【完結】特撮ヒーローのライバル系カイジン、異世界に転生す。   作:ふくつのこころ

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06:魔女は弟子を千尋の困難に突き落とすー1

 魔女エーデルワイスにとって、最近の大きなニュースは二つある。

 

 一つは新しく弟子になった、勇者の末裔リリアーヌ・ナーロウと未知の姿に変身するとエリオット・ナーロウに聞いたアーサーの二人。

 リリアーヌ・ナーロウは問題どころか、類稀な魔法の才能を開花させ、時間と才能を要する属性の重ね掛けを習得。

 アーサーの方はしばらく、魔法の基礎を習得させる修行だけをさせていたが、なんとかコツを掴めたのが喜ばしい。それが一つ。

 もう一つはエーデルワイスが二人よりも先に弟子にした、エヴァ―レインとこの二人が不仲なことである。

 

「……まぁ、さ。仲良くやれとは言わないんだけどねぇ」

 

 エーデルワイスは魔法に関連する書籍を多くおさめた部屋でアンティーク家具のデスクに頬杖を突きつつ、館の敷地内を見渡せるように配置した使い魔たちから送られてくる映像を映し出す水晶玉を眺める。

 その水晶玉にはエーデルワイスが望んだ場所を敷地内限定とはいえ、確認することができ、中庭を選ぶと修行中の弟子たちの様子が見える。

 

 リリアーヌ、アーサー、エヴァ―レインの三人はエーデルワイスが準備した、エーデルワイスの流派のロゴの入った道着を着ている。

 ロゴは三本の竜の爪を模したもので、これはエーデルワイスの趣味だった。

 黒地に赤で竜の爪を表現し、動きやすい素材でできている自慢の品だが、竜の爪デザインは三人からあまり評判は好ましくなかった。

 

『大地のティターン!水のエーリアス!出でよ、土流壁(どりゅうへき)!!!』

 

 アーサーが右手を突き出し、魔法を詠唱する。

 まともに火すら出せなかったのを思えば、属性の重ね掛けに取り組んでいるのは、感慨深いものがエーデルワイスにはあった。

 意識を集中させると、大地の精霊の魔法陣と水の精霊の魔法陣が重なり、泥の塊が足もとに出来上がった。

 

『やっぱ、アンタ。才能ないわねー』

 

 エヴァ―レインは泥の塊が足もとに出来上がったアーサーを見下す視線を向ければ、やれやれと肩を竦める。

 

『才能ない才能ないって、お前はアーサーの何を知ってるの?』

 

『お!お姫様(・・・)が怒っちゃったね!どんな気持ち?幼馴染ちゃんに守ってもらうの!』

 

 肩を竦めたエヴァ―レインにリリアーヌが青筋を浮かべると、アーサーは再度修行に戻る。

 そんなアーサーの後ろから、ニヤニヤと笑いながら、覗き込むとリリアーヌは青筋を浮かべながら、エヴァ―レインの肩を掴む。

 リリアーヌは魔力を練りながら、右手に魔法陣を集中させている。

 それを知ってか知らずか、エヴァ―レインはアーサーを煽り、アーサーはエヴァ―レインを気にしないように魔法の詠唱を行っている。

 エヴァ―レインの言うお姫様(・・・)の煽り文句には、リリアーヌはご立腹なようである。

 

「やっぱり、アーサーとイヴの関係はどうにかしたほうがいいなぁ。リリアーヌのせっかくの魔法の才能が」

 

 エーデルワイスは顎に手を当てて考える。

 なにか、エヴァ―レインにアーサーを見直させるイベントがあれば、エヴァ―レインはアーサーをからかわなくなる。

 エヴァ―レインはエーデルワイス以上に実力にシビアな面があり、尊敬できるところを見つけない限り、からかったり煽ったりすることをする悪癖がある。

 

「そうだ、やっぱり、遠くにお使いかな」

 

 共通の目的があれば、協力してお互いを見直すこともあるはずだとエーデルワイスはぽんと手を合わせる。

 真顔でいることが多く、表情が変わらないエーデルワイスはこの時ばかりは表情が和らいでいた。

 

 翌朝のこと。

 

「……おつかい、ですか?エヴァ―レインと?」

 

「そうだよ、アーサーも最近ようやく魔法の修行に入ってるだろう?リリアーヌは魔法の属性の重ね掛けが早くにできているけど、アーサーはまだまだ時間がかかりそうだと思ってね。イヴの魔法をよく見て勉強してくると良いよ」

 

「先生、お姫様(・・・)に守られてるヤツとあたしが組むってことなんですか!?ちょっとしたおつかいくらい、あたしが行ってきますよ」

 

 一日の始まりを告げるとき、エーデルワイスはアーサーとエヴァ―レインに“おつかい”と称した実習をさせることを伝えた。

 アーサーは頭に面白(・・)スライムのデッドビートを載せ、エヴァ―レインの方はそんなアーサーを疎ましく思う視線を向けている。

 エヴァ―レインの言葉には、傍らで聞いていたリリアーヌがエヴァ―レインに向ける目を細め、挙手する。

 

「リリアーヌ、どうかしたのかい?」

 

「その間、私はアーサーとその女がいない状態で修行と言うことですか?」

 

「まあ、そうなるね」

 

 リリアーヌの疑問にエーデルワイスが答えると、リリアーヌは眉を顰める。

 

「私、その女とアーサーを二人きりにさせるわけにはいきません。そいつとアーサーは二人でいないほうがいいと思います」

 

「へーえ?こんな男がいいんだ?勇者ちゃん(・・・・・)って」

 

「お前は相変わらず減らず口が多いね、エヴァ―レイン」

 

 勇者ちゃん(・・・・・)お姫様(・・・)と並ぶ、リリアーヌへのエヴァーレインのからかい文句の一つだ。

 アーサーはエヴァ―レインの煽りを無視するが、リリアーヌはアーサーへの煽りを嫌うため、すぐにエヴァ―レインに噛みつく。

 喧嘩に魔法の使用も辞さないため、中庭で魔法の使用の未遂があったのを見かけたことがある。

 

「先生、僕に行かせてください」

 

「いいの?アーサー。親分の私が守ってあげられないけれど」

 

 時を経て、リリアーヌとアーサーは十代も半ばになっていた。

 それぞれが立派に育ち、アーサーもリリアーヌも長身を誇るほどに。

 エーデルワイスも変わらない美貌だったが、エヴァ―レインの方も成人して容姿端麗な女性に成長している。

 アーサーはあまり意識していなかったが、エーデルワイス一門は女所帯だった。

 

 成長してもなお、親分と子分(・・・・・)と言う関係を守っているリリアーヌの言葉に少々、懐かしさとくすぐったさを覚えつつも、アーサーはスライムの姿をしているデッドビートを目だけ向けたあと、柔らかく笑う。

 

「それにエヴァ―レインといれば、僕はまたコツがつかめそうだからね」

 

「あたしが見た感じ、アンタはまだ属性魔法を単体でしか扱えていないけれど?よく言えたわね、そんなこと」

 

 火のバニシエール。

 土のティターン。

 水のエリアス。

 風の精霊ゼファー。

 

 四つの属性のほかにまだ属性はあるというが、まずは基本をと言うエーデルワイスの教えの元、アーサーは魔法の修行に励んでいた。

 特にアーサーはスライムの姿をしているデッドビートと一つになる、カイジン転生(てんしょう)をした際に役立つ風の魔法に注力していた。

 スピードの底上げの他、相手との距離を詰めたり、距離を取ったりと使い勝手のいい属性が風属性だとアーサーは思っている。

 

「先生、私もついて行っていいですか?アーサーとエヴァ―レインを二人きりにしたら、何が起こるかわからない」

 

「ダメだよ、リリアーヌ。君は私と一緒に修行をするのだから。……そうだね、そこまで君がアーサーを気にするというなら」

 

 リリアーヌが再度、挙手してエーデルワイスに提案すると、エーデルワイスも少し悩んだ後に魔法陣を描いた札を取り出し、魔力を込めて単眼(モノアイ)の蝙蝠のような羽根を持つ虫のようにも鳥のようにも見える生き物。

 

「この子をつけてあげよう。これで、リリアーヌも一安心だろう?」

 

 エーデルワイスが小首をかしげると、リリアーヌはアーサーの方にやってきて両手を取る。

 

「お前が無事に帰ってくると期待してるわね。お前には勇者リリアーヌのパーティに入る義務があるから。スラリン、頼んだよ」

 

「勇者の魔法使いってことか」

 

「親分の言うことに子分は従うものよ?」

 

 面白そうだ、と笑うアーサーに頭の上でやり取りを見守るデッドビートは内心溜め息をつく。

 

(まーた、ずいぶんと面倒な女に目をつけられているなぁ)

 

 アーサーのその気質によるものなのか、幼馴染であるというリリアーヌをはじめ、エーデルワイスもエヴァ―レインも変わったところのある女だ。

 そんな女たちに囲まれているのに芯がブレないアーサーはある意味、最も変わり者なのかもしれない。

 

「決まりだね。じゃあ、準備でき次第、イヴとアーサーは出発してほしい」

 

 一切、まとめることなく、エーデルワイスはエヴァ―レインとアーサーのそれぞれに何かを記した羊皮紙らしいものを手渡す。

 

「せいぜい、足引っ張んないでよね?落ちこぼれくん?」

 

「エヴァ―レインもな」

 

 エヴァ―レインが挑発するように笑うと、アーサーは精一杯、不敵に笑い返す。

 かくして、魔女エーデルワイスの課外修行が始まったのである。

 

 




アーサーは物覚えが悪いですが、根性だけは確かです。
修行時代パートが多めなので、このおつかいクエストで終えようとは思っています。
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