【完結】特撮ヒーローのライバル系カイジン、異世界に転生す。   作:ふくつのこころ

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幕間-1
25:幕間・強さの源


 産みの親の人智を超えた科学技術と魂を込められ、死してなお脈打つ鼓動(デッドビート)という名前を授けられた。

 彼、デッドビートは自らの原点(オリジナル)に当たる、グレイトマンと何度も戦ってきた。

 グレイトマンキラーとなることを望まれ、自らも己の使命とし、戦い続けた。

 ただ、自らの愛刀・デッドカリバーとグレイトマンの光の剣を交えるごとにデッドビートは自らの意思を徐々に獲得して行ってしまった。

 

「デッドビート、お前は何のために戦う」

 

グレイトマン(お前)を倒す為だ、グレイトマン」

 

 オリジナル(ヒーロー)は黒い忍び装束を纏った風貌の模造品(デッドビート)に問いを投げかけた。

 何度も死闘を重ねるうち、赤と銀のヒーローはデッドビートに共闘を持ちかけた。

 デッドビートには、グレイトマンの意図がわからなかった。

 自分を打倒せんとする者に助力を持ちかける理由がない。

 グレイトマンキラーとして生まれ、己の能力(スペック)の限りを尽くし、グレイトマンに勝ちたかった。

 

 最初は自分(デッドビート)と戦う隙を狙った、他の星人の暗殺を手裏剣で食い止めた。

 グレイトマンを嬲り殺しにするため、グレイトマンの仲間を人質にとったのを助けた。

 そこから、デッドビートは産みの親のドクター・パラドックスに見放され、捨てられたが。

 それでも、デッドビートを見捨てられなかったクガユウゴに見つけられた。

 

 クガユウゴはグレイトマンに変身する青年だった。

 地球の軍人でエースパイロットであり、オリオンのコールサインを持つ地球人だ。

 奇しくも、グレイトマンの故郷であるオリオン座ベテルギウスと同じ名を持つ地球人の戦士。

 グレイトマンの命を狙う意味では敵だが、クガユウゴであるときは絶対に手出しをせず、仲間たちを人質に取られるという不利な目に遭ったクガユウゴをデッドビートは救ったことがあった。

 

「デッドビート。行くところがないなら、俺たちと来いよ」

 

 デッドビートは地球人と戦うグレイトマンと刃を交えることはあれど、彼の産みの親が所属する星間連盟には一切加担しなかった。

 地球人のエースパイロットの青年は本人のお人好しな性格もあったが、デッドビートの真っ直ぐな生き方には好感が持てた。

 

「クガユウゴ。オレはドクターや星間連盟の連中と違い、お前を攻撃しない。オレの目的はお前の中にいるグレイトマンだけだ」

 

「知ってるさ。だから、お前を誘ったんだ」

 

「……よくわからんな」

 

 ブラウンのジャケットを羽織ったクガユウゴは灰色のパーカー姿の自分に擬態(・・)し、フードを目深に被るデッドビートに笑いかけた。

 彼らがいる場所は地球防衛軍の基地ではなく、ある商店街のカフェだった。

 

「ユウゴ、家族か?……双子?」

 

「マスター!注文いいか?……は?兄弟?いや……って、近い(・・)ものかな」

 

 ボックス席に座り、注文を取りに来たマスターはユウゴとフードから僅かに見えるデッドビートの顔を交互に見た。

 ユウゴは少し考えながらも、苦笑いを浮かべてから、マスターの言葉を肯定する。

 

「近くない」

 

「そういうなって」

 

「仲良いことで何よりだ。コイツ、よくやってるよ。アンタからも褒めてやってくれ」

 

 デッドビートが否定すると、ユウゴは笑ってデッドビートの肩を叩いた。

 サングラスにハットを被り、エプロンを着用しながらも、シャツを腕まくりにした“イケオジ”スタイルが似合うマスターは楽しげに笑った。

 いつもので、とユウゴが注文すると、はいはいとマスターは厨房のあるカウンターの奥へと向かっていった。

 

「……あの男は、オレとお前を“きょうだい”。そう呼んだのか?」

 

いま(・・)のデッドビートは俺と似ているからな。それで兄弟みたいだ、って言ったのさ」

 

 ユウゴは少し考えた後、デッドビートの疑問に答えた。

 その後、ユウゴが頼んだ“いつもの”が二人の前に運ばれてきた。

 マスターは地球防衛軍のエースパイロットがこんなもの、なんて言いながらも、目を輝かせるユウゴに表情が和らいだ。

 “こんなもの”とは、地球人の、特に日本人にとってはありふれたカルボナーラとバゲット、さらにオニオンスープがついたセットだった。

 ごゆっくり、とマスターが配膳して下がっていくとユウゴはフォークをデッドビートに差し出す。

 

「食ってみろよ。お前もハマるかもしれないぜ」

 

「……ああ」

 

 差し出されるがままにフォークでパスタを突き刺し、口に運ぶ。

 くるくる回してフォークに巻きつけていないため、いくつかはまた皿に落ちてしまった。

 ユウゴは口を汚しながらも、カルボナーラを貪り、バゲットを齧ってスープを飲むデッドビートを眺めた。

 ドクターパラドックスは食事は簡単に摂れるくらいで良いと言い、まともなものを食べていなかった。

 初めてのまっとうな(・・・・)食事にはデッドビートは自分でも気づかぬうちに感激してしまい、カラーコンタクトを着用しているようにも見える赤い瞳に涙を浮かべた。

 

「……なんだ、これは。力が漲る」

 

「な、美味いだろ?……きょうだい(・・・・・)が気に入ったってさ、マスター」

 

「そりゃあ、分かるクチってか?嬉しいね。またご馳走してやるから、ハカランダをよろしくな?ヒーロー(・・・・)さん」

 

 デッドビートの言葉にユウゴが笑うと、こっそり物陰から見ていたらしいマスターは笑いながら戻っていった。

 グレイトマンがどれだけ窮地に陥っても、その根性で立ち上がるのは知っている。

 グレイトマンは諦めることを知らないからこそ、グレイトマンの能力を受け継いだデッドビートは不撓不屈カイジンの名を持っている。

 決して諦めず、グレイトマンを壊し尽くす(・・・・・)ようにと願われたグレイトマンキラーはグレイトマンと戦ううちに心が芽生えた。

 

「……お前の力の源はこれか?」

 

「まあな!これも(・・・)ある」

 

 デッドビートが手を止めると、ユウゴはカルボナーラを味わい、笑って返した。

 含みのある言い方だとデッドビートは思ったが、まだまだ強さの理由があるのだとグレイトマン打倒の道の果てしなさを思う。

 ドクターパラドックスはデッドビートと食事をすることはなかったが、クガユウゴはデッドビートと、倒すべき敵と食卓を囲む。

 その意味について考えられるくらいには、デッドビートはすでにグレイトマンキラーを望まれた兵器ではなく、一つの命だった。

 

 そのことをまだデッドビートは気づかない。

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