【完結】特撮ヒーローのライバル系カイジン、異世界に転生す。   作:ふくつのこころ

20 / 40
19:ハウンズの仕事

 魔法犯罪シンジケート。

 

 違法マジックアイテムユーザーをはじめ、魔法を悪事に利用する者たちを呼ぶという。

 特に赤い雫は魔法を扱えなかったため、魔法使いに不遇の扱いを受けたことで魔法使いたちに革命を起こすことを目的にしている。

 魔法を扱うことに関しては、アーサーもあまり順調に習得できたとは言えなかったため、彼らの言い分はわからないでもないが、関係のない人々を脅かすことは許せなかった。

 

「多いんだよな、こいつらの犯罪。ラクガキとか愉快犯程度で終わればいいけど、商品を破壊したりってのはさすがに笑えねえ」

 

 アーサーに説明した後、ファルコンはため息をついた。

 

「なんとかなりそうか?ファルコンの坊主」

 

「ボスの方にも聞いてみるよ。……ボス、こちらファルコン」

 

 心配そうな店主にファルコンは笑い返すと、ポケットから連絡用のマジックアイテムを取り出した。

 形は噂のラクリマと同じ五角形のメダルの大きさで手のひらに収まるほどのサイズだ。

 通信メダルと称される、そのアイテムは定められた範囲内で登録されたラクリマ同士の連絡が可能な代物であり、魔力を消費して通信を行う。

 一度消費した魔力のチャージにかかる時間は約一日を要する、リオネルを守護するハウンズはもちろん、憲兵隊も使う通信機器である。

 

 ファルコンは通信メダルでウィスカーとやり取りをした後、通話を切って店主へと向き直った。

 

「おっさん、今日はここで張っててもいいか?」

 

「坊主、一体全体何するんだ?」

 

 何かを思いついたらしい、ファルコンの言葉に店主は要領を得ず、首をかしげる。

 

「そりゃあ、決まってんじゃん?捕まえるんだよ、犯人の野郎をな」

 

 ファルコンはニヤリと笑った。

 

 その日は一日のパトロールを終えた後、先ほどの店に戻った。

 ウィスカーには夜通しで張り込むと伝え、夕食にありつけなかったことに言いだした当の本人であるファルコンが心底肩を落としていると、店主の妻はファルコンの肩を叩く。

 

「まあまあ。そう気を落としなさんなって。あの先生(・・)程じゃあないにしても、ウチで夕飯食べていくだろ?ファルコン」

 

「ええ、いいのか!?店の方で邪魔にならねえように張り込んでるつもりだったけど……」

 

「ウチも二人だからね、若い子が来てくれると嬉しいんだよ」

 

 この店、ヒイラギ家財店は夫婦が二人で営んでいる。

 二人には子供はいるが、既に独立しており、滅多に帰ってくることがなかった。

 二人の楽しみは明るく、人懐こいファルコンやファルコンの同僚であるアーサーのような若い世代に食事を振る舞ったりととても気前が良かった。

 店の奥にある、居住スペースにアーサーとファルコンは通される。

 居住スペースに入るとき、店主はしっかりと扉に鍵をかけた。

 

「オレが見張りに行こう。全員が場を離れるわけにもいかないからな。それにオレは食事を必要としない。それに、オレとアーサーは繋がっているからな。視界を接続(リンク)するには、念じるだけでいい」

 

「あ、デッドビート!」

 

 アーサーの頭に乗っていたデッドビートはにゅるりと降りると、鍵をかけた扉の隙間をスライムボディを活かし、するりとすり抜けていった。

 

「あいつ、意外とちゃっかりしてんのな?俺様も別に意識を張ってねえわけじゃねえのに」

 

 ひょっこりとファルコンがアーサーの後ろから顔を出すと、デッドビートがいなくなったほうを見る。

 ファルコンはデッドビートがアーサーを変身させる(・・・・・・・・・)魔法の産物としか認識していないため、そこまで意識を持って行動できるとは思ってもいなかった。

 

「ちゃっかりというか、デッドビートはああいう奴だよ」

 

 怪物なのに真面目で、それでいて丁寧に教えてくれることもある。

 ノリがいいところも意外とあったりするので、デッドビートは元居た(・・・)ところでは友達(・・)もきっと多かったのだろうとアーサーは思った。

 

「何かあったら、すぐに教えてくれよ」

 

 デッドビートと感覚を接続(・・)するよう、意識すると、デッドビートの方から返事の代わりに思念が伝わってくる。

 

『全く、世話の焼ける奴だ』

 

 なんて返ってくる言葉は呆れているようだが、気にするなというニュアンスを含んでいるようでもあった。

 

「アーサー、アンタも早く来な」

 

 後ろからアーサーを店主の妻が呼ぶと、アーサーはリビングの方へと向かった。

 

 一方、ヒイラギ家財店の商品が並べられているところににゅるりとデッドビートは出てきた。

 破壊された商品については、ファルコンとアーサーによって運び出され、綺麗になっている。

 デッドビートはスライムの身体をにゅるりにゅるりと動かしながら、周囲を見渡す。

 武人として、研ぎ澄まされたデッドビートの感覚はまだ侵入者が入ってきていることを告げていない。

 

「……しかし、この世界にやってきて数年も経とうとしているのか」

 

 デッドビートがアーサーと初めて接続(リンク)した頃、アーサーは十二歳だった。

 あのとき、アーサーは死の淵に瀕していた。

 

 死んだカイジン(デッドビート)と死の淵に瀕していた少年(アーサー)

 

 共通点なんてないはずなのに、二人は出会った。

 全く戦えなかった少年が自分と出会い、力を手にして強くなっていく。

 助ける者(ヒーロー)を倒すために生まれてきた自分が誰かとともに戦うことになるとは思わなかった。

 

「……こんなことを考えることになるなんてな」

 

 いま、アーサーとファルコンは店主夫妻と食事を摂っていることだろう。

 賑やかな光景が想像できる、彼らは二人ともお人好しの類だし、よほどのひねくれ者でなければ、彼らは誰とでも仲良くできるタイプだ。

 王立警備隊ハウンズ、なんて好敵手(グレイトマン)が所属していた組織とどこか名前が似ている。

 

 デッドビートはお尋ね者であり、グレイトマンを憎む者によって生み出された。

 いわゆる、ヒーロー物のお約束におけるヒーローに勝つことを望まれ、それだけに特化した能力を持っている。

 未だにこの世界で披露していない能力はあるが、グレイトマンの能力はすべて持ち合わせているし、次に戦えば負けないという自負がある。

 ただ、一つデッドビートの予想外のことがこの世界に来て起こったとするならば、自分以外の者と一つになる能力を手に入れたことだ。

 

 デッドビートの本来の姿は髑髏面に黒装束、黒いマフラーと抜け忍を思わせるもの。

 マフラーがファイアパターンの模様が現れたことなんて、そんなの今までに一度もない(・・・・・・・・)

 

 融合した者の影響を受け、その姿を変える。

 

 そんなケースをデッドビートは一つしか知らない。

 それは、とある地球人と融合して究極の力を得るまでになったグレイトマン(・・・・・・)だけ。

 

「あのデッカイ箪笥、壊しちまってから、歯応えのあるもんねえかなぁ」

 

 なんて思案に更けている頃、手当たり次第に商品に蹴りを入れている声が聞こえる。

 若い男の声だが、それはもちろん、ファルコンやアーサーではない。

 デッドビートは思案をやめ、男の言葉に集中する。

 男は居住スペースと店側を隔てる、扉に鍵がかかっていることを確認すると、五角形のクリスタル・ラクリマをポケットから取り出す。

 

 ラクリマ、その意味は涙。

 

 魔法を上手く扱えないものの涙と言うが、若い男が壊したと語るものが商品であるならば、それはナイフのような凶器でしかなく。

 

『……アーサー、ネズミ(・・・)が来た』

 

『わかった、すぐ行く!』

 

 思念を接続しているアーサーへと送ると、ラクリマを握りしめた男がニタァと笑う。

 

「スライム、みーっけ!」

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。