まさに、青天の霹靂だった。俺たちは誰もそれが現実の光景だということを認識できなかった。
ズドォォォーン!!!
そんな音とともに、超大型巨人の発する蒸気で吹き飛ばされる。
「みんな!落ち着いて立体機動で壁に掴まれ!ここから先は1人で絶対に動くなよ!!」
そう言って俺は指揮を執る。俺は周りに動くなと言っておきながら、1人飛び出して超大型巨人の項を狙う。
最大威力でガスを噴射しGで体が潰れるかと思うほどのスピードを出して誰より早く切りかかる。 取った!! そう思ったのもつかの間、蒸気で狙いが上手く定められていなかったのか、感触はあったものの俺は超大型を仕留めきることが出来なかった。
「固定砲をやられた!俺たちがここでできることは少ない、外からやってくる巨人は先遣班に任せて、俺たちは本部に戻るぞ!」
本部兼補給施設に戻ると、アルミンが体の震えを抑えられずにいた。
「おい!アルミン!」
「ッ!大丈夫だ!こんなの…すぐに収まる!し、しかしまずいぞ。現状では縦に8mもの大穴をすぐに塞ぐ技術はない…前門付近にあるあの大岩だって結局掘り返すことすら出来なかった!穴をふさげない時点でこの町は放棄される!ウォールローゼが突破されるのも時間の問題だ!……そもそもッ!ヤツらはその気になれば人類を滅ぼすことだって簡単に出来るんだ!」
「アルミン!お前が焦ってどうする!お前は俺たちのブレインだ!お前がいれば俺たちはどこまでも戦える!」
「ご…ごめん。焦ってたみたいだ。大丈夫…。」
「これから訓練兵は私たち駐屯兵団の指揮の下動いてもらう!本防衛作戦の目的は1つ!住民の避難が完了するまでウォールローゼを死守することである!なお、承知していると思うが、敵前逃亡は死罪に値する!みな心して命を捧げよ!解散!!」
「「「「はっ!!!」」」」
「…なんで今日なんだよ。…せっかく明日から内地に行けたっつぅのによ!」
「ジャン…1回落ち着け!冷静にならねぇとすぐ死ぬぞ!」
「なんだよセイ!落ち着けって??無理な話だろ!俺は明日から憲兵団に入って内地で巨人の恐怖のない場所で暮らすつもりだったんだぞ!お前ら調査兵団志望みたいな死に急ぎ野郎どもと違って、こちとら巨人の餌になる心構えなんてねぇんだよ!」
「熱くなりすぎだ!落ち着け!」
「エレンお前は俺に落ち着いて死にに行けっつうのかよ!!」
「違う!!!!思い出せよ、俺たちが血反吐を吐いたこの3年間を!…3年間俺たちは何度も死にかけた。実際に死んだ奴もいる!逃げ出したやつや追い出されたやつも!でも俺たちは生き残った!そうだろ!今日だってきっと生き残れる!今日生き残って……明日内地へ行くんだろ…!」
「クソッ!行くぞダズいつまでも泣いてんじゃねえ!」
「エレン!非常時の時は俺の班と合流しろ!」
「なんでだよ、セイ!」
「なんでって…今のお前が危なかっしいからに決まってんだろ!お前は超大型が出現した時に居合わせたからいつもより気持ちが昂ってんだ。誰から見ても分かる!そんなんじゃ不測の事態に陥った時、冷静な判断を下せず、1人でも巨人に突っ込むかもしれねぇだろ!」
「お前までミカサみたいなこと言うのか!俺は巨人に遅れなんて取らねぇ!俺はもう一人前の戦士だ!」
「だ〜か〜ら〜それが危ねぇつってんだよ!巨人1匹に30人訓練兵が必要って言われてるのはなんでか知ってるか!?それだけ巨人に相対した時の恐怖は凄まじいってことだ。いくら巨人に憎しみがあって恐怖なんか感じねえって思ってても、自分より何倍もでかいヤツがこっちを食おうと向かってくるんだ!それに恐怖を一切感じねえなんてやつはほとんど居ねえんだよ。そして、もし、お前一人に対して何体もの巨人が群がってきたらどうする?しかもその中に奇行種まで紛れ込んでたとしたら?…俺たちの訓練はそんな状況をシミュレーションしてないんだ。絶対に複数人で一体を仕留めるように動かねぇとほんとに死ぬぞ。………俺はもう大事なヤツが死ぬのは見たくないんだよ……。」
「……」
「……戦闘が混乱したら迷わず私の元へ来て。」
ミカサが俺たちに声をかける。
「はぁ?俺とお前は別々の班だろ!」
「……俺がここにとどまっている間に多くの仲間が既に命をかけて戦ってる。俺は一足先に向かうぞ。」
「待って、セイにも言っている。」
「俺は腐っても隊長だ。仲間を見捨てるなんてことは出来ない…!」
「でも、混乱した状況下では筋書き通りには行かない。私はあなた達を守る。」
「お前…何言って―」
「アッカーマン訓練兵、お前は特別に後衛部隊だ。」
駐屯兵団の人がやってきてミカサにそう伝える。
「わ、私の腕では足でまといになります!」
「お前の判断を聞いているのでは無い。…避難が遅れている今は、住民の近くに1人でも多くの精鋭が必要だ。」
「し、しかし―」
「おい!いい加減にしろミカサ!お前までもたついてんじゃねえ!……人類滅亡の危機だぞ…?何てめぇの勝手な都合を押し付けてんだ!」
「エレンそれは言いすぎだ!そんなきついこと言うもんじゃない。……ただな、ミカサ、お前はエレンを信じてやれ。大丈夫さ。俺は強い。ミカサよりもな!巨人の20や30、俺の障害にもなりやしねぇよ!」
「…悪かった。私は冷静じゃなかった。……一つだけ頼みがある…。確かにセイは強い。だけど……どうか、、死なないで。エレンもセイも生きて帰ってきて………」
「……死なねぇさ……俺はまだこの世界の実態をまだ何も知らないんだから…!」
「おう、任せとけ!」
……………
俺とエレンは前衛部隊に合流する。俺はそこでエレンと別れ、思考を巡らせる。
「みんな!俺たちはこれから巨人に立ち向かう!怖いだろう!それは仕方がない…では、だからと言って戦うことを放棄するのか!?いや違う!俺たちは訓練兵団に入団した時に誓ったはずだ!心臓を捧げよ!と。今だ!今がその時だ!先人がやってきたように、俺たちの命をもって、奴らに立ち向かい、後世に繋げるのだ!みな行くぞ!!」
「「「「オォ!!!!!!!」」」」
そうして俺の、いや俺たちのトロスト区防衛作戦は始まったのだった。
正直、このまま俺が指揮系統を務めるのはまずい。俺は遊撃部隊で巨人の絶対数を減らした方がいい。
「フランツ!」
「なんだい、セイ?」
「俺はこれから遊撃に徹する。その間28班の指揮を頼みたい。これはお前にしか頼めないことなんだ。」
(ここでフランツを指揮系統に置けば、こいつは後ろで全体を俯瞰しながら戦いざるを得ない…そうすればこいつが死ぬ可能性も下がるはず…)
「セイ!それはさすがに危ないよ!1人で遊撃なんて……」
「フランツもこの前言っていたろ?立体機動の動きは人間離れしてるって、だから大丈夫だ。任せとけ!巨人の数を減らしてきてやるからよ!」
「…そうかい…。危なくなったらすぐに引くんだよ!」
4時の方向に10m級が三体見える。初陣にはちょうどいい相手だ。
俺は地面スレスレを、アンカーを支えにして振り子のように振りながら飛ぶ。そうすれば、最初の加速の時にガスを吹かすだけでスピードが乗るからな。ガスを節約しなきゃ行けない今こういう節約テクは必須であった。
ヤツらの足元に着くと、右前方に見える家の屋根に向かってアンカーを射出し、巨人の上を取る。そして、巨人に直接アンカーを突き刺し、急降下する勢いで項を一気に刈り取る!(なるほど、こいつらの項は意外と柔らかいのか。訓練のやつよりも脆いな。それならばわざわざ上から行って勢いをつける必要は無いな。)俺は初の実戦にもかかわらず落ち着きながら感覚を更新していった。次は2体まとめて刈り取ってやろうと、俺は1度とびあがってから、横にそびえ立つ時計塔にアンカーを打ち込み、真横にスライドしながら項を狙う。(しくった!一体少し甘かったか…。)やり損ねた一体も落ち着いて処理し、俺は一息つこうと屋根に降り立つ。
それを見ていた訓練兵たちは、
「なんだあの動き!?」「あいつ上位10人に入ってなかったよな??」「もしかして手を抜いてたのか?なんのために?」
上位10人の動きどころか、ミカサですら出来ないかもしれない高等テクにみな驚きの声を上げる。しかし、この場では訓練兵時代のことなどどうでも良かった。
「あいつがいるなら…俺たちはこの戦いに勝てるぞ!!!」「俺たちも巨人を殺すぞ!!!」
セイが単独で行った巨人の解体ショーは、みんなのやる気を引き出すのにはもってこいだった。
その頃エレンたちは、一体の奇行種に襲われていた。
「トーマス!!!!!!!」
「あ…………あれ………」
そんな声も虚しく、生きたままトーマスを食べる奇行種…。エレンは怒った。あの憎たらしい巨人に、そして何よりもまた救えなかった自分に、
「何しやがる!!!!!待ちやがれ!!!!よくもトーマスを!絶対に、絶対に逃がさねぇ!」
「エ、エレン!!」
エレンはさっきセイに「1人で突っ走るな」と言われていたことをすっかり忘れていた。
そして、下にいた小柄な巨人に気づかず、片足を持ってかれてしまう。
「なんで………僕は………仲間が食われてる光景を眺めているんだ………」
「アルミン!!待ってろ今向かうからな!!」
300mは離れてるだろうか、セイの叫ぶ声が聞こえてくる。ただ、もう僕は髭を生やした巨人に摘まれていた。
巨人が口を開け、指を離す。そのまま流れるように巨人の中に入ってくかと思われた時、アルミンの前に影が差した。
「エレン!!!」
「……こんなところで………死ねるか……なぁ、アルミン。お前が……教えてくれたから…俺は外の世界に……」
「エレン早く!!!」
そんなアルミンの叫びも、エレンの片腕とともに、閉め切られた巨人の口の中には届かなかった……
「すまねぇ遅れた!ミーナしか…助けられなかった…!それで…エレンは…エレンはどうなったんだ…?」
「……………僕の目の前で…巨人に………食われた…!!!!」
「…俺が遅れたから。……そうだよな…。俺は!あんなに!エレンを守ると言っておきながら!!」
「セイ!!…君のせいじゃない。巨人を目の前にして…僕は何も出来なかった…。足でまといだった…!僕が!エレンを殺したんだ…!!!」
「それは違う!!!アルミン、そんなこと絶対に言うんじゃねえ!お前はエレンに助けられたんだろ!なら!!お前はエレンの意志を繋げなくちゃいけない。違うか?こんなところで立ち止まってる暇はあるのか!」
「……!!!そうだね。僕は……エレンのためにも生きなくちゃいけない。勝たなくちゃいけない!」
そこへクリスタ、コニー、ユミルがやってくる。
「アルミン、大丈夫?顔色が悪いよ」
「エレンたちと同じ班だったよな!あいつらどこに行ったんだ!?」
「………………」
「アルミン、まさか―」
「見りゃわかるだろ、全滅したんだよ、こいつら3人以外は。」
「うるせぇな!アルミンはまだ何も言ってねえだろ!」
「…あぁそうだよ。エレンは、エレンたち34班はアルミンとミーナを除いて全滅した!俺が駆けつけた時にはもうみんな食われる寸前だった。…俺はミーナしか助けられなかったんだよ…。」
「……みんな。とにかく目立たない場所に移ろう?アルミン、ミーナ、動ける?」
「お前ら!休んでる暇はねぇぞ!巨人どもにだいぶ押されちまってる!」
遅れてやってきたマーレ組3人は言う。
「俺たちは中衛の援護に向かう!お前らもすぐ来いよ!」
「……俺は1人でも多くの人を救いに行ってくる。」
そう言ってセイはまだ激しい戦闘が行われていた壁付近に向かって行った。
………
もう何十体殺したかも覚えてねぇ。
…エレンが食われることは知っていた。そして、34班が壊滅することも……
でも、俺にはどうしようもなかったんだ。俺の行動で未来が変わったらどうなる?ただでさえ残酷な世界だ。原作より酷い道を歩むことになるかもしれない。作戦前はそう考えていた。
ッそれでも俺は、助けられるやつは助けたい!
そんな中途半端な願いがこの結果を招いたのかもしれない。原作では死ぬはずであったミーナを助けた、しかし、助けられたのはミーナだけだった。
どうせミーナを助けて変わるんなら、全員助ければよかったじゃない!
まるで死んで言ったやつにそう言われてるように感じた。
俺はガス管を叩く。軽い音が返される。
残りは2割あるかどうかか…ブレードの替えもこれでラストだ。ここからが正念場だ……!
…………
「やっと撤退命令が出たって言うのに、ガス切れで壁を登れねぇ……」
「だったら!一か八か、あそこに群がる巨人をやるしかねぇだろ!!本部ならガスを補給できる!ただ逃げ回って残り少ないガスを使い果たせば本当にこれで終わりだぞ!」
「俺たち訓練兵の誰に、そんな決死作戦の指揮が執れる?」
「話は聞いた。コニー、ジャン、俺があそこまでの道を切り開こう。」
「セイ!お前生きてたのか!てっきり巨人がわんさかいる方に向かってったから…」
「俺はそんなんで死ぬたまじゃねぇ。で、アイツらを殺せばお前らはガスが補給できて壁を登れるんだな?」
「そうだけどよ…お前もガスねえんじゃねえのか?」
「俺はお前らと違って立体機動のプロだからな、アイツらを殺し切る分くらいのガスは残ってるさ。」
「…アルミン、大丈夫なの?」
「……………ッ……!」
「…エレンはどこ?」
「………訓練兵34班の4名は……壮絶な戦死を遂げました……!!……エレンは僕の身代わりに………!」
「…アルミン、今は感傷的になっている場合じゃない。」
そう言ってミカサはブレードを掲げる。
「私は……強い……すごく強い!……ので、私なら1人でも、あそこの巨人どもを蹴散らせる。あなた達は腕が立たないばかりか、臆病で腰抜けだ。ここで指を加えたりしてればいい……加えて見てろ。」
「…ミカサ、ダメだ。お前のガス残量はもう少ないはず。俺がやるから待っていろ。」
そう言って俺は無理やりミカサを引き止めて、本部へ一直線に向かう。そこにガヤが飛ぶ。
「セイ!!俺はお前がさっきまでずっと駆けずり回ってたのを見てるぞ!お前だって強がってるけどガスはほとんどないんじゃないのか!?」
「…そんな…!セイ!待って!」
(早い!追いつけない!このままだと私はセイまで……)
…あと2体、あれを倒したら終わりだ!!俺はギアをあげる。だが、現実は無情にもセイを阻む。
プシュ……そんな音がすると同時に、俺はいきなり体の自由が効かなくなる。
(ガスが切れたか…)
俺は目の前の奇行種の腕を避けきれず、もろに食らって家の壁にたたきつけられた。
ゴフッ、、肋骨が逝って肺挫傷を起こしたのか呼吸が上手くできない。それに受け身を取ろうと出した左腕も持ってかれてしまったようだ。
「セイ!!!!!」
ミカサがとんでもないスピードで迫ってくるがもう巨人の手はすぐそこである。
(俺はまだ何も出来てないのに……悔しいな…)
俺は目の前に迫る死を受け入れて目を閉じた。
そんな時である。
ヴォぉぉぉぉぉぉ!!!!!!
そんな叫び声が聞こえたと思ったら、いつの間にか俺の目の前まで迫っていた大きな手はなくなっていた。
エレン巨人の叫び声だったのであった………
長くなりそうなので分けます。
そしてセイくん?ほぼ二重人格じゃないあなた?