【完結】特撮ヒーローのライバル系カイジン、異世界に転生す。   作:ふくつのこころ

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27:赤い雫とこどもたち

「ようこそ、赤い雫へ。ボクはカイン、赤い雫のリーダーをしているよ」

 

 アーサーとデッドビートを迎えたのは、数人の構成員に囲まれた眼鏡をかけた優男だった。

 魔法犯罪シンジケートのリーダーと聞いていた、デッドビートの予想とは違っていた。

 犯罪グループのリーダーと聞いていた以上、もう少し人相が悪い人間を想像していたが、抱いた印象とイメージはずいぶんとかけ離れていた。

 

「ボクは新しい友人を歓迎するよ。……連れてきたのはレンかな?」

 

「あ、はい、リーダー。こいつも、色々とイライラすることがあって、それで赤い雫に入りたいってことだったんです。……そうだよな、ルティ?」

 

 カインがレンに尋ねると、慌ててレンはカインの言葉を肯定した。

 それらしい理由(・・・・・・・)を並べたレンの嘘にアーサーは内心苦笑いしながらも、フードを脱いだ後に頭を下げた。

 

「魔法の才能があるヤツには煽られたことがあって。……それで、イライラしてるんだ」

 

『……まぁ、あながち間違いではないのがな』

 

 アーサーはレンの言葉を肯定する。

 百パーセントの嘘よりも、少しの真実を交えたほうが信じられやすいもの。

 とはいえ、アーサーが修行時代に魔法の才能のある(・・)姉弟子に煽られたが故の言葉だと思えば、幼馴染のためにカイジンと一つになって戦う優しさを持つアーサーが嘘をつけるのは意外な一面だとデッドビートは思った。

 デッドビートとアーサーが魂が繋がっていることで語り掛けてくる言葉に対し、アーサーは思案しながら返した。

 

『煽られてる経験はちゃんとあるからさ。……他に大したことされてるわけじゃないし、作り話を適当にするよりは信頼されるだろう?』

 

『……小僧も、あの魔女の下で染まってきているとはな』

 

『エーデルワイス先生に似てきてるって?……三年も寝食を共にしたら、似ているところも出てくるんじゃないかな』

 

 その割には嘘に慣れている、とアーサーと長年過ごしているデッドビートは内心苦笑いした。

 

「そうか。そういうことなら、君はボクらの同志だ。共に才能ある者たちに目に物を見せてやろう。……しかし、その前に君の連れているスライムについて聞かせてもらえるかな?召喚は魔法使いの才能がないものにはできないはずだけどね?」

 

「……新入り、リーダーの言葉に答えな。リーダーは魔法使い共に目に物を見せるために様々な魔法の知識を蓄えているんだ」

 

 構成員の一人がアーサーの腕を掴んだとき、即座にアーサーはその構成員の腕を掴んだ勢いで組み伏せた。

 

「彼は僕の命を救ってくれた恩人なんだ。例え、仲間であろうと、彼に手を出すなら、僕は容赦できないよ」

 

「ぐっ、こいつは見た目通りのモヤシ野郎じゃない!?力が強い!!リーダー!!こいつ、新入りのくせに!!」

 

 地面に組み伏せられた、その構成員の男はアーサーを睨むも、アーサーはなるべく表情に出さないようにしつつも、無表情で言い放つ。

 

『……迫真の演技だな、小僧』

 

『……この後、どうしよう』

 

『そこは考えなしか』

 

 デッドビートに救われたから、と言う理由で赤い雫に入ったばかりで歯向かうのは、アーサーの負けず嫌いを思えば、らしい(・・・)と考える反面、悪手だと感じた。

 潜入任務である以上、信頼を得るまでは下手な動きをするべきではないとデッドビートは考えるが、まだまだアーサーは青い(・・)ようだ。

 

「命の恩人、ということか。そういうことなら、ボクは失礼なことを君にしてしまったね。気に入ったよ、ルティ君。そういう、義理堅いのはボクも嫌いじゃない。ただし、覚えていてもらいたいのは、あまりそうした反感を買うことはオススメをしない。……その体術は、どこかで指導を受けたように見えるけどね。どこで習ったんだ?」

 

『そら見ろ、小僧』

 

 カインはアーサーのデッドビートへの義理堅さを評価すると言い、拍手して称賛した。

しかし、アーサーの体術がどこで仕込まれた(・・・・・・・・)のか、それが引っ掛かるようだった。

 レンやエレン、それにカインを取り囲む赤い雫の構成員たちの視線がアーサーへと向けられる。

 アーサーは視線が集中しているのに気付いた後、デッドビートがアーサーの考えなしな行動を揶揄した。

 

「魔法がまともに使えないんなら、それ以外の分野で何とかするしかないだろ?特に魔法を使っている連中を相手にするんなら、魔法以外の分野で勝負をしないと。体術でも何でも、工夫して勝てるなら、色々と取り込むべきだ。

それに、魔法使いは魔法を使うことに拘りがある(・・・・・)んだろ?」

 

『……なるほどな、そうすることにしたか』

 

 アーサーはその瞳に強い意思の光を見せた。

 デッドビートはカインの質問に対するアーサーの返答に助け船を出すつもりはなかったが、アーサーの言葉に楽しげに笑った。

 

「……確かに相手の分野で勝負をしない、というのはいい手段だ。特に魔法使い連中は魔法を使うことに対して拘りがある。ボクらのようにマジックアイテムを使って魔法を行使できるなんてのは、絶対に言わない。歓迎するよ、ルティ君。君も今日から赤い雫だ」

 

「やったなぁ、ルティ!!」

 

 レンはカインの言葉に明るく笑い、アーサーの肩を叩くも、エレンの騒ぐなと言う視線に縮こまってしまった。

 

「君にもラクリマを見繕おう。……実は、ボクらのラクリマを提供してくれている協力者がいてね。……ドクター、来てくれるかい?」

 

 カインはハウンズでも使っているメダルに似たマジックアイテムに呼びかけると、白衣に眼鏡をかけた男がコツコツと革靴の音を立ててやってきた。

 アーサーには“見慣れない格好”だったが、その姿はデッドビートは見知ったものだった。

 

「初めまして、新人くん。リーダー殿にちゃんと認めてもらえてよかったね?私はドクター、ドクター・パラドックス。赤い雫のメンバーたちにラクリマを支給している。

才能を認めてもらえない気持ちは、私も経験がある(・・・・・)からね。

よくわかるんだ、彼らの気持ちは。私は彼らの親のつもりで協力しているんだ。……リーダー、ラボに彼を連れて行っても?」

 

「もちろんだ、ドクター。詳しいことはあとで伝えるよ、ルティ君。ドクターからラクリマのことは詳しく聞いてくれ」

 

「感謝するよ、リーダー。すぐに彼を君の所に戻すとするからね」

 

『……ドクター?』

 

 ドクターと呼ばれた男はカインとまるで親子のように親密な雰囲気で話をしている。

しかし、その男に対し、デッドビートは見覚えがあった。

 その姿を見たとき、スライムの身体にはないはずの内臓が引っ張られるような感触がした。

 

 ドクター・パラドックス。

 

 元の世界において、グレイトマンを倒すためにデッドビートを産み出した張本人であり、すなわち、デッドビートの()である。

 

『デッドビートの知り合い?』

 

 カインに小さく頭を下げた後、ドクターについていくときに慌ててデッドビートを抱えていく。

 やりすぎた(・・・・・)構成員に睨まれるも、アーサーはなるべく平静を装ってその目を見ないように無視を決め込んだ。

 内心、心が痛んだのを隠すように。

 

「ああ、ついでにだけど、新人くん。そのスライムも、少し見せてもらえないかな?私は変わったもの(・・・・・・)を見るのが好きでね」

 

 ラボへと向かう道中、白衣にポケットに手を突っ込んだまま、ドクターは振り返ってアーサー達に満面の笑みを向ける。

しかし、目が笑っていない笑顔にデッドビートは自らを失敗作と下した瞬間を思い出す。

 

『グレイトマンを殺すのがお前の使命のはずだけどね?感情(バグ)なんか、発生させてるんじゃあないよ。この失敗作(・・・)め』

 

 そのように言い放った、冷たい眼差しを。




ドクター・パラドックスはいわゆる、福井出ケイみたいな枠です。
さあ、エンドマークだ
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