目が覚めると俺はベッドの上で寝ていた
その時、朧気ながら転生したことや誘拐されたこと、助けられたことを思い出す。そして次やるべきことは何か、これからの俺とミカサの輝かしい未来のことを考えると気色悪い笑顔を抑えることは不可能だった。
「おーい坊主、起きたか?」
そんなことを考えているうちに俺を助けてくれ、そしてこの家の家主だろう男が扉をノックする。
「助けてくれてありがとう!おじ、、さ、ん?」
「ん、どうした?俺の顔になんか着いてるのか?」
まさかのハンネスだったのである!当然俺はハンネスのことを知ってるはずはなかったので知らないふりをするが内心、
「(きたーーー!まさかのハンネスさんじゃねぇか!ってことはここはシガンシナ区か!?幸先いいなぁおい!!)」
大喜びである。
「いや、なんでもないよ!」
「そうか、色々と聞きたいことがあるがまず坊主は何歳だ?」
「8歳(適当である)だよ!」
「そんなに小せぇのに大変だったな坊主…名前はなんて言うんだ?」
「僕の名前はせが…(いやここで珍しい名前にするのは色々と面倒が起こりそうだ)セイだよ!」
「ん?姓はないのか?」
「うん……実は僕お父さんお母さんがいるのかすらも分からないんだ。」
「そうか…………帰る場所は、、あるのか?」
「…………ないよグスッ」
「……しばらく俺の家で暮らすといい。何、そこそこ金はあるしちょうど家事してくれるやつが欲しかったところだ。いい話だろ?」
このガキ実に策士である。不憫な子供を装って(実際そこそこ不憫)ハンネスの家に転がり込むことに成功したのである。
「ほんとにいいの!?僕できること少ないけど頑張るよ!!」
ハンネスは「(おいおい健気で可愛いじゃねえかよ)」と思いながら、
「腹も空いてるだろ?飯作ってやっからちょっと待っとけ。」
………
「(さて、まずは俺の体を把握しなければ)」ベッドから降りると、少しふらつきはしたがとくに問題は無いようであった。次にお待ちかねの転生特典である。俺は将来医者になるという高尚な目的のため日々邁進していた(大嘘である。予備校に行ってはだべって一日を無駄にしていた)んだからさぞかし素晴らしい特典があるに違いない!「欲を言うならリヴァイみたいな身体能力が欲しいな」
今更だがハンネスと無意識に会話出来ていたことを疑問に思う。森で見たハンカチに書いてある字が全く見た事のないものであったが故に俺は翻訳機能はないのかと密かに落胆していたがスムーズに喋れたことからそうでは無いことを察する。「(ではあの字は一体なんなんだ?大事なことのような気がするが…)」そうこうしているうちにハンネスが盆にパンと木のお椀をもってやってきた
「ほら飯持ってきてやったぞ。パンと野菜スープだ。パンは硬いからしっかりスープにつけて食べろよ?」
………
噛み切るのに一苦労したが、それを食べきった俺はハンネスに尋ねる。
「ねぇおじさん、今年って何年?」
「俺の名前はハンネスだ。ハンネスって呼んでくれ。今年は844年だが何かあるのか?」
「(なに!?ミカサの両親が死んでしまう事件が起きる年じゃないか!?)ハンネスさん、この近所に黒髪の女の子って住んでる?」
「それだけじゃわかんねえよ。何かもう少し特徴はねぇのか?」
「東洋人?みたいな感じの顔の女の子で家族3人で暮らしてるはず…」
「あぁ~アッカーマンさん家のことか。彼らがどうかしたのか?」
「なにか最近あの家で事件は起きなかった!?」
「うん?特にそんなことは無いと思うが…どうしてそんなことを聞くんだ?」
「ふぇぇ?いや、、たまたまその黒髪の女の子を見つけて可愛いなあって思って、、」
「セイ、、お前もう好きな子がいるのか!?最近の子供はませてんなぁ、、」
大焦りである。ハンネスに俺の事情を知られていないのが幸いして何とかごまかせたが次は分からない。慎重に過ごさねばぼろが出かねん。
しかし一安心であるあのイベント(こいつクズ野郎である)はミカサとの未来のためには切っても切り離せないものである。「(俺がエレンの代わりに助けなければ)」
それからしばらく経った。俺はミカサの家を見つけチェックするようになった。ミカサはいつも家の近くでうろちょろしてる俺を不審に思ったのか声をかけてきた。
「……どうしてあなたは家の近くにいつもいるの?」
「(しくった!さすがに露骨すぎた……)うーんと、最近俺筋トレしててこの辺りを走り回ってるんだ!」
やらかしたと思った俺は冷や汗を持っていたハンカチで拭う。
「…!それは私がお父さんに貰って無くしてしまったもの。どうしてあなたが持っているの?返して欲しい。」
「そうだったのか!山に落ちてたから拾ったんだよ。」
「…?私は山には行っていない。どうして山でそのハンカチを拾うことができるの、、」
疑いの目を向けられた俺は焦って弁明する。
「そう!川に流れてたんだよ!それを拾っただけだ!」
「町で落としたものが川の流れに逆らって山に向かうと言うの?」
俺は墓穴を掘っただけだった。
「とりあえずこれミカサのなんだろ!?返すよ!じゃあね!」
「あ、待って!(どうして私の名前をしっているの?彼には何かがある。私はそれを知りたい)」
俺はこれ以上関わると後の好感度に影響が出ると思い、全速力で走った、そしてアッカーマンの力が覚醒してない今逃げきることは容易であった。最近わかったことだが、どうやら俺はかなり身体能力が高いらしく、数mの木なら走って登れるほどの、意味がわからないことが出来たのである。しかし俺はそれにかまけずワン○ンマンのサ○タマがやっていた日課のトレーニングを取り入れていた(意味は無いようである)
………
ある朝のことである。俺は遠くで叫び声を聞いた。「(ついにこのイベントがやってきたか、、、)」台所からナイフを拝借しハンネスを起こさないようそっと家を出る。ミカサの家までたどり着くと家のドアは開きっぱなしで中からは血が見える。襲ったヤツらがいないことを確認して中に入ると男女が血まみれで倒れていた。ヴォェッ、現代日本で生きてきた俺にはこの光景に耐えることは難しかった。意を決して近づいてみるとなんと生きているではないか!掠れた声で男は言う。
「…………娘を………守ってやって欲しい…………。…………もう私は長くないようだ….….頼む」
「……わかりました…!命にかえてもあなたの娘さんを救ってみせます!」
俺の言葉を聞いて安堵したのか男は苦しそうな表情を一変させて安らかに眠るように目を閉じた。
「(俺には覚悟が足りなかった……。ここは進撃の世界でどんどん人が死んでしまう残酷な世界なんだ。)」決意を新たにした俺はミカサが捕らえられているであろう山小屋に向かう。
その頃イェーガー親子はミカサの両親の惨状を目の当たりにしグリシャからは麓で待っているように言われたが、同じように山小屋に向かうのであった。
………
「(まずは作戦を立てなければ…)」大の大人3人にいくら身体能力があるからといって子供一人で無策で挑んで勝てるようなそんな甘いことは無いことはさすがにわかっていた。山小屋の窓から中をそっと覗き込むと縛られたミカサと男3人が見える。
「(寒い……痛い……助けて)」
ミカサの声にならない声が聞こえるようであった。
男たちの会話に聞き耳を立てていたが、そのせいで後ろから近づいてくる足音に俺は気づけなかった。
「……おい、なにしてんだ?」
「ビクツ、……中の女の子を助けようと機会を伺っていたんだ。」
声をかけてきたのはエレンであった。そこから俺たちはミカサを助ける作戦を練り、エレンが1人を外へおびき出して時間を稼ぐ間に俺が中の男2人を始末することになった。
コンッコンッ
「ごめんください。」
「…オイ ガキ!!どうしてここがわかった!?」
「、、あのっ、森で道に迷っちゃって、、帰りたいから一緒に来て欲しいんだ!」
「ダメだろ〜〜~子供がこんなとこ一人で来ちゃ。森には怖いオオカミがいるんだぞ〜〜~!おじさんがついて行ってあげるからね」
エレンについて行って背中を見せた男の背中に俺は斧を振り下ろす。男は声を上げるまもなく血を撒き散らして倒れる。倒れてきた男に潰されたエレンは男の重さと血の匂いで吐き気を催してる様子であった。俺も人を殺した感触が手に染み付いて吐きそうだった。しかしまだミカサを救えていないが故に耐えて見せた。残りの男を始末しようとドアに向かうと異変に気づいたのか一人の男がドアから出てくる。その隙を見計らって俺はそいつの首に向かって斧を振り下ろす…………
俺は、自分が殺す予定であった2人を殺したことで、中にいたもう1人をすっかり忘れてしまっていた。
小屋に入って真っ先にミカサを縛っていたロープを切る。ミカサを連れて外に出ようとするが「……まだもう1人いる…!」そんなミカサの声に俺はハッとして振り返るがもう遅い。既に手を伸ばしていた男に俺は首を捕まれ持ち上げられる。斧も掴まれた拍子に手放してしまった。
「(まずい!!苦しぃッ!!このままだと殺される!)ミカサっ!戦え!戦うんだ!」
「イヤッ!」
両親を殺されたトラウマがある少女にとってなんとも酷な話であった。エレンはまだ復活する様子は無い。ミカサに向かって再度問いかける。
「戦うんだ!勝てなきゃ死ぬ!勝てば生きる……戦わなければ勝てない!!!」
ミカサは斧を両手に持つが、
「できない……」
体が震えて動かないようであった。
「(あぁ…意識が遠のいてきた抵抗する力も出てこない。呆気ないもんだなぁ…)」
まだ何も成しえてないのにどこか他人事のようにゆっくりとせまる死を受け入れつつあった。
そのときミカサは思い出した。カマキリに食われる蝶を、、
この世界は残酷なんだ。
体の震えがピタッと止まる。今ならなんでも出来る気がした。
「(戦えっ!戦えっ!戦え!!!)」
持ち手はひしゃげ床は割れる。そんな力の発露であった。
ブスッ
「アン?………」バタッ
「ハァハァハァハァ………ふぅぅ……」
俺は必死に息を整える。息をつくまもなく憲兵団を引連れたエレンの父グリシャがやってきた。
「この惨状を子供たちがやったのか、、って君は!あの時の少年ではないか。なんて事をしたんだ!?」
「こいつらはミカサの親を殺してミカサまでも……!!」
「違う!私はそういうことを言いたいのでは無い!君はまだ子供だ。こんな軽々に命を投げ出すような危険なことをするんじゃない!
私たちが後処理をするから君は親御さんが心配する前に早く帰るんだ!」
「でも俺のことを心配してくれるような親は俺にはいません。」
「そうか……やはり、」
グリシャは少年の口調が変わっていることから、やはりあの時家が近くにあると言った事は嘘であることを確信した。
「ミカサ…。私のことを覚えているかい?君がまだ小さかった時に何度か会っているのだが…」
「イェーガー先生。……私は、ここから………どこに向かって帰ればいいの?」
「寒い…」
「私にはもう帰るところがない…」
セイは衝動的にミカサを抱きしめる。
「俺が何度だってお前を抱きしめて温めてやる!お前の帰るところになってやる!だから……希望を持て!!!これからを生きるんだ!」
「あったかい……名前を教えて欲しい」
「おれか?セイだ。姓はない。」
「そう…セイ、ありがとう…!私を助けてくれて、ありがとう…!」
「俺からもこれやるよ、ほらマフラーだ、あったかいだろ?」
「うん…!」
エレンも自分が巻いていたマフラーをミカサの首に巻く。下手くそであったが、その下手さがむしろ温かくさせた。
グリシャはミカサに提案する
「ミカサ…私たちの家で一緒に暮らそう。」
「え…」
「辛いことが沢山あった…。君には十分な休息が必要だ…」
「……セイは…?セイはこれからどうするの…。セイもさっき家がないと言っていた。」
「俺は……今ハンネスという駐屯兵団のおっさんの家に泊めてもらってる。誘拐されかけてたところを助けてもらった恩もある。だからミカサ…ごめん一緒に住むことは出来ない。」
「そう……。」
「ほらミカサ早く帰ろうぜ。俺たちと一緒に、俺たちの家に。」
「うん…!帰る!」
………
この時のセイは無自覚であったが理想的な立ち回りをしていた。山小屋でのエレンのポジションを奪い、心が冷えきってしまったミカサを一番最初に温めて、愛を芽生えさせる。その芽生えた愛は一緒の家で暮らさないことによって、家族愛ではなく異性愛、更には狂愛になっていく。このことをこの時のセイはまだ知らないのであった。
ミカサとの馴初めを書きました。セイはおちゃらけた性格をしてるが故に、意識的にやろうとすると上手く行きませんが、無自覚に相手を沼らせてしまうようです