TS転生したけど、最悪のタイミングでの憑依転生だった 作:名無し一般通過TS好きハーメルン民
前書きで初投稿ネタをするのに深い意味はありません
はい、絶賛ピンチのリリィです。
リーダーが勝てないのにモブ犬に攻撃を仕掛けた結果、再び重症に陥りました。
カリンちゃんが頑張って治そうとしてるけど、焼け石に水だと思う。
何やってんの? としか言いようがねぇよ……
うわぁ、主人公君が登場する未来しか見えない。
ここからどうやってざまぁフラグを潰せばいいんだ?
「カリン、リーダーは?」
「命は助かるけど、この場への復帰は無理かも……」
リーダーは死なない程度のではあるものの怪我。
カリンちゃんはリーダーをもたせるために手が離せない。
リーダーの彼女、ミミはただただ無能。
あ、ついでに俺らは犬に行き止まりみたいな場所に追い詰められてるって事を言っておくか。
ここからどうしろと?
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎!」
ああ! 時々犬を牽制するためになんて発音すればいいかよく分からない呪文も放たないといけないし……
いま思いついている限りで一番最後にしたかった手を使うしかないか。
「……カリン、ちょっときて」
「え? 何? それ行けるの……?」
「た、多分……?」
「信用できないけど……やってみる……?」
「どうする……?」
その名も俺らを置いてってもらおう作戦。
あ、勿論カリンちゃんにドス黒い腹の内側までは明かしていない。
伝えているのは、せいぜい囮になろう、といったニュアンスのことくらいだ。
元々そこそこ悪評が広まってるリーダーとミミが俺らを置いていったら、間違いなくヘイトはあっちに行く。
これを利用したざまぁ回避だ。
カリンちゃんにヘイトが向かないように、カリンちゃんも俺と一緒に置いてってもらうことになるけど……最悪カリンちゃんは回復出来るから……
いや、流石にこれは判断が早い。
うーん、もう少し考えた方がいいな。
……暫く耐久したけれど、これは無理。
ヘイト云々の前に強い人が来てくれないとパーティが全滅する。
誰か一人戻って今の状況を教えてくれないと。
この犬に今の俺らは勝てない。
冗談抜きでマズイ。
なんなら死ぬ可能性だって充分にある。
俺は戦線に復帰しようとしている怪我人ことリーダーに声をかける。
「リーダー! 先に戻って助けを呼んでください!」
「は? 俺らがこんな犬コロに負けそうだった、ってギルドの面子に言うのか?」
「命が一番です! 今リーダーは戦えないんですから!」
「ッ、分かったよ」
よし、乗ったな。
良かった、流石に自分の命を優先してくれた。
そして俺は毎度のことながらの炎で犬の気を引き、その隙にリーダー達を戦線離脱させる。
ミミ、意外と足早いな、一応リーダーを背中に背負ってるはずなんだが。
ちょっと感心した。
後は助けが来るまで耐久だ。
「カリン、私達だけでいける?」
「頑張る……」
カリンちゃん可愛いね。
俺が男のままだったら告白してたわ。
……ここで生き残ったら告白してみていいか?
ていうかなんでこのモブ犬くんこんな強いの。
こっちは遠距離攻撃ありで、あっちは物理攻撃しかしてきてないのに押されているのがこっちって。
「⬛︎⬛︎⬜︎⬜︎!」
やべ、声が裏返った。
ファイアーボールっぽい魔法が上手く発動出来てねえ。
しまった、と心の中で思うけれど、もう遅い。
前を見ると、犬が俺に向かって飛びかかってきていた。
横を見ると、カリンちゃんが恐怖に抗いながら必死に犬を止めようとしてくれている。
ああ、カリンちゃんは拘束系の魔法も使えるのか。
でも、あの犬に効いている様子はない。
一秒が永遠のように感じる。
次の瞬間、俺は間違いなくあの犬の犬のものとは到底思えない爪で引っ掻かれるんだろう。
俺はここで死ぬのか?
そう覚悟した時だった。
カリンちゃんが俺と犬の間に飛びだしていた。
慌ててカリンちゃんを抱き抱えて地面を転がる。
しかし、犬は獲物をすぐに変えたようで、既にカリンちゃんの胸を爪で切り裂いていた後だった。
「か、カリン……」
「え、ちょっと、なんでそんな泣きそうなの……? 私は回復術師だよ? 治せるから、ほら!」
涙目の俺をみたカリンは、自慢の魔法で傷口をあたかもなかったかのように塞いでいるが、俺にはわかる。
彼女は失った血を取り戻せてないし、傷ついているであろう内臓も完璧に修復する事はできていない、と。
『リリィ』とカリンは仲が良かったみたいで、俺の中の『私』が暴れている。
カリンちゃんが回復術師だからって、なんで俺はここに残しちまったんだ。
このままじゃ、カリンちゃんが死ぬ可能性だってあるのに。
俺は、再び犬の前に立ちはだかる。
カリンちゃんをこれ以上傷つけさせない、という強い意志を持ちながら。
せめて、せめて彼女が全回復とまではいかなくても、動けるようになるまでは彼女を守ってやる。
そう思いながら杖を持ち直し、犬と向かい合った。
はたから見たら、ただの自殺行為だな、こりゃ。
犬が、その大きな爪を俺に向かって振り上げる。
俺には、流石にもうだめか、なんて思いながら目を瞑る事しか出来ない。
……なのに、犬が俺を攻撃する事はなかった。
「え? は? え?」
それどころか、犬はカリンちゃんの元に歩いていく。
俺なんか初めから視界に入れていなかったかのように。
意味が分からない。
さらに、俺の体は金縛りにあったのかのように動かなくなっていて、カリンちゃんの元へ犬が向かっていくのをただ眺めることしか出来ない。
もしかして、カリンちゃんはこれからゆっくりとどめを刺されるのか……?
その様子を俺は黙って見とけっていうことか……?
「ま、まて……やめろ……」
嫌だ、カリンちゃんは絶対に殺させないっ……
こんな金縛り、執念で乗り切ってやるよ……
しかし、明らかに犬がカリンちゃんに向かって近づく速度の方が速い。
その時だった。
俺の頭の中に何者かの声が響いたのは。
《安心しろ、私にその娘を殺す気はない》
慌てて周りを見渡す。
しかし周りに映るのは、あたり一面の岩、地面、カリンちゃん、そして犬くらいだ。
思わず、犬の方を二度見する。
《ハァ、最近の若いものは血の気が多いのう》
「お前は……なんだ……!?」
《まあまあ、落ち着くのじゃ。其方はこの世界に来たばかりじゃろ?》
「ッ!? なんでそれを……」
そればかりか、犬は俺が『リリィ』ではないことまで指摘してくる。
この犬……もしかしてただのモブ犬じゃないのか……?
ダメだ、あまりにもファンタジー過ぎて頭が回らなくなってきた。
とりあえず聞かないといけないのはカリンの容体だ。
「……カリンは今どうなっている」
《カリン……? ああ、この娘のことか。娘の状態は今安定しておるよ》
「良かった……」
ふとカリンちゃんの方を見ると、さっきまで青かった顔は、健康とは言い難いものの、明らかに不健康そうな顔ではなくなっていた。
なぜかさっきまであったはずの意識がなくなっていたのは少し心配だけれど。
ひとまずは、この犬の言うことを信用してみよう。
だけど、分からない事は沢山残っている。
その質問をする時間はあるのか……?
「あ、あの《おっと、誰かが来たようだな。我はここで一旦退散するとするよ》」
ダメだった。
近くに人がいることを口実に逃げられた。
謎は沢山あるけれど、ひとまずはカリンが無事だった事に安堵しよう。
「良かった……良かったよぉ……」
カリンが無事だった、と確認した俺の目からは、涙がこれでもかというほど溢れ出ていた。
……これは、暫く止まりそうにないな。
そして何分が過ぎたのか。
近くから足音が聞こえてきた。
おそらく、俺らを助けに来た人物だろう。
次の瞬間、俺の涙で滲んでいる俺の視界に映ったのは、黒髪で青い瞳をした、俺らがパーティから追放した少年の姿だった。
Q.なんで戦闘シーン地味ってかほとんどないの?
A.作者が戦闘シーン苦手だから(普段は現ドラ畑)
Q.TS要素は?
A.そのうち出てくる……多分
Q.なんでTS設定にしたの?
A.作者名をご覧ください
Q.あの犬って……?
A.どの犬のこと……?
Q.精神幼くない?
A.肉体に結構引っ張られてる