ー異世界への侵略者ー地球を侵略しにきたエスパー宇宙人、死して異世界へと転生する。超能力?何それ?強すぎ!!   作:ゼリアサイ8世

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6.「改め」

 

 踏み入れてすぐさま目に映るのは縦長のテーブル。テーブルの上には今の俺から見て一番前の席にのみ料理が置かれているため俺が座る席はあそこだろう。

 対して家の主人であるガレスは俺の向かい側の席に座っている。つまり縦長のテーブルの端と端で俺たちは向かい合う形となるわけだ。

 話をするにしては距離が生じすぎているような気もするが、密室になるため声が聞こえないことはないだろう。

 

 俺はその意図を汲むように料理の用意された席に着く。それを見たチルマーは俺の左隣の席に着いたようだ。

 ちなみにガレスの右隣にパーネット、左にマサリがいる。

 

「いただいても?」

 

「構わない」

 

 ガレスにしては随分と仰々しい口調で目の前の料理たちを食す許可がもらえたところで、俺は特に周りの目を気にすることもなく食べ始める。

 一応料理名を言っておくとミートソースパスタとサラダであった。屋敷のシェフが作ったのだろう、それなりに美味しかった。しかし子供の胃の量しか食べないというのは未だに慣れないな。まぁ、今はそんなことどうでもいいんだけどな。

 

 かくして食事を終えだ俺は、改めてガレスと顔を向かい合わせる。

 先ほどの会話からチルマーや俺含め誰一人言葉を発していないため空気は非常に重くなっている。

 俺は近くにあった水を飲んで一息整えてから、会話のキャッチボール、その一投目を投げる。

 

「それじゃあお話しましょうか」

 

 そんな俺の一言目に対しガレスは目を細めながら反応する。

 

「クリューソス、俺はお前が好きだ」

 

「はい?」

 

 返ってきた球は強烈で、俺はガレスの突然の告白のような言葉に少し狼狽える。まぁこれは告白というより家族愛としてそれなのだろうと分かってはいるが、少しばかり紛らわしい。

 

「嘘ではない。本心だ」

 

「いや別に疑ってないですけど」

 

 嘘だ。いや疑った結果そうではないと分かったために、ガレスが『嘘ではない』と言った時点では既に嘘ではないとは分かってはいた。なので嘘でないとも言えるだろうがそれは何より俺が認めたくない。

 俺はガレスが発言する際にテレパシーを発動していた。テレパシーの主な用途は任意の相手との遠距離で言葉を発さずに通話することだ。だがテレパシーはあくまで俺から相手に発信出来るだけで相手の考えていることを読めたりするわけじゃない。一応相手自身が伝えたいと考えているなら読むこともできるが基本それはない。そのため今のガレスが何を考え発言したのかは俺には分からない。

 だがガレスの心情、心のあり方なら分かる。ガレスが俺に対して愛情を持って告げてくれている。具体的な中身こそわからないもののそれは嘘ではない。

 ついでに言っておくとテレパシーは単純な感情の起伏のみでなく、相手の発言が嘘か真かを完全に見分けられる。だから愛情を持っている云々を省いてもガレスの発言が嘘でないことは分かりきっている。

 要は俺は俺のことを心配してくれているガレスを疑い、テレパシーなんて信頼を冒涜するような手段を用いたわけだ。

 

「そうか、なら良い。で、弁明を聞こうか」

 

「魔術の練習をしてたら子供の悲鳴。助けないわけにはいかないと考えて行動に移した。マサリには止められたが俺がそれを振り払って強行して向かった。結果として俺は生き残ったものの消耗して助けた子供達を家に送り届けた後、疲れていたのか屋敷に帰ってすぐに眠ってしまった。無茶をしたことは分かってる。下手な言い訳はしない。罰は何なりと」

 

 ガレスは俺のそんな返事を聞いて眉間に皺を寄せる。どうやらお望みの回答ではなかったようだ。

 

「クリューソス、、、俺はな、お前にそれを止めろなんて言う気はない」

 

 ガレスのその発言に目を見開いたのは俺だ。はっきり言って意外だった。過去二回の無茶をした時のガレスはもっと派手に怒っていたからだ。それはもう今とは比較にならないほどに。

 だが今回はそうではないのだろうか?一応言っておくがさっきの発言もテレパシーで嘘でないことが分かっている。

 

「さっきも言ったが俺はお前を愛してる。そして誇りにも思っている。お前が男としてこの世に生を受けたその瞬間から、そんな風に育つことを望んではいたんだ」

 

 子供が人を助けるような善人であることを願う。親として当然の考えと言えるだろう。実際は真逆な存在なのだがガレスが知ってる部分だけで判断すればそう思うのも無理はないか。

 

「なるほど、ガレスにそこまで言ってもらえるならこれからも精進し続けるよ、俺も」

 

「あぁ自己犠牲だろうがなんだろうが人を救う行いができるお前は誇らしい、、、はずだ」

 

 ガレスの表情が大きく曇る。未だに嘘は一切ないがガレスは何かが引っかかっている様子だ。ガレスの言っていること的には現状不満はなさそうな気がするのだが。

 

「クリューソス、お前に対して分からないことがある」

 

「なんでしょう?基本何でも答えらつもりですよ」

 

 謙りながらも僅かに敬語になってしまうのはガレスの気迫にやられたからだ。そしてガレスの問いを待つ。

 その時はすぐに来る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()?俺ではなくお前自身がだ?」

 

 あぁ、これはまずい。

 

 そう直感した俺は必死に惚ける。

 

「そりゃまぁ、はい。別に尊敬の念を集めたくてやったわけでも恩を売りたいわけでもないので。やるべきと思ったからやったって感じですし」

 

「そうだな。お前のそれに嘘はないだろう。問題はそこじゃない。知っての通り俺もかつて冒険者をやっていたわけだが、そこでも今のお前のように人としてやるべきだからやったみたいな奴らはいた。だがそいつらはそれを誰に自慢することはないが自身の胸の内で誇りには思っていたはずだ。そうでなくとも前向きに考えていたはずだ」

 

 どんどん俺の表情が変わっていくのが鏡を見ずとも嫌でも分かる、分かってしまう。反論もせずに俺は聞き続ける。

 

「対してお前は何だ?何故そんなに苦痛に満ちた表情をする?何がそんなにお前を苦しめる?」

 

「それは、子供を一人救えなかったから。俺が遅かったせいで三人いたはずの子供が二人に」

 

 そう、これは嘘じゃない。実際そこは少し気になってはいるのだ。ここを強く押していけば、

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そう考えいるのではないか?」

 

 確信を突かれついに今まで最も表情が歪む。そう俺は自分が人を助けることを馬鹿みたいに考えている。だって俺の目的、異世界を侵略して故郷の星に献上することは彼らを地獄に落とす行為だ。下手をすれば死んだほうがマシとなる可能性さえある。

 だからまるで少しでも労働力を取りこぼさないために助けているようで自分が嫌いになる。いや、それ以前に『よくやるよ』というそんな皮肉が脳裏に浮かび続けるのだ。

 

「そ、れ、は」

 

「話せないか?別に構わないぞ。無理に聞き出すつもりはない。お前の行動そのものは間違いなく正しいのだから俺は止めない。だがな()として少しだけ言わせてもらうぞ」

 

 普段はおちゃけていて仮にも父親としてどうかといったガレスが真剣にこちらを向く。これから逃れることは許されないことぐらいクズでも分かる。

 

「生きていてくれ。自分を認めてやってくれ。元気な姿を見せてくれ」

 

 ガレスのその発言はあまりにも真っ直ぐすぎて俺には眩しくて、でも不思議と心に響いた。この人が父親であるのだと思わせてくれる。

 俺には前世に父親と呼べるだろう存在は二人いた。一人は故郷、ミューザリア星での生みの親としての父。そしてもう一人、地球を侵略する際に潜入捜査の一環でできた偽りの父親。彼は地球人で、非常に優しかった。結果として俺が一方的に裏切ったわけだが。

 

「、、、あぁ、悪かったよガレス。すぐには無理でもいつか必ず話す」

 

 俺がそう答えるとガレスは『そうか』と言い一人部屋を出ていく。ガレスもこの空気が嫌だったのだろうか?確かに似合ってはいない雰囲気を放っていた。案外無理をしていたのかもしれない。

 

 さて、残る問題は元々ガレスの座っていた席から見て右隣の席にいるパーネットとその逆のマサリか。

 先程のガレスの発言が未だに俺の心に残っているが、なんとか冷静に二人のことも対処しないとな。

 

「ねぇクリューソス」

 

 先に話しかけてきたのはパーネットの方だった。特に口を挟む必要性もないので俺は大人しく聞き手に徹する。

 

「私が言いたいこともガレスとそう変わらないわ。でも一つ違う。()()()()()()()()()

 

 それだけ言うとパーネットも席を立ち上がる。どうやらパーネットの話はこれで終わりのようだ。正直パーネットが一番話が長くなると踏んでいたので結構驚いている。

 

「誰かがあの人のことも見てあげないとね」

 

 そう言い残すとすぐさまパーネットは食堂を出て行く。言うまでもなくあの人とはガレスのことだろう。相変わらずの鴛鴦夫婦っぷりだ。

 

 となると残るは、

 

「クリューソス様」

 

 マサリか。

 

「私は主人様と奥様のおっしゃっていることを間違いだとは思いませんし、私も同じ思いです。でも、私が従いたいと思ったのはそんなクリューソス様です。クリューソス様のお考えになられていることを読めるメイドではありません。此度の魔物の件のように助太刀も出来ない無能かもしれません。それでも!私は変わらずあなたのメイドです」

 

 マサリは涙を堪えるようにそれを口にする。それに対して俺が言うべきことは決まっている。

 

「無能じゃないさお前は。誰よりも信頼してる。これは嘘じゃない」

 

 そう、これは嘘じゃない。俺は超能力や『拡本(オーブック)』のことを必要にかられてのことではあるもののマサリに教えている。でもマサリ以外にそれらのことを誰かに話したことはない。それはガレスにもパーネットにもだ。転生者であるといったことはマサリにも話していないがそれでも一番包み隠さずに話し合える人物なのは違いないのだ。

 

「だから、自分を責めるな。俺も極力そうする」

 

「ふふっ、やっぱりクリューソス様はそういう人です」

 

「あの時、逃げて悪かったな」

 

 俺が言っているのはマサリに言われたことが図星で逃げてしまった時のことだ。今改めて考えるとあまりにもガキだった。

 

「クリューソス様」

 

 ここでマサリは揶揄うような表情となる。そして続きを口にする。

 

「図星を疲れて癇癪起こすなんてお子様な部分もあるんですね。可愛い〜!」

 

「マサリ、てめぇな」

 

「てめぇですって、ハハっ!かわいいですねクリューソス様」

 

「未だにまともに給仕もできないメイドさんは黙っててくれますかね。戦闘に関して無能とか気にする前にそっち方面の無能どうにかしてもらえます!?」

 

「ぐはっ!せっかく欲しい言葉を必ずくれる主人的な扱いになってたのに残念ですよクリューソス様」

 

「先に欲しくない言葉言ったのはお前だろうが!」

 

 意外にも思うかもしれないがマサリとこうして冗談を言い合うのはこれが初めてのことである。そんな初めてが妙におかしくも楽しく感じてつい話し込んでしまった。どれだけの時間が経ったか、マサリは部屋を出て行った。

 途中堪えていた涙がつい溢れてしまったことでメイクが剥がれてしまったことが理由なようだ。まぁ女性ならそうおかしな理由でもないだろう。メイドとしてはどうなんだろうか?まぁわざわざ目くじら立てるようなことでもないし、今回はこれで良しとしよう。

 できればガレスに今回の件で解雇にされてないか確認しておきたかったのだがあの様子じゃ多分大丈夫そうだしな。

 

 さて、俺も部屋に帰るとするか。

 

 そう思い席を立ち食堂の扉の前へと行く。はずだった。

 扉の前に誰かが仁王立ちすることで俺の進路を塞ぐ。食堂から出ることは別にこの扉を使わずとも可能である。食堂に直結している調理室を通っていけば廊下に出ることは可能であろう。

 とはいえわざわざそんなことはしない。この人物がこれをする意味があるのだろうから。それを聞かずに別の扉に行くのはマサリに対してしてしまった『逃げ』の繰り返しである。

 ところでこの仁王立ちをしている人物だが皆の想像通りだ。というか既にこの場にいる可能性があるのは俺の他にこいつしかいない。

 

「チルマー、なんのつもりだ」

 

「いやいやクリューソス。私だけ何にもないじゃん!何かないわけ!」

 

「寝覚めに散々話したろ」

 

「それじゃ足〜り〜な〜い〜の!」

 

「分かった分かった!」

 

 しゃがんで俺を揺さぶりながらそう言ってくるチルマーを慌てて止める。

 

 はぁ、今日は本当に大変だ。

 

 そんなふうに思いながらもどこか楽しく感じていたのだった。

 

 

 

 ーーーーーー

 

 その日の夜、ベットに横たわり思案していた。これからのこと。

 

 あぁ本当に楽しい。ガレス、パーネット、チルマー、マサリ、それ以外にもレーベン家に仕えるマサリ以外の者達。彼らと共に生きていっている今が俺にとってのかけがえのない時間だと感じている。俺だけの一方的なそれではない。きっと皆んなもそう考えてくれている。テレパシーなんか使わなくてもそれが分かる。

 だからもう侵略は諦めて、未来に生きよう。どうせ異世界なんだから前の世界のことなんて考える必要はない。

 

 本当に?

 

 前世に帰る方法は俺を転生させた神曰くあるらしい。その方法こそ教えてもらえはしなかったが、存在自体は知らせてもらえた。それを知ってるのに、知らないふりしてこの先を生きていくのか?

 俺が異世界から帰れなければ死ぬのは誰だ?答えは決まっている、俺の家族だ。レーベン家の方ではなく、地球の潜伏先の家でもない。本当の意味で俺を産んでくれたといえる父母が属する家族。それを見捨てるなんて俺にはできない。俺を転生させた神は故郷の星で人質にされている俺の両親と姉を処分されないように王に契約を持ちかけてくれたらしい。

 契約の条件は俺の肉体が二十歳を超えるまでに元の世界に帰ること。条件を肉体年齢にしたのは彼方の世界とこちらの世界で時間のズレが生じる場合があるためらしい。神はだからと言って肉体年齢を誤魔化すような魔術を習得するようなことはするなと、それを破れば死ぬ契約をされた上での転生となった。

 

 だから俺に残された選択肢は二つしかない。どちらかの家族との生を選び、どちらかの家族との生を捨てる。それしかない。

 レーベン家の方を選べば処分されるのは俺の真の両親を含む一家のみ。対する方を選べば死ぬのはそれとは比較にならない量だろう。

 本能は俺に元の星でのことなど捨てろと訴えている。それが楽だ。簡単だ。何より楽しく過ごせるだろう。

 

 誰でもない(俺の)俺の(誰かの)声が責め立てるように脳裏に駆け巡る。

 

 ふざけるな。そんなことは許されないし、許してはならないし、許してももらえない。

 

 今ここでレーベン家の方を選ぶだと?では地球での潜伏先での家族達を見捨てたのはどういう了見だ?むしろあっちの方が何年もお世話になったし、家族という認識は強かったはずだ。楽しかったよなぁ?信じてもらえていたよなぁ?大切に思えていたよなぁ?

 でも捨てた。地球でのお友達達も見捨てたなぁ?ご近所さんも見捨てたなぁ?友人、知人、家族、見知らぬ人、それら全てを殺していいと決断を下したのは誰だ?俺だろう。

 

 一度お前は地球の全人類と自身の家族の命を天秤にかけ、答えを出した。それらより自身の家族の方が重いと結論を出した。そんなお前が今更自分が楽だからという理由で天秤に手出しするなど許されるとでも?

 

 後悔など許さない。反省など許さない。残虐に残酷に、俺は一生そういった役割でなくてはならない。それをしないことは裏切った俺がしていいことなはずがないから。

 

 毒を食らわば皿まで。そんな大層な信念もなければ、役割を担ってもいない。だが一度やってしまったならもう引き返してはならない。引き返せば今までの全てが無意味になる。彼ら彼女らの死を俺が勝手に背負うことが許されるとも思えないが、無駄にするなどもっと許されない。

 

 俺に自由などない。俺には何一つ()()()()()

 

「ごめんなさい」

 

 許されないのにそんな言葉が一人孤独な自室に響く。

 

 俺は混濁とする思考の中で結論を出す。結論を言えば俺の目的は変わらない。変えてはならない。異世界は変わらず侵略する。

 

 俺のやるべきことは何なのか?そんなことは神さえも知らないし、知りたくもない。俺にはそれをやる以外許されないのだから。

 

 そんな風に俺は眠りについた。

 





ちょっと暗い話になったのでお茶を濁すついでにお願いを一つ。お気に入り登録と感想が欲しいよ〜、特に感想は酷評でもいいから貰いたいです。自分じゃ改善点見つけにくいんで。
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