【完結】特撮ヒーローのライバル系カイジン、異世界に転生す。   作:ふくつのこころ

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グレイトキラーキラー


35:守る者

 レイニーマートにアーサー達が来る、数時間前。

 

「一人の女性を狙うとは。恥ずかしくないのですか?」

 

「ご冗談を、レディ・レパード」

 

 レパードの背後を取り、一瞬にして引き抜かれた刀を人差し指と中指で受け止め(・・・・)、いつもの白衣姿でパラドックスは飄々とした態度を見せる。

 レパードはパラドックスのような優男が自分の剣を受け止めたことに内心驚きつつも、その素振りを微塵も見せない。

 

「只者ではないと見ました。私の放つ、一砕流(いっさいりゅう)を受け止めることはそうできるものではありませんから」

 

「プロフェッサー・ウィスカーの三頭の飼い犬(・・・・・・)、そのうちの一匹」

 

 レパードは真っ直ぐにパラドックスを見据えたまま、剣を離さない。

 パラドックスはレパードの膂力に怯まず、空いた手で白衣の懐から取り出した。

 それは、折り紙で作った三匹の犬だった。

 

 赤、白、水色。

 

 それがレパードには、ファルコン()ホワイトフット()レパード(水色)だとわかった。

 

「何が言いたいんです?ミスター」

 

「なに、警告だよ、レディ。君のところ(・・・・・)のしつけのなってない子犬(・・)に気をつけるよう言ってくれるかい?」

 

「はて?」

 

 パラドックスが取り出した三枚の折り紙を指で挟んだまま、器用に動かせば、黒い犬の折り紙が現れる。

 それがアーサー(・・・・)だとレパードにはわかった。

 パラドックスはその黒い犬の折り紙だけを器用に皺をつけ、地面に落とし、革靴を履いた足で踏みつけた。

 

「こうなるから」

 

「そうですか。死ね!」

 

 パラドックスの宣告と同時にレパードはきっぱり言い切ると、普段は見えない着物のスリットから長い脚を伸ばし、パラドックスを蹴りつける。

 蹴りつけた上で力任せに押し切り、刀の刃を走らせると、パラドックスは両断された上で消滅した。

 

「……幻術ですか」

 

「いや?これは科学さ、ワンコちゃん(・・・・・・)。今のは立体映像(リアリティヴィジョン)という」

 

 レパードが忌々しそうに眉間に皺寄せると、パラドックスの姿がその場に再度投影される。

 そのまま、高笑いしながら消えていくパラドックス。

 納刀し、未知の技術が思った以上に好ましくない(・・・・・・)レパードは悪態をついた。

 

「つまんねえ男」

 

 そんな一連のやり取りがあった。

 

「エレン姉ちゃんがいないんだ」

 

 幼少組の一人、バリーがアーサーに言った一言をきっかけにアーサーは街へ繰り出していた。

 エレンの特徴を通行人に知らせながら探すも、手掛かりは見つからない。

 違法マジックアイテムユーザーを有する、魔法犯罪シンジケートとして目立たない暮らしをしているかと思われたが、エレンは表立っては評判は悪くなかった。

 

「あの真面目なエレンが?」

 

「あの子が?なんで?」

 

 そんな声が上がる中、アーサーの元に幼少組の一人が慌てて駆けつけてきた。

 

「たいへんだよ、ルティ!ねえちゃん、ねえちゃんがみんなを!!」

 

 酷く慌てた顔でやってきた幼少組の言葉を聞き、アーサーはデッドビートを連れ、現場に向かう。

 アーサーに伝えにきたのは、ディアナという少女だった。

 バリーと一緒にいることが多い少女でエレンにも大変可愛がられていたという。

 そんな彼女はエレンがいなくなったことから、自分もしっかりせねばと息巻いていた。

 

「エレンが!?どうしたって言うんだ?」

 

 アーサーはディアナから詳細を聞く。

 ディアナによれば、エレンはパラドックスのラボに入って行った後、しばらく音沙汰がなかった。

 その後、パラドックスと出かけたかと思えば、エレン一人だけがアジトに帰ってきたのだという。

 

「アタシが守らなきゃ」

 

 そう言って、エレンは普段変化しているシャークドロップと異なる姿に変わった。

 エレンが変化した姿の詳細を聞き、アーサーが感じた動揺をデッドビートは感じ取る。

 

『アンデッドキラー、か』

 

 デッドビートは自らが生まれた理由を思い出す。

 

不撓不屈壊尽(ふとうふくつカイジン)、死してなお脈打つ鼓動。

君の存在理由は、ヒーロー殺し(グレイトキラー)であることを忘れてくれるなよ?』

 

 デッドビートが生まれてから初めて、その時のドクター・パラドックスが笑顔を見せたのを覚えている。

 グレイトマンを殺すために生まれた、デッドビートがいまや殺される立場にいる。

 そんな皮肉にデッドビートは苦虫を噛み潰した。

 

『デッドビート?』

 

『いや、少し考えごとを。かつてヒーローを殺すために生まれた、オレの命を狙いにきた始末屋、とはおかしな話だなと』

 

 デッドビートの言葉にアーサーが返す言葉を失っていると、ディアナに連れられてアジトに帰ってきた。

 中に入ると、アジトは惨憺たる状況であった。

 血飛沫が飛び散り、構成員の少年少女の死体が転がっている。

 特にひどいものは助けを求め、這った跡らしい痕跡が残っていた。

 何かに引き回された様子も見られ、怪物が暴れ回った跡が窺える。

 

「バリー!みんな!!」

 

 ディアナは自分がアーサーたちを呼びにいく間に仲間を見捨てたかもしれない、という自責に駆られる。

 赤い雫はいかなる落ちこぼれであろうと、仲間を見捨てない。

 ディアナが身体を震わせると、その小さな頭をアーサーは優しく撫でた。

 

()が囮になる。ディアナは生き残っている奴がいないか探してくれ」

 

「で、でも、ルティは……」

 

 ディアナは言い淀む。

 アーサーは自分たちと同じ、ラクリマを持っていない。

 そんな人を、優しい人を死なせていいものかと。

 

「大丈夫だ、こいつは死なせない」

 

 アーサーの頭に乗っているデッドビートとアーサーの目が合うと、二人はカイジン転生と叫んだ。

 紫の炎の柱がアーサーとデッドビートを包み込む。

 炎が消え、現れたのは、アンデッドキラーに成り果てた、エレンとよく似た姿。

しかし、オレンジのファイアパターンのマフラーが眩しい。

 

オレ達(・・・)はアンデッドアーサー。

もう大丈夫だ」

 

 アンデッドアーサーは表情が窺えないものの、優しく言葉をかけた。

 アンデッドアーサーの変身(・・)何者(・・)かが気づいた音がすれば、何かを手にしたアンデッドアーサーが手の中にあるものへ囁く。

 

「こちら、アーサー。赤い雫に襲撃者あり。重症者、負傷者確認。至急、援軍願う」

 

 そういうと、アンデッドアーサーは足早に駆け出す。

 足裏から紫の炎を噴き出す様はさながら、本当にヒーローのようで。

 昔話にて伝わる、“でんせつのあくま”を思わせる姿ながらも、優しく頼もしい姿にディアナは勇気をもらい、生き残りを探しに行った。

 

 アンデッドアーサーがアジト内を駆け回ると、黒い影が襲いかかってきた。

 太く長い尻尾による一撃は強大であり、入れ歯のように取り外した歯を二つ両手に持ってアンデッドアーサーに繰り出す。

 ガシャン!と弾丸をリロードするようにすぐに歯が生え、黒い影はデッドカリバーにその入れ歯のような武器で喰らいつく。

 

「エレン!なんで、君が!!」

 

「いまのアタシはエレンじゃない、ドクターを守り、アンデッドアーサーを殺す者。

アンデッドキラーだ!」

 

 尻尾がサメのそれだと気づき、驚くアンデッドアーサーにエレンことアンデッドキラーは高笑いするように蹴りを繰り出した。

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