TS転生したけど、最悪のタイミングでの憑依転生だった 作:名無し一般通過TS好きハーメルン民
タイトルが『ら抜き言葉』なのは語呂がいいからです
自分と全く違う事を言ってくるスゥを信用できない俺は、一度立ち止まる事にした。
絶対に何かが起きている。
そんな得体の知れない確信が、今の俺にはあったからだ。
「リリィ、絶対に勘違いだって。壁なんて迫って来てないし魔物がいる気配も無いじゃないか」
「…………」
スゥは何度も何度も俺を説得しようとしてくるが、俺は下手に動くつもりは毛頭ない。
『私』の直感もこの先が危険だと言っているのだ。
俺は、そんな心の内で恐怖を抱いている所へノコノコも進むような
しかも、俺たちがそんな言い争いをしている間にも壁はどんどん迫ってきている。
早くこれからどうするのか決めなければ、あの壁に押しつぶされてしまうだろう。
「……ねえ、スゥ」
「何?」
「貴方の……貴方の本当の能力は何?」
まず、どうせ覚醒してるだろう主人公のスゥに本当の能力が何か教えてもらおうか。
勿論、スゥはそんな事聞かれるなんて全く思って無かったらしく、カリンちゃんをお姫様抱っこしたまま困惑したような表情を見せる。
大丈夫? びっくりして手を滑らしてカリンちゃんを地面に落っことすとかしない?
俺が思った数倍以上の困惑を見せるスゥ。
まあ驚くのも当然っちゃ当然か。
自分を追放したはずパーティのメンバーにこんな事を言われたんだから。
「それは今、どうしても言わないといけない?」
「さあ?」
焦っているのか、何故かスゥは先程の俺の言葉を否定する事をしない。
これでは、自分は実は強い能力を持っていました、と相手に言っているのとさほど変わらない。
……それにしてもマズイな。
壁が迫ってくるスピードが心無しか早くなってきている。
早く! お前の能力を俺に教えてくれ!
そんな俺の心の声が届いたのか、渋々といった顔つきであったが、スゥは俺に自身の能力を明かしてきた。
「わかった、話すよ。僕の能力は【サポート】だよ」
しかし、スゥの能力は決して主人公ぽくはない、なんだが地味な名前をしているものだった。
「【サポート】?」
「うん、仲間の能力を強くすることが出来るんだ」
「な……るほど……」
それでも、流石主人公。
能力名はセンスの欠片もないが、能力の中身はざまぁ主人公に一定数存在する支援系だった。
今その能力を使ったら俺の炎の火力を強くしてくれるんだろうか。
勿論スゥは気づいていないようだが、壁は既に少し手を伸ばせば触れるくらいには近づいてきている。
まだ押しつぶされているわけではないのに圧迫感がする。
さっさとその能力を使ってもらうか。
早く奥にいるだろう何かに一撃をお見舞いしてやらないと。
「スゥ、それを私に使って」
「なん「早く!」……分かった。」
おお、なんか体が強化されたような気がする。
追放する側のパーティってさ、基本的にある程度までの実力はあるんよ。
かといって英雄って呼ばれる人達くらい強くないのに調子に乗るからざまぁされるんだよね。
それはともかく、今は俺の能力から身体能力まですげえ強化されたな。
あの奥の方にある気配に向けて、最大火力をっと。
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎!」
「リリィ! 何してるの……!?」
スゥがまた驚いてるけど気にしない。
奥から漏れ出てた気配が消えたのを感じる。
それと同時に俺たちを押し潰そうとしていた壁も本来の位置に戻っていた。
一体あの気配の正体は何だったんだろうか。
まあ、これで前に進んでも大丈夫そうだから奥に行った時に亡骸が落ちてるかも知れないね。
「スゥ、もう大丈夫。行こ」
「えっ、あっ、うん……」
そうして、再びダンジョンの中を進んでいくと、黒焦げになった魔物の亡骸があった。
間違いなく俺の炎に焼かれた魔物だろう。
位置から考えるに、壁を使って俺らを押し潰そうとしていた魔物でもありそうだ。
何故だかわからないがスゥは青い顔をしている。
「り、リリィ……? これって……」
「ん?」
しかも物凄く慌て始めた。
もしかしてこの黒焦げの魔物、すごく希少な魔物だったりしたのか……?
スゥの様子がどう見てもおかしいので、俺も『私』の記憶を辿ってこの魔物が何なのか探ろうとしてみる。
そして、俺がこの魔物の正体に気づいたのとほぼ同時に、スゥが魔物の名前を言ってくれた。
「これ、ストーンゴーレムじゃ……」
「そうだね」
「いや、そうだねじゃないよ! この魔物、滅多に見られないのに黒焦げじゃん!」
「そりゃ、さっき私が焼いたからね」
そう、この魔物、なかなかお目にかかれない珍しい魔物なのだ。
ゴーレムという名前をしているのに対して大きくないサイズと、持ち合わせている能力が非常に強力なことも合間って、殆どの人達は姿を見れないまま壊滅させられるのだとか。
……いや、普通に危険な魔物じゃん。
さっき俺が迫ってきてる壁に気づかなかったら、俺とスゥは勿論、カリンちゃんも潰されるとこだったんだぞ?
なんでスゥは黒焦げにした事に怒ってるんだよ。
「スゥ、この魔物の危険性は知ってるよね?」
俺は、怒りを少しだけ覚えつつスゥに声をかける。
「は、はい……」
それに気圧されたのか、スゥは急に萎縮しだす。
「貴方は今カリンを抱っこしてる状態なんだよ? さっき壁が迫ってきてるのに気づかなかったのは誰だっけ?」
「ご、ごめんなさい……」
まあスゥががっかりした気持ちも分からなくもない。
このストーンゴーレム、結構お金になる……らしいし。
まあ、それはともかく今ぺちゃんこになってないのは俺のおかげだからね?
「スゥはどうせ幻覚でもかけられてたんでしょ」
「ごめん、気づかなかった……」
と、その時、スゥの腕の中で抱っこされているカリンちゃんが目を覚ました。
「ん……す、スゥ……?」
「か、カリン……!? え、えっとこれは……その……」
うわ、今日一番の慌てようだぞ。
スゥもカリンも頬を真っ赤に染めてやがるよ。
下手なイチャイチャカップルよりも見せつけられてる感が凄い。
やばい、この空間にいたくない。
「二人とも、今私目の前にいる。イチャイチャは他所でやって欲しい」
そして、俺が自分の思いを伝えると、二人は先程の醜態を思い出したのか、殆ど同じタイミングでまた頬を染めた。
……なんだこのイチャイチャカップル。
Q.TS要素は?
A.ヤメテ……イジメナイデ……
Q.次でダンジョンから出る?
A.勿論