【完結】特撮ヒーローのライバル系カイジン、異世界に転生す。 作:ふくつのこころ
「この子はエヴァーレイン。リリアーヌとアーサーの姉弟子にあたるんだ。日中にいなかったのは、少し私からおつかいを頼んでいてね。明日からはリリアーヌとアーサーと一緒に修行に入ってもらう。エヴァ―レイン、挨拶して」
「はーい、先生。あたしはエヴァ―レイン。イヴって呼んでくれたらいいわ」
夕食の席でエーデルワイスは真顔のまま、エヴァ―レインを紹介した。
エヴァ―レインは軽く会釈をすると、リリアーヌとアーサーを見定めた。
「イヴ。銀髪の子は勇者オリーシュ・ナーロウの末裔で、金髪の子は妙なスライムを連れてる」
「ふうん、貴方が勇者ナーロウの?」
エーデルワイスはアーサーとリリアーヌをエヴァ―レインに紹介する。
髑髏面のスラリンことデッドビートも一緒に紹介するが、エヴァ―レインはアーサーには興味を示さず、リリアーヌをまじまじと見つめた。
エーデルワイスが上座に座り、その右側にエヴァ―レイン、隣にリリアーヌとアーサーがそれぞれ座ると言った状態である。
エヴァ―レインは勇者ナーロウの末裔と聞き、リリアーヌにすっかり興味津々だったが、対して魔法の才能がないように見えるアーサーには興味を持たなかった。
「……それが何か?」
「いや?変な
リリアーヌを興味津々に見つめるエヴァ―レインはニコニコと笑顔を浮かべつつも、アーサーの隣にいるデッドビートとアーサーを見下すような言葉にリリアーヌは眉を顰めた。
「正直、お前よりはずっとアーサーの方が尊敬できるわ」
言い返すリリアーヌの目は笑っていなかった。
夕食後、自由時間を使ってアーサーは修行の続きを行った。
魔法の修行はいまのステップをクリアしたとみなされるまで進むことはできないが、体術の修行はアーサーも行えるとエーデルワイスに聞いている。
『カイジン
中庭でスライム状態のデッドビートとアーサーが向かい合い、超人への変身コールを唱えると、あの日と同様にオレンジのファイアパターンのある赤いマフラーをつけたカイジンの姿へと変身する。
魔法のイメージを掴むための修行と並行し、デッドビートと融合した超人での身体を慣らしておきたい目的がアーサーにはあった。
「それが噂の姿って奴?」
「……エヴァ―レイン」
「エヴァ―レインさん、よ?それか、イヴ姐さんでもいいのよ?あ、でも、アンタってどうせすぐ辞めるから気にしなくていいのか」
回し蹴りや拳を振るう動作を掴むためにカイジンの姿で身体を動かしていると、寝間着らしい胸元を紐で留めた黒い道着のようなものを着たエヴァ―レインが欠伸をする。
夜、エーデルワイスの館の敷地内には魔獣や辺境に生息する猛獣の類は入ってくる心配はないが、自信満々な態度からエヴァ―レインは自分の実力に自信があるのだろうと予測する。
月明かりがエヴァ―レインの美しい黒髪を照らし、真っ白な肌とリリアーヌとはまた違う少しきつめな印象を与える美貌は街を歩けば振り返らない異性の方が少ないほうだろうか。
エヴァ―レインは女性としては背が高いほうだったが、成人男性よりも体格が大きく、身長が高いカイジンに変身した姿のアーサーとデッドビートの融合した姿を見上げ、眉を顰める。
「魔法はロクに使えないくせにこんな木偶の坊になるなんてねぇ」
『誰が木偶の坊だ!』
エヴァ―レインの感想にアーサーと一つになっている、デッドビートの声が脳裏に響く。
「邪魔しに来たんなら、先に寝てくれよ。僕は自主練したいんだから」
「あら?お優しいイヴ姉さまがアンタに忠告しに来てあげたのよ?ありがたく聞きなさいよ」
「忠告?」
アーサーは素っ気なく返すと、エヴァ―レインはへーえ?とおかしそうに笑いつつ、髑髏面を人差し指で突く。
「アンタ、とっととやめなさいよ。才能ないんだから」
「うるさいな。僕は僕なりに魔法を習得しようと思ってるんだから、放っておいてくれよ」
「じゃあ、あたしはアンタがやめるって言うまで付き纏うわね?」
アーサーが眉尻を下げながら言うと、エヴァ―レインはにっこりと笑顔を浮かべて返す。
心の底からアーサーをやめさせたいのだ、と言うのが伝わってきたデッドビートはアーサーに何か言おうとしたが、魂で繋がっている二人は互いの思惑を感じることができた。
『大丈夫。僕は絶対にあきらめないから、デッドビートは何も言わないで』
『……お前がそこまで言うなら、隙にすればいいが』
デッドビートはアーサーの言葉に感心した。
自分の努力を馬鹿にされているのにもかかわらず、そこまでひたむきにできるのはなんだろうという思いもあるが、それでも、努力を惜しまない様子はデッドビートには好ましく思えた。
そこから数か月、魔法の行使の時間となった時、アーサーは一人で修行を行った。
時折、エーデルワイスに修行を見てもらうも、イメージが思った通りに行かず、魔法を暴発してしまった。
ただ、以前よりも魔力の制御はうまくいくようになっていたのか、火傷しかかるといったことがなくなったのが大きな進歩か。
エヴァ―レインはアーサーの心を折るため、嫌味を言ったりと絡んできたが、体術ではアーサーの方が力量が高く、身軽さや身のこなしではアーサー以上だった。
しかし、岩石割りや手を使わない足だけの木登りではアーサーはエヴァ―レインより上手だった。
「お、リリアーヌはこの短い間に魔法の属性を掛け合わせることができるようになるなんてね」
「は、はぁ!?それ、あたしでもできるまでに時間がかかったのよ!?どこかの出来損ないと違って、優秀な妹弟子で鼻が高いわ」
「……お前、アーサーを馬鹿にしたような口を利かないでくれる?」
「姉弟子に逆らおうっての?」
中庭の裏で一人で魔法の修行をしていると、リリアーヌは短期間に属性の重ね掛けを覚えることができたらしい。
属性の重ね掛けはセンスと才能がものをいうものであり、入門してすぐに覚えられるものではない。
うまく使いこなせば、地形を操り、天をも斬ることが可能だと言われるほどに魔法の属性の重ね掛けは奥が深いと言われている。
そんな賑やかな様子とリリアーヌとエヴァ―レインの一触即発な状況を声だけ聞いていたアーサーは心配で見に行きたくなっていたが、いまの自分が彼女ら二人の喧嘩を止められるとは到底思えない。
デッドビートの力を使い、カイジン
「……しかし、お前は本当に要領が悪いな」
「新しい言葉とか覚えるのに人よりも時間がかかる方だって言われたけど、自分でもここまでだとは思わなかったよ」
「……まあ、そうだろうな」
デッドビートはアーサーの言葉に苦笑した。
もともと、不器用で物覚えが悪いほうなら、魔法の習得も時間がかかるのは頷ける。
それで少し身体を動かしていただけで難癖をつけるエヴァ―レインも相当な性悪だが、実力が物をいうこと、大切なことは実力主義だった
「……ここだけの話さ、僕、デッドビートのカイジン忍法をイメージしてやってたんだ」
「オレの?」
デッドビートが驚いたように言うと、少年は少し照れくさそうにはにかんだ。
「『でんせつのあくま』もさ、炎を扱ってたらしいから、それもっていうのもあるけど」
「……それなら、『でんせつのあくま』の方をイメージしたほうがいいんじゃないか?一度に二つもイメージしてたら、お前の中でイメージしづらいと思うんだが?」
怪物に憧れるなんて変だよね、と苦笑いするアーサーにデッドビートは感情の分からない髑髏面の向こう、心境を悟らせずに言い切った。
「イメージを絞り切る……。そうだ、これだ!
何かを掴んだらしいアーサーが手を開き、魔法を詠唱すると小さな炎が灯る。
少し間を空けたとはいえ、アーサーは魔法の基礎、イメージを習得することがようやくできた。
「おや、ようやく掴めたか」
「アーサー!おめでとう!」
エーデルワイスとリリアーヌが顔を見せ、アーサーを祝福する。
何よりもうれしかったのは、
「は!?アンタ、できたの!?」
あれだけの嫌味を言っていたエヴァ―レインに驚いた声を出せたことだ。