【完結】特撮ヒーローのライバル系カイジン、異世界に転生す。 作:ふくつのこころ
26:潜入作戦
レンの取り調べを行った、ウィスカーによって提案されたのは、魔法犯罪シンジケート・赤い雫への潜入だった。
王立警備隊ハウンズとして、赤い雫について知らないことが多すぎるため、赤い雫の実状を調べるためだ。
しかし、ここで一つ問題が浮かび上がる。
「でもよ、ボス。俺様も、ホワイトフットにも潜入なんてできると思うのか?」
「ホワイトフットも同感だ。ホワイトフットは潜入などしない」
やへ一通りの話を聞き、ファルコンはスッと手を挙げた。
ホワイトフットはファルコンの膝上におさまり、ファルコンの方を一瞥した後にウィスカーに続けた。
「俺様も、ホワイトフットも割れちまってないか?
「となれば、適役は一人しかいないか」
「レパード姐がいても、あの人は潜入とか
ファルコン、ホワイトフット、ウィスカーからの視線がアーサーへと向けられる。
「へ?僕?」
一瞬、何が起こったのかが分からなかったアーサーは自分に人差し指を向ける。
キョトンとした様子にホワイトフットは耳を垂らしながら頷き、ファルコンは真顔で頷いた。
「サポートはしよう。行ってくれ、アーサー」
ウィスカーにアーサーは助けを求めるものの、ウィスカーはアーサーを上から下へと見た後、何か思いついたようで頷いた。
☆
アーサーに言い渡されたのは、囮捜査と潜入捜査を兼ねた任務であった。
捕らえたレンは一時的な釈放をし、アーサーを連れて赤い雫のアジトへと連れていく。
レンの身元を保証すること、情報提供によって罪状をいくらか軽くすることができることをウィスカーがレンに約束した。
「そのスライム、連れていくのか?」
「目立ってしまうか?やっぱり」
「まぁ、懐いたとかそういう理屈にしておけばいいか。赤い雫は魔法を使える奴が少ねえからな」
レンはアーサーがハウンズの制服の上着を脱ぎ、それらしいパーカーを着てフードを目深にかぶっているところにフードの上に載っているデッドビートを見上げて苦笑いした。
「お前も大変だよな。新人なんだって?」
「まあね。これくらい、やるんだろ?僕はあまり知らない人のところに行ったことないからさ、毎日新鮮だよ」
「警備隊に入るだけあって、お前も変わってるなぁ」
赤い雫のアジトがあるのは、街から外れた人気の少ないところにあるように見せかけて、その場所は月に何回か変わっているのだという。
入り口は赤い雫のメンバーに知らされており、
移動式のアジトになっているのは、赤い雫をまとめているリーダーの発案だと言う。
憲兵隊にも警備隊にも見つからず、それでいて
もちろん、不良グループの延長で犯罪シンジケートを作り出した彼らが高価なマジックアイテムを購入しているというよりは、ラクリマユーザーの力でアジトを作っているのだとか。
暗い通りを進む中、レンはきょろきょろとあたりを見渡しながら、何かを探している。
憲兵隊に見つかってしまえば、一発で連行されかねないほどに挙動不審な動作に違いないが、レンは懐から取り出したシャークのラクリマ(これはウィスカーから特別に返却された)を使い、石造りの壁をノックする。
「……誰だ」
「“シャーク”」
レンが数度、石造りの壁をノックすると、壁から低い声が聞こえた。
どうやら、少女の声にも聞こえるが、どこかドスを利かせているようにも聞こえる。
レンの返事を聞くと、石造りの壁が開き、レンはアーサーを連れて中へと入った。
「随分と遅いな。……ラクリマを貸してやったのは、お前をぶらぶらさせるためじゃねえからな」
「悪かったよ、姉ちゃん」
「……その後ろの
中にいたのは、赤いメッシュが入ったウルフカットのレンによく似た容姿の少女だった。
レンとアーサー、そしてデッドビートが中に入ると、入り口は跡形もなくなった。
「こ、こいつは俺の友達なんだよ、姉ちゃん。色々とイライラが溜まってるからさ、俺たちと同じグループに入って暴れたいんだって」
レンはアーサーに近づき、訝しむ様子を隠さない姉に慌ててフォローを入れた。
捕まってしまったとはいえ、自分が所属しているグループに外部からの侵入者を招き入れた裏切り者である自覚がある上でこの嘘を言っているのだとすれば、レンはデッドビートにとって印象が良くなかった。
口調のキツさ、性格のきつさは先にエーデルワイス一門を卒業していった姉弟子としばらく会っていない勇者の血筋の幼馴染を思い起こさせる。
自分が出会う異性はこのタイプばかりなのかなぁ、と内心フードの下で苦笑いしていると、空を切る音がした。
「……へえ?ただの金色もやしじゃないんだ?その度胸は気に入った。全く、最近ウチらに襲撃かけてくるのもいる以上、ヘイタイはどれだけいてもいいからね。お前、名前は?」
少女が繰りだした拳をアーサーが掌で受け止めていた。
ここまで不機嫌な表情を浮かべていたレンの姉は少し表情が和らいだように見えたが、すぐに表情を引き締めた。
「ァ、いや、ルティ」
デッドビートは一瞬、アーサーと言いかけたところにひやりとした。
潜入捜査だと言っているのに本名を名乗りかけてどうする、と冷ややかな視線を送ると、少女はアーサーの頭に載っているデッドビートにも目を向ける。
「エレン。そいつの、レンの姉ちゃんだ。……頭の
「事情があるんだ。こいつも連れていかせてほしい」
魔法、と言う少女はその言葉に負の感情を込めながら、視線だけでレンの方へと向ける。
睨みつけられるのは、エーデルワイス一門でエヴァ―レインにプレッシャーをかけられたこと、元々からマイペースなところがあるアーサーはそのプレッシャーには圧されなかった。
「……まぁ、いいよ。ついてきな」
「どんな奴がお前たちに奇襲を?」
デッドビートが口を開くと、少女は喋るの?こいつとでも言うように一瞬目を丸くした。
しかし、
レンはエレンが取り繕えていないという目を向けると、エレンに拳骨を落とされてしまい、そのまま、目を背けた。
「……ウチのリーダーを探してるんだって聞いてる。
赤い道着を着ていて、普通の魔法使いでもできるのはほとんどいないらしい、魔法の属性の重ね掛けはもちろん、
エレンがアリの巣状になっているという、赤い雫のアジト内を案内するために先導しつつも、語った憲兵隊や警備隊以外に赤い雫を狙っているという
『なぁ、デッドビート。これってさ』
『エヴァ―レインだろうな。あの女がなぜ、烏合の衆共に襲い掛かっているのかはわからんが』
『難癖付けられたとか?』
『ないことはなかろうな』
アーサーとデッドビートは精神が繋がっていることで、言葉もなく、思念でのみ会話した。
お尋ね者の魔法犯罪シンジケートに言いがかりをつけたうえで襲うような真似をするのは、あの性格の悪い姉弟子しかいないと思ったのだ。
「着いた。ここがウチらのリーダーの……って、よくみりゃあ、げっそりしてんな?飯食ってねえのか?」
「いや、お構いなく」
エレンがリーダーの部屋の前にレンを伴い、アーサーとデッドビートを連れてくると、何とも言えない表情をしているアーサーにエレンは素が出てしまい、また取り繕った。
意外とエレンは面倒見もいいのかもしれない、とアーサーは内心思った。
「失礼がないようにだけはしろよ、ルティ。……リーダー、新人連れてきた」