【完結】特撮ヒーローのライバル系カイジン、異世界に転生す。   作:ふくつのこころ

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サブタイ、修正しました。


不撓不屈カイジン、デッドビート登場
01:カイジン転生


 体調が回復した後、アーサーは幼馴染の銀髪の少女に連れられて遊びに来ていた。

 明るいイエローの野外活動用のドレスを着た銀髪の少女は嬉しそうに鼻歌を歌い、領地内の森(・・・・)をアーサーの手を引いて歩く。

 

「リリアーヌ、ごきげんだね」

 

「それはもちろん、おまえがげんきになってくれたからよ?あたらしいおともだちもいるし、おまえはいつもおもしろいことをつれてきてくれるから、たいくつしないの」

 

 リリアーヌ・ナーロウ。

 アーサーの幼馴染の少女であり、勇者の末裔であることから、王国より広大な領地を与えられたナーロウ家の生まれである。

 陽の光に照らされる銀髪は美しく、母親譲りの美貌からリリアーヌに好意を抱く同世代の少年たちも多いが、奇妙なスライム(・・・・・・・)を連れていることに始まらないほどにリリアーヌはアーサーを気に入っていた。

 身分の高い生まれである、自分を色んな所に連れて行ってくれるアーサーの存在は貴重で領地の森に二人(・・)でやってきたのだってアーサーへの日頃の礼のようなものだ。

 そんなアーサーが先日の件で生死の境を彷徨っていたことはリリアーヌにとっては大事であり、アーサーが目覚めるまでリリアーヌは泣き腫らしていたという。

 

 

「そのスライム(・・・・)、なんというの?」

 

「デッドビートだよ、リリアーヌ」

 

 アーサーの肩に張り付いている黒いスライム(・・・・)のような姿になっているデッドビートに視線を向けると、リリアーヌは興味津々といった様子で尋ねる。

 アーサーはデッドビートと顔を見合わせると、明るく笑って返すが、リリアーヌは何か気に入らなかったのか、不服そうな表情を浮かべる。

 

「かわいくないわ、アーサー」

 

「そう言われてもだな、デッドビートというのがオレの名前なんだ。文句を言うな」

 

「ねえ、スライムがなまいきなのだけど」

 

 体を前進するように這わせ、頭の上に乗るデッドビートの言葉にリリアーヌは文句を言う。

 デッドビートはアーサーが生死の境を彷徨っている頃に契約した、召喚獣のような扱いになった。

 この世界において、召喚獣とは魔法使いが契約を交わすことで呼び出すことができるものだが、ごくまれに召喚獣の世界から自らの意思でやってきたり、レアケースで人間と契約する場合がある。

 アーサーとデッドビートが結びついてしまった原因は不明だが、このレアケースに該当するだろうこと、スライムの姿はデッドビートにとっては魔力の消耗を押さえるための姿であろうと周りはみなした。

 アーサーの両親は二人とも魔法使いだったのだが、デッドビートはアーサーを連れて帰ってくれた恩人として迎えた。

 デッドビートにとって、アーサーの両親は息子によく似たお人好しでこの親にしてこの子ありかと実感を深める確証となっていた。

 

「デッドビートはもとからそうだよ」

 

「それはほめていってるのか……?」

 

 少し考えた後、幼馴染の少女の言葉に困った顔で答えるアーサーにデッドビートは唖然とした。

 

「デッドなんとかっていうのがいけないの?……そうだわ、スラリンというのはどう?スライムなら、もっとこうかわいいなまえであるべきよ。おまえもそうおもうわよね?」

 

「どくろでくろいスライムがスラリン?ポイジーとかのほうがそれっぽいとおもうけどなぁ、どくっぽいし」

 

「ねえ、わたしにさからうつもり?」

 

「そ、そういうつもりじゃないんだけど……」

 

 リリアーヌの言葉にアーサーは詰まってしまう。

 

 名案が思い付いた、とばかりに顔を輝かせるリリアーヌだったが、アーサーからの評価が得られず、あまつさえ、文句を言われてしまったことでリリアーヌは拗ねてしまった。

 美少女と言える端正な顔立ちで頬を膨らませ、アーサーの方を真っ直ぐと見つめる様は可愛らしいことこの上ない。

 当のアーサーの方はただ提案しただけに過ぎなかったのだが、このように少し(・・)理不尽な傾向のあるリリアーヌはこうして機嫌を悪くするきらいがあり、リリアーヌに理不尽な詰めをされても、困ってしまう大人しい性格のアーサー以外にはまともな友人がいなかった。

 

「それなら、きょうから、アーサーのスライムはスラリンよ!……アーサー、おまえがいってたのよ?おやぶんのいうことにはしたがうもの、って。なら、アーサーのおやぶんであるわたしのいうことにはしたがうべきよね?」

 

 一瞬、明るく笑った後に顔を近づけ、真っ直ぐアーサーの顔を見つめるリリアーヌにアーサーはたじたじになってしまう。

 アーサーはこの理不尽ながらも、美しい幼馴染に好意を抱いていた。

 多少の理不尽を許せると幼心でも思ってしまうくらい、リリアーヌのことを想っていたのだ。

 穏やかな気性もあるが、アーサーがリリアーヌを庇って怪我を負うほどには彼女のためなら頑張れるという気概があったのもまた事実だ。

 

「(……オレにはこいつがアイツ(・・・)に被ってしまう)」

 

 スラリンもとい、デッドビートの脳裏には生涯をかけて倒すべきだと誓いながらも、倒すことができなかったヒーロー・グレイトマンが浮かび上がる。

 人のために戦い、人に報いるために生きてきた超人は変身しなくとも、その在り方は高潔だった。

 一人の少女にいいようにされている気弱な少年がそんなライバルと被るのが解せないが、どうも脳裏から離れないのだ。

 

 やがて、二人が普段から遊んでいる森の中の古い木で作った秘密基地へとやってきていた。

 秘密基地と言っても、その多くがナーロウ家で準備された椅子や机などと言ったものがあり、屋外にある子供部屋と言ったほうが正しいもので手作り感といったものはあまり見られない。

 金持ちなりに庶民の遊びを理解しようとした仕上がりとなっており、屋根にはアーサーとリリアーヌが二人で作ったであろう手作りの旗が風にはためいている。

 

「さて、きょうはなにしようかしらね?このまえはナーロウのじきとうしゅとなり、ゆうしゃとなるわたしのりょうちのじゅんさつにいったけれど……って、あれは?」

 

 指折り数えながら、リリアーヌはアーサーと遊んだことを振り返る。

 デッドビートはこんな女とよく一緒にいられるなと思っていたが、何かがこちらへと突っ込んでくる。

 その姿は人間の居住区、とりわけ、身分の高い人間の居住区の中には決して入ってくることがないであろう魔物(・・)だった。

 

「小僧!その娘を連れて逃げろ!!今のお前では敵う相手ではない!!」

 

「でも、ぼくがにげたら、リリアーヌとのひみつきちがこわれちゃうよ!!」

 

「馬鹿め!そんなもの、どうだっていいだろう!!」

 

 デッドビートはにゅるんとアーサーに顔(らしい部分と言える髑髏の面)を近づけ、逃走を促すも、アーサーは頑として首を振らない。

 

「アーサー、ねえ、アーサー!?どうしたらいいの!?」

 

 姿が近づいてくると、その姿が明らかとなってくる。

 竜の頭部に人間のボディ、さらに槍を持っている姿は獣人系の魔物の一つ、竜人である。

 大人の男以上の体格でリリアーヌの大好きな森の木々を槍で切り倒し、唸り声を上げながら近づいてくる。

 リリアーヌがアーサーの服を掴む手は震えていたのをアーサーは見逃さなかった。

 

「デッドビート、おまえのちからがいる!」

 

「小僧、お前、()を覚えているのか!?」

 

「わからない。でも、ぼくはにげられない。だって、ここはリリアーヌとのだいじなばしょで、リリアーヌがいるんだから」

 

 デッドビートに呼びかけたアーサーの眼差し、そして気迫にデッドビートはにゅるんと跳ねて反応する。

 

 その目、昔からその目をする者(・・・・・・・)が好きなのだ。

 

「いいだろう!では、オレとお前の誓いの言葉を叫べ!!」

 

 デッドビートがスライムの身体のまま、光を放つ。

 そのとき、アーサーは何を言えばいいのか、誓いの言葉が脳裏に浮かぶ。

 

『カイジン転生(てんしょう)!!!!』

 

 アーサーとデッドビートを強烈でかつ禍々しい光が包み込んだ。




今回は初変身まで
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