【完結】特撮ヒーローのライバル系カイジン、異世界に転生す。   作:ふくつのこころ

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38:カイジン転生

『君たちが私の脅威となる、デッドヒートエンドの対策をしないと思ったか?

私は君たちのような連中の青臭さはほとほと呆れているんだ。

なので、ラクリマユーザーとラクリマを切り離す手段については、対策させてもらった。

そのための私の発明品(パラドックスバックル)

 

 パラドックスが勝ち誇ったように自らの所業を語り、デッドヒートエンドへの対策を施したのは発明品(パラドックスバックル)にあると語った。

 パラドックスバックルからアンデッドキラー(エレン)にどのような影響を与えているかは定かではない。

しかし、パラドックスバックルがもたらす影響がアンデッドキラーを怪物へと変えているならば。

 

 パラドックスバックルを破壊するしかない。

 

 アーサーと死して尚脈打つ鼓動(デッドビート)の意思は統一された。

 

 変身アイテムという概念が存在する世界に生きていた、カイジン(デッドビート)

 変身アイテムという概念が存在しない世界に生きていた、人間(アーサー)

 

しかし、アーサーはリリアーヌの聖剣の力を目にしたことで変身アイテムという概念を知った。

 力をもたらす、姿を変える魔法のアイテム。

 姿を変える、違法マジックアイテム・ラクリマを扱うラクリマユーザーとの戦いをこなす日々。

 

 アンデッドキラーと打ち合う中、アンデッドアーサーは防戦一方だったが、アンデッドキラーのスピードにも対応できるようになっていく。

 いつしか、パラドックスはバックル越しに見るアンデッドアーサーが宿敵(グレイトマン)の姿と重なる。

 

 ファイアパターンのマフラーをたなびかせ、デッドヒートカリバーでアンデッドキラーのブレードと打ち合う姿は徒手空拳と腕から放つ白熱化した光弾を放つグレイトマンとは似ているとは思えないはずなのに。

 グレイトマンと一つになったヒーロー(クガユウゴ)なら、あのお人好しなら絶対にしないような致命傷を狙う箇所(パラドックスバックル)狙いの必殺。

とはいえ、アンデッドアーサーが披露していることはパラドックスにもわかる。

 

『決めろ、我が最愛(アンデッドキラー)!死して尚脈打つ鼓動の息の根を止めろ!』

 

 アンデッドキラーはアンデッドアーサーを殺すために生まれた存在、つまり持っている能力はアンデッドアーサーとほぼ同じ(・・・・)

 アンデッドアーサーがラクリマとラクリマユーザーを切り離す力があるなら、アンデッドキラーもデッドビートとアーサーを切り離すことも可能(・・)である。

 

『キヒッ、キヒッ、キヒヒヒ!おしまいだ、アンデッドアーサー!!』

 

 アンデッドキラーの凶刃(デッドヒートエンド)がアンデッドアーサーを狙う。

 アンデッドアーサーの放つ炎とは一転し、白い炎に包まれた刃がアンデッドアーサーの胸を一突きする。

 その速度から繰り出される突きのデッドヒートエンド・アンデッドキラーバージョンにより、アーサーとデッドビートを分離(・・)した。

 アーサーとデッドビートが分離したことにより、デッドビートは本来の死して尚脈打つ鼓動(カイジン)の姿ではない、アーサーと融合した際のスライムの姿だった。

 地面に転がっているアーサーの意識はなく、額を切ったことで血を流している。

 

「……アーサー」

『フ、フッ、フハハハ!!これでアンデッドアーサーは死んだ!カイジン転生(てんしょう)も、片割れがいなくてはできまい?』

 

 アンデッドキラーはエレンの声色で勝ち誇りながら、アーサーの頭部を掴む。

 すでに虫の息、こんな状態をリリアーヌに見られては、デッドビートは死んでしまうだろうという自虐に駆られる。

 

 デッドビートは思案を巡らせる。

 すでにアーサーの身体は数多の内蔵が破壊され、まともに動いていない。

 このままでは、アーサーは死んでしまう。

 

「(オレも焼きが回ったな)」

 

 初めて、アーサーとデッドビートが一つになった日を思い出す。

 リリアーヌを救うため、デッドビートとカイジン転生(てんしょう)したより前に病気で死の縁を彷徨っていたアーサーの“生きたい”という強い願いに応えたのがふたりのはじまりだ。

 切り離す力を持つ、デッドヒートエンド・キラーバージョンでアーサーとデッドビートは切り離された。

 ラクリマとラクリマユーザーが変化した、ドロップから元に戻した後、再度変化したパターンの例はない。

 

『(どうか、受け取れ!オレの命を!!』

 

 デッドビートはエネルギーを身体から放出すると、そのエネルギー体は不撓不屈カイジン・死して尚脈打つ鼓動としてのものからアンデッドアーサーのそれに近しい姿に変わっていた。

 全てのエネルギーをアーサーに注ぎ、破損した内蔵を新しく修復していく。

 呼吸器官から消化器官まで、アーサーの中にある生命力とは別のエネルギーである魔力も使い、一気に再生させるのだ。

 すでに物言わぬ抜け殻となった、デッドビートのスライムボディを見下し、アンデッドキラーは笑う。

 

『これで終わりだ!……何の真似だ?それは』

 

 アーサーの頭部を破壊しようとした際、腹部に蹴りが入った。

 首元はまるでマフラーのようにエネルギーが形成しており、生物として段階を超えた(ステップアップした)ように見える。

 

「“僕たち”は諦めが悪い」

 

 アーサーは不敵に笑って返した。

 夢の中、幼い日に初めてデッドビートに出会った場所でアーサーはデッドビートにマフラーを託された。

 ボロボロでとても使いものにならないような形だったが、それを巻くと不思議と勇気が出るようだった。

 覚醒し(めざめ)るまで、いろんなものが浮かんでは消えていった。

 その中でアーサーが目を覚ますきっかけになったのは、リリアーヌの存在だった。

 

「“僕たち”はカイジンじゃない」

『死して尚脈打つ鼓動に騙されたんだよ、君は!』

 

 アンデッドキラーに掴まれていた頭部をカイジンのような膂力で抜け出し、宙返りをした後、構えを取る。

 

 パラドックスには知らないことが起きていた。

 パラドックスには分からないことが起きていた。

 

 ただの出来損ないだと揶揄し、嘲笑ったデッドビートが見せた力は好敵手(オリジナル)のそれに酷似し、なおかつ全てのエネルギーを与えるという本来の性能(スペック)なら考えられない事象を引き起こしたのだ。

 

「僕はデッドビートを信じるよ」

『あの出来損ないをか!?奴のせいで死にかかったというのに?』

 

 オレンジ色の炎のようなオーラを纏い、アーサーの力が高まっていくのをアンデッドキラーは感じる。

 アンデッドキラーの投げかけた言葉には、アンデッドアーサーのマフラーにあったファイアパターンがまるで燃え広がる炎のように、アーサーの四肢にも浮かんでいく。

 

「“僕たち”はもう悪党(カイジン)じゃない」

「行くよ、デッドビート!」

灰尽(カイジン)燃生(ねんしょう)!」

 

 デッドビートが自虐していたのを思い出しながら、オレンジ色の炎を身体から放ち、その姿を新しいアンデッドアーサー(すがた)に変えていく。

 カイジンというよりは、むしろ白銀の戦神(ゼノ・アルビオン)になった幼馴染のようなヒーローの姿に。

 全く新しい、その姿の名前こそ。

 

「“僕たちは(ウィーアー)、アンデッドアーサー・バーニング!」

『そんな力、想定にない!あり得ない!お前では至れない!!それじゃあ、お前はまるで!』

 

 アンデッドキラーの凶刃を躱しながらも、蹴りを主体とした攻撃を繰り出す、全く新しいアンデッドアーサー。

 全く新しいカイジン(ヒーロー)、アンデッドアーサー・バーニング。

 初めて一人と一匹が一つになり、別たれても一つの炎として燃え上がり、新しい姿に行き着く。

 アーサーは魔法の才覚は姉弟子や幼馴染以下ではあれど、変身に関しては誰よりも才能があった。

 刃を受ける前に掴み取り、炎を纏う拳で応戦する。

 バーニングアンデッドナックルともいうべき、その必殺の拳はアンデッドアーサー以上に底上げされた能力を物語り、デッドビートとアーサーが真の意味で一つになったことを物語る。

 アンデッドキラーの攻撃はアンデッドアーサーに対し、強い効果を持っていたが、アンデッドアーサー・バーニングのそれは燃え広がる闘志が加わることで上回る。

 

ヒーロー(あの男)のようじゃないか!!』

「これで終わりだ!!」

 

 アンデッドキラーの言葉が終わるまでにアンデッドアーサー・バーニングの回し蹴りが炸裂し、パラドックスバックルが破損する。

 それと同時にアンデッドキラーの変化が解除され、パラドックスとエレンに分離した。

 パラドックスはフラフラと足元がおぼつかないながらも、アンデッドアーサー・バーニングに最後の断末魔(まけおしみ)をぶつける前に燃え上がり、消滅した。

 

 ここに不撓不屈カイジン、死して尚脈打つ鼓動(デッドビート)

 カイジンは少年の魂と混ざり合い、ヒーロー、アンデッドアーサー・バーニングに転生した。




次回、完結です
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