【完結】特撮ヒーローのライバル系カイジン、異世界に転生す。 作:ふくつのこころ
翌朝も、アーサーはウィスカーの言葉を考えていた。
深くは明言していなかったが、ウィスカー達はアーサーが来るまでラクリマごと犯罪者を撃破していたのではないかとアーサーは考えた。
三年間にわたる、エーデルワイスの下における修行時代。
その中でエーデルワイスが言っていた言葉をアーサーは思い出した。
「魔法使いって言うのはさ、凄いプライドが高い連中なんだ」
「プライド、ですか」
そうだよ、とエーデルワイスはキッチンで魔法で作業をさせているマジックアイテムを一瞥する。
エーデルワイスは魔法使いの中でも変わり者であることを自分でも認めていた。 普通の魔法使いというのは、マジックアイテムを使うことを忌避する物だという。
そこには魔法使いが自ら魔法を行使することに対する、
「魔法使いは生涯を通して魔道を進む者、極めたら終わりなんてことはないんだ。自分ができないことを晒すのが不得意な連中であるとも言えるね。
さて、おやつのタルトが焼けたよ」
エーデルワイスは焼き上がった、良い香りのするタルトをオーブンから魔法で引き寄せ、皿に載せた。
それを杖でとんとん、と簡単に打ち付けるようにすると、綺麗に切り分けられた。
「いただきます」
一連のエーデルワイスとのやりとりを思い出しつつ、アーサーはデッドビートを頭に載せてパトロールを続けている。
もうすぐ、ハウンズの未だ不在のメンバーであるレパードが戻ってくるという。
ファルコンは「レパード姐が帰ってくるとあれば、アップルパイだ!!」と張り切っていた。
そんなファルコンを微笑ましく見ていた、ウィスカーはファルコンにいくらか金を手渡していた。
かと言って、パトロールの方を疎かにするわけではなく、アーサーはウィスカーにホワイトフットと組むように言われた。
「メンバーとの連携を覚えるのも、今のお前には大切なことだからな。
ホワイトフットと組んで行って来い。
またレパードとも組むこともあるだろうが、そこは戻ってきてからになるがな」
と、アーサーの面倒を見ることに対し、不満げな顔をするホワイトフットにウィスカーは続けた。
「ホワイトフット。お前からアーサーにハウンズの流儀を少し教えてやってくれないか?レパードがいない時は、お前が頼りだ」
「ホワイトフットに任せな」
傍らでウィスカーの言葉に不満げな顔をファルコンは見せるものの、ホワイトフットはウィスカーに抱えられたままの状態で機嫌を直した。
本当に犬のようだ、とファルコンに対して思っていたアーサーに対し、ファルコンはため息をついた。
「顔に出てるぜ、アーサー。……そりゃあよ、王立警備隊ハウンズにファルコン有り!って感じでやりたいんだぜ?俺様はよ」
そんなやりとりがあった。
ホワイトフットとアーサー、デッドビートコンビはホワイトフット曰く、“いつもの巡回ルート”を巡る。
ファルコンと来た道のり、風景が異なっていることにアーサーは住宅が斜面に立つ区域の階段を登りながら気づく。
「ホワイトフット、巡回ルートはハウンズによって違うのか?」
「気づいたみたいだな。その通り、ホワイトフット達には担当の巡回ルートがある。ファルコンはあの性格が役に立つ、
ホワイトフットはこういう、山寄りの方だ。……ホワイトフットの変化は跳ね回るのが持ち味、こういうところの方がやりやすいのだ」
階段の段を小さな体躯ながらも、ぴょんぴょん跳ねて登っていく小さな白うさぎ。
ホワイトフットはアーサーが思った以上に体力があるようだ。
口調が誇らしげなのは、ウィスカーに褒められたことがあったのだろうとアーサーは推測した。
「そのホワイトフットは、って言うのは一人称か?」
「何を今さら。まだ慣れていなかったのか。王立警備隊ハウンズのエース、ホワイトフットには相応しい言い方だろう?」
ホワイトフットは途中で止まり、長い耳を垂れさせた。
少し気を落としているように見えるのは、ホワイトフットは口調に対し、寂しがり屋な性格だからかもしれない。
ぴょん、と軽く跳ねるだけでアーサーの右肩にホワイトフットは乗る。
頭に
「そうかもしれないけど」
「そこは納得するなよ」
アーサーが眉尻を下げ、苦笑いすれば、デッドビートはすかさず突っ込む。
こういう、押しに弱いところが見下されるきっかけになるのだとデッドビートは思った。
「アーサーはわかってる。けど、ホワイトフットは不満だ。スライムがわからないとは……」
「誰がスライムだ」
露骨に残念そうに耳を下げたホワイトフットにデッドビートは形を歪ませて返す。
「ホワイトフットはいつでも喧嘩は買うぞ?ファルコンなら見逃しても、ホワイトフットは厳しく行く。血染めのうさぎの異名を誇る、ホワイトフットの必殺の
「可愛らしい見かけに合わないような、物騒な異名だ」
ホワイトフットはデッドビートの言葉にニヤリと笑えば、肩で前足でシャドーボクシングを始めた。
白うさぎの先輩は熱くなりやすく、そして手厳しいらしい。
「わかるか、アーサー。ホワイトフットは可愛いからな」
そんなうさぎの先輩とやりとりしていると、通信メダルが着信した。
“プロフェッサー・ウィスカー”とホログラムのように名前が浮かび上がると、アーサーはメダルを取り出す。
『ホワイトフット、アーサー。東通りで怪物が暴れているとのことだ。
別の地域の方でも同時に現れたため、ファルコンに向かわせている。
通報によれば、どうやら、ドロップらしい。
お前たちも至急向かってくれ』
「ホワイトフットがいて幸運だな、ボス。
ホワイトフットなら跳べる」
『頼りにしている、ホワイトフット』
ウィスカーが柔らかく返すと、通話は切れた。
通話が終わると、ホワイトフットは小さくストレッチを始めた。
「ボスに頼りにされてるんだな、ホワイトフット」
「当たり前だ。ホワイトフットの跳躍はハウンズでも
アーサーの言葉にホワイトフットは胸を張り、魔力を周囲に満たし始めた。
それがホワイトフットの変身の前兆だとアーサー達は気づいた。
「トップ、
デッドビートはホワイトフットの言葉に引っかかった。
デッドビートの言葉に心底不服そうに頷いた。
「
ホワイトフットは長い耳をピクピク動かすと、あの肥大した拳を持った巨大な白うさぎに変身する。
凶相なのも変わらないようだ、とデッドビートの視線に気づいた
「……おい、うさぎ?」
「ホワイトフット?」
嫌な予感がした二人にホワイトフットはニヤリと口角を上げる。
「そのまさかだ!ホワイトフットはひとっ跳びできる!!」
『ぎゃあああ!!!』
力強く、一歩踏み込み、思い切り地面を蹴り飛ばし、ホワイトフットは大きく跳躍する。
空中へと跳び出したホワイトフット、その衝撃にホワイトフットに抱えられたアーサー達は声を上げた。