【完結】特撮ヒーローのライバル系カイジン、異世界に転生す。 作:ふくつのこころ
「流れる水のエリアスよ、広大な大地のティターンよ!我らを受け止める壁を隆起しろ!」
掛け合わせた魔法による暴発が起こした爆風により、アーサー達は吹き飛ばされてしまった。
エヴァ―レインはすぐに魔法を詠唱し、土と水の属性を掛け合わせて自分たちを受け止める巨大な壁を自分たちの落下地点を計算し、隆起させた。
大きさにして約五メイル、五メートルほどの粘土の壁である。
「さて、おとーとくん?受け身の準備はいいかな?」
「はい?」
「ドクロスライムもそーれ♪」
「おい、お前!?」
エヴァ―レインはにっこり笑ってアーサーとデッドビートに尋ねると、彼ら二人の返事も待たずに巨大な粘土の壁へとそれぞれ蹴り飛ばす。
アーサーとデッドビートは粘土の壁が衝撃を吸収し、身体を受け止めるように形を変え、巨大な掌の上に二人は受け止められる。
その後、エヴァ―レインが飛び込んできたことで踏みつけられたアーサーはカエルが潰れたような声を出し、焦るデッドビートの姿があった。
「アンタたち、無事?」
「お前がアーサーを踏みつけなかったら無事だった」
「もうちょっと休んでいい?」
エヴァ―レインは弟弟子とその相棒のげんなりしている様子に腕を組み、嬉しそうに笑うとデッドビートに睨みつけられた。
「よし!無事ね、そこまでしゃべること出来たら大丈夫でしょう」
「おい?」
「あら?むしろ、あたしはアンタたちからお礼を言われてもいいくらいよ?おとーとくんのフォローしたから、ありがとう!お姉さま!くらいあっていいと思うんだけど?」
デッドビートはエヴァ―レインの姿に懐かしいものを思い出した。
生前、デッドビートのようなカイジンに突っかかってきたのは、デッドビートらカイジンと対峙していたヒーロー・グレイトマンだけではない。
ただの人間もデッドビートに食って掛かってきていたものがいたのを思い出すが、エヴァ―レインほどの性格の悪さを誇る者はいなかった。
「いや、僕はエヴァ―レインに魔法を使ってみろと言われたからやってみただけで」
「かと言って。あたしはアンタに魔法を使えと言っただけで、暴発させてみろとは一言も言ってないわよ?ちゃんと話聞いてた?」
アーサーが不満を漏らすと、エヴァ―レインは巨大な粘土の掌の上でアーサーを正座させ、その額をデコピンで小突きながら、威圧する。
デッドビートはこの世界に星座という概念があることを驚くより先にエヴァ―レインの横暴ぶりにため息をつかざるを得なかった。
「しかし、本当に蹴り飛ばすとは思わなかったぞ」
「おとーとくんに空中で機転を利かせられるとは思わなかったのだから、感謝することね?」
デッドビートが呆れてため息をつくも、エヴァ―レインの方は決して悪びれることはなかった。
「おとーとくん、スライム。それじゃ、とりあえず、全部やってくわよ」
「ぜ、ぜんぶやるの?」
エヴァ―レインはエーデルワイスから貰った課題リストに再び目を通すと、そのリストをペンですべて丸で囲んだ。
「ええ、全部やるのよー?ほら、頑張れ♪頑張れ♪」
エヴァ―レインはぱんぱん、と手を叩いてアーサーとデッドビートを促した。
その後、エヴァ―レインに引きずられるようにしてアーサーはデッドビートを抱え、課題にこの理不尽な姉弟子と一緒に取り組んだ。
酸の唾液を吐くカエルの魔物、アシッドトードは風属性の魔法を使うと周囲に拡散してしまうため、土属性の魔法を使い、ハンマーを作り出して気絶している間、文字通りに酸を吐かせて収集した。
杖を作る木に住む妖精からエヴァ―レインが無理矢理、木を風属性の魔法で切り倒そうとしたため、身振り手振りでアーサーは妖精に誠心誠意伝え、木の一部をもらうことを許された。
「だから、言っただろ!?煽らないほうがいいって!」
「アンタは無我夢中にやったことなんてないでしょうね!?」
獣人の頑丈な腰布をもらう、といった項目ではエヴァ―レインは獣人の住まいに忍び込み、腰布を盗もうと画策したが、獣人に気づかれてしまった。
獣人の言語が分からないものの、アーサーには目に見えて怒っているのが見えたため、エヴァ―レインをデッドビートとカイジン転生することで変身して抱えながら逃げていた。
「チッ、課題オールコンプリートはできないか」
「人食いだって種族なのによくいこうと思うよな……」
舌打ちしつつ、アンタのせいよと変身したアーサーの髑髏面を睨みつけるエヴァ―レインにアーサーは内心眉尻を下げる。
「潜り込まないと手に入らないものだってあんのよ、おとーとくん?」
「それ、目論見が成功してから言ってほしかったなぁ」
「あ?姉弟子に逆らおうっての?」
キメ顔で言ったエヴァ―レインに呆れながら文句を言うと、エヴァ―レインは弟弟子を睨みつける。
唸りながら武器を振り回し、アーサー達を追いかける獣人の声が聞こえなくなるほどに振り切ったあたりでアーサーはエヴァ―レインを下ろした。
「となると、あとはドラゴンだけか」
「ドラゴンが一番まずいんじゃ?」
「は?アンタの幼馴染の勇者ちゃんより、優れてると知らせることができるチャンスなのよ?」
アーサーがカイジン転生を解き、頭上にデッドビートを載せた状態に戻る。
なんでもないように母親ドラゴンの鱗を収集してくる課題を実行しようとするエヴァ―レインに対し、アーサーは慌てて制止する。
「そ、それはそうだけど……」
エヴァ―レインの言うことも分かる。
アーサーがデッドビートとともにカイジン転生するのだって、もとはリリアーヌを守るためが根本的なきっかけだったのだ。
いまでこそ、リリアーヌはエーデルワイスに関心を持たれ、期待されているが、このまま抜かれていくのを待つつもりもない。
必ず、リリアーヌに相応しい魔法使いとなれるよう、修行を積んでいきたいという思いは抱えている。
「大きいのがダメなら、
「小さい奴の方が凶暴だったりするんじゃないの?」
エヴァ―レインの言葉にアーサーが首をかしげると、エヴァ―レインはアーサーを小突いた。
「あのねえ、小さいほうが炎の勢いとか弱いもんなの。この辺には小さいドラゴンの生息領域があったはずよ、そこをあたれば、安全に戻れるはずだわ」
「……もし、戻れなかったら?」
エヴァ―レインはぱらぱらとお手製らしい、ドラゴンについてのメモをアーサーに見せる。
『サイズの大きなドラゴンに多い色は赤と黒が挙げられ、緑のドラゴンや黄色のドラゴンはサイズの小さいものも存在する。サイズの小さい種類は炎の範囲が狭く、長時間、飛行することができない』
簡素なメモだが、横にはエヴァ―レインが描いたであろうドラゴンのイラストがついている。
簡単なドラゴン図鑑のようなものだろう。
「戻れないなんてことはないわよ、これを使えばいいんだから」
エヴァ―レインは鈴らしいものを見せる。
赤い紐と青い紐を編み込んだ紐と結びついており、なにかしらのマジックアイテムだろうかとアーサーは見た。
「それは一体?」
「戻りの鈴。魔力を込めれば一瞬で移動できるけど、作成に当たって登録した場所しか行けないのが難点ね。……まぁ、今回はそれで不便しないわ。とっとと、ドラゴンの鱗を回収して先生のところに戻りましょう」
デッドビートの疑問に「ほーら、よくみせてあげるわねー?おチビちゃん」と煽り倒しつつも、解説付きで鈴を見せつける。
すると、近くで空気が震えるような唸り声が響いたかと思えば、風が吹き荒ぶ。
「早速、おでましのようね。……仕留めに行くわよ、おとーとくん」
エヴァ―レインが口角を上げる。
どうやら、噂のドラゴンが向こうからやってきたらしい。