【完結】特撮ヒーローのライバル系カイジン、異世界に転生す。   作:ふくつのこころ

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31:聖剣の力

「ゼノブランド、起動(うごけ)

 

 リリアーヌがゼノブランドを起動させるための言葉を紡ぐと、それに応えるようにゼノブランドは明るく輝く。

 夜の闇の中でも煌めく様は、まるで夜空を走る流星のようでリリアーヌの美しい銀髪も相まって、思わず見とれてしまう。

 

同じ(・・)だ、グレイトマン(アイツ)と)

 

 デッドビートはリリアーヌが呼び起こそうとしている、その力の正体がデッドビートの好敵手(ライバル)を思わせるものであると気づくまでにそう時間はかからなかった。

 アーサーとあくまで手合わせを楽しみたいリリアーヌは力をセーブしているものの、邪悪な力を持つ者は一瞬にして消し飛ばされかねない力を持っている。

 かつて、アンデッドアーサーと言う名前を得るまでのアーサーとデッドビートが融合した超人が倒した竜人のようなものは、簡単に消し飛ばせるだろう。

 

「これで、アーサーと私はお揃い(・・・)だな?」

 

「どういうこと?」

 

「アーサーはスラリンと合体して魔人の姿になっていただろう?私も同じようなことができるようになったんだ!!」

 

 リリアーヌは誇らしげに語る。

 アーサーの超人に変化した姿を魔人と呼ぶのは、“カイジュウ”、“カイジン”、“ヘンシンヒーロー”といった概念が存在していない、この世界においては相応しいものだとデッドビートは思う。

 変わらず、デッドビートのことをスラリンなどと呼ぶのは気に入らないが、リリアーヌが聖剣の力で変身するのは、まるで(・・・)好敵手のようだった。

 

 リリアーヌがゼノブランドを再度輝かせると、光の柱が降り注ぎ、リリアーヌのその姿を変える。

 白銀のボディにリリアーヌ自身のプロポーションが反映された、美しき戦乙女ともいうべき異形の姿。

 ゼノブランドの姿はなくなれど、リリアーヌはその手に魔力で産み出した光の剣を持ち、アーサーに打ちかかってきた。

 アーサーはその光の剣に対し、木刀で受け止めるものの、リリアーヌの力はかつての何倍もの力を感じられるのと、異様なまでに神聖なオーラを感じられる。

 

「この姿の名前は、聖剣ゼノブランドで変わる白銀の戦神(ゼノ・アルビオン)!!」

 

「……僕と同じ力を得てくれたことは嬉しいよ、リリィちゃん」

 

「なら!一緒に赤い雫を潰そう、アーサー!昔のように、私とお前で!!お前に何かをしてくるのは、全部私が切り払ってやる」

 

 一撃、二撃、三撃。

 

 横薙ぎ、縦からの振り下ろし、切り上げとアーサーが木刀を振るっても、それらにリリアーヌはすべて対応していく。

 自分が同じ力を得てくれたことが嬉しい、と言う言葉にリリアーヌは自分の手を取ってくれると疑わなかった。

 剣で打ち合い、木刀だけ(・・・・)で自分と渡り合うアーサーの姿は幼いころに見た超人の力を振るう頃とは変わっているようにも見えた。

 

 リリアーヌはナーロウ家で研鑽を積み、剣術や体術も磨いてきた。

 魔法はあくまで戦術の一環であり、主力に据えているわけでないのは、アーサーを勇者リリアーヌ・ナーロウの魔法使いとして迎えるため。

 懸命に魔法の修行に励んできたアーサーこそ、勇者パーティの魔法使いにして自分の唯一の仲間(・・・・・)に相応しいと信じていたのだ。

 超人の姿、白銀の戦神に転じてもなお、アーサーとデッドビート(スラリン)がカイジン転生(てんしょう)をせずに木刀で撃ち合っていることはリリアーヌには物足りなかったが、自分に対し、感謝を述べている様子に愛おしさでいっぱいになる。

 

「僕は、できることなら、赤い雫の連中とも分かり合えたらと思っているんだ」

 

「は?」

 

 だが、アーサーはとても悲しげな表情でリリアーヌに告げた。

 リリアーヌにとって、アーサーの反抗は微塵も予想していないものだった。

 

 幼馴染だからこそ、一緒にいてくれる。

 親分と子分だからこそ、アーサーは自分の言うことを聞いてくれる。

 自分がアーサーにとって、大切な異性だからこそ、アーサーは自分を守ってくれる。

 最愛の自分のために迷わず駆け寄ってくれる。

 

 そんな風に思っていたものだから、アーサーが“絶望だけして這い上がろうとも努力しない”連中に手を差し伸べたい、という気持ちが理解できなかったのだ。

 理解ができない、とリリアーヌの剣を握り込む力が入る。

 あれだけ、頑張って魔法の修行に打ち込んできたのに、卒業祝いも渡さないエーデルワイスに代わり、アーサーの得物の剣(デッドカリバー)を少しでもまともに扱えるようにと剣の稽古をつけようと思ったのに、裏切られた気分だとリリアーヌは奥歯を噛み締める。

 

「あいつらは、お前のように努力しないのよ?」

 

「みんながみんな、努力ができるわけじゃない。それができない人は、まわりの助けが必要なこともあるんだ。それで間違った人に頼ってしまって、使い潰されるなんてこともあり得るんだよ」

 

 リリアーヌの周囲には、アーサーしかいなかった。

 アーサーのように、頑張れる人間が一握りしかいないことをリリアーヌは理解しない。

 

 リリアーヌが白銀の光の剣を振るうたび、周囲には風が吹き荒れ、空は暗雲が立ち込め始めた。

 稲妻が轟き、リリアーヌが剣を掲げると空から落雷がリリアーヌの握る剣に落ち、稲妻を纏う。

 

「……アーサー」

 

「ああ!カイジン転生(てんしょう)!!!」

 

 デッドビートはリリアーヌが白銀の戦神(ゼノ・アルビオン)になったことで力に乗っ取られつつあるのを感じ取る。

 このまま、稲妻を纏った剣相手に木刀を使おうなんて言うのは、あまりにも自殺行為だ。

 アーサーにアンデッドアーサーになるためのカイジン転生を提案すると、アーサー自身も今のリリアーヌに思うところがあるのか、デッドビートの提案を受け入れ、赤い雫の上着を脱いで、アンデッドアーサーに変身した。

 

 ファイアパターンの赤いマフラーを巻いた、黒いカイジン・アンデッドアーサー。

 白銀のボディに稲妻を纏った光の剣を手にした、白銀の戦神(ゼノ・アルビオン)

 

 アンデッドアーサーは髑髏の意匠を持つ剣、デッドカリバーを生成し、白銀の戦神が稲妻を放たないように剣で応戦する。

 自らのライバルを倒すことにしか拘ってこなかったことで、周囲に被害が及ばないように(・・・・・・・・・・・)立ち回る今の状況には、デッドビートには不思議な感覚が宿ったのを感じた。

 防戦どころか、押される一方でしかなかったゼノブランドの力を振るうリリアーヌとの手合わせはいつしか、命のやり取りにまで発展してしまっていた。

 ゼノブランドの力を振るい、衝撃波が飛べば、アンデッドアーサーはデッドカリバーから炎の斬撃を飛ばして相殺する。

 

『カイジン忍法、紅蓮波(ぐれんぱ)ってところ!?』

 

『そこまで余裕があるんだったら、もう少し前のことに集中しろ!!』

 

 ただの斬撃、それも特にデッドビートが名前を考えていなかったような攻撃に名前をつけることができるほどに余裕を見せるアーサーをデッドビートは怒鳴りつけるも、それなりの場数をこなしてきたことでアーサーも相応しい動きを見せつつあった。

 ただ、剣を振るうだけでなく、デッドビートのカイジン忍法を無意識のうちに行使し、アンデッドアーサーは風の刃を蹴りから放ち、白銀の戦神を牽制している。

 我慢がならなかった白銀の戦神が大きく振りかぶった剣を振るうと、稲妻が迸った。

 

「カイジン忍法、土流壁(どりゅうへき)!!!」

 

 アンデッドアーサーはデッドカリバーを地面へと突き刺すと、アンデッドアーサーと白銀の戦神を取り囲むように泥の壁が立ち上り、瞬時に固まる。

 稲妻が降り注ぐと、泥の壁はドーム状になり、アンデッドアーサーが地面に突き刺したデッドカリバーに手を添えた状態でドームの中にエネルギーで作ったバリアを張り、外へ逃がさない。

 

「また新しい技を覚えたんだな、アーサー!!」

 

「稲妻を振り回すなんて言うのはやめてくれ、リリィちゃん!!」

 

「お前が私の言うことを聞かないからだ!!」

 

 白銀の戦神は光の剣を振るうと、今度は簡単に泥の壁もといドームは吹き飛ぶ。

 

(さっきのまぐれ(・・・)か!!)

 

 ドームの中にエネルギーで作ったバリアを張れたのも、アーサー自身が外へ被害を出さないようにと言う無意識のうちにできたに過ぎず、その能力はデッドビートが模倣(コピー)したグレイトマンが持っている能力のうちの一つだ。

 そんなものを行使できたことは、アーサーもアンデッドアーサーになったこと、イメージを膨らませやすくなり、魔法を使いこなせるようになったことの表れといえる。

 それでも、ほとんど暴走しかかっているリリアーヌに対し、アーサーはアンデッドアーサーに変身してもなお、殺意を感じられない。

 

「もういい、飽きた」

 

 そういって、白銀の戦神がアンデッドアーサーの背後を取り、斬りかかろうとした瞬間、一閃が走る。

 白銀の戦神は自らの得物である、魔力で構成された(・・・・・・・・)光の剣の形が崩れていくと、その変化を解いた。

 

「今日はここまでにしておいてやる。私がお前の目を覚まさせてやるからな」

 

 そう言い残し、白銀の戦神からリリアーヌに戻り、彼女は指の一振りで魔法陣を形作り、その魔法陣に飛び込むと姿を消した。

 一閃が走ったとき、アーサーは何かできたわけではなかった。

 というのも、アーサーはこのリリアーヌの戦いでアンデッドアーサーになる前もなった後も押されて一方だったという自覚をしている。

 聖剣ゼノブランドの力でアンデッドアーサーとは異なる超人の姿に変化し、力を振るうリリアーヌは強大だった。

 どの攻撃も加減していたのが見え見えだし、稲妻を呼び寄せて刃に纏わせ、周囲に拡散しようとしたのはヒヤリとした。

 いまとなっては、ギャラリーが「なにかの演武の練習だったのか?すげえぜ!」なんて声が上がっているが、そんな風に誤認させることができているならば、上々だ。

 

「随分と、かわいらしい(・・・・・・)女の子とお知り合いなんですね?アーサー殿」

 

 赤い雫の上着を着なおしているところに声をかけたのは、リリアーヌとの戦いの前に木刀をアーサーに渡した着物姿の帯刀した女性だった。

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