【完結】特撮ヒーローのライバル系カイジン、異世界に転生す。   作:ふくつのこころ

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17:無法の剣

 ウィスカーが振る舞った料理はどれも素晴らしい出来だった。

 カリカリに焼けたジャガイモ、じっくりと牛肉を煮込んだビーフシチューにこんがり焼きあがったバゲットが並んだ。

 デザートにはウィスカーが焼いた、たっぷりと糖蜜がかけられたリンゴの果肉を盛りつけたアップルパイにバニラアイスクリームを載せて食べた。

 

「この瞬間のために生きてるって感じがするなぁ。ありがとよ、アーサー。お前が来てくれたおかげでご馳走が食えたよ」

 

「ホワイトフットも感謝してやる」

 

 ファルコンは満足げに腹部をさすり、ホワイトフットは丸くなった腹部を見せつけるように座り込んでいる。

 ぷるぷる、震えている耳はとても可愛らしく、けぷっとしゃっくりをしている様子はうさぎの姿であることもあって微笑ましい。

 

「満足はしてくれたかな?アーサー」

 

「はい、とても美味しかったです。こんなに美味しいもの、食べたことがなくて」

 

 ウィスカーの言葉にアップルパイに噛り付きつつ、アーサーは頷いて答えた。

 実家ではもちろん、エーデルワイスの館でもアップルパイは食べたことがなく、甘いものはエヴァ―レインがアーサーの皿から搔っ攫っていき、その都度、リリアーヌがエヴァ―レインに怒るのがほとんどだった。

 エーデルワイスはそんな様子を弟子たちがじゃれ合っているとでも思ったのか、止めるようなことはせず、真顔で夕飯にありつきながら眺めるようにしていた。

 いま思えば、あれはウィスカーと同じように自分が作った料理を取り合うように食べているのが嬉しかったのではないかとアーサーは推察している。

 

「それは何よりだ。お前たちが成果を上げたら、また機会があるかもしれないな」

 

「そう来なくっちゃ!よおし、ウサ公!アーサー!頑張ろうぜ!」

 

「ホワイトフットは可愛いホワイトフットだ、敬意を持て。敬意を。それはそうとして、ファルコンには同意しておいてやる」

 

 父親のように優しく、アーサーの言葉にウィスカーが笑うものだから、ファルコンはすぐに飛び起きて両拳を打ち合わせる。

 隣に座っている、ホワイトフットをつつくと、ホワイトフットは耳を動かしてファルコンの手をはたいた。

 ご立腹なようでいて、よくよく声色を聞いてみると、ホワイトフットもご馳走を楽しみにしているらしい。

 

「楽しみだなぁ。……そういえば、ホワイトフットは肉を食べても大丈夫なの?うさぎなのに」

 

「そこは心配無用、ホワイトフットは牛肉も食べられるうさぎだからな。なんてことはないんだ」

 

 アーサーの疑問にホワイトフットは椅子の上で胸を張る。

 よくよく見ると、その足元にはホワイトフットが座りやすいようにとウサギの刺繡がされたクッションがある。

 可愛らしく、ホワイトフットと刺繍がされており、そのアーサーの視線に気づいたホワイトフットは「あげないぞ」と眉を顰めた。

 

「そういえば、ファルコンが言ってた別のメンバーっていうのは、ホワイトフットの事?他にはいないのか?」

 

「片方はホワイトフットで間違いねえよ。日常のパトロールはそれぞれ、ペアで組んだりすることもあるけど、ホワイトフットは見てくれが見てくれだからな。

違法マジックアイテムユーザーも油断しやすいし、ホワイトフットは変身するとああいう感じだから、一人で回るのを許されてるんだよ。

もう一人は、クセ強い奴だよ」

 

 ファルコンは丁寧に説明こそしてくれたものの、この場にいないメンバーを語るところだけは微妙な表情を浮かべた。

 

「ホワイトフットはすごいからな。……ファルコンと意見があるのは癪だけど、クセは強いとホワイトフットは見てる」

 

 ファルコンはアーサーの問いにホワイトフットを示しつつ、こんなのでも優秀だからなと言うとホワイトフットは当然だと言った。

 

「アーサーも、明日からはファルコンと組んでパトロールに回ってもらうつもりではあるからな。もちろん、スライムを連れて行ってくれ」

 

「分かりました。……ホワイトフットとファルコンの言う、もう一人ってそんなにクセが強いんですか?」

 

 よろしくなと明るくアーサーと固い握手を交わす、ファルコン。

 アーサーの言葉にウィスカーは食器を流しへと運ぶため、立ち上がった時になんともいえないとばかりに表情を硬くした。

 

やりすぎる(・・・・・)ところがあるヤツでな。市街地での戦闘だと家も消し飛ばしかねないくらい、パワーが凄まじい奴がいる」

 

 穏やかな口調で話すウィスカーが言葉を濁した。

 アーサーは街中での様子を見ている限り、ホワイトフットの放つラビットフック(うさぎの拳)は風属性の魔法を放っているようなものだと思っているし、ファルコンの変身だってホワイトフットと同じことができるものとみている。

 住人たちに受け入れられているように見える、彼らがはみ出し者だというのは、アーサーにはまだ信じられなかった。

 となると、王立警備隊ハウンズにもエーデルワイス一門の恵まれた才能に対して破綻した人間性を持つエヴァ―レインのような人物がいるのだろうとアーサーは思った。

 

「そんな人が警備隊の仕事ができるものなんですか?」

 

 アーサーの言葉にファルコンはよくぞ言ってくれたとばかりにうなずく。

 その隣でホワイトフットでさえも頷いている。

 

「警備隊の仕事は荒事もあるからな。それにお前も知っているだろう?魔法とは便利な力だが、危険な側面も持っていることを。ハウンズにそのメンバーがいるのは、ひとえに魔法に対等に渡り合えるからさ」

 

 ウィスカーが食器を運ぶと、ファルコン、ホワイトフットでさえも戦闘時に見せた姿となって続いた。

 これがハウンズの日常なのだろう、と思ったアーサーはデッドビートを頭に載せたまま、バランスを取って残った食器を持って行く。

 

「変身して魔法を使ってる俺様やホワイトフットと違って、ボスはアーサーは魔法が使える。もう一人のメンバーのレパード姐さんは魔法を使わなくてもなんとかできるタイプなんだよ。

ゴリ押しでも鎮圧できるくらい?」

 

 ファルコンの言葉にアーサーの脳裏には姉弟子がよぎる。

 リリアーヌといい、どうも自分の周りには女傑が多いようだ。

 

 一方、王都リオネル東部。

 

 ウィスカーによって、任務を言い渡されていたレパードは愛刀を手に目的地へと訪れていた。

 一メイル七十センタを優に超える、長身で長く美しい黒曜石のような黒髪を束ねてポニーテールにまとめ、浅黄色の着物を着用し、その上に王立警備隊ハウンズであることを示すジャケットを着た長身の美人。

 彼女こそ、ファルコンが姐さんと呼ぶレパードである。

 

「大人しく捕まってください。そうすれば、悪いようには致しません」

 

「う、嘘だ!ハウンズは、捕らえた違法マジックアイテムユーザーを食い殺す(・・・・)と聞いてるぞ!」

 

 刀に手をかけつつも、レパードは“通告(・・)”を行う。

しかし、レパードの言葉を男は信じず、五角形のクリスタル、カラスのロゴが入ったラクリマを用いてカラスドロップに変身する。

 カラスをより怪物的なデザインにしたような容貌で手首に位置する部位は嘴がついている。

 

「……私たちははみ出し者であるとは知っていますが、改めて言われると寂しいものですね」

 

 ハウンズの本部がある近隣では、メンバーの一人の人懐こさもあって親しまれているが、少し近所を離れたところでは、ハウンズは恐れられている。

 隼の半鳥半人、うさぎの怪物が警備隊であるなんて、恐れられても仕方がないと言えばそうだ。

 悲し気にレパードは顔を曇らせると、空中に飛び上がったカラスドロップはその能力を使い、よく似た姿の眷属を産み出す。

 

 

「ここまで来られたら、ハウンズのお前もここまで来れまい!この力を得た俺に敵うはずもないのだからな、見てくれだけはいいから、夜の相手に飼って(・・・)やってもいいんだぞ!?雌猫(・・)!!」

 

 下卑た笑い声を上げるカラスドロップは眷属とともに急降下する。

 ぶるぶる、と震えるレパードが恐れていると思ったのか、ニヤリと笑って着物越しに強調されているボディラインに舌なめずりをする。

 

「誰が、誰が雌猫だぁぁぁぁぁ!ブッた斬るぞ、てめぇ!!」

 

 目を見開き、青筋を浮かべつつも、瞬時に刀を引き抜いたかと思えば、カラスドロップとその眷属の身体に花を咲かせる。

 華麗な抜刀術を披露するものの、その背後で建物が斜めにずれた。

 その事態に上がる悲鳴、ハッとレパードが我に返る頃にはもう遅く、周囲はすっかり騒ぎになっていた。

 

「……あ、やば。またやってしまいましたね、私」

 

 レパードが切り捨てたことでカラスドロップの変身が解除され、割れたラクリマを回収し、照れくさそうに手早く去って行く。

 

「ハウンズのレパード、また貴様かァ!!」

 

 そんな憲兵の怒号が聞こえてくると、その人間離れした身体能力で屋根に飛び移り、レパードはその場を立ち去った。

 普段は丁寧な物腰だが、一度怒らせると手が付けられず、それでいて凄まじい抜刀術を誇るハウンズの“剣豪”。

 

 それがレパードだった.




デッドビートの台詞が少ないですが、これはあえて意図的な意味も込めています。

レパードのモデルはキレると口が悪くなる、とある魔術の禁書目録の神裂火織です。
先日のまったりユフィ先生の常盤台制服姿のねーちんがよすぎるよすぎる
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