【完結】特撮ヒーローのライバル系カイジン、異世界に転生す。   作:ふくつのこころ

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15:涙が落ちて変貌する者、ドロップ

 ラクリマ。

 涙を意味する、その名前は『魔法を使えない』者たちの涙に由来するのだと言う。

 簡単に魔法を使うことができる、そのマジックアイテムは最初に触れた使用者が連想する力のイメージを発現させる。

 涙の意味通りに召喚獣や魔法なしで魔法を行使できるが、怪物に変わってしまう。

 形は六角形で厚さは薄めのクリスタル状。

 量産も可能なマジックアイテムであり、心の在り方を受けやすく、常習性が高い。

 クリスタルには宿した異能に由来するロゴが浮かび上がる。

 そして、心体が壊れ、怪物となった者を涙を落とした者、ドロップと呼ぶ。

 

「ってわけなんだけど、わかった?」

 

「つまり、手軽に使える危険な薬ってわけなんだ?」

 

「だいたい、そんなものかなぁ。使うやつは魔法の才能がなかったとかコンプレックス持ってる奴らが多いって感じだな」

 

 ファルコンの説明を聞き、アーサーの言うイメージに外れではないと言いつつ、ファルコンは頷いた。

 

「変身アイテム、のようなものか」

 

 デッドビートはライバルの姿を思い浮かべる。

 デッドビートのライバル、グレイトマン。 五角形のクリスタルの形をしたマジックアイテムではないにせよ、アイテムの力で変身していた。

 あのアイテムが違法か正当か、なんてことにこだわっては野暮なんだろうなとカイジンは身体をプルプル揺らしつつ、銀色のボディのヒーローに思いを馳せた。

 

「へんしんあいてむ?変わるってことなら、そうかもしれないけど、アタマのカタい魔法使い連中はラクリマユーザーのドロップ共のことは、失笑ものだってボスから聞いてる」

 

 ファルコンは変身アイテム、と言う響きが

 聞き慣れず、小首を傾げた上で言葉を続ける。

 

「ボスが魔女に魔法を教わってたの、正直なところ、驚いてたんだ。俺様もドロップ共と変わらないからよ」

 

「それって、どういう……?」

 

 アーサーがファルコンの言葉に眉を顰めると、悲鳴が聞こえる。

 悲鳴がした方向にファルコンは迷わず、アーサーらを王立警備隊ハウンズ本部に連れてきた時と同様の半鳥半人の姿に変身する。

 よくよく見ると、ファルコンの頭部は顔に赤い線が入った(ファルコン)のそれであることにアーサーは飛び去る様を見て気がついた。

 

「後で教えてやる!このファルコン先輩(・・)がな!」

 

 意気揚々と飛び出していった、ファルコンを見ていると、とんとんとアーサーの肩を叩くもの(・・)がいる。

 

「早く行きなよ。見かけないけど、ハウンズなんだろ?」

 

 耳を垂らした、可愛らしい群青色のベストを着た白うさぎだった。 

 大きさはスライム形態のデッドビートと同じくらいか、それより少し小さいくらい。

 

「うさぎに持てるの?……もしかして、僕に話しかけてる?」

 

「他に誰がいるというんだ。大丈夫、ホワイトフットはすごい」

 

 うさぎは不満げな様子を見せた後、小さく動いて背中を見せる。

 その群青の背中にはハウンズのロゴがあり、ホワイトフットと名乗ったうさぎはアーサーの背中から降りると、膨大な魔力が膨れ上がる。

 奇しくも、アーサーはその魔力と似たものを感じ取っていた。

 

「……竜人と一緒?の魔力?」

 

「このホワイトフットが竜人と?違う、ホワイトフットはハウンズの最古参の狩人(ハンター)だ!」

 

 ホワイトフットは可愛らしい声を上げながらも、その姿を凶暴な表情をした巨大なうさぎに変貌する。

 三メイル四十センタある、可愛らしさより恐ろしさが先に来る。

 釣り上がった口に赤い瞳はギラギラ光り、何よりも目を引くのはホワイトフットの手。

 ラビットフット(うさぎの足)ならぬ、ラビットフック(うさぎの拳)と言える禍々しい拳には、古傷がついている。

 アーサーがホワイトフットと竜人が似ていると感じたのは、その魔力。

 つまり、ホワイトフットは魔物と同じ魔力(・・・・)を持っているのだろうとみた。

 

「ホワイトフット!!」

 

「ファルコンと一緒にやってやってくれ!」

 

 そんな声援が周囲から聞こえてくる。

 ホワイトフットの扱いは、ファルコンと同じような扱いだった。

 

「ハ、ハウンズだと!?王立警備隊が何の用だ!!」

 

 そんなホワイトフット(巨大うさぎ)ファルコン(隼人間)に驚いたような声を上げて現れたのは、背中に突起が連なるように浮かび、毒々しいピンク色をしたカエルのような人間らしきもの。

 それは、ファルコンがアーサーに話した、違法マジックアイテムユーザーがラクリマで変貌した怪人。

 すなわち、ドロップと呼ばれるもの。

 アシッドトードの姿をしたドロップ、アシッドトードドロップである。

 ファルコンの姿を見て恐れてしまい、この場に姿を見せてしまったのだ。

 

「ホワイトフットたちはお前を見逃さない」

 

「余所見とは、良い度胸だな!俺様がいることを忘れるなよ!」

 

 アーサーたちに対し、口を開けて吐き出した泡玉のようなものをホワイトフットがシャドーボクシングをするように拳を動かすと、放れた空気の弾が泡玉を打ち消し、地面にこぼれ落ち、焼ける音がした。

 ファルコンは飛び上がり、急降下しながら、鋭い鉤爪になった足でカエル人間の身体を掴もうとした。

 その瞬間、カエル人間は長い舌を伸ばし、ファルコンの身体に巻きつけ、地面に叩きつける。

 

「がっ……!」

 

 ファルコンが呻き声を漏らすと、居ても立っても居られないアーサーは近くにいた通行人に紙袋を預ける。

 

「あのうさぎ、別に持ってくれるとかじゃないのかよ!!これ、持ってて!すぐに片付けるから!」

 

「は?いや、にいちゃん。ファルコンがあれでにいちゃんには勝てないだろ」

 

「良いから!」

 

 押し付けた通行人が戸惑いながらも、アーサーはデッドビートを頭に乗せ、走り出す。

 

「行こう、デッドビート!!」

 

「見逃せないのがお前だよな。

 良いだろう、小僧!」

 

 アーサーの様子にデッドビートはため息をつきながらも、慣れつつあった。

 カエルの異形がアーサーに酸の泡玉を吐くも、それらが着弾する前にアーサーとデッドビートは息を合わせて言葉を叫ぶ。

 

『カイジン転生(てんしょう)!!』

 

 紫色の炎の柱が上がると、アーサーとデッドビートは一つになり、ファイアパターンのマフラーをした超人に変身する。

 

「アシッドトードのドロップになったのだってラクリマを手に入れたからだってのに!

 お、お前、『でんせつのあくま』のファンか!?どんなラクリマを使ってんだ!!」

 

『カエルのカイジンのあの酸の泡玉には気をつけろ!小僧!』

 

 またでんせつのあくまだ、とデッドビートは思った。

 詳しいことはわからないまま、大層な名前で呼ばれることは嬉しくない。

 凄い奴(グレイトマン)と呼ばれているヒーローが聞いたら、どんな顔をするだろうと思いつつ、アーサーと意識を合わせ、舌に絡め取られているファルコンを助け出すと、ファルコンはまた空へと飛んだ。

 

「三対一、卑怯なんじゃないのか!?」

 

「あいにく、俺様たちは猟犬(ハウンズ)だからな、集団で狩りだってやるぜ!」

 

「ホワイトフットのホワイトフック(うさぎの拳)を喰らえ!」

 

 ファルコンが風を巻き起こすと、ホワイトフットはそれを後押しにしながら、アシッドトードドロップをラビットフックで殴り抜く。

 

「旋風のゼファー!!追い風よ!」

 

 殴り飛ばされた、アシッドトードドロップを風の魔法でスピードアップし、距離を詰めたアーサーが超人の回し蹴りを叩き込む。

 エーデルワイスの下で体術を学んだ、その成果はしっかり現れていた。

 アシッドトードドロップはアーサーの蹴りを受けたことにより、酸の泡玉を吐くと、アーサーは超人の反射神経でかわす。

 トドメの正拳突きを鳩尾に入れると、アシッドトードドロップは変身が解けた。

 変身が解けたことにより、線の細い少年と五角形のクリスタル、ラクリマに分かれた。

 

「任務完了」

 

 ホワイトフットは足で踏みつけ、自らも元のうさぎに戻った。

 

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