【完結】特撮ヒーローのライバル系カイジン、異世界に転生す。   作:ふくつのこころ

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02:カイジン忍法!!

 禍々しい光が消えると、そこには一人(・・)のカイジンがいた。

 

 黒い装束、髑髏の面、風にはためくオレンジのファイアパターンが浮かんだ赤い(・・)マフラー。

 忍びを思わせる、その姿はグレイトマンの宿敵・デッドビートが異世界に顕現したかのように見えるが、オレンジのファイアパターンを持つマフラーは本来のデッドビートにはなかったものだ。

 

「アー……サー……?」

 

 リリアーヌは恐る恐る、カイジンが幼馴染であることを確認するように名前を呼ぶ。

 その姿は絵本で見たことがある(・・・・・・・)『でんせつのあくま』と同じものだが、赤いマフラーに浮かび上がったオレンジのファイアパターンは『でんせつのあくま』の特徴の黒いマフラーと異なる。

 

 この異世界における、人間の成人男性以上の背丈ながらも、しなやかで細く引き締まった体格をしている。

 本来、デッドビートには癖のポーズがあるのだが、本人であり(・・・・・)本人ではない(・・・・・・)カイジンはくるりと振り返る。

 

「ぼくはだいじょうぶだ、リリアーヌ。ぼくのうしろからうごかないで。

リリアーヌのことは、ぼくがまもる。……あれ、おおきくなってる!?」

 

「……うん」

 

 アーサーのその言葉にリリアーヌは不思議と安心できた。

 

 

『……!前を見ろ、小僧!!』

 

 カイジン────アーサーが手を振り返すと、デッドビートの声が脳に響く。

 その瞬間、竜人に得物の槍で殴られ、その身体が吹っ飛ばされてしまった。

 

『言っただろうに』

 

「アーサー!?」

 

 デッドビートの呆れる声とともにリリアーヌは眉尻を下げながら、幼馴染の名前を呼ぶ。

 確証はなかったが、異形の姿になりながらも、自分を守ってくれるのであれば、それはアーサーに他ならないと理解できる自分に気が付いた。

 

 一方のアーサーは急に視界が上がったこと、感覚が強化されたことでまだ身体についていけていない。

 駆ければ、すぐに加速することもできるし、石を投げれば、凄まじい速度で竜人へと飛んでいく。

 ただ、力に振り回されている現状は竜人に距離を取られて投石は躱され、アーサーの攻撃は届かず、竜人からの槍の直撃を受けてしまう。

 

『全く、センスがないな』

 

「た、たたかうなんてやったことないんだから!!」

 

『なら、“操縦(・・)”を代われ。オレがやる』

 

 アーサーの様子に痺れを切らしたのか、不思議とアーサーの脳裏には腕を組み、溜め息をつくデッドビートの姿が浮かんだ。

 代わりに戦ってくれるというが、どうやって代わる(・・・)というのだろう?そして、なによりも。

 

「そうじゅうって?」

 

『なんだ、知らないのか?……身体を使うのを代える、というところか。念じてみろ、すぐに代われる』

 

「デッドビートはこういうのはなれてるの?」

 

 かんたんにいってくれるなぁ、とアーサーは思いつつ、意識を切り替える瞬間に尋ねたアーサーへのデッドビートの返答を返す前にしばらく間が開いた。

 

『ぶっつけ本番に決まってる、慣れてたまるか』

 

 刹那。

 

 デッドビートとアーサーの意識が切り替わる。

 

「……雰囲気が変わったな?お前、どちらかと言えば、我ら(・・)の側だろう」

 

 青い鱗に覆われた竜人はデッドビートとの距離を測りつつ、竜人としての本能からデッドビートを警戒する。

 

「でんせつのあくま、という奴か?」

 

 デッドビートはアーサーとの()の邂逅で聞いた単語を思い出した。

 自分に似ているというが、デッドビートにとっては他人の空似もいいところだったので、正直なところ、迷惑しているというのが本音だ。

 

「……!思い出したぞ!お前、勇者オリーシュ(・・・・・)ナーロウ(・・・・)と戦った悪魔か!」

 

「オリーシュ・ナーロウ?ナーロウはアレか、その銀髪の娘のことか?」

 

「そうだ!我々は勇者オリーシュに煮え湯を飲まされ続けた!だから、機会(・・)が手に入った以上は勇者の末裔の小娘を嬲り殺しにしてやらねば気にすまん!二度と我らにたかが人間が歯向かってこないようになァ!!」

 

 竜人の突き出した槍をエネルギーで作り出した、紫色の手裏剣を回転させて槍を防御する。

 エネルギーで作り出された、手裏剣は槍とぶつかり合うことで金属音を響かせ、槍を弾き飛ばした。

 デッドビートは人差し指と中指を立てる。

 それは、彼が異世界転生前にグレイトマンとぶつかり合った際に使用した多彩な能力を発動させるための引き金(キー)となるもの。

 

「カイジン忍法、」

 

朧手裏剣(おぼろしゅりけん)の術」

 

 ここで、ナーロウ世界と仮称する、この世界における魔法について説明する。

 人間や魔物問わずに全ての者が宿している力、魔力を言霊に流し込んで使用するものであり、通常(・・)、詠唱なしで魔法を行使することはできない。

 その詠唱には法則があり、用途を表す二つの言葉とその属性を司る精霊の名前、さらに結果を告げることで魔法は発動する。

 つまるところ、ナーロウ世界における魔法とは公式である。

 

 これに対し、デッドビートのカイジン忍法はナーロウ世界における魔法を根本を覆す(・・・・・)

 詠唱はあれど、用途も結果も分からない。

 

「な、なんだ!?その魔法は!?デタラメだ、デタラメすぎる!!」

 

 複数に分裂させた手裏剣を宙に浮かべ、それらを操りながら、竜人へ降り注ぐ。

 さながら、流星群のようにも見えるカイジン忍法・朧手裏剣の術を槍で払い落しつつも、竜人は未知のものを目の前にしたことで平静を崩し始めている。

 カイジン忍法が体系の違う魔法とみなし、大量の手裏剣を作り出したことで魔力切れさせること、そしてデッドヒートがパワータイプには見えないことで竜人は接近戦を仕掛けた。

 竜人は竜の巨躯を失ってはいるものの、そのパワーとスピードは獣人の中でもトップクラスである。

 特別な力を一つも持っておらず、魔法を使ったこともない子供に負けるはずがなかったはず(・・)だった。

 

「お前、オレのカイジン忍法は魔法とやら(・・・・・)だと思っているな?」

 

 デッドビートはその無機質な顔で竜人に尋ねる。

 

「ニンポーだのなんだの言っているが、違うのか!?いや、見たことないが、あれは魔法だ!でなくては説明がつかない!!もしかして、あのガキはお前の依り代か!?」

 

 未知を目の前にした竜人は動揺し、攻撃を繰り出してくるものの、対して冷静なデッドビートの動体視力を以てすれば回避できないほどではない。

 

「さて、どうだろうな。この世界の初陣にしては、歯応えがなかったが……。やはり、これが一番手に馴染む」

 

 即座にデッドビートが生成して見せたのは、柄に髑髏の意匠のある長剣。

 その銘をデッドカリバーと言う。

 

「魔法とやらは知っている。要はエネルギーを使った技術体系の一つだと認識している。……その上でお前に突きつけてやる、オレのカイジン忍法は魔法ではない。

カイジン忍法・奥義

 

 ちゃきり、とデッドカリバーを構える。

 その刀身には竜人の姿を捉える。

 

 

「ば、バケモノ!!お前は、ば、バケモノだ!!」

 

「二本の足で歩いてるトカゲがそんなことを言うのか?笑えない冗談だな」

 

 デッドヒートは恐怖に震える、竜人の反応を鼻で笑った。

 

 瞬間、デッドビートの姿が消えた。

 

 次に竜人が気が付くと、自らの身体が切り刻まれるのを感じた。

 断末魔も上げられず、竜人としての硬質の肉を柔らかい肉によく研いだ包丁を通すように切り刻まれ、紫焔の柱が昇って竜人は焼失した。

 

デッドヒートエンド

 

 デッドビートが囁くように宣言すると、デッドビートの身体から炎が噴き出し、小さなアーサーの身体に戻る。

 一方、リリアーヌはアーサーに守られていたことで傷一つついていなかった。

 目の前で幼馴染が『でんせつのあくま』の姿で戦っていた驚きの方が強く、見たこともない“ニンポー”で戦う様が鮮烈に脳を焼いてしまった。

 膝から崩れ落ちたアーサーは脱力し、まともに立ち上がることもできない。

 

「アーサー!!あの、あのさ!わたし、おまえをいろいろといってきたけど!!きょうのおまえは、その」

 

 駆け寄ってきたリリアーヌはアーサーの小さな手を握り、ぽろぽろと涙を溢れさせる。

 

「とっても、かっこよかった」

 

 彼女はそっとアーサーに口づけした。

 

 

 

 

 




勇者の名前のオリーシュ・ナーロウはオリ主+小説家になろうに由来しています。
リサーチ不足なら申し訳ないのですが、そんな名前のオリシュってハーメルンにいませんよね……?
ちなみに第一話のサブタイ案の一つにカイジンが転生したら、スライムだった件がありました。
ですが、直前で辞めました(オリチャーセルフ破壊)
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