【完結】特撮ヒーローのライバル系カイジン、異世界に転生す。   作:ふくつのこころ

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年内投稿はあと一話できたらいいかなと思っています。


09:魔女は弟子を千尋の困難に突き落とすー4

 咆哮の主は七メイルはあろう、緑色のドラゴンだった。

 あたり一帯を翼の羽ばたかせるだけで風を起こし、木々は倒れていく。

 

「しっかし、よりによって!いちばん、幸運(・・)な方なんてねぇ!?」

 

「デッカイ奴のどこが幸運なんだよ!?」

 

「狙う的が大きいほうが狙いやすいでしょう?魔法がね!」

 

 そんなこともわからないんだー、とせせら笑うエヴァ―レインにアーサーはムッとしつつも、魔法の利き腕を構える。

 いつでも緑色のドラゴンから逃げ出せるように距離を取りつつ、後ろへ後ろへと下がっていく。

 

「ドラゴンは炎への耐性がある。半減どころじゃすまないわ、あの頑丈な鱗でほとんど無効化されていっているといってもいい。まぁ、当然よね。自分の炎で身体が焼けてしまうなんて馬鹿なことはないもの。

激流のエリアス!疾風のゼファー!唸り穿つ波濤(はとう)の槍を放て!」

 

 エヴァ―レインが水と風の属性を重ね掛けすると、水でできた槍を風の魔力が螺旋を描くように包み込み、風の魔力による増強(ブースト)を受け、三本に分かれたかと思うと、ドラゴンの方へと牙を剝く。

 

 ドラゴンは魔法効果を持たない武器での攻撃では傷つかないほどに頑丈な鱗で覆われた肉体を持ち、その鱗による恩恵と炎への耐性を兼ね備えている。

 火炎の吐息(ブレス)も恐ろしいが、その翼を羽ばたかせることで引き起こされる衝撃波(ソニックウェーブ)と爪や牙、さらに人間の背骨であれば一瞬で砕いてしまう尻尾による打撃が強い。

 個体差にもよるが、格闘能力も高いため、まさしく、ドラゴンはマジックアイテムや魔法薬に使うための材料を得るだけでも複数人を要する別格の存在だった。

 

 エーデルワイスが課題のリストに入れたのも、反発しあう二人で知恵を出し合ってくれたら、という程度でしかなく、他の課題一つでもクリアすることができれば、それでいいのだろうとはエヴァ―レイン自身も分かっていた。

 

 エヴァ―レインが放った水と風の属性を掛け合わせた魔法によって作成された槍はドラゴンへ牙を剥くと、ドラゴンは翼で起こした衝撃波で一つ、尻尾で一つ槍を破壊した。

 二本の槍が破壊され、残りの槍も火炎の吐息で蒸発させられるかと思われたが、そこでエヴァ―レインはさらに魔法による後押しを加える。

 

「追い風のゼファーよ!波濤の槍を後押ししろ!」

 

 魔力で発生した風が残った一本を後押しするように吹くと、槍はドラゴンの翼の翼膜の方へと向かい、衝撃波によって消えた。

 

「チッ、アレ自信あったんだけどなぁ!」

 

 エヴァ―レインは舌打ちするものの、アーサーとデッドビートの方を一瞥する。

 彼らにはまだ悟られていないが、正直なところ、エヴァ―レインは内心、焦っていた。

 アシッドトードの酸の唾液、杖を作るための妖精の住まう木から材料を得ること、獣人の頑丈な腰布を得ることとはランクが違いすぎる。

 属性の掛け合わせは最近、魔法を習い始めたようなアーサーやリリアーヌ以上には自信があると思っていたが、明確な上位種であるドラゴンには全然歯が立たないのだと思い知らされる。

 

「全然利いてないではないか!」

 

「エヴァ―レインが放ったのが全部、かき消されてしまった」

 

 デッドビートが食い入るように言うと、アーサーはぎゅっと拳を握る。

 

「デッドビート!カイジン転生って、魔法使えるかな?」

 

「アンタ、何するつもり!?」

 

 スライム(・・・・)に自らの魔法で文句を言われるのは大変不服なところだが、自分よりも才能がないアーサーが魔法を使ったところでとても役に立つとは思えない。

 エヴァ―レインがアーサーに向けた声色は普段のおちゃらけて小馬鹿にするようなものと異なり、真剣味を帯びたものがあった。

 

「デッドビートと合体して、その能力と僕の魔法を掛け合わせる(・・・・・・)

 

「は?そんなことが可能なの!?そいつの能力って!?」

 

 アーサーの発想は突飛なものだとエヴァ―レインは思った。

しかし、アーサーもただ無茶苦茶なことを言っているつもりはない。

 初変身時、竜人はデッドビートの能力であるカイジン忍法を別体系の魔法であるとみなした。

 このとき、デッドビートは別体系の魔法ではないと言ったが、違う属性同士で魔法を重ね掛けができるのであれば、シュリケンなる小さな暗器を魔法らしいもので作って飛ばす術を使っていた。

 その技の名を無数の手裏剣を飛ばす、朧手裏剣の術と言っていたが、他にもカイジン忍法があるとすれば?あるいは、掛け合わせることができたらと考えたのだ。

 

「……正直なところ、小僧には期待していなかったんだ。魔法の習得の覚えが悪いし、何より戦闘センスがないものだと。だが、オレのカイジン忍法とお前の魔法、いまのオレ達なら、できるかもしれない」

 

「……一応、あたしは親切だからね。アンタたちに言っておくけれど、ドラゴンには炎はほぼ無効化されるのよ?そこはちゃんと考えた上で使いなさいよ。あたしは成果を上げたいだけだから、死ぬつもりはないし、いざってときはアンタたちを身代わりにすることだって辞さないわ」

 

 カイジン転生!とデッドビートとアーサーが光に包まれ、紫焔の柱が立ち上ると、ファイアパターンのマフラーをした忍び装束のようなものに身を包んだ髑髏面の超人へと変身を遂げる。

 見たことがない光景だった。

 妙なスライムと人間が一つになり、変わった姿になる様をエヴァ―レインは無意識のうちに見見惚れてしまっていた。

 その光景をドラゴンが邪魔しなかったのは、紫焔の柱が突如現れたことでドラゴンが怯んだのだ。

 

「僕も死ぬ気はないんだよ、エヴァ―レイン」

 

「じゃあ、策を聞きましょうか?」

 

 ドラゴンの放つ火炎の吐息に対し、大地のティターン!隆起する壁よ!と二人で利き腕を突き出しつつ、エヴァ―レインはアーサーに尋ねる。

 

 ドラゴンの前で変身するのは本来であれば、自殺行為だ。

 ドラゴンの前では、武器を構えて攻撃の隙を伺い、交わしながら魔法効果を付与して斬りつけるか、魔法を放つのが得策だ。

 時間のかかる変身はドラゴンは待ってくれるものではないのだが、アーサーとデッドビートのカイジン転生で出現した紫焔の柱はドラゴンにとっても未知の光景らしく、怯んで隙ができたから変身完了したのだ。

 

「僕がドラゴンをおびき寄せるから、エヴァ―レインに援護してほしいんだ。言ってただろ。囮に使うんだってこと」

 

「……確かにアンタを姉弟子として、囮に使うつもりでいるけど。これで死んでも恨まないで頂戴ね?やりたいtなんて言ったのは、アンタなんだから」

 

 アーサーの意図が分からないエヴァ―レインはアーサーを品定めするように見た後、超人の姿ゆえにエヴァ―レインを見上げていたアーサーを今度は見上げる側になったエヴァ―レインは眉を顰める。

 

「恨まないさ、だって言い出したのは僕の方なんだから!」

 

 アーサーが明るい口調で言うと、エヴァ―レインはその顔を神妙な表情で眺めていた。

 

 土の壁がドラゴンの巨大な尻尾の一撃で破壊されると、先に飛び出したのは超人だった。

 優れた脚力を使い、魔力を込めると、エネルギーで構成された手裏剣が放たれ、ドラゴンの周囲に突き刺さる。

 

『全く、このお人好しの馬鹿め!構える動作はお前がやれ!制御はオレがする!お前はやろうとしていることに集中しろ、カイジン忍法と魔法を掛け合わせるんだろう!?』

 

 脳裏でデッドビートの声が響く。

 

「そうだよ、デッドビート!頼んだ!」

 

 アーサーは初変身時、デッドビートがそうしたように左手の人差し指と中指を立てる。

 

「カイジン魔法忍法!!疾風波濤手裏剣(はやてのはとうしゅりけん)!!」

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