人形が好きで収集したコレクションを共に眺めていた祖母と“私”。
しかし特に気に入っていた『貴婦人』には祖母も知らない秘密が隠れていて…


掲示板のお題をもとに書いたものです。

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陶器の貴婦人からパンツ一丁のオッサンが出てきた話

「いつ見ても素敵で綺麗なお人形さんがいっぱい!こういうの集めてるヒトって“コレクター”っていうんでしょ?」

都市郊外に住む祖母の家にはたくさんの人形があった。

「『コレクター』なんて言う大袈裟なものではないわ、ちょっとお人形が好きなだけ。どれも価値なんてあまり無いしね」

そう笑ってはいたけれど立派な『コレクター』だったと思う。

主に西洋のモノを好んで収集していて、陶器で作られた置物数点はガラスケースに飾られていた。

それらが置かれている“コレクションルーム”にて祖母と2人でお人形を眺めたりお喋りする時間がとても好きだった。

 

祖母はその中でも特にある陶器製の『貴婦人』がお気に入りで、由来だとかどこで手に入れたものだとかよく話してくれた。

なんでもアンティークなモノらしく昔ヨーロッパ旅行した時に一目惚れして買ってきたとか。

気品ある顔立ち、ピンクのカーディガンに薔薇があしらわれた白いドレス。祖母の好みにどストライクだったに違いない。

「もうこんなしわくちゃなお婆さんだから無理だけど、この人形みたいに綺麗なドレスで着飾って紅茶でも飲んでみたかったわ」

ウフフとそう微笑んだ祖母の顔はとても可愛らしかったのを憶えている。

 

数年後、そんな祖母が亡くなって形見分けをすることとなった。

残念ながら人形全ては引き取ることは出来なかったものの、あの『貴婦人』を含む数点は私のもとへ来た。

そこまで高価な品が無かったうえに家族に欲しがる人も少なかったために、人形好きな小娘である私に回ってきてくれたのだ。

小さめのガラスケースに並べると祖母宅のあの“コレクションルーム”を思い出して自然と笑みが溢れた。

 

そうして人形をお迎えした夜のこと。ベッドに入りうとうとしたところで何かの気配がしてそっと目を開いた。

常夜灯のみ点けている薄暗い部屋の中央には、ガラスケースにいるはずのあの『貴婦人』が鎮座していた。

「は?あれ、何で外に出てんの?」

そう思い身体を動かそうとするも、金縛りにあっているようで動けない。

すると貴婦人がカタカタカタ…と揺れだし、貴婦人が浮いたかと思うとにゅるりと中からパンツ一丁のおじさん小人がでてきた。

「ふぅー出れた出れた」

『…は?オッサン?え、あの貴婦人からなんであんな恰好のオッサンが…???』

背伸びをしたり上半身捻りとストレッチをやり出したおじさん。

金縛りの恐怖と合わさり更にパニックになる私。バシバシまばたきを繰り返していた気がする。

そんな私と目が合うとおじさんはニカッと笑った。

「おっ、見つかっちまったかぁ。いやぁオレさ、別に怪しいもんじゃねぇぜ?その昔怖いやつから逃げててこの中に入り込んだのはいいものの、そのままアンタのばあちゃんに買われちゃってさ。遠くまで逃げれるならいいや思ってたんだけどうっかり眠りこんじまったんだよ。そしたらいつの間にかでけぇガラスケースに入れられてるし、ばあちゃんがとてもニコニコと眺めててさ。あまりにも嬉しそうで、幸せそうだったから夢壊したら悪いかなぁって思ってずっと中にいたんだわ。あのヒトに見つめられるの悪くなかったしな」

ヘヘヘ、と照れくさそうに頭をボリボリ掻くおじさん。

「はぁ……?」

「でももうあのヒト死んじゃったしなぁ…もう潮時かなってさ。追いかけてきた奴等(あの悪者ども)も疾うの昔に諦めてるだろうし。オレ、もう出ていくからこのお人形可愛がってくれや。それ言いたくてさ」

そう人形を見つめるオッサンの顔は寂しそうに見えた。

「それじゃあ元気でな、嬢ちゃん。きっとアンタもばあちゃん似の美人になると思うぜ」

おじさん小人がそう笑って手を振ったところで、ハッと目が覚める。カーテンの隙間からは朝日が差し込んでいる。

ガバっと起き上がるとガラスケースのもとへ真っ先に駆けより中の様子を確認。

そこには前日と変わらず人形たちが整然と並んでいるだけだった。


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