ー異世界への侵略者ー地球を侵略しにきたエスパー宇宙人、死して異世界へと転生する。超能力?何それ?強すぎ!! 作:ゼリアサイ8世
朝、目が覚めた俺は自身の布団の中に俺のものではない柔らかい感触を知覚する。そして俺の布団に勝手に入ってくる人間は二人いる。
一人はみなさんご存知、絵面犯罪常中のガレスの奴なのだがおそらくそっちではないだろう。
その訳は気色の悪いことを言うようだが身体の柔らかさだ。先ほどから俺とそいつの触れている部分は俺の手足が少し沈み込む柔軟性を持っている。これは元冒険者かつ男のガレスではあり得ないことだ。
つまり女性特有の柔らかさを感じるが故にガレスではなくもう片方だと判断したわけだ。
しかし女体の柔らかさについて真剣に考えているという文面だけ見ると俺もガレス同様に犯罪臭が漂ってくるな。とはいえ自分のことを棚上げするようでなんだが、今の俺は五歳な訳なので世間体的にはあちらの方がまずいだろう。
何で俺は最近犯罪だとどうとかについていろいろ考えなくてはならないのだろうと思いながらしばらくじっとすることを決め込む。すると俺の布団の中にいる女性が俺が起きたことに気がついたのか、僅かに微笑みながら話しかけてくる。
「おはよう、クリューソス」
「おはよう」
その微笑みはそれこそ芸術品の如き美しさを保っており、仮にも男である俺としてはそれなりに来るものがある。とはいえそれなりに見慣れている光景ではあるので見惚れすぎるということはなくすぐに話を続ける。
「ばれたらパーネットにまた怒られるぞ」
「それはそうなんだけどさ。なんかこの時間が気に入っちゃっててさ」
チルマーは小学生のような『はいはい、わかってますよ』といった様子で完全に開き直っているようである。
ただパーネットの心情はともかく、一応俺が本当に不快だったりするのかに対しては気にするような視線を先程から向け続けている。チルマーの配慮しようかどうか考えるラインがよく分からない。
まぁでも、
「別に俺もガレスはともかくチルマーならそこまで嫌じゃない。頻度は正直減らして欲しいけど」
そんな風なことを言うとチルマーは少し驚いた様な表情を見せてから少し叱るような声色で話しかけてくる。
「もう、そういうことは気軽に認めちゃダメなんだっていつも言ってるでしょ。私が厄介な押し付けがましい女だったら一生つけ回すかもよ?」
「そんなやつじゃないって信じてるしな。てかお前は布団に入るの認めてもらいたいのか、もらいたくないのかどっちなんだよ?」
チルマーは俺にそう言われると少しだけ不快そうにしながら答え始める。
「そりゃあ認めてもらいたいわよ。でも気軽すぎって話をしてるの!簡単に『信じてる』とかも口にしちゃうしさ!そのつもりないかもだけど父親に近づいていってるんじゃない?」
「はぁ?別に気軽にじゃないだろ?俺は今まで他の誰ならともかく、お前の話に適当に答えたつもりはないぞ?」
「そういうとこだって、はぁ。まぁあれはあれで何かと上手くやってるし下手こくことはクリューソスもなさそうだけど」
チルマーは呆れたようにそういうと布団から出ると「少し待ってて」と言い部屋から出ていってしまった。特段不都合があるわけでもないので俺はそれに首を縦に振ることで答える。
しかし慣れてきたとはいえことがこと、それなりに動揺はするものだ。チルマーが布団にいると気づいてから今の今までずっと俺の心臓はバクバク言っていた。それも単にチルマーが美女なのが原因だろう。
ちょうど時間も余ってる感じになったのでここらでチルマーについて話しておこう。
彼女の名はチルマー・レーベン。パーネットの妹で俺の今世とっては叔母に当たる存在だ。我が家では俺含め二人だけの緑髪で顔はパーネットに似ている。パーネットよりも少し可愛らしさがあってより親しみを覚えやすい顔つきと言えるだろう。個人的にはそういった女性の方が好みなのでチルマーとのスキンシップはかなり大切に感じている。
この体は幼いながらもそれなりにそういった事柄に対しての欲はあるようで日々幸せを感じているわけだ。そんなことにうつつを抜かす暇はないというのにな。
とまぁ、そんなことを考えたりし始めてから結構な時間が経ちつつあった。そしてついにドアが開かれる音がする。まぁまぁな勢いがついていたために木製のドアが少し軋む音を出しながらその原因であろう人物が中に入り込む。言うまでもなくチルマーである。
ただし先程までと異なるのはその両手にカップを二つ持っていることだろう。ゆっくりと歩いていることからおそらく中身は既に入っているのだろう。
両手にカップを持っているためにドアノブをちゃんと使うことができず肘か何かでも使って乱雑に扉を開けたために先の音が響いたのかと納得しているとチルマーが声をかけてくる。
「お待たせ。お紅茶を淹れてきたよ」
「あぁ、、、ありがとう。寝起きで喉も乾いてたから助かる」
「だと思った」
そう言い片手を前に突き出してくるチルマー。当然その手の先にはカップが握られているわけなので中身を溢さないように慎重にカップを受け取る。
受け取ってから間を置かずにカップを口に運ぶと中の液体が自身の喉を通り抜け潤してくれるのを感じとる。中身は紅茶で茶葉の種類とかに対して知見があるわけでもないので上手いと思うだけだった。
そして中身を余すことなく飲み切ってしまった俺はベッドに座っていたのから立ち上がり、机に飲み干したカップを置く。
振り向いた俺はチルマーに向けて問う。
「で、今日は何の話だ?」
俺がそう口にした瞬間に気まずそうな表情をするチルマー。この様子からして何かしらの話があったことは当たっているだろう。大体チルマーが布団に入ってくる時は面倒な相談事がセットなので最近はすぐに問いただすことにしているのだ。今回に限ってはそうではない可能性もあると踏んでいたが様子を見るにどうやらそっちの方で当たっていたようだ。
チルマーもたった今当てられた瞬間こそ気まずそうにする。が、いつものことだとでも考えたのか少しすると完全に切り替えた様だ。そんなチルマーは内容を口にする。
「それがさー最近同僚が夫がどうとかいう話をしまくるわけね。私としてもさ、まぁ?それなりに?長い付き合いの子だからさ結婚式とかにも行ってお祝いした子のことをさ、妬んだりしたくないわけよ」
「妬んでんだな」
「うん、そう。だってさ!こっちはずっと独身独身嫌嫌嫌って言い続けてるんだよ!そんな子の前で夫の話し続ける!?普通!?」
チルマーの溜まっていたのであろう鬱憤の濁流が押し寄せるように俺へと流れてくる。俺はもう慣れたことなのでその回答は素早くなる。
「気持ちは分からんでもないが自慢のつもりはないんじゃないか?人を見る目はある方だろ、お前」
「私の友達はみんないい人だって?まぁ私よりはいいんだと思うよ、正直。その子がそんなこと思っていないなんてことは分かりきってるの!そんな風に卑屈に考える自分もやっぱり嫌いで、だから独身なのかな」
そんなことを言い続けているとチルマーの表情はどんどん沈んでいく。元が綺麗なので沈んだところで顔は綺麗なはずなのだが、その顔はどこか恐ろしい雰囲気を放っていた。色恋沙汰に対する女性の感情の起伏は激しいということだろうか?
「チルマーが独身なのは単に理想が高すぎるだけだろ。告白してくる人だけだったら沢山いる訳だろ」
「それは、そうなんだけどさ〜。顔や身体目的の男とか嫌だし」
「本当にそれだけか?じゃあ結婚条件言ってみろよ」
「え〜全然ゆるいけどな〜。まず浮気はしないことでしょ。あ!浮気のラインは二人で出掛けたりすることね。でも勘違いしないでね、事情さえ話してくれれば場合によるけど許可はするから。勝手にやるのだけやめて欲しいって話なの。勿論緊急の事態でそうなってしまったとかなら許可はいらないよ。そこまで余裕のない女じゃないからね、私。もちろん後からそのことについては話してもらうけどね。で、なんだっけ?結婚条件の話だ。いつの間にか浮気に関する話になってきてたね。反省反省。で、続きを言うとね記念日を忘れないことね。勿論付き合ってから一ヶ月間は一週間ごとに記念日を行なってもらうね。同様に一年以内は一月ごとにやってもらう。それ以降は付き合ってから半年ごとの記念日でいいよ。あぁそれと結婚記念日と付き合ってから記念日は別ね。どちらもちゃんと祝ってくれないと嫌だよ。まぁここまでは常識みたいなものだよね。他には飲酒はなるべく控えめにしてね。体のこと心配になっちゃうし、ないとは思うけど浮気のきっかけになりがちだしさ。私の前以外で基本酒は飲まないこと。それと「あぁ、うん」...どうしたの?」
突然の怪文書みたいな長文に焦りつつ俺はチルマーの話に口を挟む。正直怖いが以前にもこれを聞いた時は冗談抜きで数十分ノンストップで話されたのでまいったものだ。流石に二度目はないので今回は止めさせていただいた。
今聞いた部分だけで言えば比較的マシだが二十分後あたりにはお互いの祖父母との関わり方とかまで話し出すからな。
「うん、前にも聞いたから改めてって感じだったから、、、うん。もういいよ」
「そっか。...いやいや!前よりアップデートされたんだって!えっとね、「うん、マジでわかったから!」
またあれが始まる雰囲気だったために再び慌てて止めることになる。そしてすぐさまに俺は話を続ける。
「前にも言ったけど、チルマーの理想は高いんだってどこかで妥協しないとだって。そんな完璧君がいるのは絵本の中だけだって」
「妥協して手に入れた幸せで心から笑い続けれる?ふとした機会に『あ、この人とはここが合わないんだな』ってならない!?そう言う些細なことの蓄積が浮気に繋がるんだってイマジナリー私が言ってた!」
「その理屈は分からんでもないが、根拠よ」
イマジナリーフレンドならともかく私って本当にただの自問自答では?そんなことを考えていると怪訝そうな表情でチルマーが口を開き始めた。
「そう、蓄積は人の感情を大きく揺さぶるんだよ。私の言いたいこと、分かる?」
突如として雰囲気が変わり、そう責めるように口にしてくるチルマーは中々の威圧感を放っていた。チルマーは具体的な内容こそ言わないものの、俺はその問われている内容にあたりはついていた。
はぁ、やっぱそっちの話もあるのか。これからのことが頭に浮かび既に気疲れしてくる俺。
ついでに話は変わるがチルマーの威圧感のある姿が前世の母さんが怒った時の様子にそっくりだったためについ萎縮してしまいそうになったのは内緒だ。
「わかってる。無理をした」
チルマーが責めているのは俺がオークとの戦いを独断かつ単独で行ったことだろう。そして俺は以前にも二度それに近しいことで怒られる事態を引き起こしている。その積み重ねで俺への不信感を抱くぞと、チルマーが言っているのはそういう話だ。
チルマーは俺の返答を聞いてもそれで納得とはいかず、さらに言葉を続ける。
「分かってないのは分かってるよ。それにクリューソスのそう言う部分は美徳だと思うしね。問題はやり方。クリューソス、自分が死ぬことが怖くないの?」
「怖いよ。死んだらやりたいことだってやれなくなるしな」
俺がそう答えると目を見開くチルマー。予期せぬ答えに思わずって感じだ。
「え?クリューソス夢なんてあったの?」
「何だ、悪いか?」
「いや、悪いっていうか。クリューソスって本当に五歳児ってぐらい大人びてるからてっきり夢なんて持ったって無駄っていいそうだなって」
「どこかの誰かの夢見がちな部分でも移ったのかもしれんぞ」
少し笑いつつもそう答えると、チルマーは不服そうな顔をする。そして少し怒った様子となってから話し始める。
「それは誰のことかな?一応予想しておくけど、答えはガレスでしょ」
「あれは夢みがちっていうか、そういう異常者だよ」
「言い過ぎ、、、でもないか。でもそれじゃあ誰のことなのかな?」
ここで万が一にもチルマーと答えたら殺される気がするのでここは答えないでおくことにする。無言の圧もとい答えは『沈黙』だ。今回の選択肢は二択ではないのが残念だ。
しかし『やりたいこと』か。それが何なのか知ったらチルマーはどんな反応をするんだろうな。酷く罵倒してくれるだろうか、あるいは、、、
チルマーは何も答えない俺に痺れを切らしたように口を開く。
「ノーコメントはずるいと思いま〜す!まぁこんなことしてる余裕はそろそろなくて。分かってると思うけどクリューソス今から下いくよ。今すぐだけど、良い?」
「あぁ、むしろ無いとは思うがガレスが今回の件でマサリのことを有無を言わさずに追い出す可能性も常にあるわけだし早ければ早いほど助かる」
「そう」
チルマーはそう言うとついてくるように手招きしてくる。俺はそれに従いチルマーの後を追う様に着いていく。
俺の部屋はレーベン家所有の屋敷の二階にあり、おそらく話をするであろう会談室は一階にあるために階段を降りていく。
そしてチルマーの後ろにしばらくついていっていると、ふと気づく。
「あれ?会談室じゃなくて良いのか?」
そう問う俺に『そうくることは分かってましたよ』と言わんばかりの余裕な様子でチルマーは振り向くこともなく答える。
「あのねぇクリューソス、腹減ってないの?」
そうチルマーに問われ俺はようやく腹の具合について意識し始める。人体の不思議とも言おうか、意識し始めた途端にそれを感じ始めるようになる。そういえば昨日オークを倒して子供たちを家に送り届けたりの諸々をして屋敷に帰ったら飯も食わずに寝てしまったのだった。シンプルに疲れすぎだったのだろう。
そんな考えに至り、俺はチルマーの質問に答える。
「確、、かに腹減ってたわ。ばあさんや、飯はまだか」
「割と真面目な話なんだからふざけないの。後普通にばあさんはアウトね。てか、なんでそんなボケちゃったじいさんの演技なの!私もツッコミすぎ!」
ものの見事に全てのツッコミをしてくれるチルマー。まさかのノリツッコミまでプラスしてくるとは予想外ではあった。流石だ。
「で、さっきの話の感じ的に場所はここで良いのか?」
俺がそう聞くとチルマーは軽く頷く。俺たちの前にある扉、それは食堂の扉である。食堂も会談室同様大きいテーブルがあるために稀に話し合いの場になることがあるためにそこまで驚きはない。
そして今回はチルマーの話ぶりを聞くにおそらく飯が用意されていると思われる。
そんなことを考えているとチルマーが扉を開く。
ガレスやパーネット、敵ではないだろうがマサリあたりが今回の話し合いの肝となるだろうなと考えながら俺は食堂へと足を踏み入れた。