俺の存在を確かめるかのように、静かに抱きしめたまま動かないミカサをどかすのも躊躇われたので、俺はその間にミカサにこう伝える。
「戻ったら俺のところにマルコを呼んでくれないか?あいつと話したいことがあるんだ。」
「………」
ミカサからの返事はないがきっとわかってくれただろう。しばらくして調査兵団の人がミカサを呼び戻しに来て、俺は晴れて自由の身になった。
奪還作戦が開始されたのだろう。目に見えて人が慌ただしく動いている。そしてマルコが俺の元へとやってきた。
「セイ、どうして僕を呼んだんだい?今、壁を塞ぐという人類の存亡がかかった大事な作戦が行われているんだ。なるべく早く済ませて欲しい。」
「…正直に言う。マルコ、お前はこの作戦には参加しないで欲しい。どうして?と思うのも当然だ。だからちゃんとわけも話す…だから、この作戦の間はここにいてくれ、頼む…!」
「…セイは無意味にこんなこと言う人じゃないのはわかってるつもりだ。とりあえず話を聞かせてもらうよ。」
「助かる。俺は今から突拍子もないことを話す。信じられないかもしれない。でも…大事な話だ。」
「俺は、、、俺たち104期生の中に、巨人が紛れ込んでると思っている。」
「ッ………!それは…きっとエレンのことじゃ、ないんだよね?」
「さすが察しがいいなマルコ。やはり俺はマルコを選んで正解だった。」
「でも、僕じゃなくても良かったんじゃない?ほら、君の幼なじみのアルミンとか。」
「アルミンじゃダメだ…!エレンが巨人に食われた時、あいつは冷静さを失った……。どれだけ普段頭がキレようと、これを知るのは常に冷静なやつじゃないとダメなんだ。マルコ、俺はお前が、誰よりも周りを俯瞰できるやつだと思っている。」
「それは過大評価だよ。アルミンだってエレンじゃなかったら冷静さを保っていたはずさ。でもそれでも僕に話してくれると言うのなら続きを聞くよ。」
「…明確な証拠はまだないが、それでも確実に何かを知っているであろうやつを俺は見つけた。俺がそう思う理由は主に2つ。1つ目は、超大型巨人が出現した時だ。俺は壁の上で、大砲の整備を担当する班を任されていた。…しかし、ベルトルト、あいつの姿がなかったんだ。…ちょうど超大型が出現していた時だけ…。超大型が消えたあとベルトルトの姿を再び確認できたが、その時うっすらと、目の下にネコにでも引っかかれたかのような赤い線があったんだ。」
「当時はまだ、何も違和感を覚えなかったが、巨人の項から出てきたエレンを見て俺は確信した。あれは巨人化に伴う跡なんだと。超大型巨人は大砲を狙っていた。確実に知性を備えた行動だ。そしてエレンを見ればわかる、知性を持つ巨人の中には人がいるのだろう。全てが繋がったよ。ベルトルトは超大型巨人だ。そしてベルトルトが同郷だと言っていたアニ、ライナーも怪しいと俺は睨んでる。」
「…まさか、あいつらが…、それで、もう一つの理由はなんだい?」
「あぁ、2つ目はエレンが包囲されてると知った時の行動だ。元々あいつらを怪しいと警戒していた俺は、真っ先に立体機動まで使ってエレンが見える位置に移動したあいつらを見て、こう仮説を立てた。何らかの理由で自分たちと同じように巨人になれる存在を探しているのだとしたら?せっかく見つけたのに殺されでもしたらたまったもんじゃない。いざとなれば直ぐに助け出せるように移動した。そう考えれば全て辻褄はあう。ライナーは多分門を破ったあの鎧のやつだろう。アニはわからないが…」
「まぁこれはあくまで俺の考えだ、何も証拠は無い。信じるも信じないも、マルコ、お前次第だ。」
「……有り得ない。そう信じたいけど、確かにセイの言ってることには筋が通っている。そして、これを僕に話したってことは、君は僕に何かやって欲しいことがある。違うかい?」
「そうだ。…マルコにはあいつら3人を見張っていて欲しいんだ。警戒してるやつが多いに越したことはない。ただ、絶対に深追いはするなよ?あいつらは巨人になれる可能性がある。そして正体が知られたとなれば、口封じに殺そうとしてくるかもしれない。もし何か聞いたとしたら、直ぐに俺を呼ぶんだ。」
「…任されました!じゃあ、僕はみんなの元に戻るよ。みんなが命懸けでエレンを守っている中僕が戦わないのはおかしいからね笑」
「それは、怪我して戦えない俺への皮肉かぁ??」
「ハハッ!セイは安静にしてるんだよ!君が傷ついたら悲しむ人は大勢いるんだ。そこを履き違えちゃ行けないよ!」
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どうやら、無事に壁は塞げたようだ。だがしかし、犠牲者は多かった。死なないようにと指揮を任せたフランツは結局巨人に食われてしまったらしい。だが俺は本来死ぬはずだったミーナ、そしてマルコを救うことが出来た。これは大きな成果である。原作通り、巨人になれるエレンを危惧した上層部は、憲兵団に命令してエレンを地下牢へ幽閉する。その間俺たちは各自待機するようにとの命を受け、訓練兵団の宿舎へと戻ってきた。俺は全治1ヶ月と診断され、当然運動は厳禁となり、俺がちゃんと安静にしてるかどうかを見張るための監視役にはミカサが抜擢された(ミカサのだす圧力に誰もやりたがらなかったようだ)。
ミカサは口実を得たと言わんばかりに、ほぼ24時間俺に付きまとい始めた。トイレも風呂も寝る時でさえも。さすがに俺は必死に抵抗した。純情ボーイである俺がミカサと風呂なんて入ったらとんでもないことが起こってしまう(フラグ)!風呂やトイレは何とか阻止出来たが、それは一緒に寝ることを条件にようやく諦めてくれたのであった。
一旦隣に引っ付いているミカサは置いておいて、俺はコニーから奪還作戦の話を聞く。
「いやー!!マジで命の危険を感じたね!最初のうちはエレンが暴れてんだ!エレンが我を失ってたから、俺は危険を覚悟してエレンに飛び込んで行ったんだ!そしてエレンの肩まで辿り着いて俺はエレンにこう言ったんだ。エレン!起き―「何英雄きどってんだよ」なんだよジャン!せっかくいいところだったのに!!」
「いい所も何もあるか!!全部お前の嘘っぱちじゃねえかよ!」
「なんだ、コニー??今の話は全部嘘だったのか?お前ももしかしてそういうお年頃と言うやつか??」
「うるせぇセイ!!俺もお前も歳は変わんねえだろ!?」
「ハッ、どうかな?そんな作り話の武勇伝を語るなんて真似、俺には到底出来ないけどなぁ〜?」
「チクショー!!いつか本当にしてやるからな!首すすいで待ってろよ!!」
「コニー、それを言うなら首を洗ってだよ。」
マルコの一言に皆で笑う。楽しいひと時だった。巨人の恐怖を忘れ年頃の少年少女のように笑い合う。俺はそんな時間がもっとあってもいいと思った。
だが、これから始まるのはライナーたちマーレ組の知性巨人との戦いだ。よりいっそう多くの仲間たちが命を落とす。そんな未来はなんとしてでも避けたいが、ライナーやベルトルトの意志は硬い。きっと彼らがパラディ島に寝返ることはないだろう。しかし、原作において、悪魔であると教育されてきたエルディア人ですら、殺すことに罪悪感を感じていたアニならば、まだ懐柔のチャンスはある。俺は対象をアニ1人に絞って寝返らせるべく、作戦を練り始めたのだった。
今回は短めです。次から女型編へと移りますが、そろそろ忙しいのもあって更新頻度は下がりそうですm(_ _)m
ハーレムものにすると、辻褄あわせが大変だったり、1キャラ1キャラの出番が減ったりであまり良くないのかなとも思ったんですけど、どうしましょうか。迷走中です