ー異世界への侵略者ー地球を侵略しにきたエスパー宇宙人、死して異世界へと転生する。超能力?何それ?強すぎ!!   作:ゼリアサイ8世

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改めて言っておくと王女様の名前はエルスサテラです。



2-18.「チェンジ」

 

「おカアサマ、ダっこぉ〜」

 

 ワタシがおカアサマにそうモトめると、おカアサマはそれにオウじてくれた。いつもみたいにしゃがんでウデをサしダしてくれる。ナニよりもアンシンできるウデを。

 

「もう、ほんとサテラはお母様のだっこが好きねぇ。物心もそろそろ着く頃合いでしょうに。言葉を覚えるのは相当早かったのだけれどね。だからこそなのかしら」

 

 おカアサマはモノゴコロ?とかなんとかイってる。よくわからないけどまぁいっか!

 おカアサマはワタシをモちアげてくれた。タノしかった。キモちよかった。でも、それよりもアレアレ、ウレしかったのかな。そうだよ!

 

「おカアサマはワタシのことすき?」

 

「えぇ、勿論」

 

 おカアサマはワタシのほっぺたにチューしてくれながらそうイってくれた。ワタシもおレイにチューーーしカエしてあげた。おカアサマより『ーー』ブンのスきをワタシはコめた。

 だってエホンのナカでイってたもん!チューはスきなヒトとスきなヒトのアイダだけでやるんだって!おトウサマとおカアサマ、カゾクってカンケイはそういものなんだって!アタらしくカゾクのヒトがフえるトキもあるらしくて、そのトキにもチューはヒツヨウなギシキなんだって。とりあえずアタシはチューーーをおカアサマにしてあげたんだ。

 おカアサマもウレしそう。ヨかった。

 

「もう、サテラのチューは長すぎよ。それじゃまるで、、、それはいくら何でも早すぎかしらね。それはそうとサテラ、お望みのお花畑に着いたわよ」

 

 おカアサマにダっこしてもらってキたのは、ここにキたかったからなんだった。ワタシでもワスれちゃてたアチャーだアチャー。

 

「そうだった!おカアサマ、おカアサマ!あっちのアカいおハナのホウにイって!」

 

「はいはい」

 

 ワタシがおカアサマのおウデのナカでアバれるようにタノむとおカアサマはツれてってくれる。やっぱりおカアサマはヤサしい。

 

「ここ!ここ!」

 

 そうイうとおカアサマはワタシをハナしてくれる。

 

「これと、あれと、それと、あと、、、、、、、、これ!!あっちも!!」

 

 ワタシはおカアサマにハなしてもらってから、チカくのアカいハナ、そのまたチカくのキイロのハナ、そのまたチカくのアオいハナ、そのまたチカくのムラサキの花、、、、そしてトオくまでアルいてのシロイロのハナ。ゼンブいっぱいとって、マげたり、マげたり、マげたりしたらカンセイ!

 ワタシはおカアサマのホウにイく!!

 

「おカアサマ!これあげる!」

 

 おカアサマにモってるものをツきだす!これでもウけトれ!

 

「あらあら、、コレは何なのかしらサテラ?お母様は分からないから教えて!」

 

 おカアサマはこれがナンなのかわかんないらしい。シカタないからオシえてあげよう!

 

「おカアサマのカンムリ!いつもおんなじのツけてるから!アタラしいの!」

 

 そうおカアサマにオシえてやると、ワかったみたいだ。ヨし!

 

「そうなのぉ、じゃあこの花冠はありがたく頂戴するわね。どう似合うかしら?」

 

 おカアサマはワタシのツクったハナカンムリをアタマにノせてくれた。キレイだなとオモった。おカアサマのクロカミにニアっていた。

 

「チョウダイ!チョウダイ!キレイ!キレイ!」

 

「意味もわからずに言葉を使ってはダメよサテラ。それと、綺麗って評価は嫌いじゃないわ。いえ、むしろ好きよ」

 

 ワタシはここでヒラメいた。おカアサマをもっとキレイにするホウホウを。

 

「おカアサマ。二パー」

 

 おカアサマに二パーするけどおカアサマのおカオはカワらない。ナンで?

 

「おカアサマ、二パー」

 

「えっと、笑えって事でいいのかしら?」

 

「うん、おカアサマは二パーしたホウがもっとキレイ!しなくてもとてもキレイ!」

 

「ふふっ!ありがとうサテラ。二パーよ」

 

 おカアサマも二パーする。やっぱりキレイ!おハナみたい!

 

「キレイ!キレイ!二パー!二パー!」

 

「サテラの讃美は心に沁みるわね。でもそろそろね」

 

 おカアサマはそうイうと、ワタシをまたダっこした。

 

「うわぁ!」

 

 トツゼンのことにびっくりするワタシ。

 

「そろそろ部屋に帰りましょうね。あまり女の子の服が汚れているのは良くないわ」

 

「ヨゴれてない!カエりたくない!」

 

「だーめ、言うこと聞かないと魔物達に食われちゃうわよ」

 

「ワタシいいコだからダイジョウブだもん。おカアサマのウソつき!ウソつきはキラい!カンムリはチョウダイ!」

 

「一度あげたものは、たとえサテラ自身があげた物でも命令する権利はないのよ。それとそこは頂戴じゃなくて、返せ!とか言うとこよ!」

 

「ムー、カエせ!カエせ!」

 

「はいはい」

 

 おカアサマはワタシのアタマをなでなでする。キモちよくてオモわずネムってしまった。おカアサマのウデのナカはやっぱり、ホカのナニよりもアタタかくてアンシンできた。

 

 そのヒのヨみキかせのホンのナイヨウはスコしだけコワかった。おカアサマはコワい。もういいコいいコしかしない。

 

 

 ーーーーーー

 

 

 テレポートした先は王都の住宅街、その上空。今俺の目の前には一人の存在がいた。そいつはフードを被り、男か女かも分からない。だが確かにそいつはどうやったかは知らないが王女様を浮かぶ様にして運んでいた。

 妙なのは王女様を浮かばせるのはいいものを動かさないこと。正確に言えば数秒に一回のペースで俺のテレポートと同じ要領で瞬間移動させることで王女様をそいつの近くに居させ続けている。

 一回一回のテレポートの間は瞬間移動させてからずっと空中に王女様を放置して浮かばせ続けている。

 俺がテレポートしたタイミングとそいつが瞬間移動によって王女様を引き寄せたタイミングは同時だった。

 俺はテレポートするとすぐさま視界に入れたそいつに向けて、子供の体格ながらに蹴りを繰り出す。

 

 瞬間、視界が揺らぐ。

 

「何ッ!?」

 

 俺の蹴り当たる直前、そいつは俺の視界から突如として消える。

 王女様を瞬間移動させてる力を自身にも適用させたと考えるのが妥当か。そしてその力はここまでの連発をしていることからコスパ的に魔法の可能性が高いな。他にも俺の知らない魔術の可能性もある。俺と同じ超能力の可能性は、、、無いな。長年使ってきた力だ、同じかどうかは見れば分かる。まぁ奴の能力の分類についてはどうでも良いことだ。

 今重要なのは再びあいつとの距離が取らされてしまったこと。視界から奴が消えた瞬間に背後を向いていた俺は、そいつがいつの間にか俺のことを無視するようにして前へと進んでいたことは分かっていた。当然王女様も依然としてそいつの近くに漂っている。

 人攫い野郎は現在、瞬間移動を常に使っているわけではなく、基本的には住宅街の屋根伝いに動き続けている。目算と、王女様の部屋からここまでの距離と時間から考えられる速度から、あいつがかなりの身体能力を有していることが分かる。

 あの速度相手では、俺がテレポートで追いついてもまた直ぐに逃げられるだろう。となれば答えは一つ。

 

「何人たりとも並ぶことは許さぬ孤高となろう 爽級向上魔術 準加速(ブースト)

 

 そう口にしてから俺はすぐさま走り出す。五歳児の身体能力からすれば信じられない速度での移動。これは『準加速(ブースト)』と呼ばれる魔術の影響で、スピード特化の身体能力強化の魔術だ。

 本当なら『PS(プレイス)(ワン)』も使いたいところだが、子供の体格では体内に超能力の粒子を流すのは負荷がかかりすぎるために不可能だった。

 

 結果として今の俺は『準加速(ブースト)』による強化のみが入った状態なわけだが、その状態ではまだ奴に追いつくのにはスピードが足りていない。正確に言えば足りているのだろうが僅かな差しかなく、今みたいな追いかけっこのみで追いつくのには相当な時間がかかる。

 俺はそこから三分ほど追いかけてからテレポートでそいつの正面へと飛ぶ。

 二度目の正面から向かい合う相手に対して、俺は再び蹴りを繰り出すが、これもまた以前同様視界が揺らぐ。

 振り返ればすでに俺の背後にそいつはいた。だが、また逃げられる様な繰り返しはしない。

 

 フード野郎が俺から距離を取ろうと動き始めるが、直ぐにその動きが止まる。まるで目の前に壁でもあるかの如く。

 俺は既にやつの瞬間移動の仕組みをある程度勘ぐっており、それを元に罠を仕掛けてみたが見事に引っかかった。

 俺はテレポートすると同時に『觸』を大幅に後ろに伸ばした後からその地点から突如壁が上に向かって伸びるような変な形で『觸』を伸ばした。人差し指から小指までを手のひらに対して直角に曲げた状態の腕を背中に生やすイメージで、俺の背後に壁のようなものを作ったのだ。觸は基本脆いが、壁をかなり分厚くすることで最低限障害物として機能したようだ。

 では何故フード野郎が瞬間移動する先にちょうど壁を作れたのか?それはフード野郎の瞬間移動が実は瞬間移動ではないのではないかと考えたからだ。

 奴が単純に瞬間移動に近しい力を使っているのなら、瞬間移動が行使された際に俺の視界まで揺らぐ筈がない。なのに実際には揺らいでいるということは俺にも何かしらの効果が及んでいるということに他ならない。その場合のフード野郎の力の可能性として真っ先に思いついたのは位置の入れ替えというものだった。

 つまり俺は今回元々あいつがいた位置と俺の位置が入れ替わったときに、『觸』で作った壁があいつの目の前にやってくるようにしたのだ。そしてその罠が成功したということは、俺の今までの予想は見事正解だったというわけだ。

 

 壁にぶつかったそいつが止まっているうちにと、俺は攻撃を仕掛けんとする。壁として使った『觸』を消去しつつ、フード野郎に向けて唱える。

 

「『千差万雷(せんさばんらい)』」

 

 唱えた俺の右腕は雷へと変化する。雷と化した腕は肥大化させることが可能となり、その巨腕を振るう。

 今の説明から分かる通り、『千差万雷』は肉体の一部分を雷化できる魔術だ。雷化してから僅かな間ならその部分の形のみいじることができる。地味に使い勝手の良い魔術だ。

 

 そして振るわれた俺の巨腕に対し、フード野郎は位置の入れ替えを行うこともなく、剣で悠々と受け止める。

 

 雷でできた腕は物理的に防御は不能。な筈だが何故だか普通の剣で受け止められる。これは、、、俺の攻撃を受け止めたフード野郎は、今まで通りの屋根の上ではなく普通の通路に足をつける。釣られるようにして俺も下へ降りる。

 俺はここでようやく会話を試みてみる。

 

「お前は何者だ?」

 

 俺がそう問うと同時にそいつの近くに転移するようにして王女様が現れる。それから少ししてフードを被っていたそいつはフードを脱いだ。

 現れたのは薄紫色の髪と目をした男だった。異世界人らしく相変わらずのイケメンだ。

 男は俺を見て口角をあげながら口を開く。

 

「何者かどうかの前に、自分の心配をしたらどうなんだい?」

 

 そう男に言われる俺の口からはかなりの量の血が溢れ出ていた。テレポートを使いすぎた代償だ。()()()()()()()()の仕方を最近は使用するようになったものの、最初の(いち)キロ近くのテレポートに加え、その後のテレポートもと考えると当然その代償は大きかった。

 

「別にいいんだろ、俺のことなんざ。で、そっちは質問に答えないのか?」

 

「ふーん、それで答えたつもりなんだ?別にいいけどね、別に」

 

 心底興味なさそうにそう言ってから、次には打って変わって意気揚々とした様子で口にし始める。

 

「そっちがそうくるならだ。俺のことをあえて教えるとすれば君達をいずれ殺す存在とでもしておこうか。例え人外と称される『一円規(モノ)』だろうが『二龍(ディオ)』だろうと、あるいはお前だろうとな」

 

 至極当然のようにそう語る男だった。俺はその内容に思うこともあり、返答を口にする。

 

「戯言を言うのは夢の中だけにしてもらってもいいか?お前如きにミリタリアは殺せない。それと質問にちゃんと答える能力を身につけた方がいい。聞いてもないことを答えるより先にな」

 

「ちゃんと答える気がないって伝えてるつもりだったんだけど伝わらないものだね。そういうのを感じとる能力を身につけることを俺の方からは薦めるよ」

 

「なるほどそりゃ悪かったな。自分に伝える能力に問題はなかったと確信している妙に高い自己評価は見てて面白いよ。強さに関しても、言動に関しても」

 

「強ければ負けないって考えているからそういう答えが出るんだろうな。小さいお子ちゃまにはわからないかもしれないけどね、世の中はそう単純じゃないんだよ」

 

「世の中が単純じゃないと知った上で見た目だけで人生経験が浅いと判断するんだな。学習能力はそれこそお子ちゃま以下なんじゃないか?知ってるだけで活かせないならそれは無知よりも改善の余地がないってことだよ」

 

 俺たちは互いに煽り合い、お互いに相手にヘイトが少しづつ溜まりつつある中で、意外にも誘拐犯の方からその流れを変えてきた、

 

「まぁいい、このまま行ってもだ。名乗ってやるよ。俺はペルティナ・ジェンチ。お前は?」

 

 ここで「逃げたか」と煽ってやることも可能だが、このまま行ってもという部分は俺としても共感なので、今回は特にそういったことを言わずに名乗ってやることとした。

 

「シルバンス・テイリアだ」

 

 偽名?というべきかは微妙だが少なくともこの体本来の名前ではないものを俺は口にした。なぜこう名乗ったかと言われればコイツと今後関わる可能性を少しでも減らすためだ。

 ちなみに雪影船銅の方でないのは単純に異世界人の名前として比較的違和感の少ないものを選んだがためだ。和風な名前もこの世界でないわけじゃないが、それなりにレアだからな。

 

「知らない名だな」

 

「こっちこそ」

 

 お互いがお互いを知らないと言い合ったところで、両者共に敵意を一気に高める。どうやらフード野郎はもう逃げるのではなく、俺と戦うことに決めたようだ。単に王女様を攫いたいだけなら俺のことなど構わずに逃げるのが最善の選択な筈なのにそれを選ばないということはそうせざるおえないか、俺がそれだけの価値がある脅威だと認識されたか、あるいは単純に奴が戦闘狂であった可能性のどれかだろうな。

 俺のテレポートの反動も今の煽り合戦の最中にだいぶ落ち着いてきた。まだまたもに追加の一回ですら使える状態ではないが、純粋に体を動かして戦うことに関しては問題ないだろう。

 

 さて実際に戦闘が再開する前に状況を再確認するとしよう。王女様はこのペルティナとかいう男の隣で浮いている。そしてこの男はおそらく位置の入れ替えの魔法を使える。それと脅威的な身体能力を持っている。おそらくセコンドと同等の。

 それに対して俺は完全詠唱の準加速(ブースト)を使うことでコイツの身体能力、いやスピードのみは何とか互角程度の状態だ。

 

 情報の整理はここまで。さて、実際に勝つために何をすればいいだろうか。そこまで考えを回そうとしたタイミングでペラティナと名乗った男は地面を蹴り、俺へと一直線に向かってくる。こういった手合いに対してやることは決まっている。

 

「撥」

 

 そう言い放つと共に最大出力の『撥』を放つ俺だったが、『撥』で押し返されそうになるペルティナらすぐさま横方向に力を加えることで『撥』から脱出する。

 やはりこのレベル相手には一瞬で対応されてしまうか。この男は自己評価が少し高めだが、それでも確かな実力があることは間違いない。おそらくだが王道十二星騎士レベルには強い。

 

 だからといってコイツとの戦闘で残り四回の貴重な元の姿に戻る権利は使いたくない。だってここ最近だけでもこんな状況が二回目なのだ。これから先もこういった状況に陥る可能性は高い。それももっと絶望的な状況でだ。

 

 とはいってもコイツに勝つなら大人化は前提条件となるだろう。でもそれは逆に言えば勝つことを目的としないならそれが無くでも済むということでもある。

 

 横に飛んだペルティナはまたすぐさまに俺へと近づいてくる。直進のそいつに対して俺は先ほど同様の動作で腕を突き出してつつ口にする。

 

土生(どせい)

 

 再びの『撥』かと思っていたであろうペルティナは俺のその魔術に反応できない。俺がその様にして『土生』という魔術を唱えると、ペルティナが次に踏み込もうとしていた地面の地形が変化する。うまく着地することができずに体制を崩すペルティナは地面に触れていないタイミングができてしまう。

 俺はそのタイミングに合わせて、

 

「撥」

 

 そう告げると、横方向に力を加えることが不可能なペルティナはそのまま『撥』をモロにくらい吹き飛んでいく。

 ここは住宅街なため考えなしに吹き飛ばし続けることはできない。途中で民家にぶつかりなどすればそこから横に力を加えられて脱出されてしまうからだ。だから俺は道に沿うようにしてペルティナを吹き飛ばし続けた。

 

 ここで先程使った魔術『土生(どせい)』について解説しておく。『土生(どせい)』は土鉱(どこう)魔術の聖級に該当する魔術で、聖級は魔術の級の上から三つ目の級である。その割には名前が地味だと思うかもしれないが、それは土鉱魔術全体的にそうなのだ。

 そして本題の『土生(どせい)』、その効果は周囲の地形を操ることだ。主に土などだが土生はそれ以外の物質も操ろうと思えば操れる。だが結局は土が最も相性良く、今回の場合は石が敷き詰められた道の下にある土を操ることでより効率良く地形を変えた。

 

 俺は少しづつ『撥』で飛ばす速度を落とし、ついに完全に『撥』を解除すると、落下するペルティナが地面につく前に、俺はあることを口にしながらペルティナの背後に回る。

 ペルティナの体はそのまま慣性と重力に従いこちらに飛んでくる。

 

「食べやすく切ろう 調理魔術 (ナイフ)

 

 俺は左手の小指側の側面を包丁のような切れ味を持たせた上で振るう。それを振るった瞬間、俺の視界が揺らぐ。

 

 やはりな。

 

 そうなることを読んでいたために俺は先程同様事前に觸を背後に伸ばしていた。これによりペルティナの動きを封じた上で、入れ替えられてから即座に攻撃できるようにしておいたのだ。

 だが俺の『觸』はペルティナにとって障害物てして終わるのではなく、逆に利用されることになる。ペルティナは壁となった『觸』を空中の足場の様にして強く踏み込み、こちらに剣を振るってくる。先程のことから俺がまたそんな罠を仕掛けてくることを想定していたのだろう。

 俺はそれを理解するとすぐさま後退する。まだ距離もあり、身体能力もそう差はないため十分に離れきれるだろう。

 振られた剣はギリギリで届かない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 確かにその筈だった。

 気づいた時には俺の首元が僅かに斬られていた。斬撃は確かにかわせていた筈だったのだ。ならば何故俺は斬られているのか?その答えを俺は確かに目視していた。

 結論から言えばペルティナが剣を振るっている最中に剣心が伸びたのだ。そして俺はそんな不可思議を引き起こす力、、いや技を知っている。

 

白斬(しらきり)か!」

 

 俺が答え合わせのようにそう口にする時にはすでに斬られた俺の首元は治っていた。致命傷になり得る部位なために、急いで治癒魔術をフル稼働させることで何とか治しきれた。だがもう一回同じ箇所付近を斬られればもう治すことはできないだろう。

 治癒魔術は治すたびにその箇所を治すことがしづらくなる。もう一度その箇所を治すためにはそれなりの期間を空ける必要があるのだ。

 そして俺が今口にした『白斬(しらきり)』と呼ばれる技は、(しん)(かげ)(けん)(しん)(りゅう)と呼ばれる武術の中級にあたる技であり、その効果は剣身を伸ばすことだ。武術は所謂武道的な動きをする際に特殊な事象を発揮させる異能だ。魔術同様誰でも努力すれば理論上は習得可能なものだ。実際のところ武術は大気中の魔力を扱い行使される魔術であり、広義的には魔術と武術に違いはないんだとか。

 要は詠唱などをもって自身の体内の魔力を消費し発動する魔術、武道的な動きを持って空気中の魔力を消費して発動させるのが武術だ。儀式で詠唱を必要とするか、舞踊のような動作を必要とするかの違いといったところだ。

 そして俺の荒げるような声で口にした予想を聞き、笑みを浮かべるペルティナ。それを見て改めて理解させられる、こいつは強いと。

 

「おぉ正解!宣言しようか、俺はお前の首を貰っていく。勿論お前の大事な王女様もな」

 

 そう言ったペルティナと一瞬でも実際に首元を裂かれてしまっていた俺を見てか、顔を青ざめさせていた王女様が慌てて口を開く。

 

「待ってください。(わたくし)のことが狙いならいくらでも構いません。ですからクリューソス様のことは巻き込まないでください。ですからクリューソス様もッ「うっさい」

 

 王女様は自分のことが狙いなら自分だけを狙え、そう主張しようとするが、それは止むことになる。どうやらペルティナは位置の入れ替えで王女様をどこかへやったようだ。本来なら透視でどこに行ったのかをじっくりと見回して確認したいところだが、こいつの目の前でそんなよそ見をする暇などない。

 一瞬で見つけられればそこにテレポートすればすぐに解決するんだがな。その可能性は低いだろう。

 いや、一瞬で解決すると考えたがこいつの位置入れ替えがすでに何かしらでマークしている相手であればいつでも可能などであれば、それでも解決とはいかないか。むしろその場合俺はテレポートの連続使用をせざるおえない可能性があり最悪だな。

 その場合は結局コイツをこの場で倒す必要が出てくるが、別に俺が勝つ必要はない。

 そこまで思考したところで、ペルティナが口を開いた。

 

「ところで、ひどいじゃないか俺にシルバンスなんて偽名を名乗るなんて、なぁクリューソス」

 

 そういえば俺はこいつに偽名としてそう名乗っていたなと思い出すと同時に、王女様がクリューソスと読んでしまったことも思い出す。別にそのことで王女様を責める気はない。むしろ時間稼ぎとしての話題となるので助かるといったところだ。

 

「突然話しかけてくる危ない大人には名乗るなと教わっているので」

 

「さっきは子供じゃない的なこと言っておいて、都合のいいところだけ子供ぶるとか、まさしく子供で腹立つな」

 

「今は戦闘中なんだから腹を立てない方がいいぞ。更に自己評価がバグって出来ることと出来ないことがわからなくなっちゃいそうだし。闘いに付き合ってあげてる身としてはつまらない闘いはしたくない」

 

「死にかけてる分際でそれが言えるんだから、ますます子供ぶるのやめてもらっていい?気持ち悪くて仕方ないっての。、、ところで王女様の心配はあんまりしなくていいわけ。もしかして中々のクズだったりする?」

 

 下卑たような視線で俺をそう見つめてくるが、俺はそれに対して淡々と返答を口にする。

 

「ただでさえ精神的に苦しんでいるであろういたいけな少女を攫った上で、その少女を助けに来てくれた友達の天才少年すらも目の前で殺そうとして、その後どこかにほっぽり出したどこかのゴミクズに比べれば俺なんて天使のようなものだよ」

 

「ふ〜ん、そっかそっか。それじゃあそんな自己評価高すぎる天才少年の首を、友達の少女の前に晒すとしようか!」

 

 そう言うとペルティナはフードの中から瓶を取り出す。そしてその中に入っている何かを大量に俺のいる地点の上空に投げたかと思うと、周りにあった民家を突然斬り始めた。そこに住んでいる人たちのことを気にも止めずに斬りまくる。

 周囲の四軒ほどの民家が崩れる。民家に住んでいる人達の悲鳴が上がる。そんな声が響き渡る中、俺の上空に家の瓦礫が現れ勢いよく落下してくる。

 俺はそれらをかわす中、突如として背後に気配を感じる。

 

「チッ!」

 

 上から降りそそぐ瓦礫に当たらないようにしながら、それらの瓦礫と入れ替わることで死角から突如としての斬撃を放ってくるペルティナ。身長差があるために死角とは言っても背後を取られるのみで、下側を警戒する必要なのは幸いか。

 上と背後、どちらも警戒しなくてはならぬ上に足場も地面ではなくなり瓦礫の上となり、どんどんと不安定になっていく。俺はペルティナからの斬撃を先程使った魔術、『(ナイフ)』に300%の魔力を込めることで何とか鍔迫り合いをしたり、普通にかわしたりするものの、いくつかの斬撃を食らってしまう。それらはどれも致命的な傷ではないが、数が多い。治癒魔術を習得していなければこの傷だけで出血死してもおかしくないほどの傷を、瓦礫が全て降りきるまでに受けてしまったわけだ。

 さて、その地獄の時間が終わり治癒魔術をかけるのに専念したいわけだが、当然相手はそれを許してはくれない。

 再びあいつは上空に大量の何かを投げた。また、あれがくる、そう考えて俺は即座にその場から離れようとする。だがその瞬間俺は元いた位置に戻される。

 適当に地面に落ちている瓦礫と俺を入れ替えたか。想像以上にこの魔法が厄介すぎる。

 そう思っているうちに再び瓦礫が降ってくるターンがやってくる。俺は先程同様に防ぎ続けている中、俺はようやく反撃のチャンスがあると感じる。

 残る上空にある瓦礫は九つほど、このうち俺の死角として最も移動しやすいのは俺の右後ろだ。瓦礫の数が最後少なくなってきたからこそ判断できた。

 そう思い振り返りながら右腕の『(ナイフ)』で切ろうとしたとき、信じられないものを俺は見る。

 

 

 

 

 

 

 

 

「は?」

 

 そこには王女様がいた。

 

 

 

 

 

 勢いよく振りかぶった右腕は王女様に当たる直前に消滅する。

 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い、だがそんなことは今どうでもいい、思考を冷静にしろと俺は自身を諭す。

 王女様まで攻撃の手段として使ってくるなんて予想だにしていなかった俺が見事に嵌められた、それだけだ。今ので俺の右腕の肘から少し先の部分全てが消えた。首元を裂かれた時より命の危機としては薄い筈なのに、痛みや不安がこっちの方が上なのは使い慣れた部位ってのが大きいのだろうな。

 とにもかくにも俺は治癒魔術に全力を注ぐ。流石に無くなった腕を再生させるのは不可能だ。だが少しでも痛みは和らぐし、感染症の可能性も消せる。

 ある程度腕の痛みがなくなってきたところでようやく俺は気づく。ペルティナが王女様と入れ替わった結果、俺はすでにペルティナがどこにいるのか把握できなくなっているということに。

 気配は一切感じない。まさかペルティナが逃げたのか?俺のこの隙をつき逃げた。あの魔法ならそれは全然ありうる。だが俺の何かが訴える、あいつがそんな単純に行くだろうかと。俺を殺すのではなく、逃げるというのか?

 

 嫌な予感は的中した。

 突如として揺らぐ視界、その視界のかなり先に映るのは王女様。やられた。そしてそれを認識した瞬間俺の首を一つの剣が完全に切り裂いた。

 

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