【完結】特撮ヒーローのライバル系カイジン、異世界に転生す。 作:ふくつのこころ
カイジン忍法と風属性魔法の重ねがけ、それが
デッドビートが力の制御を務め、空いた手のひらの上で回転する風のように吹き荒ぶエネルギーの塊のような手裏剣。
「(どうなってんのよ!?あたしの弟弟子、妹弟子ってのは!)」
アーサーともう一人、師匠のエーデルワイスと修行している銀髪の少女がエヴァーレインの脳裏によぎる。
土属性の魔法で壁を大地から隆起させつつ、ギリッと奥歯を噛み締める。
「(バッカみたい。そんなにアッタマガチガチなの。……
エヴァーレインは、かつて同じ屋根の下、エーデルワイスの下で共に学んだ人物を思い出す。
ドラゴンの囮を買って出たアーサーは超人となったことで得た、凄まじい能力で作り出した風の手裏剣はぐるぐると回転しつつ、ドラゴンの吐き出す火炎の吐息を弾き飛ばす。
手のひらから十センチ、アーサー達の世界の単位になおして十センタ。
暗器を思わせるサイズから徐々に巨大化していく、疾風波濤手裏剣。
人差し指と中指を立てるのをやめ、右手で三対の手裏剣の刃の一つを持ち手のように握る。
ドラゴンは羽ばたいたことで引き起こす、衝撃波をアーサーが風の魔力をぶつけて相殺させると、強靭な脚による一撃をアーサーにぶつけるが、それもアーサーは手裏剣を回転させて盾のように使用する。
投げつけることで風を起こしながら使う、中距離武器の手裏剣としての使い方、刀剣としての使い方、そして、盾のような使い方。
奇しくも、それらの用途は手裏剣の三対の刃になぞらえたように三つであった。
盾のように手裏剣を回転させ、巨大なドラゴンの脚の攻撃を受け止めた。
時折、ドラゴンから放たれる火炎の吐息はエヴァーレインが作り出す土の壁で受け止めると言う、後衛からの支援を受けて戦う。
それは、奇しくも、デッドビートのライバルであったグレイトマンが巨大化したカイジンと戦う時に見せた戦法の一つである。
『(……まさか、オレも奴と同じような戦い方をするとは)』
感慨深くなるものの、デッドビートはグレイトマンになったわけではない。
ファイアパターンのあるマフラーがカイジン転生をアーサーとしたことで現れるようになったものの、デッドビート自身は自分の変化には気づいていない。
いかに不利な状況であろうと、その不撓不屈の根性で戦い抜く。
それが不撓不屈カイジン、デッドビートの生まれ変わってもなお変わらない戦い方なのだから。
ドラゴンは再度、火炎の吐息を吐き出す準備を始める。
その瞬間、動きは緩慢になった。
大きな一撃を繰り出す力をためるため、エネルギーの消費を最低限に抑えているらしい。
「……!見えた!次、火炎の吐息を吐き出すまでに時間がかかる!
力が収束したところを狙って、アンタの
「カンタンに言ってくれるけど、隙はどうすんのさッ!」
「あたしがなんとかしてあげるわ、世話の焼ける、おとーとくんのためにね?……わかったんなら、あたしの気が変わらないように、ちゃんとやんなさいよ?
エヴァーレインは声を張り上げる。
このとき、初めてエヴァーレインはアーサーを“おとーとくん”と弟弟子を馬鹿にするような呼び方ではなく、アーサーと初めて名前を呼んだ。
こんな期待のされ方を姉弟子にされてしまったならば、アーサーには応えたいと言う気持ちでいっぱいになっていた。
「なら、僕もしっかり気合いを入れなくちゃな!デッドビート!!」
『……あの性格最悪の女とのやりとり、ちゃんと聞いてはいたさ。全く、お前と言うヤツは大したものだよ』
自らの
デッドビートのライバル、グレイトマンの人物像は、アーサーと同じタイプの性格であったため、グレイトマンに似たタイプであるアーサーを武人気質故にデッドビートは気に入っていた。
つまるところ、アーサーはとても真っ直ぐなのだ。
「なら、燃える感じで行こう!ドラゴンの炎なんかで燃やし尽くされないくらい、暑い感じでしっかりとさ!」
『……お前に任せる。オレのカイジン忍法とは異なる、小僧が作り出した技なんだからな。新しく技を作り出すと言うならば、疾風波濤手裏剣と被らせるんじゃないぞ!』
「なんだ、意外と
このドラゴンとの戦いの中、エヴァーレインの援護があるとはいえ、アーサーとデッドビートは以前よりも呼吸が合うようになっていたし、互いの意思疎通ができるようになっていた。
この会話の最中にも、巨体を誇るドラゴンの攻撃を回避しつつ、頑丈な身体に蹴りを繰り出すことも可能になっていた。
竜人相手には圧倒することもできていたが、生物として、そもそも、ドラゴンはステージが違う。
カイジンとして、優れた能力を持つ、デッドビートの肉体であっても、ドラゴンの肉体には魔力が合わさっていない蹴りは効果が薄い。
デッドビートと一つになったことにより、身体能力が上昇したこと、さらにエーデルワイスの下で学んできた体術はドラゴンからの攻撃の回避に役立っていた。
魔法使いに必要なものは豊富な手段。
そう言っていた、エヴァーレインの言葉を思い出す。
エヴァーレインは、この戦闘中も絶えることなく、アーサーたちに協力してくれている。
自分が死にたくないから、と言う理由であっても、ドラゴンが放つ衝撃波が疾風波濤手裏剣を消し飛ばさないよう、瞬時に詠唱して土の壁を地面から隆起させ、アーサーを守るエヴァーレインなしではできないことだ。
「疾風波濤手裏剣!!」
ドラゴンの開けた口にエネルギーが溜まると、すかさず、後方から風の刃がドラゴンの目玉を狙う。
いかに鍛錬を積み重ねようとも、鍛えられない部分があるとすれば、それは口内、体内、そして、目玉だ。
ここに関しては、生きている以上は皆共通していると言えるだろう。
風の刃が唸り声を上げるような音を立て、ドラゴンに襲いかかる様はさながら、牙を獲物へと突き立てる猟犬のようにアーサーたちには見えた。
目玉が真っ二つに切れる音がすれば、魔力の制御がわずかに緩んだドラゴンの口内へと飛んでいく、三対の刃のある風のエネルギーが構成した手裏剣。
風の属性と炎の属性、めちゃくちゃな制御の仕方をすれば、暴発し、大惨事も起こりうる。
だが、相手がドラゴンであるならば、使える手はいくらあっても構わない。
口内で魔力同士がぶつかり合うことにより、ドラゴンの口内は魔力が暴発し、最後にドラゴンは雄叫びを上げて地面に倒れ伏す。
結局、ドラゴンの身体を覆う、鎧のような鱗に魔法でさえ、傷つけるのが叶わなかったのが悔しいところだ。
「さて、採取はしっかりしなくちゃね」
飛び出した、エヴァーレインは特製の魔力を帯びたナイフでドラゴンの鱗を数枚削り、エーデルワイスから預かった瓶へと詰める。
「よし、これでバッチリね!!……何よ、あたしに文句でもあるわけ?」
「……いや、ドラゴンの肉体に傷つけられるナイフあるなら、使って欲しいなって」
周囲に警戒し、まだ変身を解かないアーサーの言葉に瓶詰めして見せたエヴァーレインは眉を顰める。
「採取用だからね。壊れたら、なかなか修理が大変なのよ?とにかく、帰りましょうか?おつかいもコンプリートだしね?」
エヴァーレインは片目を閉じ、爽やかに笑った。