【完結】特撮ヒーローのライバル系カイジン、異世界に転生す。   作:ふくつのこころ

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16:新人猟犬の歓迎会

 アシッドトードドロップに変身していたのは、やはり魔法使いに対して劣等感を持っている少年だった。

 ラクリマを破壊し、抵抗できなくなった少年をアーサーたちは憲兵に引き渡した。

 王立警備隊ハウンズは事件の解決後は自分たちで犯人を連れていくことが許されていない。

 飼い犬が飼い主に投げられたものを取りに行くのとなんら変わりなかった。

 

「ご苦労だったな、飼い犬(・・・)共」

 

 揃いの黒い装束を身につけた憲兵は手錠をかけた少年を連れていく時、蔑んだ目をハウンズたちに向けた。

 ハウンズと飼い犬に少し違いがあるとすれば、ハウンズが犯人を憲兵に連れ出しても、感謝されない。

 むしろ、ハウンズが犯人を捕まえ、事件解決することは憲兵が活躍する場を奪うのと同義であり、王立警備隊と別に存在する憲兵隊とは折り合いが悪かった。

 可愛らしい、うさぎのホワイトフットも、愛想が良いファルコンも憲兵の言葉に気分を悪くし、睨みつけているところからも窺える。

 

「憲兵たちはああはいうけど、俺たちはハウンズを応援しているよ。あいつらはたまにしか来ないが、ハウンズは俺たちと一緒にいてくれてるならな。ほらよ、荷物だ。あと、うちの店のリンゴもつけておくよ」

 

 アーサーから荷物を預かった男性は片目を瞑りつつ、その言葉で憲兵への不快感を隠せなかったハウンズたちを労う。

 男性は青果店を営んでいるらしく、買い物する時はご贔屓にと愛想よく笑い、成り行きを見守っていた住民達もハウンズたちを称賛した。

 

「ありがとな、ハウンズ!」

 

「また頼んだよ!なるべく、あんた達も危ない目に遭わない方がいいけどね」

 

 そんな声を聞き、強張っていたファルコンとホワイトフットの顔は柔らかくなり、ファルコンはアーサーの持っていた買い物袋の一部を持ち、ホワイトフットはファルコンの頭に乗る。

 さながら、アーサーとデッドビートの日常風景のようだが、ホワイトフットは不満を漏らす。

 

「ホワイトフットの真似をしている、スライムが新人のくせに」

 

「何言ってんだよ、ウサ公!スライムとお前じゃ、被ってないって。じゃあ、帰ろうぜ!」

 

「待て、誰がスライムだ!」

 

「ま、まあまあ。穏やかに行こうよ」

 

 ホワイトフットの言葉を宥めるファルコン、ファルコンとホワイトフットの言葉に反応するデッドビート。

 アーサーはどうどう、と宥めながら、帰路についた。

 

「ご苦労だったな、お前たち。ホワイトフット、よく帰ってきた」

 

「プロフェッサー!!ホワイトフットは帰ってきた!」

 

 ハウンズの本部に戻ると、ダイニングでは、アンティークの肘掛け椅子にウィスカーは座っている。

 テーブルにはウィスカーが買ってきたものらしい品がいくつか見られ、ホワイトフットはぴょこぴょこ跳んで、ウィスカーの膝に飛び込んだ。

 ウィスカーはホワイトフットを優しく撫でて、アーサーとファルコンを労う。

 憲兵からの皮肉を込めた、労いの言葉とウィスカーの労いの言葉。

 そこにこれだけの違いがあるのかとなりつつ、アーサーは買い物袋を置こうとし、右往左往してしまう。

 

「私が案内しよう」

 

「ボス、俺様がやるからいいんだぜ!?」

 

 ウィスカーはホワイトフットを椅子へと寝かせた。

 杖をつき、立ち上がったウィスカーにファルコンが慌てて止めようとすると、ウィスカーは小さく笑った。

 

「私が今日は腕によりをかけて料理を作る、そのついでだ。お前はゆっくりするといい、ファルコン。ホワイトフットはもうリラックスモードだぞ」

 

「ホワイトフット、おなかすいた」

 

「ウサ公は呑気でいいよなぁ」

 

 ホワイトフットが耳を垂らし、鼻をヒクヒクさせている様子に黒革のソファに座ったファルコンがボソッと漏らせば、ホワイトフットはファルコンの腹に突っ込んだ。

 ぐふ、とファルコンは呻いて横になる様はまるで、弟と戯れ合う兄のようだ。

 

『おとーとくん、囮にするからねー♪』

 

 脳裏によぎった、笑顔で敵に向かってアーサーの背中を蹴り飛ばすような、理不尽な女(あね)のイメージをアーサーは振り払う。

 アーサーが買い物袋を抱えたまま、ウィスカーについていく。

 杖を壁に立てかけた後、食料庫をウィスカーは開け、アーサーから受け取った買い物の品を納めていく。

 その中にあった、リンゴを四つ取り出すと、蛇口を捻って出てきた水でリンゴを洗い、綺麗に皮を剥き始める。

 

「アーサー、リンゴは食べられるか?」

 

「はい、食べられます。……ボスは、料理が得意なんですか?」

 

 器用に包丁を扱うウィスカーにアーサーが尋ねると、ウィスカーは少し口角を上げる。

 

「少し齧っていた時があってな。……エーデルワイス先生は弟子にも自分で食事を振る舞っていただろう?アレと同じだ」

 

 懐かしそうに振り返るウィスカー。

 アーサーにはウィスカーがエーデルワイスの下で修行しているイメージが出来なかった。

 

「ボスはどうだったんですか?魔法の方は」

 

「私はそれなりにできた方だったさ、ただ大術がどうもね。先生から一本取ることは至難の業だったよ。その代わり、召喚に関しては負け知らずだったな」

 

 四つのリンゴを切り分け、ウィスカーの趣味らしいガラス皿に盛り付けると、懐から取り出したペンほどのサイズ、二十センタの杖。

 軽く振るうと、皿はダイニングテーブルへと向かい、そっと音を立てずに着地する。

 テーブルにガラス皿が着地すると、ファルコンとホワイトフットはそれぞれ、手と前足を伸ばし、リンゴにありつく。

 杖と魔法使いとなると、エヴァーレインの卒業祝いの品をアーサーは思い出す。

 

「無言で魔法を!?」

 

「少しコツがある。その分だと、随分と魔法には苦労したようじゃないか?先生は何かもらったのか?」

 

 リンゴにガツガツ、とありついているファルコンとホワイトフットの一人と一匹。

 アーサーが迷っているところ、デッドビートは声を上げる前、二人分のガラス皿をウィスカーは見せた。

 

「ファルコンもホワイトフットもリンゴが好きでな、しかもよく食う。取り分けず、新人だけ食えなくさせるわけにもいかない。

 お前も、先にこれでも食べておけ。スライムも食事はできるのか?」

 

「心配ご無用だ」

 

 スライム、と呼ばれたデッドビートはたいそう、ご立腹だった。

 ウィスカーが料理を始め、小気味の良い音が厨房から聞こえて来る。

 アーサーはガラス皿を手に席につき、綺麗に切り分けられたリンゴを齧る。

 ホワイトフットがファルコンがガツガツ食べているのを尻目にぴょん、とアーサーがついているテーブルに跳んできた。

 

「ホワイトフットにリンゴくれ。ホワイトフットは先輩だからな」

 

「君はリンゴ好きなの?」

 

「ホワイトフットはリンゴに目がない」

 

 リンゴをホワイトフットに差し出すと、しゃくしゃくと齧り始める。

 可愛らしいうさぎの食事する様はなんとも心が安らぐもの。

 アーサーも食べてみると、超人に変身して戦ったこともあり、より甘みを感じる。

 一つ、また一つと手が止まらない。

 いつのまにか、ほとんど一皿を占有したファルコンが混ざってきた。

 ホワイトフットとも合わせて、みんなして切り分けられたリンゴを平らげる。

 

「できたぞ、食事だ。細かい話の前にとりあえず、お前たちには食事が早いな」

 

 リンゴを平らげたあたりで食卓を埋めるほどの料理をウィスカーは並べつつ、柔らかく言った。

 

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