【完結】特撮ヒーローのライバル系カイジン、異世界に転生す。   作:ふくつのこころ

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王立警備隊ハウンズ
13:王立警備隊ハウンズのファルコン


 エーデルワイスの卒業試験に合格し、アーサーは両親とナーロウ家に手紙を書いた。

 両親は息子が魔法を修めたことを喜んだが、ナーロウ家からはリリアーヌの卒業試験の合格に対する、祝福の返事が送られてきた。

 同封されていたのは、ナーロウ家の領地内にある葉を使って作った栞だった。

 

『親愛なるアーサー

 お前が合格したこと、心より嬉しく思う。

 流石、ナーロウの次代の勇者となる私に相応しいだけのことはある。

 しばらく、私は王都で勇者の務めを果たすので、お前に会うことができない。

 それは残念に思うけれど、私が居ない間でも魔法の鍛錬を絶やさないようにとスラリンとも仲良くしてね。

 お前の親愛なる、リリアーヌより』

 

 手紙に押されていた、ナーロウ家のロゴは竜の頭部。

 初代勇者、オリーシュ・ナーロウの英雄的な強さを讃えてのものだとは、この国に住む人間ならば、誰もが知っていることだった。

 卒業したアーサーはデッドビートを連れ、王国の都、王都を目指す。

 エーデルワイスのマジックアイテムにより、屋敷の敷地内から出て、都を目指す目的は王都にあった。

 

「アーサー、私のツテで王都警備隊に入ってきな」

 

「まさかの!?」

 

「じゃあ、行ってきてねー」

 

 ゆるいやりとりを思い出した。

 エーデルワイスに仕事の世話をされるとは思わなかったが、実家に戻ったところでリリアーヌと並び立つような仕事に就けるとはアーサーも思っていない。

 それなら、エーデルワイスの推薦の手紙を持ち、王都に向かう方が賢明だと思った。

 ここ、リオーネ王国の王都の名はリオネル、王族の住む城と城下町が広がっている。

 特に魔法使いが多いとされ、エーデルワイスに認められた今、王都を警備する警備隊となって力を試すのは格好の機会と言えるだろう。

 

「随分、立派な街なんだな」

 

「デッドビートが住んでた街は、リオネルみたいな場所だった?」

 

 アーサーの頭に乗りながら、デッドビートの漏らした言葉にアーサーは興味を持った。

 デッドビートはアーサーの言葉を聞き、鉄筋コンクリートの建物や自動車が走り、時折、怪物とヒーローが現れる(・・・)点では、いま生きている世界とほとんど変わらないかもしれないが。

 勇者という存在がおり、魔物もいる世界はデッドビートの生きていた世界と似ている。

 ただ、勇者というものがデッドビートには、よくわからなかった。

 

「オレがよくわからんのだが、勇者って言うのは、どんなものなんだ?」

 

「あれ?昔、一緒に読んだりしなかった?」

 

 デッドビートの疑問にアーサーは首を傾げ、背負っていたリュックサックから小さな手帳を取り出した。

 

「『でんせつのあくま』の絵本か?」

 

「『ほしのえいゆう』も忘れないで」

 

 デッドビートは生前、絵本を読んだことがなかったが、アーサーが近くで読んでいるのを聞き流していた程度でほとんど覚えていない。

 アーサーが開いた、手帳には『でんせつのあくま』と『ほしのえいゆう』が描かれている。

『でんせつのあくま』の方はカイジンのデッドビートの姿をしているが、『ほしのえいゆう』の姿はデッドビートのライバル、グレイトマンに瓜二つだった。

 

「……このほしの、って奴がお前の幼馴染の先祖ということになるのか?」

 

「あ、間違えた。リリアーヌの先祖は、オリーシュ・ナーロウ。強大な力を持って生まれ、その凄まじいパワーで魔王を討ち倒した。

 それで世界を平和にした後は、何人もの嫁をもらってハーレムを築いた。

 リリアーヌの家は、そうしたオリーシュの子供の血統なんだってさ。

 オリーシュの子供の中で特に力を持っていたから、リリアーヌの家は力があるんだ」

 

 手帳のページをめくると、銀髪に左右の目の色が違う剣や魔法を使う男のイラストが出てきた。

 大人の男の持ち物であろう、手帳に落書きをしているのは、アーサーもそれなりに両親に愛され、クソガキぶり(・・・・・・)を発揮していたのだろうとデッドビートはみた。

 リオネルの王都警備隊の本部に向かうまで、アーサーとデッドビートはさまざまなものを見た。

 魔法使いがアーサーとデッドビートのように見慣れない小型の竜や猫を引き連れていたり、魔法の品を扱う店が並んでいる。

 アーサーは物珍しいものを見るような視線であたりを見渡しつつ、頭に乗っているデッドビートに見えるように手帳を頭の上に掲げるようにしながら歩くと、目立ってしまうことに気づいた。

 

「お前ら、目立ってんの気づいてねえの?」

 

 ハァ、とため息をついた明るい赤髪をしたアーサーと同い年くらいの少年が肩を叩く。

 道着姿のまま、飛び出してきたことで少年はアーサーを上から下と眺める。

 金色の瞳はキラキラ光り、まるで太陽のように明るいとアーサーは思った。

 

「俺様は王立警備隊ハウンズのファルコン、ファルコンって呼んでくれよな」

 

 少年は着ている群青のジャケットの背中をアーサーに見せる。

 ハウンズのロゴなんだろうか、三ツ首の犬が描かれている。

 どうやら、これが制服のようでファルコンは下に明るい色のシャツを着ており、前は留めていない。

 

「僕はアーサー。頭にいるのは、デッドビート。ちょうど良かった、僕ら、ハウンズの本部に向かうところなんだ」

 

「スライムを連れた、アーサーって、お前のことかよ!?エーデルワイス、って魔女の推薦だよな?」

 

 ファルコンにアーサーが自己紹介すれば、思い出したようにファルコンは目を見開く。

 手のひらをぽん、と叩くようにする仕草と言い、感情表現がとても豊かな少年のようだ。

 

「あるよ、エーデルワイス先生からの推薦の手紙?もさ」

 

「どうやら、話がまとまりそうだな?」

 

「ス、スライムが話した!?ほえー」

 

 アーサーがファルコンにエーデルワイスからの手紙を見せると、デッドビートがその可愛らしいスライムボディに似つかわしくないような低音ボイスで話し出すものだから、ファルコンはまた目を見開いた。

 

「こうしちゃいられねえ!ボスに知らせねえと!ようし、来いよ!アーサー!スラリン!」

 

「誰がスラリンだ!誰が!」

 

 デッドビートの叫び虚しく、ファルコンはアーサーとデッドビートを軽々と引っ張って(・・・・・・・・)、走り出した。

 羽毛が生え、飛ぶことに適した肉体を持つ半鳥半人に瞬く間に変身、まさに(ファルコン)の名前に相応しい力強さとスピード、アーサーたち二人を掴んで跳び上がった。

 アーサーたちのカイジン転生とは異なる、また別の変身だと思われるが、徐々に離れるどころか、凄まじいスピードで飛ぶものだから、アーサーたちは乗り物酔いして気分が悪くなってきた。

 

「あ、大丈夫?吐きたいなら、地上にどうぞ?俺様の方は勘弁して?」

 

「お……えっ」

 

「ぎゃああああ!?」

 

 ファルコンがゲラゲラ笑いながら、アーサーの方を見るも、想像以上に青ざめた顔でいうものだから、だんだんと嫌な予感がしてきた。

 時間を置かずにアーサーが吐いたものが走っている、ファルコンに振りかかった時、アーサー達はある場所に辿り着く。

 

「げえ……。やめてくれよ、吐くの。とりあえず、ボスを呼んでくるから、中で座って待っててくれよな。……俺様も、綺麗にしてこないとなあ」

 

 王立警備隊ハウンズ本部。

 城下町の中央、そこにある建物がファルコンが所属し、アーサーが働き始める場所だ。

 吐瀉物を拭い、アーサーが道の傍で吐いているのを嫌そうな様子でファルコンは見ていた。

 

「ボス!新人の奴ら、連れてきた!」

 

 扉を開き、変身を解いたファルコンが呼びかけ、しばらくすると、杖をつく音とともに一人の中年男性が現れた。

 

「エーデルワイス先生から聞いている。

 ようこそ、王立警備隊ハウンズへ」

 

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