魔将エスメルの英雄ごっこ   作:wakawaka

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世の中不幸だらけ

<side 黒木 雅>

 この世は地獄である。

 

 私の人生においてこれが結論である。

 

 AIにより徹底的に管理され、はみ出し者は淘汰される。別にそれが地獄だとは思っていない。魔物の侵攻で国家が半壊。形だけでもどうにかするために「極東」なんていういつぞやの呼び方をするようになったことから始まったにしてはむしろ上出来な策だと思うしこんな風に学校に通うことが出来ている。他の所では学校に行けない人もたくさん居るらしいが私の人生は私の人生、他人の事なんて知ったこっちゃない。

 

 だからまあ、他の人も私の事なんて知ったこっちゃないのだろう。

 

 どれだけ同級生にいじめられても、どれだけ家族に殴られても、みんなみんな自分のことで精一杯。私を助けてくれる存在はいない。

 

「痛っ!」

 

 痣だらけの腕を見る。

 

「クソッタレな魔法少女共め。」

 

 つばを吐きながらも己の無力さをかみしめる。

 

 私を弄びケラケラ笑うクソども。あれでヒーローなんて本当に世紀末だ。いやこの世の終わりだろう。だがこんな感慨にふけられる時間ももうすぐ終わる。家に帰れば金切り声をあげて殴るモンスターの相手をしなくてはならないのだ。

 

 ああ。この世は地獄だ。

 

 私は日々を煉獄で灼かれながら過ごすのだ。

 

 ・・・どうしてなのだろう。どうして私はこんな目に遭うのだろう?

 

 私はただ普通に生きたいだけなのに。

 

 ただこの生活にも私は慣れてしまった。

 

 ただ、涙が止まらない日々。いつもそうだ。泣いたところで何にも良くならないのに。涙が止まらない。

 

 体中も痛い。吐き気もする。でも遅くなればしつけがエスカレートするだけだ。もう、殴られたくない。

 

「ああ。死にたい。」

 

 でも私には自殺する勇気が持てないのだ。死にたい。けど死にたくない。この矛盾した思考が永遠に続くのだ。

 

 ああ、叶うなら、願っても良いのなら、こんな世界なんて・・・。

 

「ああ。世界滅びないかなあ。」

 

 だからだろうか。そんなものがあらわれたのは、

 

『呼んだ?』

 

 そして「それ」はいた。

 

 黒い何か。空気が震え、その周りがゆがんでいる。

 

 ・・・こいつはヤバい奴だ。一目で分った。一瞬が数時間にも感じるような今まで感じたことのない濃密な恐怖。

 

 ヤバい、ヤバいヤバいヤバい!

 

 見ちゃダメだ。触ったらダメだ。関わったらーー死ぬ。

 

 でもーー。

 

「あ、あなたはせい、れい?」

 

『・・・・・。』

 

 声を出してしまう。「それ」は答えない。

 

 期待してしまう。この地獄を変えれる可能性に。私は「それに」手を伸ばした。

 

『君の(絶望)はなんだい?』

 

 ■■■は私に問を投げてきた。

 

 精霊、それは異界からきた超越存在。

 

 少女に奇跡を送り力を与える存在。

 

 彼らとの契約により生まれる者こそが魔法少女だ。

 

 だが、これは、これは違う。これはもっとヤバい何かだ。これは精霊なんて可愛い存在じゃない。これは■■■だ。

 

 ならばこの問は私の何を代償にするのだろう?

 

 夢もなく私にあるのは、地獄の未来だけだ。

 

 じごく、ジゴク、地獄。この世は地獄なのだがら。

 

 だが、もし、願っていいのなら、彼女達を、あのクソどもを、地獄へと・・・。

 

『いいよ。』

 

 そして、そこに一つの奇跡が誕生した。

 

 彼女こそ絶望の魔法少女。彼女こそが最凶の・・・

 

「え?」

 

 その瞬間彼女を強烈な衝撃を襲った。

 

「エスメル様」

 

「見つけました。」

 

 何?何が起こったの?攻撃?魔物?死ぬの?嫌だ。嫌だ、嫌だ、嫌だ!ようやく手に入れたんだ。この力を。あいつらを地獄にたたき落とす力を!

そして彼女の魔法が発動しーーー

 

「無駄です。」

 

「無意味です」

 

無慈悲な衝撃が再び彼女を魔法ごと吹き飛ばす。

 

「「死んでください。」」

 

無慈悲な死刑宣告が下された。

 

 ああ。この世は地獄だ。この世界は私に厳しい。ようやく、ようやくあいつらに地獄を・・・ちくしょう。

 

 意識が落ちるその間際で彼女が考えられたのはそんなことだった。

 

 こうして世界の災厄になりえた少女は退場した。この出来事が後にどう影響するかは誰も知らない。

 

 

 

 

 

「よくやった。二人とも。」

 

「は!」

 

「ほめて、ほめて~!」

 

 二人が捕らえた少女を速やかに乗っ取る。

 

 人間乗っ取りはたやすいが今は時間が無い。だからといって失敗すれば作戦ごとご破算だ。丁寧かつ迅速に少女の中身を捕食し情報を抜き取る。そして少女の力を奪い取る。

 

「ん?」

 

「どうなされましたか?」

 

「なにかありました?」

 

「これは・・・。」

 

 魔力体。魔法少女に現れる特殊臓器。そこには精霊との繋がりを示し少女を魔法少女へとする力が宿っている。だが、これは・・・底がしれない。負の魔力その集合体。その力は暴虐であり残虐な性質を感じているこれが放置されていればどうなっていたか・・・。少女の記憶を参照・・・。なんだこれは?だが、これは放置してはならない。これは・・・

 

「魔力分裂、形態変化、檻。」

 

「隔離成されたのですか?」

 

「ああ。これは扱いが難しい。この作戦の重要度からいって不確定要素は排除するに限るからな。」

 

神経接続ー視覚ー聴覚ー触覚ー嗅覚ー味覚ー完了。手足ー問題なし、声帯ー問題なし。

これで良し。あとは・・・

 

「エスメル様。」

 

「来ました。」

 

「そうか。任務ご苦労だった。ばれないよう気配を消して離脱しろ。エルクへは直接私が礼をしに行く。行け!」

 

「「ご武運を。」」

 

 二人が消える。

 

 そして空から白し少女が降りてきた。

 

「あなたが新しい魔法少女?」

 

その少女はただ悠然と私の前に来てーーーガチャリ。

 

「え?」

 

「ちょっと連行させてもらうね。」

 

 

・・・マザー申し訳ありません。私は失敗したようです。

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