【完結】特撮ヒーローのライバル系カイジン、異世界に転生す。 作:ふくつのこころ
翌日、ウィスカーの指示でファルコンとアーサーはペアを組んだ。
ホワイトフットはパトロールに出なかったため、アーサーがそれを指摘するも、「ホワイトフットはプロフェッサーの護衛をせねばならない」と主張した。
ウィスカーの膝上で耳を垂らし、すっかりリラックスしている様子にウィスカーも慣れ切っているからか、ホワイトフットを撫でている。
長身でスーツ姿のカタギではない男が可愛らしい小動物(たとえ、それが上から目線のうさぎだったとしても)を椅子に座って撫でている光景は様になっていた。
「では、行ってこい。ファルコン、アーサー」
「いってきます、ボス!行こうぜ、アーサー」
ウィスカーに見送られ、ファルコンは元気よく返事を返した。
アーサーもファルコンの言葉に続き、行ってきますと言うと、変身魔法の応用で耳だけを大きくしたホワイトフットのうさ耳がピコピコ動く。
ホワイトフットも見送ってくれているつもりらしい。
「まずはお前に言っておかなければならない」
三十分前、ウィスカーにアーサーは呼び出された。
「お前と同世代のファルコンだが、あいつは記憶を失っている。ファルコンと言う名前も、あの
言わば、便宜上のものだな。コードネームのようなものだ」
「となると、プロフェッサーがファルコンを見つけたとかですか?」
あの明るい性格からは、ファルコンが記憶喪失だとはアーサーにはとても思えなかった。
出会って、それなりに時間が経ったわけではないので、まだすべてを知っているわけではないが、ファルコンの明るさからは記憶喪失には見えないのだ、
「そんなところだ。詳しい詳細は私から言いすぎるものではないだろう。
ホワイトフットも、私が連れてきた。ハウンズに所属するようになったのは、ファルコンとほとんど同じだ。話せるうさぎとなると、なにかお前も思うところはあるだろう?」
「まあ、思うところがないと言われれば、嘘になりますが……」
スライムと自分のキャラが被っている、と不満を露にしたホワイトフットのことをデッドビートは妙なことに拘るうさぎだと思っている。
アーサーの方はホワイトフットが言葉を話せるようになった理由を聞いてみたかったが、これもウィスカーは進んで言うつもりはないようだった。
「話が見えん。ウィスカー、お前はアーサー以外の連中のことをどう言いたいんだ」
「デッドビートが気づいたか。あまり肩肘を張るな、と言いたかっただけだ。私たちにはいろんな事情や経歴があるが、お前がそれを悔やむ必要はないとな。
アーサーのようなタイプは、くよくよ悩みがちだから、私から先に言っておく。
昨日も聞いただろうが、もう一人、ここのハウンズに所属しているメンバーのレパードも、そういうタイプだった」
デッドビートが不満を示すと、ウィスカーは変わらぬ口調でつづけた。
アーサーはウィスカーの言葉から、荒事の時はめちゃくちゃをやるという印象であった、もう一人のメンバーに対しての印象が少し変わった。
ファルコンが姐さんと呼んでいたあたり、ファルコンやおそらくホワイトフットとも、親交を持っているのだろう。
なんだかんだで彼らはとてもフレンドリーだという印象を持つことができていた、もちろん、めちゃくちゃをするというのはどんなレベルなのかという好奇心を抱きつつもあったのだが。
「とにかく、いまはファルコンについてパトロールの中の流れは見て覚えろ。それ以外は私が指導する」
ウィスカーの呼び出しはそうやって終わった。
「もう一人のハウンズ、
パトロールの中、話題に上がったレパードのことについて語るファルコンの口調は楽しげだった。
「背ェ高くて、スラッとしてんのにすっげぇ綺麗な感じで話してて、なんでも刀でズバッとやっちまうんだ。……怒るとおっかねえんだけどな」
「背が高くて、スラッとしてるのに綺麗な感じ……」
レパードの特徴は一部、リリアーヌと似ている部分があるとアーサーは思った。
リリアーヌが武器で戦うところは見たことはないが、リリアーヌの魔法の実力や体術の腕は高かったとエーデルワイスが評価していたのを思い出す。
リリアーヌはアーサーに対し、自分が親分であることを主張していたが、レパードもまたそういったタイプなのだろうと偏った見方をした。
ファルコンの性質が人懐こいため、アーサーは自分のようにレパードにファルコンも子分に任命されているのだろうと思った。
エヴァ―レインはファルコンのようなタイプはどうなんだろう、と脳裏をよぎる。
「お、なんだ?覚えがあるのかよ」
「幼馴染がそういうタイプなんだ」
「それは羨ましいね、綺麗な幼馴染がいるなんて」
ファルコンはアーサーの言葉に目を丸くすると、続いた言葉に心底羨ましそうに笑っていった。
「俺様はなんにも覚えてないからなぁ。アーサーのことが羨ましいぜ」
「何か思い出すかもしれないよ。ファルコンにだって、そんな相手がいるかもしれない」
アーサーは少し考えた後、もしかしたら、と人差し指を立てる。
ファルコンはアーサーにありがとよ、と小さく笑って返す。
「だったらいいけどな。俺様がどこかの王子様だったらなぁ。まぁ、アーサーの方が王族っぽいか?」
「僕はそんな大したものじゃないよ。ただ、色々と運がよかったってだけさ」
「そーゆーのが大事なんじゃねえか。世の中、結局、モノを言うのは運だって俺様は睨んでるね」
通りを上着のポケットに手を突っ込んでいるファルコンとアーサーは歩きつつ、彼らのジャケットを見て声をかける住人たちに手を振り返す。
道中、困り顔の店主が破壊された商品を前に腕組みをしている。
破壊された商品は値段の張る家具らしく、“商談済”と紙が貼りつけられているが、見るも無残に商品は破壊されている。
おおよそ、人間離れした壊され方をしており、箪笥の片割れを引きちぎったようになっている。
「浮かねえ顔してどうした?話聞くぜ」
「お、ファルコンの坊主と新人さんか?」
「昨日は言ってきたやつでアーサーっていうんだ。凄いんだぜ、魔法が使える期待のルーキーなんだ!!」
「おお、見たよ。あの大立ち回り!召喚獣の力を引き出し、
ファルコンは自然な流れで人のよさそうな店主に話しかける。
店主はファルコンが目に入ると、先ほどよりは少し表情が和らいだように見えた。
これはファルコンの才能なのだろう、とアーサーは内心感じた。
「そんな奴がいるんだ、話聞かせてくれね?おっさんが少しでもマシになるようにさ」
「そうかい?そう言ってくれるのはありがたい限りだ。リオネルを坊主たちみたいなのが頑張っていてくれたら、俺もくよくよしていられんな。……また出たんだよ、あいつらが。ウチの商品を壊すだけじゃ飽き足らず、他のところも壊したり盗んだりしてやがるんだ」
ファルコンが柔らかな物腰で語り掛けると、店主は手を震わせる。
それは怒りであり、なにもできない自分自身に対する憤慨であった。
手にしたチラシのようなものには血のような雫が描かれており、承認欲求を満たさんとする意図が見られているのか、名前がでかでかと描かれている。
『魔法犯罪シンジケート、赤い雫。
我らは新しい魔法使いである、時代遅れの魔法使いに代わり、新たな歴史を作り出す者なり。
これは、革命である』