ミカサを助け出したあと、俺は返り血をそのままにしてハンネスさんの家に帰る。
「どうしたんだその血は!?どこを怪我したんだ!!」
「大丈夫だから心配しないで、、それにこれは俺の血じゃないんだ。」
「おい、まさか……」
ハンネスさんに事情を説明する。ミカサの親が殺されたこと、ミカサが誘拐されそこから助け出したこと、その時に誘拐犯を殺したこと、全てを語り終えるとハンネスさんは言葉を失っているようだった。
「ハンネスさんごめんなさい。ミカサを救うにはあの害獣を駆除する必要があったんです…」
………
しばらくするとグリシャからこの場所を聞いたのか、ミカサとエレンが家にやってきた。
「ハンネスさん!セイを借りてってもいいですか!」
「おう!家のことは任せとけ!子供は遊んできな!」
ハンネスに送り出された俺はエレンたちと共にグリシャさんのところに向かう。
「実はこのあとミカサを歓迎するためにパーティを開くんだ!セイももちろん来るよな?」
「俺は……ごめん行けない。俺はミカサのお父さんお母さんを助けられなかった。まだ息があったのに見殺しにした……俺には行く資格なんてないんだ…」
ようやくこの世界が残酷であることを自覚したセイは自分の能天気さを省みすぎていた。
「(何がイベントだ。人が死ぬのはわかっていたはずなのに!!)」
「…そんなことない!セイは私を助けてくれた!生きる希望をくれた!…そんなふうに自分を卑下しないで……!」
「セイを、、私を助けてくれたセイを、悪くいう奴がいたなら私がそいつを殺す!」
「おい、ミカサ!それはさすがにやりすぎ、」
「エレンは黙ってて」
「はい…」
「……セイは来てくれないの…?」
「ミカサ、、、!ごめん、行くよ!」
「…良かった…」
用意ができるまでは時間があるらしく、薪を拾いにエレンのお気に入りの場所であった丘に向かうことになった。
…
【ミカサ視点】
……お父さんお母さんを目の前で殺され、山小屋に連れ去られた私は何もかもを諦めかけてしまっていた。
なのにどうしてか頭の中に浮かんでくる顔がある。私と同じ黒髪黒目の、吹けば散ってしまうような線の細い優しげな少年だ。彼は私の大事にしていたハンカチを持っていた。1度しか話したことの無い彼をどうして私は思い出しているのだろう。
床に転がされていた私は、見覚えのある少年がドアを開けるところを見ていた。出ていった男がなかなか戻ってこないことにごうを煮やしたのか、俺が見てくると言って一人の男が外に出て行った。すると入れ違いにあの黒髪の少年がやってくるではないか。彼は私を見つけるとすぐに駆け寄りロープを切ってくれた。私はすぐにでももう1人いることを彼に伝えようとしたのだが、体が震え、思うように声が出せなかった。無理やり言葉を捻り出した頃には、彼は捕まり、首を絞められ、絶体絶命。
彼は私に懸命に戦えと言う。
「イヤッ!(怖い…戦うなんて……出来ない…!)」
重なる彼の戦えという言葉に私は何故か勇気が出た。彼のためなら私はなんだってできるような気がした。
男を殺したにも関わらず、私は不思議な感情を抱いていた。
「(どうして…?どうしてこんなにも嬉しいのだろう…。)」
ミカサはまだ幼く、少年に抱いた気持ちを理解出来なかった。
少し時間が経つと、喜びは急激に薄れていき、喪失感だけが残った。
「(私には…もう…何も残っていない…。)」
心は冷え切り、体までもが寒くなった。もうどうでもいい、全てを諦めてしまいたかった。
そんな時である。私は黒髪の少年に抱きしめられた。
「俺が何度だってお前を抱きしめて温めてやる!お前の帰るところになってやる!だから……希望をもて!!!これからを生きるんだ!」
春が訪れたように感じた。私の中でたくさんの花が開花したような気がした。
「(…私の帰る場所………あたたかいな)」
心に空いた穴が彼で埋め尽くされるかのようであった。
彼の名前を聞く。彼はセイというらしかった。
「(セイ・アッカーマン……いいかもしれない)」
気が早かった。いや早すぎる。しかも婿入りさせる前提である。
エレンからもらったマフラーも私をあたためてくれた。しかしそれ以上に、セイという少年の存在がミカサの心をあたためていたのである。
セイはハンネスという人の家に居候しているらしい。私はセイと暮らしたかったが、セイはハンネスに恩があると言って、やんわりと拒んだ。
一緒に住めない分、朝早くからハンネスのところまで詰めかけて、一緒に過ごそうと密かに決心するミカサであった。
ミカサがセイに対する気持ちを自覚するのはまだ先の話である
…………
エレンのお気に入りの丘まで薪拾いにきた。
「(とりあえず一件落着か……。そうだ、この時期と言えばアルミンが本を持ち寄ってエレンと外の世界の話をするんだったよな)」
エレンはアルミンと待ち合わせをしていたのか丘の上の木の根元に、本を大事にそうに抱えた金髪の美少年が座っていた。
「(…これは女と間違われても不思議じゃねぇな。確かに可愛い)」
俺はノンケである。断じてホモなどでは無い。本当だからな??
「おーいアルミン!俺の友達を連れてきたぞー!」
「あ、エレン!後ろの黒髪の子たちかな?もしかして姉弟だったりするの?」
「違うぞ、こっちはミカサ、ちょっと訳あって今日から家族になったんだ。そんでもって、こっちはセイ。俺も今日あったばかりであんまりセイのことはわかってねえんだ。でもこいつは良い奴だ、それは間違いねぇ。」
「そうなんだ!2人とも僕はアルミンって言うんだ!よろしくね?」
「……よろしく……私とセイは姉弟じゃない…。」
「そんな否定しなくてもいいだろ……アルミンよろしくな!」
アルミンが持ってきた本には″炎の水″,″氷の大地″,″砂の雪原″などどう考えても心当たりのあるものしかなく俺はつい口に出して言ってしまった。
「マグマを見たいなら火山に登らなきゃな。」
「マグマ?それはなんだい、セイ?火山っていうのも教えて欲しい。」
「(やべっしまった。つい癖で言っちまった……)」
「炎の水の正式な名前だ。火山っていうのはマグマが湧き出てる山のことだな。」
「なんでセイはそんなに詳しいの!?もっと教えて!」
「いやぁ、な、俺もちょっと本で読む機会があったんだよ。」
……俺が語り尽くすまでアルミンの知識欲は止まることなく、エレンも耳を傾けて外の世界に思いを馳せていた。ミカサは俺が話している最中にもずっと俺の顔を見ていた…ずっと唇を眺めていたような気がするが、さすがに気のせいだろうきっと。
気づけばもう日が暮れかけ、約束の時間が迫りかけていた。
「やべっ!もう日が暮れるっ!薪まだ全然拾えてねぇじゃねえか!ミカサもセイも急いで集めるぞ!」
「…ん…」「おう!」
薪を集めエレンの家に向かうと美味しそうな匂いが漂ってくる。
「いらっしゃい、…セイくんでいいんだよね?」
「は、はい!お世話になります!」
エレンの母のカルラさんが俺たちを迎え入れてくれた。優しげな顔をした美人さんで、女性経験皆無の俺はしゃべりかけられただけでドギマギしていた。ミカサはそんな俺にイラついたのか、横から俺の脇腹を抓ってくる。痛い、普通に痛いやめてくださいミカサさん。ミカサは心なしか俺を睨んできているような気がした。まるで他の女に目移りするなと言わんばかりの圧力だ。さすがにそんなことは無いだろうけども、、
…………
豪勢な食事だったが、日本の美味しい料理に慣れ親しんでいた俺はどうにも楽しめなかった。そんな俺を見てカルラさんは心配したのか、
「セイくんどうしたの?美味しくなかった?」
「いえ!全然そんなことないです!めっちゃ美味しいです!!」
「そう、お口にあって何よりだわ…」
「そんなことよりもセイくんはこの後どうするの?」
「ハンネスさんが俺の帰りを待ってるだろうしこのまま帰ろうと思ってます。」
「……そんな……セイ、今日は一緒にいて欲しい……」
精神的にダメージを負っていたミカサは無意識に人の温もりを求めているようだ。
「エレン、今日はミカサと一緒に寝てやってくれ。酷い夢にうなされるかもしれない。」
「は……///どうして俺が……。……、わかった。一緒に寝てやるよ!」
「話は聞いたよセイくん。さっきちょうどハンネスさんのところに行って、君が外泊する許可を取っておいたから安心したまえ。」
「(マジかよ!ミカサと一緒に寝るのは俺の精神衛生上よろしくないが、仕方がないか)」
「わかりました。今日は泊まっていきます。」
「……うれしい……」
………
あとは寝るだけとなって3人分の布団を敷く。ミカサを真ん中にして俺とエレンで挟み込む形だ。
布団に入るとやはり疲れていたのかすぐに睡魔がやってくる。しかしそれでも昼間からずっと続いていた体の震えは止まらなかった
「(……俺は……人を殺してしまった。もう元には戻れない……)」
人を殺した感触が手にこびりつきセイを人知れず蝕んでいた。すると、突然背中にあたたかいものがくっつき、そしてすぐ俺の耳元でミカサが囁く。
「…セイ。私を助けてくれてありがとう…。あなたのおかげで私は生きていられる。あなたから全てを貰った…。だから、、私もあなたに全てをあげる。」
俺の体の震えは自然と止まっていった。そしてそのままミカサに抱き抱えられたまま吸い込まれるように夢の中へと旅立っていくのであった。
余談だが、寝ているうちに寒くなったのか、エレンはミカサに抱きつき、そして蹴飛ばされたらしく、その衝撃で目覚めると俺とミカサは正面から抱き合って幸せそうに眠っていたらしい笑
曇らせになるのか??このままラブラブエンドで終わるわけじゃなかろうな