【完結】特撮ヒーローのライバル系カイジン、異世界に転生す。 作:ふくつのこころ
竜人が勇者の末裔ナーロウ家の領地に侵入した。
それはナーロウ家の当主でリリアーヌの父を仰天させ、再び息子を失うのではというアーサーの両親を不安にさせた。
しかし、リリアーヌがスラリンことデッドビートの力を借りたアーサーが姿を変え、竜人を打ち破ったことで子供たちが口にしてきたデッドビートが『でんせつのあくま』である説に説得力を与える。
「アーサー君のご両親、これはもちろん、アーサー君が良かったらという話になってくるのだが。……留学してみたいとは、思ったことはないか?」
ナーロウ家の豪奢な屋敷の応接室に招かれた、アーサーの両親とアーサーを前にリリアーヌの父・エリオットは提案する。
リリアーヌによく似た銀髪に狼を思わせる、精悍な顔立ちの男性は勇者の末裔らしく、長身で体格も良い。
ナーロウ家は貴族階級の最上位と同列に扱われることが多いが、それでもエリオットは来るべき時に備え、いまもなお鍛錬に励んでいる。
そんなエリオットはアーサーを可愛がっていることもあり、リリアーヌの父で遊んでくれるおじさんといった認識だったが、今日のエリオットは厳しい表情を崩さないため、アーサーは不安そうな表情で眉尻を下げた。
「……おじさん、こわい」
「アーサー!ナーロウ殿はお前のことを考えてだな」
アーサーは両親の間に挟まれ、父親のズボンを掴みながら、両親を交互に見ると、父親は息子の言葉を窘めた。
「悪かったね、アーサー君。……じゃあ、アプローチを代えようか。魔法を使ってみたくはないか?本来はリリアーヌだけを行かせるつもりだったが、君にも行ってもらいたいんだ」
「えっ、おとうさま!アーサーもいけるの?」
「アーサー君が望めば、けどね?」
エリオットは目を輝かせるリリアーヌの言葉を肯定し、笑顔を浮かべてアーサーの言葉を待つ。
デッドビートと融合した姿でできることはいまの自分ではまだまだ少ない。
投石も、駆けだすことだって、自分なりに精一杯考えたことだったが、デッドビートに
「いいんじゃないか?お前ができることが増えれば、オレの手段も増える」
それ以上にアーサーの背中を押したのは、アーサーの頭の上に乗ったデッドビートだった。
グレイトマンと言うヒーローを倒すためにデッドビートというカイジンが生まれた、そのバックボーンを知らないアーサー達にはデッドビートはアーサーと契約している謎の召喚獣という認識だった。
「……私はまだ君を完全に信用したわけではないが、大切な娘とその幼馴染を助けてくれたことには礼を言うよ」
「礼なら小僧に言え。オレは使うように言っちゃいないからな」
デッドビートが吐き捨てるように言うと、エリオットは驚いたような目をアーサーへと向け、リリアーヌは嬉しそうに笑いながら、アーサーの方へとやってきて腕を組む。
娘の行動にショックを受けつつも、あのおとなしいアーサーが自ら選んで娘を守ってくれたことは変わらないため、アーサーへの見方が変わった瞬間だった。
「ぼく、リリアーヌとまほうをべんきょうしたい!」
少年にとって、大切なことはリリアーヌを守れたことだけに満足するつもりはさらさらなかった。
きっと、この先も勇者の末裔だからと言って、リリアーヌを狙うものは現れることだろう。
もしかしたら、御伽噺の魔王が蘇ることだってあるかもしれない。
そんなとき、デッドビートの力だけじゃなく、自分も戦えるようになっていることはアーサーにとっては都合がよかった。
「なら、話は決まりだな」
「しかし、ナーロウ殿」
「おや、なんですかな?アーサー君のお父さん。私のことはリリアーヌの父とお呼びいただければいいのに」
エリオットがアーサーの返答に満足すると、おずおずとアーサーの父は挙手する。
「そういうわけにもいきません。……息子とお嬢さんは、どういった人の下で魔法を学ぶか教えていただくことはできるでしょうか?」
アーサーの父にとって、勇者の末裔の一族であるナーロウ家は雲の上の存在。
息子がたまたま、リリアーヌ・ナーロウと遊ぶようにならなければ、関わることさえなかったであろうことには間違いないのだ。
アーサーの父の言葉にエリオットは「おお、そうでしたな」と了承した。
「魔女エーデルワイスの下に預けようと思っております。魔法の知識は膨大、おまけに実力の方も問題なしの一流。
「わかりました、おとうさま!」
「ありがとう、おじさん!」
エリオットの言葉にリリアーヌとアーサーは元気よく返事した。
数日後。
ナーロウ家によって、荷物をまとめたアーサーがリリアーヌととある秘境に竜が引く車、竜車によってやってきたのは魔女エーデルワイスの家がある。
未知の動物や植物が多く生息しており、館の主人である魔女エーデルワイスは少し癖っ毛気味のロングヘアの長身の女性だった。
デッドビートには見たことがあったが、この世界でも珍しい着物に身を包んだ魔女はボディラインと豊満なバストが強調された実に煽情的な格好である。
「しかし、エリオットからの手紙には驚かされたね。私に自分の娘とその幼馴染を鍛えろなんてさ。君たち、しばらく帰れないけど、そこは覚悟してるんだよね?」
エーデルワイスは表情があまり変わらないクールな女性だった。
エリオットからの手紙に目を通しつつ、小さな二人を連れ、部屋へと案内する中で尋ねる。
「かくごのうえです」
「がんばります!」
「それは上々だ」
エーデルワイスの館は広大で一階は居間、訓練場と近くにエーデルワイスの自室があり、二階には住み込みの弟子たちの部屋、三階には魔法に関連する書籍やエーデルワイスが世界各地で集めてきたサンプルや珍妙なオブジェクトがある。
階段を上ると、そこは空き部屋がいくつかと『外出中』と書かれたプレートをドアノブに引っかけたイヴちゃんと書かれた部屋がある。
「私の修行内容は早朝から夕方まで一日まるっきり。食事は一日に三回、夜の就寝前に一時間の自由時間をやるけど、メインは修行だから、そこは忘れないように。……一応、部屋はそれぞれあげてる。君たちより先に弟子になってる子もいるから、仲良くやりなさい。……ほかに聞きたいこととか、それはまた明日にでも」
わかった?と確認するように指折り数えた手を眺めつつ、小さな新しい弟子たちを見ると、アーサーもリリアーヌも目をキラキラと輝かせている。
「はい、せんせい!」
「よろしくおねがいします!」
「いいね、そういうのは私も好きだ。ちゃんと扱いて、リリアーヌもアーサーもいっぱしの魔法を使えるようにしてあげる。……私から一ついいかな、それは?」
エーデルワイスはリリアーヌとアーサーが元気よく返事したことにうなずくと、アーサーの頭に乗っているデッドビートを指差す。
「あ、えっと」
「エーデルワイスせんせい!スラリンです!」
「スラリン?」
アーサーが答える前にリリアーヌは嬉しそうに挙手して答えるも、当の
「その子も色々と気になるところあるね。なんでも、『でんせつのあくま』と似ている点があるんだとかってのも聞いてるよ。……私も楽しみができたってところだけど、一つだけ言っておかなくちゃならないことがあるから、言っておくね」
エーデルワイスは小さな二人の弟子の前にしゃがみ込み、右手の人差し指を立てる。
「君たちの姉弟子、性格悪いよ」