【完結】特撮ヒーローのライバル系カイジン、異世界に転生す。   作:ふくつのこころ

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32:ふたたび

 

「王立警備隊ハウンズに刀を預けている、レパードと申します」

 

 アンデッドアーサーから変身を解除し、リリアーヌを見送ることしかできなかったアーサーに浅黄色の着物にハウンズのロゴ入りのジャケットを羽織った女は丁寧に自己紹介した。

 アーサーは熱くなるあまり、手放してしまっていた木刀をレパードに差し出すと、レパードは満足げに受け取った。

 

「もしかして、貴女は」

 

「話はボスから聞いていますよ、アーサー殿。そして、デッドビート(スラリン)殿。

ファルコンやホワイトフットと目まぐるしい活躍をしている上、あのような魔人の姿になれるとは!私、剣しか(・・)取り柄がないもので。羨ましく思います、特に先ほどの絶技は」

 

 デッドビートはレパードがスラリン、と口にしたことでだんまりを決め込むことにした。

 おおかた、あのファルコン(バカ)とバカうさぎのせいだろうと見做している。

 アーサーの方はファルコンから聞いた、凄まじい実力を持つメンバーというのがレパードだとすぐに気づいた。

そして、レパードもまたアーサーの話をウィスカーから聞いたようで、話はそこまで拗れなさそうだとリリアーヌとのやりとりを思った。

 レパードは魔法を使わないにも関わらず、魔人や魔獣の姿に変わるファルコンやホワイトフットに一目置かれている。

 その実力が剣技なのだろうなと予測できるが、穏やかな物腰で凄まじい実力者というのは会ったことがないため、新鮮だった。

 

「しかし、早速、潜り込み(・・・・)とは。実に運がありませんね。私ならすぐに潜り込んだ先の皆様を切ってしまいそうです」

 

 深く頷きながら腰に木刀を差し戻して語るレパードにアーサーは青ざめた。

 前言撤回、とレパードへ抱いた印象を訂正する。

 親分(上から)目線のリリアーヌ、情緒が少ないエーデルワイス、性悪のエヴァーレインに並ぶアクの強さを感じた。

 

「良かったら、私と手合わせしてくださいません?あの魔人の姿の貴方と殺し(ヤり)合ってみたいんですけど」

 

「それは遠慮します」

 

「おや、それは残念」

 

 腰の刀に手をかけ、顔を輝かせながらのレパードの誘い文句。

 気分が高揚しているのか、ギラギラした眼差しを向ける様子にアーサーはきっぱり断った。

 レパードはアーサーが断るところまで想定通り、と言った様子だった。

さらにアーサーがリリアーヌとの戦闘時に脱ぎ捨てた、赤い雫の上着を拾い、砂埃を払ってアーサーに着せた。

 面倒見の良いところは周囲の女性陣にそっくりだが、マイナスが大きいとアーサーは感じてしまう。

 

「早く戻るといいですよ、それなりに時間が経つでしょうから」

 

「……どれくらい経ってますか?」

 

「体感時間ですが、三十分は軽く?」

 

「戻ります!ではまた!」

 

 レパードが少し小首を傾げた後に返ってきた答え、それを聞いてアーサーはデッドビートを抱えて赤い雫のアジトの方向に戻って行った。

というのも、アーサーが戻って来ないのを心配したエレンの声が聞こえてきたからだ。

 

「あの子達のように良い子ですね、彼」

 

 ファルコンやホワイトフットらを思い出し、レパードは微笑んだ。

 

「彼も、姐さんだなんて呼んでくれませんかね」

 

 レパードは背後に感じた気配に咄嗟に刀へ手を掛け、即座に居合を放った。

 

 

 一方、アーサーはエレンがレパードと一緒にいるところを目撃する前に自分から声をかけることができた。

 

「エレン!」

 

「何やってたんだよ!?ルティ!危ないだろ、一人で出歩いてちゃ。

ウチを狙ってるヤツがいるんだから」

 

 エレンはアーサーに気づくなり、アーサーの腕を掴んで眉間に皺を寄せた。

 

「ごめん、エレン」

 

 アーサーは心配そうなエレンに自分が抱えている秘密に対し、罪悪感を覚えた。

 

 王立警備隊ハウンズの一員として、赤い雫に潜入していること。

 幼馴染のリリアーヌ・ナーロウが襲撃者の正体であると知っていること。

 アーサーはリリアーヌと関わることで、同年代の友人が一人もいなかった。

 アーサーと同年代の者はリリアーヌの独占欲による、怒りを向けられたくなかったのである。

 それゆえに人格形成における、十代の貴重な時間を異性の幼馴染とだけ過ごしてきたことで上手く付き合うことが難しかった。

 年上の姉弟子である、エヴァーレインともアーサーは距離をいまいち掴めていない。

 例外はカイジンにして魂の繋がりが強い、デッドビートくらいだ。

 

「謝ることじゃないだろ。……お節介みたいなものだと思ってくれたらいいよ」

 

 エレンはアーサーの言葉に目を丸くした。

 余計なお世話だ、とアーサーに言われることを覚悟していたのだ。

 静かだが、武闘派な一面を持っているのがエレンのルティ(・・・)に対する印象であった。

 触れたらキレる(・・・)ナイフのようなイメージだったというのに、と驚いた。

 

「ルティは変わってる」

 

 アーサーをまじまじ見つめ、エレンはつぶやいた。

 

「何が?」

 

「アジトにいる時より、雰囲気が丸い」

 

 エレンはアーサーの言葉に自覚ねえのかよと吐き捨てる。

 

『(緊張が解れたのか?最愛の幼馴染に会えて)』

 

「だ、誰が!?」

 

「え、お前がだけど」

 

 魂が繋がって(リンクして)いるデッドビートの言葉に思わず、声を出してアーサーが返してしまうと、エレンは訝しむようにアーサーを睨む。

 アーサーがデッドビートを睨みつけると、デッドビートは素知らぬ顔だった。

 エレンと並び立って歩いている時、その方向がアジトの方ではないことにアーサーは気づく。

 

「これって、どこに向いてる足?」

 

「足って……、足は前だろ?戻る時は……って、ずっと向いてんのは前か」

 

 アーサーのおかしな尋ね方にエレンは少し考えるも、だんだんと馬鹿馬鹿しくなってきたようで。

 

「って、何言わせてんだよ」

 

 バシッとアーサーの腕を叩いた。

 その流れはごく自然なものであったため、彼女は自分が出会って間もない異性の腕に触れたことに気づいた。

 

「……あ、悪い」

 

「気にするな。今のは小僧が悪い」

 

「悪かったか!?いまの!?」

 

 少し眉を下げたエレンに対し、デッドビートは言葉でアーサーを横から刺した。

 思わず、僕が!?と言いかけたアーサーをデッドビートは髑髏面の奥の炎のように揺らめく瞳に少し激しい光を帯びさせた。

 

『腐ってそうなガキが僕っていうか?小僧』

 

『い、言うかもしれないだろ!?』

 

 そんなやりとりを内面でしていると、エレンは思わず噴き出した。

 

「お前ら、仲良いんだな」

 

『全然?』

 

 エレンが指摘すると、デッドビートとアーサーの声が合わさる。

 それがかえって二人(正確には一人と一匹)に不満げな表情を浮かべさせてしまう。

 

「やっぱり仲良しじゃん」

 

「仲……」

 

「……良し?」

 

 エレンがゲラゲラ笑うと、アーサーが放った言葉をデッドビートが頭上で受け取る。

 それがかえっておもしろいと見做されたのか、エレンはまだ笑っている。

 これ以上、アーサー達を揶揄っては可哀そうだと思い、エレンは揶揄うのをやめた。

 

「ウチに食料提供してくれてるところあってさ、そこに今から行くんだ。手伝ってくれよな?」

 

 そう言って、エレンが手で示す方向には、オルカマートの屋号を出した店がある。

 店の裏側にエレンがアーサーらを連れていくと、彼女は扉を叩いた。

 

イヴ姐(・・・)、アタシ!」

 

『イヴ?』

 

『……姐?』

 

 久しく聞いた、しかし、アーサー達は一度として使ったことがない呼称。

 今度ばかりは魂の繋がりの中、アーサーとデッドビートは繰り返す。

 

「はぁ、営業終わりだってーのに。かわいい妹分に言われちゃ、仕方ないわねえ。……あ、おとーとくんじゃん」

 

 満更でもなさそうに赤い道着姿で出てきたのは、アーサーの姉弟子・エヴァーレインだった。

 久しぶりー、とエヴァーレインはひらひらとアーサーとデッドビートに手を振る。

 

「おとーとくん?」

 

 エレンは猫を被っているエヴァーレインを一瞥した後、アーサーを睨んだ。

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