の余地があるとしても、どこの馬の骨とも知らぬやつよりは王様に伝えやすい立場にいるだろう。

 となるとそこは危惧して当然なのかもしれない。

 だが、だとしてもだ。王様から直接超能力について聞いたならば王様と俺が直接話しあったことも伝わっているはずだ。そうなると完全に安心し切って俺に頼めるだろうか?やはり今考察した内容だけで俺に頼むというのは無理がある気がする。

 

 となると残る答えは一つだ。俺の力に期待しているのは超能力が魔法でも魔術でも、ましてや武術の類でもないこと、つまりは魔力を介さないこの世界において異常とも言える異能故ではないだろうか?

 そうなると王女様はそれらの力で自身を殺すことは不可能だと考えていることになり、俺に今回の件を頼む理由として納得する。

 しかしその場合はその場合で何故王女様は俺が超能力の存在を王様に教える前に呼び出すことを決めたのかが謎になる。

 現状ではこれ以上考えても先に進みそうにないな。俺は新たな情報を求め、未だに黙ったまま王女様に対して無言で続きを促す。王女様は再び話し続けた。

 

「クリューソス様の力、超能力であれば(わたくし)を殺せるかもしれない。そう考えたのです」

 

 王女様は一息ついてから続きを口にする。

 

「どうでしょうか?私を殺してはもらえませんか?」

 

 やはり超能力については知っていたか。

 

 そんな風に一人納得している俺を、真剣な眼差しで王女様が見てくる。だが当然これをYESと簡単に言うわけにはいかない。気になることはまだまだある。それを解決させぬ分には俺は絶対に『はい』とは言わないだろう。まぁそれが解決したところでの話ではある気もするが。

 

「申し訳ありません。それに答えることはまだ私にはできません。その質問に答えるために追加で質問をさせていただいても?」

 

 そう言うと王女様は優しい声で「はい」とだけ言ってくれたので俺は追加の質問を始める。

 

「王女様が禁忌と称される理由、それを教えてはいただけないでしょうか?」

 

 ずっと引っかかっていたことをようやく王女様本人に問いかける。すると王女様はそれについて驚いた様子であり、知っているものとして考えていたことが分かる。それから王女様は少し考える素振りを見せた後少しだけ口を開く。

 

「ご存知無かったのですね」

 

 それだけ口にして再び考える王女様だったが、数秒でそれは終わり再び話し始める。

 

「クリューソス様、無くなっても構わない、、、いえ今から(わたくし)が壊してしまってもいいと考えられるものを持ってはいませんか?」

 

「壊していいもの、ですか」

 

 そう言われた俺は今の自分の手持ちについて考える。少しスーツのポケットの中に手を入れてみると、布の感触があった。所謂ハンカチだ。

 これはクライアの屋敷のものなので簡単に無くなって良いものではないが、いくつかあったもののうちの一つとしてあったハンカチなため最悪無くなっても大きくは怒られないだろう。実は感動的なエピソードがあるなんて可能性は低いはずだ。

 俺はそれを取り出して王女様に渡そうと近づく。しかしそんな俺から急いで距離を取る王女様。

 

 妙な反応だ。今まで俺と話していて特別俺という人間が持っている要素に対して不快感や嫌悪感、あるいは恐怖といったものを感じているようには見えなかった。そう不思議に思っていると王女様は話し始める。

 

「あまり(わたくし)には近づかないでください。決してクリューソス様が嫌いなどではございません。むしろ私はクリューソス様に好感を抱いております」

「理由はそのハンカチを私に向かって投げていただければ分かると思います。本当は魔術を私に向けて撃っていただくなどが良いのですが、それはクリューソス様にとって不安となるでしょうから」

 

 その様に言われた俺はひとまず指示通りにハンカチを投げることにした。

 

 王女様に向かってハンカチを投げ、そのハンカチが王女様に触れる四、五十センチぐらい前だろうかでハンカチが王女様に近い方から消えていく。

 塵になるという表現すらできないほどに、真の意味でハンカチは跡形も無くなっていた。

 俺はその光景に目を見開く。そしてそんな様子を見た王女様はそれを当然としながらもどこか悲しそうな表情でその様子を見ていた。悲しかったのはハンカチが消えてしまうことか、あるいは俺が驚いたことか、そればかりは分からなかった。

 

「消えた?」

 

 俺がこぼすようにそう口にすると、それに対して王女様が反応する。

 

「はい。これが(わたくし)が禁忌と称される所以です。私の体の外側からちょうど四十五センチほどにある物質全てを消滅させる力です」

 

 その説明を聞き、これまでの謎がパズルがようやく完成したかの如く解かれていく。パズルのピースが埋まり、俺はようやく色々な問題が腑に落ちていった。

 

 騎士の護衛が妙に遠いのも、貴族達がパーティー会場で逃げるようにして移動したのも、そしてこの部屋に何もないことさえもこの力が原因か。

 確かにこれは恐ろしい。何が恐ろしいと言われればおそらくこの力はミリタリアの魔法の性能すらも上回っているということだ。王女様はミリタリアに頼まなかったんじゃない、頼んだ上でダメだったのではないだろうか。もちろん流石のミリタリアでも頼まれたからといって安易に殺しはしないだろう。だか俺の知るミリタリアならおそらく魔法が通用するかどうか、体スレスレの部分に魔法を撃つことで検証ぐらいはしてくれそうだ。そしてもしそれで通用したのならば俺のようなやつに頼み込むよりも先に、ミリタリアに懇願したほうがいいだろう。よって今のこの状況が発生する可能性は著しく低くなる。つまりミリタリアの魔法が使われて通用した可能性はほとんどないということだ。

 ではミリタリアより先に俺に頼んでいる可能性は?それこそありえない。王女としてミリタリアに頼める状況ならばよく分からない俺なんかの力より、リオレス王国において絶対的な最強として君臨しているミリタリアの方に頼みたいと考えるのが道理なのではないだろうか?たとえ魔術や魔法がそれまで一切効かずとも、ミリタリア程の規格外相手ならば可能性を感じるはずだ。自分から俺を呼び寄せるように王様に頼んだのであろう行動力のある王女様が、ミリタリア相手にのみ躊躇して頼み込めないとも思えない。

 

 まぁだが結局これは推測の部分が大きいからミリタリアの力を王女様の力が上回っていると断定していいのかはわからない。限りなくその可能性は高いが。 ただ一つ分かるのは王女様の悩みを見るに相当強力なのは間違いないということだ。

 さて、ここで話は最初に戻ってくるわけだ。俺がその力を無視して王女様を殺せるのか否か、俺はその答えを口にしようとし始めた。

 

「王女様が死にたい理由、納得がいきました。確かにこの力があっては生きづらいでしょう?」

 

 俺は本心でそう口にする。本心で王女様には同情と憐れみを感じていた。

 

「ですが、その上で私は申します。王女様を殺すことは私には出来ません」

 

 俺がそういうことは予想通りだったのだろう。驚きは少なそうに見えた。だがどこか納得しきれないのか、縋るように王女様は俺にその理由を聞いてくる。

 

「何故、、でしょうか?」

 

 美しくも可愛らしいその顔を、涙を流しているわけでもないのに悲しみに満たして俺へと向けてくる。俺はその顔から逃げることなく目を合わせて口にする。

 

「王女様、不躾なことを申すようですが私に無礼な言動を取る許可をくださいませんか?王女様が私に多くのことを曝け出してもらったがために、私も包み隠さずに話したいのです」

 

 そういうと王女様は特に表情を変えることもなく回答を告げる。

 

「問題ありません。(わたくし)としてはそもそも初めから本心で語り合うつもりでしたので」

 

 俺はそれを聞き、今まで取っていた態度を止め、自然体になって、変にこもっていた力も抜いていく。体が軽くなったのを感じたところで、比較的いつもに近しい口調で話し始めた。

 

「俺が王女様の依頼を断るのにはいくつか理由があります」

 

 ます、とついてはいるものの明らかに丁寧ではなくなったその物言いと一人称に王女様は少しの驚きを見せる。気にせず俺は続きを言い続ける。

 

「まず一つ目、デメリットが大きすぎます。仮に俺が王女様を殺せたとしてもその罪はどこにいく?当然実行犯である俺です。もし王女様の同意があったとしてもそれが明確に示せるかも怪しいし、示せたところで罪に問われる可能性は消えない」

 

 俺がそう言ってやると王女様はその辺について全くの考えなしだったわけではなかった様で、そのことについて語り始める。そこら辺の考えは交渉の際に事前に言っておくべきことなのだが俺とは違い精神的にも子供であろう王女様にそれを求めるのは酷というものか。むしろ考えているだけで十分立派だ。

 

「勿論その点については考えております。(わたくし)を殺してくれると確約なさってもらえたならば私の護衛騎士達にそのことについて事前に話すようなことをしても良いと考えています」

 

「それじゃダメなんですよ王女様。王女様が言っている保証は結局王女様が死んだ後まで確約されてるわけではない。もし護衛役の騎士達が王女様が死ぬことに実は納得がいっていなかったら?仮に正確に伝わったとして知らず知らずのうちに娘が死んでしまった王様がそれを実際に許す保証は?俺一人が許されても俺の周りに被害がいく可能性は?王女様はそれらに考えが及んでいない。これらのリスクをなくす手立てを王女様は俺に示せていない。だからこそ二つ目の理由が必要なんです」

 

 そうして俺は二つ目の断る理由を言い始める。

 

「二つ目の理由、それは俺が王女様を殺すメリットがないことです。王女様を殺すというリスクに見合ったメリットがない。ただのお願いになってしまっている。言ってはなんですけど俺と王女様はほぼ他人だ。そんな人を何故ハイリスクノーリターンで助けなくてはならないのか。これについて何も考えていなかったのではと俺は考えているが実際どうです?王女様?」

 

 そう言ってやると王女様は俯きながら回答を口にし始めた。

 

「はい、その通りです」

 

 やはりデメリットはともかく、メリットの方は考えられていなかったか。あんな力と共に過ごしてきたが故のネガティブ思考による弊害といえるだろう。俺はそんな様子の王女様にに追求の手を緩めることなく、さらに追い詰めていこうとする。

 

「ひとまずこの二点だけでも言えることが王女様にはありますよ。甘えないでくださいよ。王女様がなんでそんな体質なのかは知らないですけど、自分が不幸に見舞われたからって思考停止して生きてていいとでも思っていたんですか?いや、、死にたいんでしたね、、フッ」

 

 俺は今最低なことを言っている。そんなことは分かっている。だが王女様に自身について改めて考えてもらうためにはこれしかない。まともに説得してたんじゃ多分この王女様には通用しない。今必要なのは正論、だが正論は人を不快にさせる。だからといって正論を下手にオブラートに包んで言うようなことをするのは悪手だ。それでは結局伝えたいことを伝えきれないからだ。だったらいっそのこと悪役のように突き抜けていくべきだ。俺には特におあつらえ向きだしな。

 俺は更に追い詰めていく。

 

「自分は何よりも不幸ですって顔していながらも、王女様はその王女で生まれたって幸運に甘えてたんじゃないですか?頼めば何から何までやってくれるですもんね。しかも父親が親バカと来ているから断られるなんて本当にほぼなかったはずだ。いや、自分は何もできないからって同情を買ったのが一番大きな要因か。中々の策士じゃないですか。でも俺はその手にはならない」

 

 こんなことを言っているが俺は王女様が周りに甘えることを悪く言っているわけではない。むしろ王女様の体のこと考えるなら甘えない方が愚者だろう。だって何をするにしてもとんでもない制限がかかるのだから。実際服を着替えたり飯を食ったりするのさえ一苦労なはずだ。だがそれらを何とか頑張っているから、今生きていけてるのだろう。そしてそこに他人の助けが無いなんてことはないはずだ。

 その助けを単に甘えていると表現していいのか?答えは否だろう。何故ならそれは必要なことだからだ。その状況を作り出すために王女様の権力を行使するのもなんら問題がない。むしろよくやってるとさえ言える。

 だが王女様が今回やっているのはそれではない。王様に知られたくない以上、王女としての権力も活かしにくいこの場で俺に依頼を出すにはあまりにも全てが考えなしだ。これを甘えと言わずして何と言う。だから俺はああ言っているのだ。

 まだ五歳の少女に俺はそうして現実を突きつけた。

 

 王女様は俺の発言を受けていつのまにか泣いてしまっていた。それに同情の視線を送ることすら俺はしない。やがて王女様が話し始めた。

 

(わたくし)は王女としての地位に甘えてお願いしていたとおっしゃるのですね?」

 

「話を聞いてなかっんですか?そうです、それ以外にあの情けないお願いをしてきた王女様をどう説明するんでしょう?」

 

 それを聞き改めて顔を俯せにさせながら泣き続ける王女様。すすり泣き、嗚咽とまではいかないまでも漏れている声の数々、それらはどんどんと聞こえる頻度が増えていく。だがやがてそれもピタリと止まった。

 王女様は勢いよく俺の方を向いてくる。その顔は涙で濡れまくっており、湿っていたが覚悟が決まったような目をしていた。

 

「わかりました。(わたくし)の甘えは認めざる負えないです。此度の断りについて納得はいたしました。ですが、、、理由はそれのみではないのでしょう?全てを聞かせてください」

 

 もっと泣き喚くものだと考えていた俺は少し拍子抜けしたが良い方向でのそれなので特に何か言うこともない。

 そして冷静に俺の理由が二つだけでもないことが見破ったか。流石は王女というべきなのだろうか。正直本当に五歳なのか疑いたくなるほどだ。

 

「そうですね」

 

 俺は一旦前置きをはさみ、間を少し明けてからまた口を開く。

 

「とはいえ、正直にこれが最後で多分一番大きな理由です。俺は単純に王女様を殺したくない」

 

 俺がそういうと王女様は泣いて赤くしていた顔を驚かす。何故そうなるのか分からなくはない。そして王女様は俺に聞いてくる。

 

「あの、、クリューソス様も先程申していた通り(わたくし)とクリューソス様の関係は他人に該当致しますよね?何故殺したくないなどと?」

 

 王女様はそう俺に聞くが、少し時間を空けるとすぐさま気づいたように慌てて口にする。

 

「いえ、考えてみれば当然でしたね。(わたくし)に限らず人を殺すという行為に嫌悪感はあって然るべきでしたね。失礼しました。、、、こんなだから甘いと言われるんでしょうか」

 

 またも悲しそうな表情を浮かべる王女様。ここで俺はようやく憐れみを表に出しながら王女様に語りかける。その表情に王女様は驚くものの、大人しく聞いてくれるようだ。

 

「それもありますけど、それだけじゃないです。むしろその理由に関してだけ言えば俺は多分かなり薄い方でしょうね、他の人に比べれば」

 

 実際に俺は多くの人を殺したことがあるし、それは間接的なのを除いて直接的な数のみにしてもそれなりの数と言えるはずだ。もちろんそこに抵抗感はあるが大分慣れてしまっている自分がいる。少なくとも自分と関わりが薄い存在は俺にとってそういう存在だったはずだ。それは五年近く時が経った今でさえも変わっていないと確信できる。

 そんな俺が何でこの王女様を殺したくないと思えたのか、それは多分、

 

「こんな奴に言われてもかもしれないけど、俺は王女様がすごく憐れに思えたんだ。俺は死は不幸なことであるべきだと思う。死が幸福として訪れるのはそれこそ老いた時だけでいい」

 

 俺は完全に敬語をやめて話し始めていた。途中でそれに気づくものの今更敬語に戻るのも不自然かと思い続きを口にする。

 

「要は俺のエゴなんだ。俺が王女様を助けたいって思ってしまった。求められていようがいまいが関係なく」

 

 俺はこうして最後の理由を言い終える。そして王女様がそんな最後の理由に何を思ったのかは分からない。だが予想外だったのは間違いない。理由を聞いた時には目を見開いていたし。

 

 鬱陶しい、嬉しい、悲しい、何を抱いてもらっても構わない。ただ王女様の人生に絶望以外の何かを感じる必要があるように思えたのだ。

 

 王女様はそれからしばらくして、ようやく一言を口にする。

 

「求めてなんていません」

 

 ずっと保っていた丁寧な口調を少しだけ崩した王女様は俺の発言に対してそう返すと、再び顔をうつ伏せにしてしまう。俺はそんな王女様にすぐ声をかけられずに無言のままでいた。

 それからお互いが話さずにかなりの時間が経った。二分ほどだったろうか。それだけの時間が経って俺はようやく

 

 

「そうか」

 

 

 と、俺もまた一言だけ口にした。

 





王女様が超能力を王様に教える前に、そもそもレーベンに呼び出す前に知っていた理由は最強ウザ女のせいです。あいつクリューソスのことをオーク事件の頃から知ってます。子供が一人食われるのもただ眺めてました。
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